
絵本『ぼくの ともだち おつきさま』をはじめ、やさしく美しいファンタジーの数々で、小さな子どもから大人まで魅了し続けている絵本作家アンドレ・ダーハンさん。
どの作品にも共通しているのは、読んでいる間のゆっくりと優しく流れる幸せな時間。どのような想いを込めて描かれているのでしょう。
今回、最新作『おつきさまと ちいさな くま』の発売を記念して、インタビューが実現しました!
アンドレ・ダーハンさんからのメッセージをお楽しみください。
※2010年ボローニャブックフェアにて
アンドレ・ダーハン(Andre Dahan)
1935年、アルジェリア生まれ。フランスの国立パリ工芸学校卒。パリ装飾美術学校で美術を教えるかたわら、イラストレーターとして活躍。1987年に、初の絵本『ぼくの ともだち おつきさま』を出版。以降、多数の作品を発表。『ぼくの ちいさな ともだち』『にわとりママと はじめての たまご』『ディディ パリ75001ばんち オペラ座に すむ ネズミの バレリーナの おはなし』『Dear Little Moon きみに ありがとう』(いずれも講談社刊)、『しあわせ』『ちいさなたからもの』(学研)、『クリスマスのうさぎぼうや』など、日本での翻訳出版も多い。パリ在住。
アンドレ・ダーハンさんの最新作はお月さまが大好きなこぐまが主人公のお話です。

『おつきさまと ちいさな くま』
アンドレ・ダーハン作 きたやまようこ訳 講談社刊
「そらと うみが つながるのは、おひさまが しずむ ときだけ。いそがなくちゃ。」
小さなくまは、おつきさまのすむ夜のくにへ、旅立ちます。
―― 最新作『おつきさまと ちいさな くま』に込めた想いをお聞かせいただけますか?
大切なのは、誰かを愛すること、相手に共感し、コミニュケーションすること。そうすることで、世界はうまく回っていくと、私自身が信じていることを表現したかったのです。そもそも、大好きな友人や家族といっしょにいると、世の中がうまくいく以前に、まず自分の人生が楽しいでしょう? それが、世の中のすべてのスタートだと思うのです。私が描くキャラクターたちには、敵意がなく、愛に満ちているでしょう?

―― お話をお伺いしていると、エピソードそのものの愛らしさだけではなく、もっとおおきな視点で作品のテーマを感じることができるようです。
今回の絵本もそうですが、ダーハンさんの作品にはお月さまやお星さまがよく登場しますね。それはなぜでしょうか?きっかけとなった思い出などがあるのでしょうか?
月と星のない夜はありません。月が姿をあらわすと、夜が始まります。星は喜びにあふれたすばらしいものです。彼らは輝いています。
とくに、月には思い入れが強いのです。月はどんなときにも、そこにいて、私たちを見ていてくれる存在です。絶望していても、頭が混乱して冷静に考えられないときも、月はいつも通り、静かに空から見ていてくれます。
ご存知のとおり、『ぼくの ともだち おつきさま』は、私の最初の絵本作品です。
はるか昔、私はコルシカの海辺にある私の小さな家の中で腰をおろし、自分の人生について――そこにいる自分の存在について考えていました。
その夜は非常に暗く、聞こえるのは波の音が浜辺で砕ける音だけでした。私は何となく憂鬱な気分でした。そのとき、巨大な火の玉が丘の向こうに出現しました。それはオレンジ色の月でした。それはあまりにも大きくて、さわれそうな気がしたほどでした! 私はもうひとりではありませんでした。そしてこのときのなんともいえない気持を、絵本に表現しようと思ったのです。
私は月が好きです、そして月も私に対して同じような思いを抱いていると、そのとき感じました。だから、月は私の友だちなのです。その体験から、私はしばしば月を主人公にするようになりました。そして読者もそれを気に入ってくれていることに気づきました。

『ぼくの ともだち おつきさま』
アンドレ・ダーハン作 きたやまようこ訳 講談社刊
気がつくと、きみがいた・・・。夜のまんなかで、「ぼく」が出会ったのは「おつきさま」。その瞬間から、心にしみる美しい物語がはじまります・・・。
―― ダーハンさんの作品の優しくて可愛らしい絵に惹かれているファンの方がとても多いと思うのですが、中でも夜を表わす深い青、きらめくお月さまやお星様の黄色、大切な人の温かさを感じる赤・・・などなど色の持つ力をとても効果的に美しく表現されている様に感じます。「色」に対するこだわりなどがございましたら教えて頂けますか?
色はリアルに感情を表現することができます。薄くしたり、軽くしたり、強くしたり、深くしたりすることによってです。こだわりとか、ポリシーとかはないのです。気持ちのままに色を選んでいるに過ぎません。色は頭でではなく、心が自然と選び出していくのです。私の絵を好んでくれる読者は、きっと同じような感情を共有してくれているのだと思います。感情は、国や言語を超えて、共感できるものなのです。
「アンドレ・ダーハンの色彩連合(あるいは同盟?)」とでも言えますか?(笑)
―― だれかを想う気持ちを優しく丁寧に描かれている作品の数々。制作を通して大切にされているメッセージや想いなどを教えて頂けますか?
私は自分が心の中にイメージしているものを、そのまま、紙の上に取り出せるように、慎重に、慎重に描いているのです。そして、表現されたものが、エレガントでクリエイティヴであるように、細心の注意を払います。それはいつもかんたんにいくとは限りません。でも、そうありたいと願い、いつも挑戦しています。75歳になっても、まだ達していない境地があるのではないかと、私は思っています。私は、自分自身ですらまだ知らないレベルに到達できるのでないかと、期待しているのです!
―― 絵本を制作されている時、どんな瞬間が一番楽しいと感じられますか?
最初のページ決まると、あとは自然とストーリーが進んでいきます。次から次へと流れるようにイメージが連なって生まれてくるのです。そして、いつのまにか、自分自身が美のディレクターとして、ページの中に入り込んでしまっているのに気づくのです。このとき、私はとても興奮しています。そうしてページの中に入ったまま、最後のページまで、表現を自在に操りながら、進んでいくのです。
―― 絵本作家になって良かったと思われるのは、どんな時でしょうか?
サイン会などに読者が訪ねてきてくれたり、手紙をくれたりして、私の本に満足したという感想に接するとき、私はとても幸せを感じます。私にとって読者の感想はとても大切なのです。出版社が私の新しい作品を出版したいと言ってくれるのは、そのような読者が大勢いるからにほかなりません。そういう事実を知るとき、私は、絵本作家になってほんとうに幸せだと思うのです。
―― 例えばダーハンさんの絵本を親子で読んでいると、子どもは物語にワクワクし、親は穏やかで優しい気持ちになっている事を感じます。御自身の絵本を通して子ども達にどんな時間を過ごして欲しいと思われていますか?
私は、自分が読者の家のどこかに隠れて、その家の両親が子どもに私の本を読んで聞かせているのを聞いてみたいものだと、よく思います。そのとき、私は自分の本を再発見すると思うのです。その子の魅了された表情、続きを聞きたいという表情を見られたら、どんなにすばらしいでしょう。そしてそれが他国の言語であれば、いっそう興味がかきたてられるでしょう。
愛する人といっしょにいることは、楽しく心安らぐ時間であるというわたしのメッセージを、両親から絵本を読んでもらえる子どもたちは、もう受け取っているわけです。
そのこと自体が私の願いであり、喜びでもあります。
―― 最後に日本の読者の方へ一言メッセージを頂けますか?
みなさんのことが大好きですよ!


















