大きな頭にくりくりおめめ。可愛いお洋服に身をつつんだ男の子と女の子、「ゆっくとすっく」。
小さなお子様を持つお母さん達の間では気になっている方も多いのではないでしょうか、
人気シリーズ「こんなときって なんていう?」の絵を描かれているさこももみさん。イラストレーターとしても活動される一方、最近では、創作絵本も手がけられるなど絵本作家として更に活躍されています。
そんなさこももみさんの、またまた可愛いらしい新シリーズが登場しました!
主人公の名前は「ペコルちゃん」。
ね、気になるでしょう。新刊のお話からご自身のお話まで、笑いの絶えない「さこももみワールド」をたっぷりご堪能ください!
さこももみ(佐古百美)
1961年東京都生まれ。東京学芸大学美術教育学科卒業。小学校教員を経て、イラストレーター、絵本作家になる。絵本、雑誌、書籍、企業のWEB等で幅広く活躍している。主な作品に「こんなときってなんていう?」シリーズ(ひかりのくに)、「イーノとダイジョブ」シリーズ、『まんま』『ねんね』(講談社)、『へんしん!ぱんやさん』(教育画劇)、『トトとライヨ じてんしゃのれた!』(アリス館)、『ぼくはひなのおにいちゃん』(文化出版局)、「ペコルちゃん」シリーズ(くもん出版)など多数。日本児童出版美術家連盟会員。広島県在住。
■ 子ども達がまねをしたくなる絵本「ペコルちゃん」シリーズ

『ペコルちゃんのたべものでんしゃ』 『ペコルちゃんのおでかけスイッチ』
さこももみ作 くもん出版刊
▲パパとママがそれぞれ登場、どちらも楽しめるのが嬉しいですね。
―― ママと一緒の『たべものでんしゃ』、パパと一緒の『おでかけスイッチ』。「ペコルちゃん」シリーズの2冊は、どのように生まれたのでしょう。テーマやきっかけなどがございましたら教えて頂けますか?
「うちの子がこの絵本の真似をして困ります」という声が聞こえてくるような絵本がつくりたかったんです(笑)。子どもが楽しんでほしいというのがまず一番にあります。読んだときに、「もう1回読んで」だけじゃなくて、本の中のことを実際にやってみたくなるようものにしたいなと。
それから絵本を読んでくださるお父さん、お母さんが子ども目線に下がって自分の子どもの頃のことを思い出して一緒に楽しんでほしいな、というのもあって。どうしても親の立場からすると、しつけ的なもの、勉強に役立つものといったものを選びたくなると思うのですが、そうじゃなくて大人が子どもと一緒になって楽しめる余裕があるようなものになるといいなと思ったんです。

―― 確かに子どもが楽しいと思う事といえば部屋中が散らかったり、物が壊れたり、だいたい親は・・・
「ああ~やめてよ~」っていうこと多いですよね。だけど子育ての時期を過ぎてしまった私から見ると、そういうのがおもしろかったのに・・・というのがあるんです。大きくなるとしなくなっちゃいますからね、もったいないなと思うんです。お母さんが困って、「もう!」って言うんじゃなくて、一緒になってユーモラスに、そう目くじら立てずに(笑)、あの頃しかやらないことを、させてあげるのが一番いいかなと。楽しんでほしいなというのがあったんです。
■ 子どもの目線に下がって楽しんで!『ペコルちゃんのたべものでんしゃ』

『ペコルちゃんのたべものでんしゃ』
ママのかばんのなかには、何が入っているのかな?
牛乳に、バナナに、にんじんに…。ペコルちゃん、ひっぱりだして並べはじめましたよ。
――『たべものでんしゃ』では、ママが電話をしているすきにペコルちゃんがお買い物袋から次々と色々なものを取り出していきます。見ているだけではらはらします。こんな小さな子の前に卵が出てるなんて!「あらあらあら」といママ達の声が絵本の向こうから聞こえてきそうです。しまいには買い物袋に入っちゃったりして。

そう、卵。でも卵パックのカシャカシャっていう音もね、触ってみて初めてこういうものだという感触がわかるでしょうし。子どもって、「これは危ないからやっちゃだめ」とか、「次から触っちゃだめ」というと、触りたくなってやっちゃうんですよね。だから体験するってすごく大事なことなんです。
うちの子もよくこんな風に袋やダンボールに入ったりしていました。結構大きくなるまでやるんですね。特に男の子はダンボールがあいてるのを置いておくと、そこに入ってテレビを見てたりするんですよ。
―― そういえば自分も・・・。この絵本を読んでいると、自分の子どもの頃の事まで思い出したりして。
そうなんですよ。自分はやっていたくせに、子どもにはやってないふりして、「やめなさい!」ってね。
だからこの絵本には「子どもの頃、自分もやったでしょ?」という意味も入っていたりするんです。色々やって失敗して大きくならないと、というのがあって。だめって言われることほど、きっと楽しいんだろうなというのはありますよね。こんなことを推奨しちゃいけないんですけど、絵本だって三角形にして立てて、トンネルにして。その中に小さい人形入れたり、ビー玉コロコロとやったりとかって。それはやりたくなるだろうな、って思っちゃいますよね。

―― この絵本の題名は『でんしゃごっこ』とありますが、最初のページを開いても乗り物が出てこない。あれ?と思って読んでいくうちに「なるほど!」という展開になって。いつのまにか、ペコルちゃんが電車の運転手さんになっているんですよね。頭が固くなった大人が見ていると、この発想はなかなか思いつかないような気がします。どんな風にアイデアを思いつかれたのでしょうか?
私も子どもの時、家にあった椅子を全部倒して、その中に入って妹と一緒によく電車ごっこをやりました。いろいろな物を並べて。子どもって物を並べますよね。廊下や畳のへりをずっと、レゴブロックを並べたりだとか。誰でもやってるんじゃないかな?並べたらそれが何かに見えてきて。たまたまできたものからどんどん想像がふくらんでいって遊びが展開していくんです。
ペコルちゃんも最初から電車を作ろうと思ったわけじゃなくて、色々袋から出して並べているうちにこうなっちゃったんですね。
―― 途中でママが「やめなさい」と言ってしまったら、その展開までは行けない。このお話は、最後にママが子どものやっていることを許容して、子ども目線まで降りてきて初めて成り立っているんですね。
ペコルちゃんが袋に入っている時、お母さんがその姿を発見して、「あっ、そういうことか。じゃあペコルちゃんは運転手さんね」なんて、そういう発想ができるお母さんでいてほしいなと思うんです。「だめ!」って言いそうになるところを、ちょっと眉毛を下げてね。
うちの場合でも、上が男の子で下が女の子なんですけど、2人で遊んでいるのを見て、「お母さんだったらこうするよ」って入っていっちゃう。この広告の紙を使ってこうやったらこうなるよとかって。うるさいかもしれないですけど、遊ぶのが結構おもしろかったので。そういう遊び方や親子の雰囲気というのが、自然にお話になったのだと思います。
■ 最後におすのは何スイッチ・・・?『ペコルちゃんのおでかけスイッチ』

『ペコルちゃんのおでかけスイッチ』
パパとおでかけのペコルちゃん。電車に乗るときは、カードをぴっ。バスでは、ブザーをぶーっ。見ると必ず押したくなる、いろいろなスイッチです。
―― 今度はこちら『おでかけスイッチ』についてお伺いします。まず、一日の生活の中でこんなに色々なスイッチが出てくるというのが発見です。この子ども目線というのには感心してしまいます。スイッチが登場する舞台も変化していくのですが、やはり「電車」の場面には目がひかれます。この電車はどう見ても○○線ですね(笑)。改札口のICカードの場面もリアルに描かれていて。
やっぱりわかりますよね。○○線のあのにおいや色が好きなんです。ピンクが。何も見ないで描いているんですけどね。イメージがどうしてもそっくりに・・・。「同じなら同じに描いてください」って言われて「いえ、いえ、別にそんな」って(笑)。
電車に乗る時のICカードの「ピッ」というのは、昔はなかったですよね。あまり絵本にもなっていないかと。そこは今っぽさを出しています。それから、車掌さんの「降りる方が済んでからご乗車ください」と言う場面は、ものまね上手なお父さんがそっくりに読んでくれるかな、という期待も込めて。芸人さんみたいに面白く言ってくれるかなあ、なんて。

―― 「駆け込み乗車はおやめください」など色々ある中で、このセリフはさり気なく順番に乗車することを教えられるからいいですよね。
それもあって「降りる方が済んでから~」にしました。お父さんに言わせようという話もあったんですけど、あまり教育的にしたくないですし。せっかく子どもが楽しんでいるからというのがあるので、車掌さんのセリフにして、ものまねしてくれる人はどうぞしてくださいという感じで。とにかく、どんな風でもこの絵本を通して楽しんでほしいというのが一番です。
―― そうやって色々なスイッチが登場した後、最後はおばあちゃんのお鼻を「ぴんぽーん」。一日中スイッチに目を奪われていた子どもならではの発想ですよね。ああ、そう言われてみればお鼻もスイッチに似てるかも!?
すかさず、おばあちゃんがペコルちゃんにこちょこちょスイッチを押しかえす。ここで“スイッチごっこ”になるんです。こちょこちょってされると絶対笑っちゃう、笑いのスイッチみたいなものですね。
このおばあちゃんみたいなユーモアってすごく大事だと思っているんです。笑いの免疫力ってよく言いますけど、家の中で笑わなくなったら、本当におうち自体がいい方向にいかなくなるな、というのはありますね。とりあえず笑っておけば大丈夫、どんな説教されるよりも、子どもってやっぱり一緒に笑っていたいですからね。そう思うんです。
―― さこさんのご家庭でも「笑い」が絶えないそうですね。
うちの主人はおかしな人なんです(笑)。話をしているとたいがい笑っちゃうんです。だから子どもと4人で食事をしていても、「今日仕事場でこんなことがあったんだけど・・・」という話なんかをおかしな話にしてしまう。それに対して子どもらも「それはどうのこうの」と意見を言ったりするんですけど、最後はゲラゲラ笑ってしまうという感じで。あんまり怖いお父さんじゃなくて。機嫌が悪い時というのをあんまり見たことがないんですね。ただ、やっぱり私がイライラして、申し訳ないけどうちの長男に「ペン」というのは、何回かあって。冷静になって後から「さっきは怒りすぎてごめんね。」と言うと「いや、僕もごめんなさい」となって、最後には笑顔になるんですけど。我が家ではそんな感じなんです。

子どもって基本的にはおもしろいですよね、おかしなことをするので。だから、お母さんの計画通りにいかなくて、子どもがハプニングを起こすと、キャーッとなっちゃいますけど、まあ例えばお食事が1時間遅れようが、外食になろうがいいじゃない、というふうに思っていたら、もうちょっと楽しくできるかなと思うんですね。
―― 「ペコルちゃん」シリーズは、何回読んでも楽しめる絵本。だから「もう一回読んで!」言われる事が多いと思います。でも、変な表現かもしれませんが「くり返し読むのが苦にならない」絵本というのは、忙しい時期でもある小さな子を持つ親にとってはとても大きなポイントでもあって。
「もう一回読んで」と言われる絵本がつくりたい、というのはありますね。
『おでかけスイッチ』の方には「もういっかいやって」というセリフを最後にいれたせいか、実際に読まれた方から、最後までいくと「もう1回!」という声が多くあがると言ってくださって。スイッチを「ぴっ」、「ぶー」、「ぴんぽーん」って、繰り返し押して遊んでもらえたらいいですね。兄弟がいると、「今度は私が押すの」みたいに取り合いになったりして。実際のスイッチでもそうですよね。うちもいつもお兄ちゃんが先に押しちゃって、下がべそかいたりしていましたからね。絵本だったら、何回でも繰り返せますから。
■ 主人公はペコルちゃん。
――この2作品の主役はもちろんペコルちゃん。ペコルちゃんはどんな子なのでしょう。キャラクター設定みたいな事はされるのでしょうか?
好奇心旺盛でちょっといたずらもする子ども、それを大人が大きな目で見守って一緒にふざけちゃおうというイメージが最初にあって。そういった所から、この子の見た目を色々考えて、いくつかキャラクターを描いたんです。どちらの方がよりイメージに合っているか、他の方の客観的な意見も聞きながら決定しました。男の子にも女の子にも見えて、ちょっといたずらっ子っぽい感じで、髪型は毛先がくりんとはねていて・・・。それがペコルちゃんです。
―― ペコルちゃんって、名前もすごくかわいいですよね。
これはね。例えば「カズオ君」とかにしちゃうと日本人、日本という国限定になっちゃう。「○○子ちゃん」だと女の子になっちゃう。あだ名なのか本名なのかわからないような、ちょっと不思議な名前ってないかな・・・と考えてるちょうどその時期に、テレビのニュースから「ペトコパーク」っていう言葉が1週間ぐらいずっと聞こえてきたんですよ。アメリカのメジャーリーグチームの野球場なんですけどね。「ペトコ」ってかわいいなと思ったんです。だから最初は「ペトコちゃん」にしようと。でも「コ」がつくと女の子っぽいね、というので「コペルニクス」のひっくり返しみたいなことで「ペコル」。
子どもは大人が見ない見方というのをする、いろいろな発想をひっくり返したことをやっちゃうというという部分がコペルニクス(地動説を唱えた人)にも通ずるかなと思って。見方を変えると全然違う風になるのにな、というところを引っかけているというのもあるんですね。

―― これはさこさんの全作品に共通する事でもあるんですけど、子どものちょっとした仕草やポーズがとても可愛いのです。例えば『おでかけスイッチ』の最後「もういっかいやって」のポーズだとか、『たべものでんしゃ』の袋に入っている時のペコルちゃんの得意気な表情だとか。「そうそう、この格好、この表情、うちの子もやるやる!うちの子にそっくり!」と思ってしまうんですよね。
「もういっかいやって」のこのポーズ、やりますよね。くすぐられるから腰は引けているんだけど、でもやりたい!っていうね(笑)。どの作品の時も、「うちの子に似てるんです」というのはよく言われます。男の子も、女の子も。だからどっちにも見えるというのは多いですね。中にはコスプレの写真を送ってくださる方もいるんですよ。「ゆっくとすっく」のゆっくみたいに赤いバンダナした写真を送ってくださって。やっぱり親近感を持ってくださるというのは嬉しいですよね。
■ 原画を見せていただきました!
この日はなんと、「ペコルちゃん」シリーズの貴重な原画も見せてくださいました!

▲絵本の中の色々な場面の原画が次から次へと出てきます。

▲やはり原画は色が美しい!魅入ってしまいます。

▲この画像では読めませんが、ボタンの下の「お降りの方はこのボタンを・・・」の説明も細かく書き込まれています。

▲ペコルちゃんの「もういっかいやって」のポーズがたまりません!右は「おでかけスイッチ」の扉の絵。ここに題名が入ります。

▲上の扉の絵を近くで見ると、窓から顔が覗いています。更に近づくと・・・お出かけ前のペコルちゃん一家だ!
「卓上ルーペを使って描いています。私もう、お米に南無阿弥陀仏かけるかもと思うんですけどね(笑)。」とさこさん。
実物は本当にぎゅーっと小さいのです。目の位置は裸眼じゃ描けないとのこと。
■ 絵本作家さこももみさんについてお伺いしました!
―― さこももみさんご自身についてもお伺いさせていただきます。絵本作家になられたきっかけというのを教えていただけますか?プロフィールを拝見して、教師をされていたという部分にやはり目がいってしまうのですが。
教師をしていたのは、2年だけなんです。小学校の図工の先生を2年間していました。
小さい時からずっと絵を描くのは好きだったんです。だけどそれを職業にするというのは、1回も考えたことがなくて。大学受験の時に、小学校の先生になりたいと他の科目を受けようとしたんですけど、友達から「なんで美術で受けないの?」と言われ、「あ、そうか」と。それがきっかけで試験に向けて絵ばっかり描いているうちに、こんなに面白いんだ!と思うようになったんです。大学に入ってからも、先生じゃなくて絵の方に気持ちが向いたりもして。でも、昔は今みたいに職業がいくつもあって選ぶという感じではなくて、とにかく大学を出たら生きていかなきゃというのがありましたし、もちろん子どもは好きだったので、教育実習などしているうちに美術、図工の先生だったらいいなと思ったんです。小学校の時の図工の先生が大好きだったというのもありましたね。

―― その後、ご結婚を期に教師を辞められて、広島に行かれたそうですね。
普通の主婦になったんです。もう引退した感じで。でも本当に絵を描いたり作ったりが好きなので、子どもにパズルなどを作って、それを普通に楽しんでいたんですよ。そうしたら大学の同級生で出版社の編集部に勤めていたお友達が、たまたま広島に出張で来た時にうちに泊まって。パズルを写真に撮って帰って。それがきっかけで、イラストカットの仕事をするようになったんですね。
絵本を描くというのは、自分では話を作る力もないですし、絵もまだまだだですし、一生やっていくうちに1冊ぐらい話がくれば嬉しいなあ、ぐらいに思っていたんです。そうしたら、くもん出版さんのドリルの表紙の絵を描いた時に、「かわいいな」と思ってくださった編集の方がいて。ドリルの表紙なんかを見ながら、まだ絵本を描いてない人に頼みたいと思っていたらしいですね。その表紙を見て、名前を見て、インターネットで検索したらHPが出て来たので、ということで突然お電話がかかってきて「(絵本は)描いたことありますか?」と言われて「ないです」、「描きませんか?」「描きます」って。

『こんなときってなんていう?おそとであそぼう』『こんなときってなんていう?おうちのなかで』
たかてら かよ・作 さこ ももみ・絵 ひかりのくに刊
▲出来上がったのが人気シリーズ「こんなときってなんていう?」
実際に経験するシーンを集め、その時何と言ったらいいかを考え覚える赤ちゃん認識絵本。
―― まるで絵本界のシンデレラストーリーのようですね!
そうなんです。これが5年ぐらい前だったと思うんですけど。絵本ってどうやるんだろう、っていう状態で始まって。最初の打ち合わせの時にこんな内容ですということで文章をいただいて、自分なりに描いたものを見せて、何回か直しをしながら詰めていったという感じでしたね。
―― 「こんなときってなんていう?」のシリーズは、発売当初から話題になっていましたね。その後も続編が出るほど人気が出て。こんなに大反響となったのは驚きだったのでは?
最初だったので、そういうものだと思ったんですよ(笑)。「かわいい」と言ってくださるけれども、どうも自分はあまのじゃくのせいか、「本当にそう思ってるのかな」という思いもあったりして。でも評判も良くて、「うちの子に似てる」とか色々感想として書いてくださる方が増えて。
絵本の仕事が初めてだったので、なんだか毎日勉強という感じで。絵本が面白いかどうかっていうのは、客観的には全然わからなかったですね。ラフを描いて出して、「こういう風にした方がいい」と返ってくると、「ああ、なるほどな」といちいち感心して。「ああ、そうかそうか」と思いながら描いていました。でも最初のラフは全く自由に描かせていただいたので、それを面白いと言ってくださったのが自信になって、「頑張ろう!」と思えたというのはありました。これだけの分量をお話に添って好きに描かせてもらうというのは初めてでしたし。絵本は、どこかで出来たらいいなと思っていた仕事だったので。
―― それまでも、読み手として絵本に触れてこられたご経験は?
私も親に絵本を読んでもらって育ちましたし、子ども達にも幼稚園から低学年ぐらいまでは読み聞かせもしていました。ただ、これを描いた時にはもう子どもたちは大きかったので、ちょっと読まない時期があって。ブランクがあって。「その絵本は読んでなかったよね」というので図書館に通ったりしながら制作していました。
―― その後、創作絵本の方も手掛けられるようになられたんですよね。文章の方というのも「やってみませんか」と依頼されて?
文章も、と言ってくださったのは、この作品が最初なんです。

『イーノとダイジョブのおはなし もりでみつけたよ』 さこももみ・作 講談社刊
メールのやりとりの文章やブログを見ていると、書ける人だからと言ってくださって。口頭でこんなお話で行っていいですかと、編集者さんと話した時に、「双子のきょうだいがおつかいを頼まれるんだけど、寄り道をする話」と言ったんですね。そうしたら、そういう風に短く言えるお話ならたぶん大丈夫です。パパパっと言えると、たぶんうまくいきますよって言ってくださって。励ましてくださったんでしょうけど。それで、書いてみたんです。この原稿はほぼ直しはなかったんですよね。『サンタさん~』のほうも含めて、わりとすんなりいったんです。
■ 作品へのこだわり
―― 今のところ、さこさんの作品というと小さい子に向けたものが多いという印象がありますね。その辺りにこだわりはありますか?
編集の方が低年齢のお子さんをお持ちの方が多くて。「こんな本が欲しい」というものが、皆さんわりとはっきりあったんです。だから、リクエストから始まるものが多いですね。また、この年代は一番読み聞かせをするという機会が多いですよね。だから、私の作品を最初に目にするのが小さい子向けの本だったという事で、この年齢向けのものが描ける人なんだと思われたというのもあるのでしょうね。

『まんま』 『ねんね』 さこももみ・作 講談社刊
▲「好き嫌い」「おやすみ」のリクエストから生まれた絵本
それから例えばこんな絵本。

『ゆっくのどこどこかくれんぼ』 『すっくのどこどこかくれんぼ』
たかてら かよ・作 さこももみ・絵 ひかりのくに刊
▲さりげなく読み始めると、探しきれるまでやめられなくなるやみつき感があるんです!
この絵本を描いたら、今度は「細かいものが描ける人なんだ」となって。「おお、こわい」と思いましたね(笑)。
この本は、「下の子に買ったのに小学校高学年の上の子が取り上げて30分も見てた」とか聞きます。あと、うちの父がもう80過ぎなのに「これはいいぞ」とか言って。「俺はばんそうこうが最後までわからなかった。どこだ?」って聞かれたりとか(笑)。結構幅広く楽しんでいただけてます。

―― この絵本の中でもそうですけど、さこさんの絵本に出てくる子ども達のお洋服一つ一つがすごく可愛くて、お洒落でもあって。今どきのお母さんもその辺りに反応されている方も多いかと思いますね。
後から読んでも、その絵本を読んでいた時の時代というのを思い返せるようなものがいいなと思っているんです。だから、今を意識した服装にしているというのはありますね。「今度はどんな服を着せようかな」って自分でも楽しんでいます。小さい子たちが何人かいっぱい出てくると、一人一人どの子にもちゃんと平等に着せたいって思っちゃうんですよね。髪型も今度はどうしようかなとか。結構それぞれ考えて描いています。
―― その他にも、食べ物とかお料理、お部屋の中が描かれている絵本もありますね。例えばインテリアだとかお料理だとか、さこさんご自身がお好きな分野というのはあるのでしょうか?
お料理はそんなに得意分野じゃないんですけど、子どもはやっぱり美味しそうな絵をつまんで食べようとしますよね。「まだお話の内容はわからないけど、食べ物のページになると食べる真似をするんです」という話も聞くので、なるべく美味しそうに描きたいなというのはあります。
それから食べ物って大事だなと思ったのが、うちの子が幼稚園の時にお弁当をずっと持って行っていたんですけど、下の子が全然泣かないんですよ。他の子はみんな「お母さーん、お母さーん」って泣いてるのに泣かないので、「お母さんいなくても寂しくないの」って聞いたんです。そうしたら「お弁当があるとね、お母さんがいるみたいで寂しくないの」って言ったんです。どへーっと思って(笑)。その話をしたら幼稚園の先生が泣いちゃって。新しく幼稚園に入ってくるお母さん達が「お弁当を作るのは大変だな」って思われるから、入園説明の時にこの話を毎年しています、と今でも言ってました。今はもうその娘が「私は名言をはくからね」なんて言うんですけどね(笑)。
だから、できれば食事は一緒にしたらいいなというのはあります。他はたいしてね、親から伝えることがないので。食べ物は大事です。生きていかなきゃいけないですからね。

『ふわふわホットケーキ』 さこももみ・作 小学館刊
▲こんな美味しそうな絵本も!
―― さこさんが絵本を制作される時、ご自身の小さい頃の経験や、子育ての経験、あるいは教師をされていた頃の経験が生きている、という事はありますか?
教師というのは短い経験でしたので・・・。でも、やはり印象的な子はいますよね。面白い事をする子や言う子、名言をはいたりする子だとか。私の場合は子どもを育てた後だったから、色々見てきたものから絵本が出来た、というのはあるかもしれません。幼稚園の時には、他の子もいっぱい連れて家で遊んでいるのを見ていて、ああ、こんな子もいるんだなというのもありましたし。そういうのって大人だけで暮らしていると、なかなか。もちろんお子さんがいらっしゃらなくても、自分の子ども時代を豊かに過ごされた方は、そのまま本にできるのだと思いますね。
―― 絵を拝見していた時、子どもをじーっと観察する人じゃないと描けない絵なんだろうな・・・と想像していたんです。お話を伺っていると、先生をされていた時も、子育てをされていた時も、絵本を描かれる前からずっと「ああ、この子おもしろいな」という観察がやっぱりお好きだったんだと感じました。そんなストックがたくさんあるといいますか。
そうかもしれないですね。子どもってお尻とか頭の後ろがこう出っぱっている感じとか、なんてかわいい形してるんだろうとか。今でもやっぱり観察しちゃいますね。今はもう身近に小さな子がいないので、ひとりで地面を見ていたりとか、そういう子を見かけると、怪しいおばさんに見られない程度にじーっと外からにやにやしながら見たりして(笑)。声をかけるとやめちゃうから。飽きないですよね、子どもを見てるとね。動物を見てるのと一緒で。
■ 描いているときは本当に楽しい。
―― それでは、絵本を制作されている時に面白いと感じるのはどんな瞬間ですか?
絵を描いてる時は、ずっとにやにやしてますよ。「締切が・・・」とか「いつ描けますか」とか「修正ここも、ここも」と言われると、もうがくっとなるんですけど。いざ、描き出すとにやにやしながら描いてる感じはありますね。だから本当にこれだけやってていいよって言われたら、それが一番いいんですけど。まあ家事もありますからね。そうもいかないんですけどね。
―― 絵本作家になられてよかったな、と思われる時はありますか?
直接感想が聞こえるというのは大きいですね。イラストカットの仕事の時は、描いて納品して出来上がったら、もう終わりっていう感じがあったんですけど、絵本の場合は「この絵本を読んでみてどうだった」とか、「うちの子とそっくりです」とか、「うちの子がこの本でこう言いました」という反応が、今はインターネットのおかげで絵本ナビさんでもそうですけど、感想が見れますよね。そうすると、ああ、描いてよかったなと思います。

―― 絵本ナビのレビューのほうも楽しみに読んでくださっているんですね!
そうですね。「ああ、こういうふうに読んだ方がいるんだ」と、逆に思いもよらなかったこともあったりするので。あとは、「やっぱり子どもはここを見つけてくれたんだな」とかね。テントウ虫がいっぱいるとかいうのを喜んでくれるお子さんがいたり、あそこにあれがあったとかいうのを見つけてくださると、「絵を読んでくださってるんだな」と実感できて嬉しいですね。(他の作家の)皆さんも読んでいるんじゃないでしょうか。
―― 絵本の読者の方に直接会われるという機会もあるんですか?
地元の方で読み聞かせをしてくださいという事が、時々あるんですけど。子どもがわーっと寄ってきて、それまでお母さんに「静かにしなさい」と言われてた子が、しーんとしてこちらを見てくれるのが、すごく可愛くて。「イーノとダイジョブ」を読んだ時には、前にいた女の子が「次は何かな」って見ると、りんごだと思ったら帽子だったりっていうね。「次は何々かな」って言うと、「違う、きっと違う」って言ってたりとか。入り込んでくれているのが嬉しいですよね。ああ、子どもはやっぱりどの子も絵本が好きなんだなあっていうのがあって。
絵本を読んでもらうというのは、ある程度の年齢になっても好きですよね。専門学校にちょっとイラストの授業をしに行っているんですけど、二十歳ぐらいの子もすごく喜ぶんです。読むと、また先生なんか持って来て読んで、なんて言って。幼稚園の時や、お母さんが読んでくれたとか、その絵本がうちにある、ということで思い出すみたいですね。「えー、こんな大きな子が」と思うけど、あたたかいものを思い出すのかな、という気がしますね。
お母さん自身も、今の世代のお母さんはきっと小さい頃読んでもらって育っているでしょうから、自分の小さい頃のこともやっぱり思いだすのでしょうね。
■ 絵本ナビ読者へのメッセージ
―― 最後に絵本ナビ読者の方に向けて、絵本との触れ合い方や楽しみ方などのメッセージをお願いできますか?
子どもと向かい合っちゃうと、どうしても親って上から目線になっちゃうんですけど、絵本を読む時って、ひざの上だったり、お布団の中だったり、一緒の方向を見ていますよね。顔は見えないけれども、同じものを二人で見るという。あれがすごく絵本の素敵なところだなと思うんですよ。向かいあっちゃうと、どうしても何か言わなきゃ、という雰囲気になるじゃないですか。親らしくしなきゃと思っちゃう。でもこの姿勢だと同じものを二人で楽しむっていう、そういう感じがいいんです。
読み聞かせの方達に読んでもらうのは、自分では選ばない本に出会うきっかけにもなるし、いいと思うんです。でも、身近な親御さんが読んであげるなら、自分だけに読んでくれている感じがどっぷり味わえたほうがいいと思いますね。同じ方向を見るって、素敵だなと思うんです。「絵本読んであげるよ」っていうと、もう決まりきったようにひざの上に来るっていう風なね。ああいうかわいい時代はそんなに長くは続かないので(笑)。例えば長男がいて、下に赤ちゃんが生まれると、ひざを取られちゃうし。それをしたくてもなかなか2人いっぺんにはひざに乗れないでしょうしね。だから片一方が寝てる時は片一方にそうしてあげれば、一番いいのかもしれないんですけど。本当にそれができる時間というのは、大事な時間だと思いますね。
―― ありがとうございました!
↓さこももみさんの素敵な直筆メッセージをご紹介します!

最後に記念にぱちり。

「読み聞かせの最中には、是非お子さんのこちょこちょスイッチも入れてみてくださいね!」
(さこももみさんより)
絵本作家さんだと忘れてしまいそうになるほど、気さくな雰囲気のさこももみさん。
ユーモアたっぷりに、ご家庭のお話から制作のことまで語ってくださいました。
思わず「今度はこんな絵本を描いて!」と頼みたくなってしまう編集者の気持ちもわかるよう!?
子どもの目線を忘れない大人の方というのは本当に素敵だな、と改めて思いました!