光村教育図書の絵本の世界
轟編集部長、鈴木編集長にインタビューしました!

石を集めていたお父さんの実話を絵本にした『あたまにつまった石ころが』や、ケニアに住む女の子ハンダを主人公にした楽しいお話『ハンダのびっくりプレゼント』、「めざまし屋」という耳慣れないお仕事の出てくるイギリスの絵本『メアリー・スミス』、韓国の絵本『いぬとねこ』・・・などなど絵本ナビでも人気のあるこれらの作品。舞台となっている国も画風も様々ですが、どれも一風変わっていて心に残る絵本ばかりだと思いませんか?
そんな興味深い絵本を沢山発行されている出版社が光村教育図書さんです。最近では2010年度コルデコット賞金賞受賞作となった『ライオンとねずみ』や、日本でも大人気の建築家ガウディを主人公にしたノンフィクション絵本『ひらめきの建築家ガウディ』など更に気になる新作が次々と登場、注目されている方も増えているのではないでしょうか。
そこで今回絵本ナビでは、光村教育図書、書籍編集部の轟(とどろき)部長と鈴木編集長にご協力頂きまして、会社の成り立ちや絵本にかける想いなどをわかりやすく語っていただきました!
―― まず最初に、光村教育図書さんの成り立ちについて簡単に教えていただけますか?
轟:「光村」と聞くと、国語や教科書を思い浮かべる方が多くいらっしゃると思います。
小学校、中学校、高等学校用の教科書を発行しているのが、「光村図書出版」という出版社です。「光村教育図書」は、光村図書出版の関連会社で、光村図書出版発行の教科書に準拠した教材――ドリルやビデオ、CDなど――を発行している出版社です。
鈴木:絵本ナビを利用されている方のなかには、光村の教科書や教材で学んだという方もいらっしゃるでしょう。今、お子さんが光村の教科書、教材で学んでいるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
―― そうだったんですね。それでは光村教育図書さんが絵本を発行されてからはどの位経たれるのでしょうか?
鈴木:「光村教育図書」は、昨年創立45周年を迎えました。でも、絵本を発行するようになってからは、12年ほどです。翻訳絵本を中心に発行していますが、まだ100点にも満たないんですよ。
―― 絵本を発行されるきっかけなどはあったのでしょうか?
轟:そうですね。きっかけというか…。子どもと、もっと深くかかわりたいという思いがあったから、でしょうか。
光村は、長く子どもの教育にかかわってきました。子どもたちに、光村の教科書や教材で、豊かな知識を身につけてほしい。知識を生かして、自分の夢を実現してほしいと願ってきました。
ところが、バブルが崩壊したころからでしょうか。どうも子どもたちに元気がない。夢がない子どもが多くなったように思うんです。それは、もう、知識うんぬんではなく、感覚、感性の問題かなと。今の子どもたちは、思いっきり笑ったり、怒ったり、泣いたりすることが、少ないんじゃないでしょうか。
教科書や教材は、先生が選んで、児童、生徒に与えるものですよね。でも、絵本は、子どもが自ら手に取るものなんです。
私たちは、子どもの心をゆさぶりたいんです。絵本をとおして、子どもの心をゆさぶりたいと思ったんです。
―― そんな想いのもとに発行された絵本の数々。世界各国の絵本やノンフィクション絵本、新しい作家さんの作品など、とてもバラエティに富んだ内容になっていますね。一方で、どの絵本にも一筋縄ではいかないという共通点があるといいますか・・・。
鈴木:ありがとうございます(笑)
轟:今のところ、翻訳絵本を中心に発行していますが、作品は、かなりこだわって選んでいます。
先ほどの話にも関連しますが、子どもたちに元気がない原因は何だろう? 夢をもてない原因はなんだろう? と考えたとき、この日本に閉そく感を感じている子どもが多いんじゃないかという気がしたんです。それならば、子どもたちの目を、世界に向けさせてはどうかと。日本以外の国や民族の文化、いろいろな人の生き方や価値観に触れたら、子どもの心は解放されるのではないかと。
―― 作品を選ばれる際のポリシーというものはあるのでしょうか?
轟:ポリシーといえるかどうかわかりませんが、とにかく、「本物」を選ぶようにしています。
鈴木:子どもにおもねるような作品、見栄えがいいだけの作品は、読んだときは楽しいかもしれませんが、心に残りません。
「あれ、なんだかこの絵本、ひっかかるな…」そう思ってもらえたらしめたものです。何度も読みかえしたり、何年後かに読んだときに、その作品の言いたいことにハッと気づく、それでいいんじゃないでしょうか。
そういう意味でも、普遍的な作品、10年、20年と読み継がれる作品を選ぶようにしています。
―― 御社の「絵本もくろく」では「バラエティー豊かなおすすめ絵本」「ノンフィクション絵本」「アジア・アフリカの絵本」等々ユニークなジャンル分けがされていますね。おすすめジャンルや作品を教えていただけますか?
<バラエティー豊かなおすすめ絵本>
鈴木:ここでは、新刊を中心にご紹介しているのですが、ジャンル分けしづらいというか…(笑)、どういう絵本と言えないような、個性的な絵本を集めています。
『かあさんを まつ ふゆ』、『空の飛びかた』、『水曜日の本屋さん』は、平凡社さんの「この絵本が好き!」でランクイン(「アジア・アフリカの絵本」で紹介している『1つぶの おこめ』も)していますが、口コミで広まっているようにも思います。ありがたいことですね。

『かあさんを まつ ふゆ』 ジャクリーン・ウッドソン文 E.B.ルイス絵 さくまゆみこ訳
『空の飛びかた』 ゼバスティアン・メッシェンモーザー作 関口裕昭訳
『水曜日の本屋さん』 シルヴィ・ネーマン文 オリヴィエ・タレック絵 平岡 敦訳
轟:作家として注目していただきたいのは、『ハンタイおばけ』や『おはなしの もうふ』を描かれている、エレナ・オドリオゾーラさんです。
鈴木:どうです、このおばけ、キモかわいいでしょう(笑)。エレナさんの描く独特な世界、はまりますよ~。
轟:それから、『おばけやしきに おひっこし』や『ふゆのようせい ジャック・フロスト』を描かれているカズノ・コハラさんも、これからますます楽しみな作家さんですね。

『ハンタイおばけ』 トム・マックレイ文 エレナ・オドリオゾーラ絵 青山南訳
『おはなしのもうふ』 フェリーダ・ウルフ/ハリエット・メイ・サヴィッツ文 エレナ・オドリオゾーラ絵 さくまゆみこ訳
『おばけやしきに おひっこし』 カズノ・コハラ作 石津ちひろ訳
『ふゆのようせい ジャック・フロスト』 カズノ・コハラ作 石津ちひろ訳
<ノンフィクション絵本>
轟:「絵本もくろく」にはまだ掲載されていませんが、今年発行した、『変わり者 ピッポ』や『牛をかぶったカメラマン』、『ひらめきの建築家 ガウディ』は、この夏休みに、子どもたちにぜひ読んでいただきたい絵本です。
ガウディは日本でもよく知られていますが、ほかは、日本ではまず知られることのない人たちです。好きなことを究める生き方について、ご家庭でも話題にしてほしいですね。
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『変わり者 ピッポ』 トレイシー・E・ファーン文 ポー・エストラーダ絵 片岡しのぶ訳
『牛をかぶったカメラマン』 レベッカ・ボンド作 福本友美子訳
『ひらめきの建築家 ガウディ』 レイチェル・ロドリゲス文 ジュリー・パシュキス絵
―― その「ノンフィクション絵本」紹介コメントの“歴史上の人物でなくても、人にはそれぞれの歴史があります。絵本でえがく、フツウの人のスゴイ生き方。”という言葉がとても印象的です。子ども達にはどんな事を伝えたいと思われていますか?
鈴木:『ローザ』のローザ・パークスは、自分の信念をつらぬいた人です。『メアリー・スミス』は、めざまし屋という仕事をしていた人。『あたまにつまった石ころが』のお父さんは、石集めが趣味で、趣味が高じて博物館の館長になった人です。
どの人も、“フツウの人”なんです。
価値観が多様化するなかで、私たちは、日々さまざまな選択をせまられています。生き方も、ある程度選択できるようになりました。でも、何のために生きるのか? 誰のために生きるのか? 何を大切にして生きるのか? そういった、人間の本質にかかわることは、答えがいろいろあるわけではなく、国がちがっても、時代がちがっても、同じなのではないかと思うんです。
だから、「スゴイ生き方だな~!」と思う人でも、目指しているところは同じというか・・・。そういうことを感じとってほしいですね。

『ローザ』 ニッキ・ジョヴァンニ文 ブライアン・コリアー絵 さくまゆみこ訳
『メアリー・スミス』 アンドレア・ユーレン作 千葉 茂樹訳
『あたまにつまった石ころが』 キャロル・オーティス・ハースト文 ジェイムズ・スティーブンソン絵 千葉 茂樹訳
―― 最新作の中からおすすめ絵本とみどころを教えてください!
轟:何といっても、出たばかりの『ヒヤシンスひめ』がおすすめです!
体が浮いてしまうお姫さまのお話なんですが、これは笑えますよ。このユーモア、絵本ナビをご利用の方々に、きっと気に入っていただけると思います。
―― 今後、どのような絵本を発行されていきたいと思われますか?
轟:翻訳絵本でも気をつけていることですが、日本語のすばらしさ、言葉のひびきの楽しさ、美しさに気づかせるような絵本を出していきたいですね。
それから、海外に向けさせた子どもたちの目を、もう一度日本に向けさせたいです。翻訳ではなく、創作に挑戦するのもいいかもしれませんし、日本を舞台にした絵本もいいかもしれません。
まだまだやりたいことはいっぱいありますよ(笑)
―― それはとっても楽しみですね!最後に絵本ナビ読者へのメッセージをお願いします。
鈴木:私たちは、1冊の絵本との出会いが、その子どもの人生を変えるかもしれない…、そういう思いで取り組んでいます。大人になって、自分の子どものころを振り返ったとき、絵本を読んだ思い出を、宝物のように感じてくれたらいいなあと思いますね。
轟:絵本ナビの読者の皆さまには、いつも励まされております。絵本を読んで、思ったこと、感じたこと、一言でいいので、レビューを書いていただけたらうれしいです。皆さまのご期待にそえるよう、一同ますます頑張ってまいります!
―― ありがとうございました!
絵本を発行されている出版社さんのお話というのは、また違った視点を感じる事が出来て新鮮ですよね。
その熱い想いに触れることで、作品を手にとる大きなきっかけの一つになってもらえればと思っています!
