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2010年02月26日

「100かいだてのいえ」シリーズ
岩井俊雄さんにインタビューしました!

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縦に開く表紙、めくりながら100階建ての家を順番にのぼっていって・・・。
発売と同時に、あっという間に子どもたちの心をつかんでしまった絵本『100かいだてのいえ』。
作者は本格的な絵本は今作が初めての岩井俊雄さんです。
更に、下へ下へとおりていく『ちか100かいだてのいえ』まで登場!
一体、こんなアイデアはどこから生まれてきたのでしょう?岩井俊雄さんってどんな方なのでしょう?

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先日、丸善ラゾーナ川崎店さんで開催された「みんなの100かいだてのいえをつくろう!」というワークショップにお邪魔してきました。

★その様子はこちからからどうぞ!>>>

そして、ワークショップを終えたばかりの岩井俊雄さんにインタビューをさせて頂きました!
絵本「100かいだてのいえ」シリーズについて、また絵本作家としての岩井俊雄さんについて、興味深いお話を沢山伺うことができました。

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岩井俊雄(いわい としお)
1962年生まれ。メディアアーティスト。子供の頃に母親から「もうおもちゃは買いません」と言われ、かわりに工作の道具や材料を与えられたことからものづくりに目覚める。1985年、筑波大学芸術専門学群在学中に第17回現代日本美術展大賞を最年少で受賞。その後、国内外の多くの美術展に、観客が参加できるインタラクティブな作品を発表し、注目を集める。テレビ番組『ウゴウゴルーガ』、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示『トトロぴょんぴょん』『上昇海流』や、ニンテンドーDSのアートソフト『エレクトロプランクトン』、ヤマハと共同開発した音と光を奏でる楽器『TENORI-ON』なども手がける。2007年、NHK教育の幼児番組『いないいないばぁっ!』のオープニングアニメーションを担当。現在ふたりの娘の父親として、書籍やブログを通して親子の創造的な関係を広めようと精力的に発信している。著書に『いわいさんちへようこそ!』、『いわいさんちのどっちが?絵本』シリーズ(全3冊)、『いわいさんちのリベットくん』(以上すべて紀伊國屋書店)、『100かいだてのいえ』(偕成社)がある。

様々な活動をされてきているからこそ、岩井さんの目を通して語られる「絵本」の話の内容はとても新鮮!じっくりお楽しみください。



■ 絵本『100かいだてのいえ』を描くきっかけ     

“メディアアーティスト”という肩書きで国内外で多くの作品を発表されている岩井俊雄さん。一方で、娘さんと家の中での遊びについてまとめられた本『いわいさんちへようこそ!』でも大きな話題を呼びました。そんな岩井さんが手がけられた初めての描き下ろし絵本が『100かいだてのいえ』です。

―― 絵本『100かいだてのいえ』を描かれることになった、きっかけというのを教えて頂けますか?

 まず大きなきっかけとして、『いわいさんちへようこそ!』という本があるんです。

Ehon_34646.jpg 『いわいさんちへようこそ!』 岩井俊雄著 紀伊國屋書店

 僕はメディアアーティストとして作家活動を長くやってきて、特に知られていたのはハイテクを使って映像と音楽を組み合わせた作品や、子ども番組『ウゴウゴルーガ』のCGキャラクターなどでした。この本を出した時、あの「ハイテクの岩井俊雄」が、家では子どもとこんなアナログなことをやってるんだ、という驚きもあったのか、かなり注目されて。そして、この本を見た偕成社の編集者の方から「絵本を作ってみませんか?」と連絡をいただきました。『どっちがへん?』(紀伊國屋書店)という絵本を出してはいたんですが、まだ発売直後で多分ご覧にはなってなかったと思うんですよね。


―― 岩井さんご自身は、もともと絵本には興味を持たれていたのでしょうか?

 小さい頃はもちろん絵本は大好きでした。「こどものとも」(福音館書店)をよく読んでいましたね。それから、漫画やアニメを通過して、高校に入って美術部に入ったのをきっかけに美術やデザインなどに興味を持ち始めたんです。ちょうどその頃は、安野光雅さん、福田繁雄さんといった方々が注目されていた時期。特に安野さんの絵本は『旅の絵本』、『ABCの本』 など、ビジュアル的に美しいだけでなく、すごく実験的。僕はもともと科学や機械が好きだったんですが、安野さんの数学やだまし絵などを取り入れた絵本を見て、「こんなものが絵本と結び付くなんて」とすごくショックを受けたんです。それからというもの、絵本を作品として見るようになりました。「ピーターラビット」シリーズにしても、精密な水彩画といい、本自体の完成度といい、本当にアート作品に近い。「絵本はすごい。こんな世界が表現できるなら、いつか絵本にも挑戦してみたいな」って高校の頃は思っていました。

 ただ、その後大学に進んでからは、絵本のことが頭に引っ掛かりながらも、ハイテクを使って映像やアート作品を作ることのほうが面白くなってしまったんです。それからずいぶんたって、子どもが生まれたのをきっかけに、『いわいさんちへようこそ!』に載せたようなアナログな表現に戻ってきたんですよね。


―― そして、その本をご覧になった偕成社の方に、今度は「絵本をつくりませんか」と声をかけられて・・・。

 『いわいさんちへようこそ!』を見て、「この人はもしかして絵本を描けるかも」と思ってくれたそうなのですが、それが僕としてはものすごく嬉しかったんです。メディアアーティストとしては、手描きで絵を描いて作品にするという事はまったくやっていなかったし、自分の絵にはぜんぜん自信がなかったんです。娘と遊ぶときだけ、別に他の誰にも見せるものではないし、手描きもたまにはいいかな、という程度の気持ちで描いていた。でも、そんな僕の絵に、プロとは違ったよさを見つけて声をかけてくれたので、素直に「うれしい、やってみたい」と思ったんです。僕にしてみれば、20年ぐらいお預けにしておいた絵本への思いというのが、急に蘇ってきたような感じがあったんですね。

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■ 自分らしい絵本ってなんだろう     


―― そこから具体的に絵本の制作に入っていく訳ですね。どんな風にアイデアが固まっていったのでしょう。

 『いわいさんちへようこそ!』の中で紹介した遊びやおもちゃは、作品的に作ったものじゃなくて、例えばトイレトレーニングのためにシール遊びをしたり、レストランでぐずった娘を、僕が箸袋を使っておもちゃを作ってあやしたりという、すごく現実的な生活の中で生まれてきたものです。絵本のアイデアも、できれば同じように生活の中から自然にでてきたらいいなって思いました。

僕は、絵本そのものだけじゃなくて、作者の生き方や、絵本が生まれた経緯なんかにも昔からとても興
味を持っていたんです。例えば、『ピーターラビット』は、作者のビアトリクス・ポターが病気の男の子に宛てた手紙から生まれたという話や、レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』は孫との遊びが絵本になった、というエピソードなど、昔からいいなあと思っていました。あとトールキンの『サンタ・クロースからの手紙』という本が、高校生の頃大好きで。いつか自分が親になったら、ああいうお父さんになりたいと思っていましたね。

 そういうこともあって、僕も子どもとの付き合いの中から自然に絵本のテーマが生まれないかな、と漠然と思っていました。その頃、ちょうど娘が小学校1年生になって、数字の繰り上がりで苦労しはじめたんです。それを見て、「これは絵本になるかもしれない!」と。


     
―― 『100かいだてのいえ』のアイデアのベースは「子どもに算数を教える」というやり取りからだったんですね。

100kai_2.jpg  『100かいだてのいえ』 岩井俊雄・作 偕成社

 そうなんです。昔、安野光雅さんのアルファべットや数字をテーマにした絵本に興味があったこともあって、自分なりの数字の表現を絵本でやってみたいな、と思い始めました。

 また一方で、僕はメディアアーティストとして、コンピューターでもテレビでもゲームでも、当たり前になっている表現をちょっとずらして新しくする、ということをずっと追求してきたので、絵本というお題をいただいた時にも、自分らしい何か新しい表現ができないか、という気持ちもあったんです。

 そうやって数字のことと、新しい表現のことを両方考えていく中で、建物をモチーフにした縦に開く絵本、というアイデアが生まれてきました。「数字が増えていくんだったら何で表現しようか。リンゴを並べるのか。それじゃ面白くないな。数字が増えていく感じを実感できるモチーフはないかな……そうだ、建物を登っていくのがいい。じゃあ絵本を縦に開いて高さを表現したらどうだろうか?」と、自然につながっていったんですね。

 『100かいだてのいえ』を出したら、縦に開く絵本、というのが注目されたことに加えて、ちょうど子どもが数字に興味を持っててすごく食いつきが良かったとか、子どもが100まで数えられるようになりました、とすごく喜ばれて。やはり、どこの家庭も同じなんだ、身近なところからテーマを見つけてよかったな、と実感しました。


―― 岩井さんの目を通して、「絵本」というものにどう向き合われながら制作されていったかという部分に、とても興味を持ってしまいます。

 いきなりバーンと全部のイメージが浮かんだわけじゃなくて、絵本に対して素人だったということもあったので、少しずつ手探りで面白いことを見つけながら作っていったという感じです。その時に支えになったのは、普段から子どもたちと同じ目線で遊ぶ、おもしろがる、ってことをずっとやってきたことかなと思うんですけどね。

 わが家の子どもたちとの暮らしについてブログに書いているんですが、子どものちょっとした遊びや発見の中にも物語があるなあってすごく思うんです。例えば、子どもが身近なものに何か面白さを見つけて遊びが始まり、それをさらに発展させていくうち、たまたま近くにこういう材料があったからこうなったとか、その遊びの過程をつぶさに書いていくと、本当に1つの物語みたいになってくるんですよね。それがすごく面白い。絵本になるかも、って思うようなエピソードもかなりあります。
 逆に、例えば買ってきたおもちゃを、いきなりドカンと渡すと、もうそのおもちゃで満杯になっちゃって物語は生まれない。完成形が見えないからこそ、手探りで少しずつ作り上げていく過程が、遊びでも絵本でも一番面白いですね。



■ 体験していく絵本     


―― この絵本に寄せられているレビューを読んでいて面白いなと思うのは、この絵本を例えば夜とか読み聞かせしていても、とにかく時間がかかって大変という声が多いということ。確かに、建物の絵というだけでもワクワクしてしまいます。更に1階から順番に部屋を一つ一つたどっていって。細かく見ていくところがたくさんあって・・・。

 2本の小さい指で、階段をたどってくれたりするのを想像するとね、もうたまらないですよね(笑)。

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―― たまらないですね。でも時間は当然かかるだろうなと(笑)。

 実は、読み聞かせというのはあまり想定していなかったんです。この絵本の制作がスタートした頃、僕は長女とは手作りおもちゃを熱心にやっていたので、絵本の読み聞かせをする父親じゃなかった。今は下の娘に徐々に読み聞かせするようになったんですけど。実は、僕自身読み聞かせをしてもらった記憶がほとんどないんです。僕は早くから文字が読めたらしくて、勝手に読んでたって親が言ってました。それもあって、僕の絵本のイメージは、読んでもらうものではなくて自分でめくって読むものだったんですね。

 『100かいだてのいえ』は最初、安野さんの『旅の絵本』のように、文字のない絵本にしようと思っていました。初めのプランはもっと幅の狭い細長い絵本だったんです。だけど、編集さんから「これはストーリーがあった方が良くなる」というアドバイスがあって、文章を入れることにしました。その分、本の幅も広げることになって。結果的には、ストーリーをつけて正解だったなと思っています。本の幅を広げたことで、周りの風景も見えてきたのもよかった。そういう試行錯誤がありました。


―― こんな風に読み聞かせて・・・というよりも、自分でたどっていって楽しむ様子を想像しながら作られていたんですね。

 僕自身が子どもの頃そうだったので、1人遊び的な絵本を想定していたんです。
 逆に、絵本が出版されてから、色々な方から「寝る前に読み聞かせをしています」とか、「幼稚園でも読み聞かせをしました」って聞いてびっくりしたんですよ。縦長で、絵が細かいこの絵本を、多人数の前でどうやって読み聞かせするんだろう、と。自分の中では読み聞かせのイメージがなかったので、「そうか、絵本は基本的に読み聞かせされるものなんだ」という、軽いカルチャーショックを受けると同時に、読み聞かせを考えてなくて申し訳なかったな、と思い始めました。でも、子どもたちがとても楽しんでいる、と聞いてホッとしました。絵本に関してはそれくらい素人だったんですよね。
 だから、『100かいだてのいえ』のビッグブックを作れることになった時は、「これは読み聞かせに絶対に向いたものにしよう」と思って、思い切って開き方を変えて縦長にしたんです。


―― このビッグブック、形を見ただけでもワクワクします!

Ehon_30115.gif 『ビッグブック 100かいだてのいえ』 岩井俊雄・作 偕成社



■ 絵本で好きなものを描ききる     

中を開けば、子どもたちが時間を忘れて夢中になってしまう程様々な動物達と色々な部屋が描かれているんです。具体的な部屋のイメージのアイデアについても少し伺ってみました。


―― 『100かいだてのいえ』の中に登場する様々な動物たちと、そこからイメージされた部屋の数々がとても面白くて。そういう具体的なアイデアというのは、家の中からだとか、娘さんとのやり取りの中から生まれてくるのでしょうか?


 まず最初に描いたのはネズミの階なんです。このイス、テーブル、照明などの雰囲気、実は自分の家を参考にしているんですよ。キッチンとか置いてある皿や鍋とか、まさにこんな感じ。うちの奥さんは見て苦笑してましたけど(笑)。家そのものはこんなじゃないですけどね。でも、家具とかの絵を描き始めてハッと気がついたんです。家にある家具や照明というのは、自分が気に入って買ったものばかりです。絵本で描く部屋のインテリアや家具も自分が気に入るように描くわけだから、ああ、一緒だなって思ったんです。自分で家を建てて、いろんな家具や照明などを一生懸命選んだ体験が、絵本作りにもすごく活きたんですよね。

 わが家での子どもたちとの遊びも絵本の中にかなり引用しています。キツツキが飛ぶ練習をしているターザンロープは、似たものがうちにもあるんです。地下の仕事場の天井をロープでつないで遊べるようにしてあって、子どもたちに大人気。そういう現実の遊びは、絵本の中でもリアルに楽しさが伝わる気がしますね。


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 ネズミの家からスタートしたのは、まずは人間と同じような家を描きたいと思ったからです。ネズミは人間の家に住み着くなど、どこか人間っぽいイメージがあるので。急に突飛な家から始まるよりも、人間に近い家でスタートして、徐々にそれがリス、カエル・・・とずれて変わった家が登場していく、ということを考えました。普通の部屋を、それぞれの動物に合わせたインテリアや家具に段々と置き換えていくのがすごく楽しかったですね。


―― それぞれの部屋には岩井さんの好きなものや形がたくさん描かれているんですね。

  当然ですが、やっぱり好きなもの以外は描けないですよね。嫌いなものを描く必要もないし。
例えば、好きな家具をいっぱい家に揃えたいと思っても実際にはお金の制約があるし、売っているものが100%気に入ることもなかなかないですよね。この部分や色が気に入らないとか、もうちょっと小さければいいのに、なんてこともあります。現実の家の中って、いろんな妥協によってできてる世界ですよね。
 ところが、自分が絵で描く部屋は妥協する必要がないんですよ。とにかく好きなものだけを詰め込める。これまでメディアアートでいろいろな作品や空間を作ってきましたが、常に材料だの機材だの、妥協したりあきらめたりする部分が大きかったんです。それが、絵本を描き始めてみたら、「絵本というのは、一個も妥協しなくていいんだ!」ということに気がつきました。あたりまえかもしれないんですけど、まったく違った分野でもの作りをしてきたので、「思い切り好きなものばかり描ける」というのが目からうろこでした。
 自分がその動物になりきって住みたい家を考える作業も楽しかったです。実際に我々が、こんな変わった部屋に住んだり、変な形の家具を使うのは難しいと思うんだけど、まず動物を10種類決めて、その動物になりきって僕が家をデザインするつもりで、それぞれの動物の個性から家の様子を発想していきました。


―― それでは、この作品を作った後というのは、もう、本当にすっきりされたという感じですか?

 そうですね。確かに部屋を100個考えて描くのには苦労しましたが、自分の頭の中にある「こういうものが自分は好き」というのを全部出しきる満足感をこれだけ感じたのは、絵本が初めてでした。
 また、そんな風に自分を出し切って描いた絵本を、今度は子どもがすごくリアルな体験として読んでくれるのがうれしいですね。例えば、これが額に入った1枚の絵だったら、「面白い絵だね」とは言ってくれるかもしれないけど、本当に登っていく感じを体感する様なところまではいかないですよね。それが、絵本の場合はただ絵を見るんじゃなくて、自分でページをめくる。ページをめくることで、本当に上に登って いく気分になれる。
特に僕の絵本の場合、ページめくりが単なる場面転換ではなくて、自分がその空間を進んでいくのをリアルに体感できるようにしたところが特徴だと思うんです。今までメディアアーティストとしてインタラクティブな作品を作ってきたので、それと近いことを絵本でもやりたかったんですよね。


―― 最後の、エレベーターでピューって降りて家に帰る、という場面も、すごく好きです。

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 100階まで一生懸命登ったあとは、一気に降りたら面白いな、というイメージは最初からありました。それで、エレベーターを使おうと思ったんですが、エレベーターがあるなら、どうして最初からそれを使わないのか、そこをちゃんと描かないといけないと思ったんですね。それで、一番上の階ににクモがいる、というイメージが段々出来てきたんです。

 そもそも、この『100かいだてのいえ』に登場する動物は、小動物や虫など、家や巣の中にいそうなものを選んだんです。鳥なら、木の洞の中に住んでいるキツツキとか。ライオンとかゾウとか、サバンナで走り回ってたり、大きい動物は似合わないので出しませんでした。それで、一番上を誰にするかという時に、一番上に住む動物がこの家全体を造ったことにしようと考えたんです。つまり、最後の種明かしとして「あ、このひとたちが造ってたんだ!」と驚かせつつ、それがこの家のオーナーで、これまでの動物たちは間借りしていたんだ、という状況もなんとなく伝えようと思って。

  で、家を造る、巣を作るみたいな所から考えるうちに、クモがひらめきました。そして、クモが自分のおしりからピューッと糸を伸ばして降りてくるイメージが、エレベーターにつながると思いついたんです。でも、最初からエレベーターがあるのはまずい。それで、「工事中」でまもなく完成するところ、という設定にしました。完成したばかりのエレベーターに一番に乗せてもらうとか、それによって物語性を深められたと思います。そういった細かい設定は、最初の縦に進んでいく建物にしようというアイデアから、少しずつ僕の頭の中に固まっていったイメージなんですね。



■ 次は下へ下へ・・・『ちか100かいだてのいえ』     

『100かいだてのいえ』は大好評!そして続巻として登場したのが『ちか100かいだてのいえ』。今度は下へ下へとおりていく地下100かい建ての家のお話です。主人公も女の子に変わって、めくり方も上と下が逆になって。その新作についても伺ってみました。

tika_2.jpg 『ちか100かいだてのいえ』 岩井俊雄・作 偕成社


―― 続いて登場したのが『ちか100かいだてのいえ』。今度は地下の家のお話ですね。最初からアイデアはあったのでしょうか?

 前作の『100かいだてのいえ』を作るときに、コピー用紙でダミーを作ったんです。その時に、何も考えずにカレンダーの様に上を綴じました。それでめくってみると上にいかないで、下へ下へいく感じがしちゃったんです。普通、縦開きの本を作るというと、上をとじますよね。だから僕も何気なくホチキスで綴じた側を上にして絵を描いたんですが、「あれ、なんか上にいかないなあ」と。それで上下逆にして作り直してみたら、うまくいったのでホッとしました。
 その時にふと「待てよ。本を逆に綴じれば下にいく話ができるってことだな」と思ったんです。その後『100かいだてのいえ』が完成に近づいてきた頃には、段々と僕の中でイメージがふくらんできて、担当さんに「次の絵本がもし出せることになったら、今度は地下が描きたいです」なんて半分冗談で言っていました。
 その頃から、地下だったら温泉の噴き出す力で動くエレベーターとかどうかな、などと温泉や火山のイメージを、最初から考えていました。


―― 『100かいだて』と『ちか100かいだて』は対になっていて。『ちか100かいだて』の方は、当たり前ではあるんだけれど「土」の匂いがすると言いますか、「生活感」というのがより漂っているような気がしますね。

 100個の部屋が縦につながっているという基本構造は踏襲するとしても、前作と同じと思われてはまずいので違った感じ、例えばちょっと暗くて怖い雰囲気にしたいなとか考えていました。でも、具体的に描き始めてみてすごくよくわかったんですけど、『100かいだてのいえ』のほうは背景が空。基本的に空って何もないんですよね。雲が浮かんでいたりするぐらいで、本当に文字通り「空っぽ」ですよね。例えば、ミツバチやキツツキが食べものを運ぶ、ミツを集めたり虫を集めたり、というのも、結局空からではなく地上から運んでこなけりゃならない。ところが地下の場合は、家の周りにある木の根っこだの、土だのから直接恵みを集められる。ぜんぜん違うな、と思ったんです。


―― なるほど!言われてみればそうですね。

 よく考えると僕らが使ってる木や石などの家を造る素材や、野菜や果物などの食べものって、全部地面からきてますよね。だから地下のほうが生活感がリアルに出せるんじゃないか。僕らは大地に守られて生きてるんだ、というと大げさだけど、そういう感覚が伝えられるのではと思い始めたんです。それで、動物たちが家の周りにある土や木の根っこや、宝石や金などをうまく利用して自給自足的な暮らし方をしている風景を描いたんです。それは僕が自分の家でそういう暮らし方をしたいなと思ってることもあるんです。庭で家庭菜園やったりとか、身近な材料でおもちゃを作ったりするような自分の生きる姿勢ともつながってるんですよね。


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―― 「上へ上へ」という世界と、「下へ下へ」という世界というのは、実はすごく違うものなんですね。

 実際に、世界には100階建て以上の建物はあるけど、地面の下に100階もある建築っていうのは多分ないと思うんです。だから、逆に自由に面白く想像できました。それから地下の場合、自立した塔として描かなくてよいので、ダンゴムシの階のように部屋と部屋を自由につないだ家も描けました。

 あと、前作では住んでいる動物同士の関係が希薄だったので、『ちか100かい』では、全体の住人のつながりを作りたいなと思ったんです。それで最後のパーティの場面に向かって全員が準備していて、最後には全部の動物が集結する場面を描きました。ちょっと謎解き的なストーリーも入れて。

 そんな風に、第一作より少しでも良くしようと思って(笑)。まだまだ勉強中ですね。絵もね、前よりもうまくなりましたねって、偕成社の方に言われたんです(笑)。


―― うちの息子はハリネズミさんの宝石の部屋が大好きで、いいなあって言うんです。男の子なんですけどね。

 そうそう。宝石には結構、男の子も反応してくれるんですよね。特に、ハリネズミの階に登場する七色に光る石は大人気で、さっきワークショップに来てくれた女の子も、もし自分がみつけたら絶対誰にも渡さないって言ってました(笑)。僕はもともと光るものが好きで、メディアアートでも光の作品をたくさん作ってきました。なので絵本でも描きたかったんです。化石や、土を掘る機械なんかも、子どもの頃好きだったし、『ちか100かい』では、より趣味性の高いものを詰め込んでいる感じですね。


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 僕は実は3人姉がいまして、4人きょうだいの末っ子なんですよ。それで女の人に慣れているといいますか、ママたちばかりの集まりの中に男1人だけでも、全然違和感がなくて。娘たちとの遊びも得意だし。僕は男だけど、たぶん女性的な部分もあると思うんですね。今回の『ちか100かい』は、化石、機械、宝石、お菓子など、自分の男の子的な部分と、女性的な部分をそれぞれ両方最大限出して描いた感じです。男の子っぽい絵本、女の子っぽい絵本って絵本によってありますが、この絵本が、男女両方に受けるのはそのせいかな、と思います。


―― 『100かいだてのいえ』のワークショップで子どもたちが描いている絵の内容も、男の子、女の子、というのを意外と超えているんですね。

 そうなんです。あと年齢もあんまり関係ないですね。下は2~3歳から大丈夫ですし、感想ハガキを見ると、意外と10~12歳位の子まで楽しんで読んでくれてるみたいです。絵本だから、子ども向けが大前提ではあるけど、でもやっぱり大人である自分が面白いものを描かなきゃっていうのはあるんです。自分が思い切り楽しんで描けば、読者の年齢はそんなに気にしなくていいと思うんですね。感想ハガキに、「大人も楽しめますね」って、子どもが書いてきたこともあるんですよ(笑)。


―― 描いていて、子どもの頃の記憶が蘇ってくる、という経験もありましたか?

 子どもの頃好きだったものとか、こんな遊びをしたかったな、というのはあちこちに入ってますよね。どろんこ遊びだとか、大人に止められちゃうようなこと、そういうものをあえて描いてみたい、と。描いていてやっぱり気持ちいいんですよね。これぐらい派手にやりたいなあ、って。



■ 自分の中に残っている子ども性     


―― 絵本を読んだ子どもたちからの意外な反応など、印象に残ったものはありますか。

 逆に、意外じゃない反応で驚いていますね。例えば、どろんこ遊びとか、とかげのしっぽが切れるシーンとか、七色の宝石だとかって、こういうのは受けるかも?、と思いながらそれぞれ描いたんですが、ものの見事に、感想ハガキにその部分を「○○が好きです!」と書いてきてくれるんですよね。描いたほうとしては、もうニンマリしちゃうんですけど。そういうのを見ると、自分の中にある「これ面白い!」という感覚は、誰でも共通なんだなと感じますね。

 自分の子ども時代を思い出しながら描くというより、自分の中にある子どもの部分を最大限に使うということなのかな。子どもの遊びって、ハイテクなゲームなどを見ると表面的には変わってるように思うけど、一番原点の部分ではあまり変わってないと思うんです。自分はもう四十代後半だけど、自分が描いたひとつひとつのシーンが子どもたちに喜ばれると、自分の中に残ってる子ども性と、平成に生まれた子どもたちが、実は一緒、ちゃんとつながってるいうことを実感して、すごく幸せな気持ちになりますね。


―― 絵本の場合は、発売後にまた反応が大きく返ってくるというのがまた面白いですよね。そこからがまたスタートというか。

 本当にそうです。今日のワークショップ(※)みたいに、絵本を元に子どもたちがさらに発展させていってくれる。『ちか100かいだてのいえ』につけた「みんなの100かいだてのいえ」(※)への応募はがきは、もう2千枚ぐらい来ているんですけど、日本中からそれだけのリターンがあるというのは本当にすごいことだと思います。
 僕はこれまでインタラクティブに映像を触ったり、音楽を作ったりという様なことができる作品を展覧会などで発表してきたんですが、子どもたちが家の中で絵本とつきあってる時間というのは、展覧会なんかよりもっとずっと長いじゃないですか。小さい子にとってはものすごく濃い時間だと思うんですよ。全然違いますよね。

※ワークショップの様子はこちらから>>>
※「みんなの100かいだてのいえ」ウェブページはこちらから>>>


―― 子どもたちが絵本の中で体験してるっていうのが、見ていてわかりますよね。

 子どもたちにとって絵本とのつきあいは生活の一部ですよね。だからこそ、すごくやりがいのある仕事だなと思い始めています。僕は小さい頃、『そらいろのたね』がすごく好きだったんですけど、その本の事を思い返すと、いまだに温かい気持ちになれるんですよね。絵本の中には実は「たね」自体が描かれてないんだけれど、空色のたねって、どんなふうに見えるんだろうと、想像した感じまで思い出せるんです。これってすごい事ですよね。最後に家がぱっと消えるところは、本当にハラハラドキドキして。40年以上たって、まだ覚えてるんですよね。
 だから僕の『100かいだてのいえ』も、「あの絵本は面白かった」とか「あの時自分で考えた家はこうだったな」とか、今の子どもたちが大人になって思い返してくれたら最高ですよね。



■ みんなでつくる100かいだてのいえ     


―― 今日の様な「みんなの100かいだてのいえをつくろう!」というワークショップは、丸善ラゾーナ川崎店さんが最初に考えだされた事がきっかけだったそうですね。


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※この日、丸善ラゾーナ川崎店さんで「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」というワークショップが行われました。様子はこちら>>>


 僕は、以前から参加性のある作品をつくっていたこともあって、それをさらに発展させたワークショップや小学校での特別授業なども積極的にやっていました。子どもたちから、何かを引き出すことが好きなんです。

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光のえんぴつ、時間のねんど―図工とメディアをつなぐ特別授業』 岩井俊雄著・美術出版社
※小学生のためのユニークな特別授業がまとめられた本です。

 それで、絵本ではどうしたらいいのかな、と思うところがありました。自分の絵本が、各家庭で読み聞かせされているというのは、ある種インタラクティブでいいことなんだけど、受身的でもありますよね。本当は、自分の絵本をきっかけに、子どもが触発されて何かを創り出すみたいな所までいってくれたら理想だな、と思っていたんです。
 物語性の強い絵本だと、どうしても読者は受身になりがちなイメージを持っていたんです。絵本の中には、五味太郎さんの『らくがき絵本』の様に直接子どもが絵を描いて参加できるものもあるし、『100かいだてのいえ』を作る前は、自分が絵本を作るなら、そういった参加性があるほうが自分らしいのかな、とも考えたりしました。ところが、実際にこの絵本を出してみたら、近所のお母さんが「子どもがこんな家を描きました」と見せてくれたりして、子どもが予想以上にリアクションしてくれてることがわかったんですよ。

 そんなことがいくつかあってしばらくしたら、丸善ラゾーナ川崎店の書店員の方が、店頭で『100かいだてのいえ』を使った参加型の企画をやってみたいと言ってる、って担当さんから聞いたんです。「それはいいアイデアですね!」と、すぐに専用の用紙をデザインして使ってもらいました。結果それがものすごく好評だったので、もっと広めたいなと。最初は、自分のブログでやろうかなと思ったんですけど、描いた絵をどう集めるかとかいろいろ難しい。それでなかなか実現できずにいたんですが、『ちか100かい』が出る時に、急に偕成社さんから愛読者カードを参加型のものにしてもいい、という話が出たので、やった!っていう感じでできたんです。


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↑『ちか100かいだてのいえ』には、「みんなの100かいだて」に参加できる愛読者カードが付いていて、特設HPの方に毎週アップされていきます!こちら>>>


―― 絵本を読んだ事がきっかけで、子どもたちにこんな発想が生まれくる・・・というのは見ていて、本当に面白いでしょうね。

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 子どもたちって、面白い歌を聞けばそれを歌いたくなるし、面白いものを見れば描きたくなりますよね。だからその受け皿として絵本の中に絵が描けるハガキが入っていて、なおかつ、それが家の中のらくがきで終わらずに、日本中の仲間とつながっていくっていうのはすごくいいんじゃないかと。


―― つながった瞬間っていうのは感動するでしょうね。

 ええ、そのつながった時の感動がまた刺激になってさらに次に、となるといいですね。「みんながこんなの描いてるんだったら、もっとこうすればよかった」って思う子もいるでしょう。ただ、絵本一冊につきハガキ一枚でもすごい数が届いているので、これ以上増えたら大変なことになりそうですが(笑)。


―― 「みんなの100かいだてのいえ」では、描く時のアドバイスというのはありますか?

 自分の好きなものや、こだわりをなるべく詰め込んで欲しいですね。詰め込めば詰め込むほど面白くなってくるんです。僕がこの絵本を描くときがそうでした。さらりと描いたものより、ディテールにこだわり始めると、すごく面白くなってくるんですよ。今日のワークショップでも、そのレベルまで来てるなっていう人たちが何人もいましたね。最初は「何描こう・・・」という感じなんだけれど、描いていくうちにどこかに臨界点があって、それを超えると面白くてやめられなくなるという感じ。そこまでいって欲しいと思います。



■ 絵本を読んだ後にも     

―― 絵本を通して親子でこんなふうに触れ合ってほしい、という事はありますか?

 絵本というのは、結局は人がつくったものなんです。読み聞かせで親子ならではのコミュニケーションができるという、メディアとしての良さはありますが、すでに出来上がった世界を味わうという意味では、テレビなんかと同じで受身に近い部分もあると思うんです。本当は、外に出て遊んだりしたほうがいいのでは、と思うところもあります。

 でも、「みんなの100かいだてのいえ」みたいに、うまくやれば子どもが絵本から感じ取ったことを、絵に描いたり、何かを作ったり、そういうクリエイティブな事につなげることがやりやすいメディアだと思うんですね。例えば、テレビでどんなに面白いものを見ても、子どもがテレビ番組を作るわけにはいきません。しかし絵本は、紙の上に印刷されたものだから、真似して描けるし、似たような絵本を作ろうと思えば作れる。うちの娘も、よく自分で紙をホチキスで綴じて本やノートの様にして遊んでいます。そんな風に本というのは、いつの時代になっても僕らの身体にすごく近い、生活に密着したものなんですね。子どもたちが持っている「表現したい!」っていう気持ちにすごく寄り添えるメディアだと思うんですよね。

 だから子どもと絵本を読んだあとには親子で絵を描いたり、絵本をきっかけに一緒にお話を作ったり、と世界が広がっていったら、すごくいいなと思いますね。絵本を一方的に詰め込むというよりは、いい刺激を入れたことによって子どもから何が出てくるか、親がしっかり見て伸ばしてあげる気持ちで、絵本を読んであげるのがいいんじゃないかと思います。


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―― 岩井さんの中でも、『100かいだてのいえ』シリーズの制作を通して「絵本」に対する発見が色々とあったのでしょうね。

 子どもが送ってくれた感想の中で、「ページのめくり方が逆でびっくりしました」っていうのもあるんです。5歳の女の子から「こんな絵本見た事がない」というのも。たった5歳の子でさえ「本とはこういうもの」という既成概念がはっきりあるという事が面白いなあ、と。『100かいだてのいえ』は、読み聞かせがしにくいというお母さんたちの意見はあるのですが、子どもたちのほうはまったく気にしないようです。逆に新しさを楽しんでくれている感じがします。

 テレビでも映画でも、世の中には横長のものが多いですよね。人間の目が横に並んでいるから当然といえば当然なんだけど、だからこそ縦にしてみると意外性がある。特に、この絵本のように上へ登っていく感じは縦じゃないと出せないから、使わない手はないですよね。絵本だからこそこれができる!ということを、言いたいですね。

 それから、本ってどこから開いてもいいっていうのがありますよね。映画やゲームというのは、やっぱり最初から順番に見ないといけないけど、本は、パッとどのページでも開ける。それを利用しようと思って作ったのが、『どっちがへん?』などの絵本だったんですよね。

 そんなふうに、本の形はそのままでも、アイデアによってはまだまだいろいろできるんじゃないかって思っています。


―― 今後、どんな考えが出てくるか、その辺りも楽しみにしていていいんですね。

 そうですね。でも一方で、普通の絵本もいいなと思い始めてるんです。先ほども言いましたが、僕には絵本を読み聞かせしてもらった記憶があまりないんです。でも、逆に僕の父は本も何も使わずに布団の中で寝る前にお話をよく聞かせてくれたんですね。しかも、それは父の創作童話でした。レパートリーがいくつかあって、姉が3人いたので、4人めの僕の時には、たぶんかなり話し方もこなれていて(笑)。僕はもう、毎晩すごく楽しみにしていたんですよ。そんなことができた父はすごかったな、というか、今はすごく感謝しているんです。そういう体験があるので、僕も父には負けられないと、娘と一緒にお風呂に入る時は即興でお話を作って話したりするんですよね。

―― 私も息子に言われてやっていたんですけど・・・かなり難しいですよね。

 僕も苦手だったけど、だんだんできるようになりましたね。もちろん、毎回面白い話にはならないかもしれないけど、即興性があるからこそ、子どもは喜んでくれるんですよね。例えば、子どもに3つ何かを言ってもらって、それをつないでお話を作る三題噺みたいなもの。大変だけど、実際やってみると思いがけない物語が生まれたりして、僕自身にもいい訓練になってます。
 口に出す、耳から聞く話っていうのは、読むのとはまた全然違いますよね。無駄がなくて。文字で書いちゃうと、かなりそぎ落としたと思っても、あとから無駄がいっぱい見つかるんだけれども、即興で語る言葉って、その場で子どもがあっち向かないように一生懸命やるからいいのかもしれないですね。


―― 絵本作りのヒントが隠されていそうですね。

 こんな風にいまやっている事が、もしかして将来絵本につながるかもしれませんよね。これまで使ってなかった部分を自分からどれだけ掘り起こせるかということでも、僕は今、すごく新鮮に絵本というものと向き合っているというか、可能性を感じているんです。45歳ぐらいから急に絵本を描くことになったんですが、まだこんな人生が自分に待っていたかと思うと、面白いですよ。また新たなスタート地点に立ったみたいで。


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―― ありがとうございました!


<最後に・・・>
理路整然と話される岩井さんを前に、少し緊張。でも、子ども達の素晴らしさについて話される時のほころんだ表情に嬉しくなって、ついつい長い時間お伺いしてしまいました。
岩井さんと絵本。今後どんな風に向き合われていくのか本当に楽しみです。

2010年02月25日

「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」
丸善ラゾーナ川崎店さんでワークショップが開催されました。

先日(2010/1/17)の日曜日、丸善ラゾーナ川崎店さんで
「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」という
ワークショップが開催されるという事でお邪魔してきました。
丸善ラゾーナ川崎店さんは、この「みんなの100かいだてのいえ」というワークショップを
一番最初に開催されたお店だそうですよ。

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「100かいだてのいえをつくろう!」ワークショップ会場はこちらです。

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机の上にはペンやはさみなど。
そして、一人二部屋描ける専用の紙が用意されています。

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さあ、岩井俊雄さんの登場です!
「この絵本、読んだことあるひとー?」

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「この『100かいだてのいえ』みたいに、みんなも好きな部屋を描いてください。
必ず上と下の部屋につながる階段もつけてくださいね。」
今回は、「冬の100かいだてのいえ」をみんなでつくることになりました!
「お父さんやお母さんも一緒に描いてみてくださいね。」

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早速スタートです!
「うーん、冬と言えば何だろう・・・。」


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一所懸命考える子、手がどんどん進んでいく子。お母さんも真剣です。


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時間が経つにつれ、集中力が増していく子どもたち。


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終わりの時間が近づいてます。ここにもうちょっと描き足して・・・。


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終了~!!
「みんな出来た作品を前に持ってきてくださいね。」

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一枚ずつみんなが描いた部屋をつなげていきます。

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どんどん長くなります!

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「これ、わたしの!」「これ、ぼくの!」

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みんなの描いた部屋を順番に見ていくから、並んで座ってね。

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部屋を暗くして、カメラが乗った台をコロコロ動かしていくと・・・?

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うわー、みんなの部屋が大きく映りました。
 
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岩井さんが、描いた子に質問をしたり、感想を言ったりして、一部屋一部屋紹介してくれます。
思いがけないアイデアが次々と飛び出します。
「かわいいー!」「おもしろい!」「なるほど。」かなり盛り上がりました。
 
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最後に岩井さんが描いた屋上がのって・・・「みんなの冬の100かいだてのいえ」が完成!!
ジャーン!こんな立派なうちが建ちましたー↓
 
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雪がたくさん降ってますねぇ。中には、どんな部屋があるのでしょう?
大きく載せてみました。細かくご覧になりたい方はこちらからどうぞ>>>

2010年02月24日

みんなでつくった「冬の100だてのいえ」が完成しました!

丸善ラゾーナ川崎店さんで行われた、
「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」
というワークショップで、参加された皆さんが描いた作品が全部つながった
「みんなのいえ」が完成しました。テーマは「冬のいえ」です。

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2010年02月10日

『でも、わたし生きていくわ』
翻訳者柳田邦男さんにインタビューしました!

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砂漠でみつけた一冊の絵本』『大人が絵本に涙する時』など、「大人こそ絵本を」という呼びかけを広く行っており、また近年絵本の翻訳にも力を入れてらっしゃるノンフィクション作家柳田邦男さん。
その柳田さんがこれまで翻訳された絵本の中でも、最も心を揺さぶられた作品の一つだとおっしゃっているのが昨年の11月に発売されたばかりの新刊『でも、わたし生きていくわ』(文溪堂)。訳しながら涙が止まらなかったということですが、一体どんな内容の絵本なのでしょう、そこにはどんなメッセージが込められているのでしょう。

今回、絵本ナビでは柳田邦男さんへのインタビューが実現、仕事場にお伺いしました。

とんでもなくお忙しい日にお邪魔してしまった我々一同に、始まりは少しバタバタしながらも、一度絵本の話になるととても情熱的にメッセージを語ってくださった柳田さん。
子ども達の「心の成長」について、「いのち」について、真摯な言葉の数々に思わずこちらが涙してしまうシーンも・・・。

その深く温かいメッセージをじっくりと味わってください。

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柳田邦男(やなぎだくにお)
1936年生まれ。ノンフィクション作家。現代人の「いのちの危機」「心の危機」をテーマにドキュメントや評論を執筆する傍ら、心の再生のために「大人こそ絵本を」のキャンペーンを展開。エッセイ集『砂漠でみつけた一冊の絵本』(岩波書店)『大人が絵本に涙する時』(平凡社)『みんな、絵本から』(講談社)や、翻訳絵本『エリカ 奇跡のいのち』『ヤクーバとライオン』(ともに講談社)、『だいじょうぶだよ、ゾウさん』『くもをおいかけてごらん、ピープー』(ともに文溪堂)などで、子どもの心の発達についてのメッセージを発信し続けている。



■ 『でも、わたし生きていくわ』に込められたメッセージ     



―― 突然の両親の死というショッキングな出来事で始まる『でも、わたし生きていくわ』。この絵本に最初に出合われた時の印象を教えて頂けますか?

 以前、文溪堂の『だいじょうぶだよ、ゾウさん』と『くもをおいかけてごらん、ピープー』というローレンス・ブルギニョンさんの作品を訳したんです。その二冊を出しているベルギーの出版社から出ているって事でこの絵本にも出合ったんです。

 僕は絵本を読む時に、そこに心を動かす決定的な言葉なりシーンなりがあると「これはどうしても訳したい」っていう気持ちになるんです。この作品は、子どもの心が一段階成長したり、あるいは何かに気づいたりする、そこのところがすごくよく描かれている。子どもの心っていうのは、なんとなく漫然と1日ずつ大人になっていくんじゃなくて、何か出来事とか出会いとか言葉とか、そういうものに遭遇することによって、階段をぽんっと二段ぐらい上がるような形で成長するんだと思うんですよね。そういう心の成長なり発達なりが、見事に描かれている。そういう場面があると、この絵本作家の伝えたいことっていうのがズシーンと胸に響いてくる。それで訳したくなるんだ。


Ehon_30317%20%281%29.jpg 『でも、わたし生きていくわ
                   (コレット・ニース=マズール作 エステル・メーンス絵 文溪堂)
両親の死で、7歳のネリーは幼い弟妹と別れて引き取られる。そこで温かく迎えられ、週末には3人一緒に過ごせるようになるが…。両親を亡くした幼い3人姉弟に周囲は温かい。しかし、優しさに触れれば触れるほど、何かの瞬間に甦る喪失感は深くなってしまう。その悲しみを乗りこえた時、人は大きく成長します。


―― まず作家のメッセージを感じ、それをどう表現するかという事なんですね。

 そう、それがとても大事なことで。『でも、わたし生きてくわ』の主人公ネリーは両親が亡くなってしまうという大変ショッキングな不幸に出合う。しかも幼い弟、妹がいる。そういう中で長女であるネリー、まだ7歳で、大変な経験だと思うんですよね。だけど、そのネリーを支えて再生させたものは何なのか。再生させるところまでネリーの気持ちを持ち上げていった結果何が生まれるのか、それがこの絵本で語りたいところなわけです。

 それがもっとも象徴的に語られてるシーンというのがここ。
<ときどき、夜になると、あの事件がおきるまえの日々のことを思いうかべるわ。パパやママがいまもいたら、どんな毎日になってるだろう。思わず涙があふれるけれど、そのうちねむってしまう。悲しみは消えないけれど、いま、わたしは、しあわせ>


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 この、思わず涙があふれ、だけど眠っちゃうっていうの、本当に子どもらしいと思うのね。大人だったらもう夜を徹して、まんじりともしないで泣き明かすようなところが、子どもだから寝ちゃうの。寝ちゃうからって悲しみがなくなるわけじゃなくって、消えない。でも、幸せって言って・・・この矛盾ね。矛盾は矛盾じゃないんですよね。子どもであれ大人であれ、人間の心っていうのは対立するような感情なり矛盾するような感情が同時にあるのが自然な姿で。
 そういう喪失体験があったときに、悲しいし、ショックも受ける。だけれどね、子どもっていうのはものすごい順応能力があって、まわりが優しく支えてくれると、すぐに遊んだり、歌ったりできるようになるのね。だから、「悲しみは消えないけど幸せ」と言えるほど前向きに生きられるまで持ち上げていくということが、真の癒しであり、子どものケアにとってはとっても大事なこと。そのことをここでは端的に表しているんです。


―― この絵本の中でとても印象的だったのが、ネリーを取り巻くまわりの人達の優しさです。

 そうですね。ここの親戚のおじさん、おばさん達がものすごく優しいし、クラスメートもとっても心配して。時には「優しすぎて変に感じるときがある」なんて言ったりしてね、ここの表現はすごくおもしろいよね。こういう風にまわりのみんなが支える。「しっかりしなさい」とか「頑張れ」とかって言うんじゃなくて、本当に優しく、その子なりに生きられるように支える、それが条件なのね。その結果、悲しいのだけれど毎日が生きられる、明日も生きられると言えるようになるんです。


―― そして生まれたものというのは・・・。

 最後のシーンでネリーは、窓辺で遠くを見ながら、自分が大人になったら、窓やドアがたくさんあって、どんな子でも入って来られるそういう家をつくりたい、大きい子でも小さい子でも誰でも入ってきて「私の家族よ」って言って抱きしめてあげるの、と思いをめぐらせるんです。これはすごいことですよね。
 自分自身が親がいなくなって、そして親戚に預けられた。だけど、おばさんもおじさんも自分の子として扱ってくれる。単に、義理で預かってるんじゃなくて。
 例えばここの場面、髪の毛を自分で切って、とんでもないざんばら髪になっちゃっておばさんに怒られる。その時に泣いて「ママー」って言ってね、おばさんじゃなくて自分の死んだママに対して「ママー」って言っちゃったんだよね。そしたら、おばさんが怒っちゃうわけ。「なんでママに助けをもとめるの?私がママよ」って言ってね。「もうあなたは私の子よ」って言って抱きしめてくれるんだよね。

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 そのぐらいの支えがあるから幸せって言える。その経験があるから、自分が今度、大人になったらおばさんの様にどんな子でも受け入れて自分で育てるって言う。そういうような開かれた家庭、血のつながりじゃない、幼い子は万人の子なんだって、そういう意識につながっていく。
 それを生み出すものっていうのは、落ち込んだり悲しんだりしてる子どもが、そこで閉じこもらないで開かれた心になるように支えてやる、ってこと。ここでの「おまえはもう私の子なのよ」っていう支え方っていうのが結局その子の人生を決めちゃうわけですよね。悲しみを乗り越えて、そして自分の人生を切り開いていくような強い心を持てる、それがこの子にとっての決定的な成長になる。恐らく、階段でいえば3段も4段も一気に上がるようなものだと思うんですけどね。
 そういうようなことがすごくよく描かれているんです。


―― 今のお話を聞いていて、子どもが成長していく瞬間を見るっていうのが、大人にとってはすごい心を動かされる、揺さぶられる瞬間なんだっていうことに気が付かされました。

 ええ。だから、もう、これね、訳しながら何回涙が出ちゃったか。
(絵本の中の)「訳者のことば」にも書いたけど、今の子って自己肯定感を持ってない子や自尊感情の持てない子がすごく多い。3割位いるっていうね。そういう時代に、この絵本を子どもたちに読んでほしいと同時に大人たちに読んでほしい。自己肯定感を持てない子のお尻たたいたって駄目なんですよね。「しっかりしろ」って言っても駄目なんです。その前に自分自身が本当に目覚めていくような優しい包み方、そういう中から再出発できるんだよってね。


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―― 『でも、わたし生きていくわ』というのは少女ネリーの強い意志を感じる、印象的なタイトルですね。また、表紙の絵にもこだわられたと聞いています。

 原題はフランス語なんですけども、英語だと『Since that day』、つまり、お父さん、お母さんが突然居なくなっちゃった日以後の話って。なんか小説的タイトルですよね。
 自己肯定感の持てない子どもたちへのメッセージとして、生きるっていうこと、どんなつらいことがあっても生きるっていうこと、それを伝えたいっていう気持ちで、こういうタイトルにしたんです。

 僕自身が小学校の4年の時、終戦の翌年ですけれど、父親が亡くなって、貧困になって、そして兄弟が多かった。当時の家族ですから。もうみんなティーンエイジャー時代から自分で働く、働かなきゃ食えないっていう、そういう中で生きて。だから僕は苦労することとか境遇が恵まれないってことは、むしろプラスに評価するように人生観が持てたんですよね。それをばねにして生きていく。そういう僕自身の背景もあって、人間って本当に強くなるなり、あるいは自分の人生を開いていくっていうのは、逆境のほうがむしろいいんだっていうぐらいの気持ちでこの本をすすめたいと思って。

 実は表紙もね、この絵がいいと思って直前で変えてもらったんですよ。日本には表紙カバーというのがあるからね、こういう形で実現できたんです。このネリーの顔、この目がね、未来を見つめる目がいいんです。どうしてこれだけの悲劇から、こんなに未来を見詰める目が生まれてくるかっていう、象徴的な顔なんだ。生き生きとしてさ、「わたし生きていく」っていう、決意がここに表明されてる。


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▲表紙カバー取ると違う絵になるんです!カバーの絵は柳田さん自身が選ばれたそう。



■ 「死」をテーマにした絵本について     


―― 『わたし、生きていくわ』という作品には「死別」というをテーマが含まれていますね。他にも「死」や「いのち」というものをテーマにした絵本というのがあります。自分自身、それらを読む事によって様々な事を考えさせられたりしています。それで、大人というのは自分の意思で読む事ができると思うんですけど、子どもたちにこの様なテーマの絵本をどのようなタイミングで読んでほしいかとか、どういう触れ合い方をしてもらいたいというのがあれば一番お伺いしてみたかったのですが。

 ええ。あのね、僕は非常にショックを受けた場面があるんです。
 ある絵本原画展で、その会場の前にいっぱい絵本が並んでいてね。その中にイギリスのスーザン・バーレイの『わすれられないおくりもの』(小川仁央・訳 評論社)っていう絵本があって。それを子どもが手に取って、興味を引かれて読み出していたのね。それで「これ、欲しい」って言ったんです。小学校の1年生か2年生ぐらいの男の子だったかな。そしたら、お母さんがね「それ、嫌い」って言ったの。「だって、死んじゃうんでしょう」って・・・。僕は、そのシーンを見ててすっごいショックだったのね。このお母さん、誰のために絵本考えてるんだろう、何だろうってね。「死んじゃうんでしょう、そんなのいや、嫌い」って。もう僕はがっくり来たんだけどね。


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僕のエッセイの中でも書いているんだけど、『わすれられないおくりもの』っていうのは、細谷亮太先生(聖路加国際病院副院長 小児総合医療センター長)の病院に入院された2歳半の子が亡くなった時に、細谷先生がそのお姉ちゃん、お兄ちゃんに読んで聞かせてあげたそうなんです。そしたら今まで弟の死を理解できなかったお兄ちゃんとお姉ちゃんがね、しっかりそこで涙を流して看取ってお別れもできたって言うんです。それだけじゃなくてね。その時小学校に上がる直前、6歳だったお兄ちゃんが、弟を失った体験、その絵本を読んでもらって涙を流した体験っていうのをずーっと誰にもしゃべっていなかったの。
 ところが5年後、5年生になって本当にしゃべってもいいような気心の通じる友達に出会えたので、初めて話したそうなんです。そうしたら、友達が涙を流してくれたって言うのね。で、話して良かったと思った。自分も弟のことを1日も忘れたことないし、あの絵本を思い出すと悲しくて涙が出るって。それは、彼にとってはものすごく大事な心の成長につながったわけですよ。ただ漫然と弟がいなくなっちゃった、死んじゃった、そして月日の中で忘れていくっていうんじゃなくて、細谷先生がそれを読んだことによってものすごく深く刻まれて。
 絵本ではアナグマさんが年をとってあの世へ行ってしまうのだけれど、みんな忘れない、心の中では生きてるっていう構造を彼もそこで気付いたわけですね。それを胸に刻んでるから5年経ってもいまだに毎日「(弟が)天使の姿で現れる」って言うんですよね。だから、そういう別れとか死別っていうのも、子どもにとっては大事な経験だし、ある意味では一番大事な心の成長につながる経験なんじゃないかと思うんですね。

ehon133_a.jpg 『わすれられないおくりもの』 (スーザン・バーレイ作 評論社)

 別れや死別、というのをテーマにした絵本というのは確かに悲しい話ですよね。
 小学生の男の子でね、悲しい場面が出てくるととにかく泣いて先が読めなくなっちゃう、という子がいたんです。『だいじょうぶだよ、ゾウさん』とか、他の幾つかのそういう別れの場面のある絵本だとか。だからそういう本を読ませられないって言って親御さんは頭を抱えてるんだけど、僕はそれはそれでいいと思っているんです。きっとその子は感性がものすごく鋭いんだろうと。人の10倍ぐらい感じて、読めなくなるぐらい悲しくなっちゃうんだと思うけれど、いつかね、そういうのを乗り越えられる日が来るから。
 ただ「この子は泣いちゃうからこの本は読ませない」というのはやめたほうがいいです。むしろ、強制的に読ませないとか、無理に読ませるとかってそんなことじゃなくて、自然に段々そういうものを受け入れていくようにね。感性が鋭くて先が読めないぐらいだった子が、それを受け入れられるようになった時っていうのはすごい心の成長になるわけだからね、とても大事な経験になるはずだと。
 そういう目で接したほうがいいんじゃないの?って言ってあげたんですけどね。


── 読みきかせている方が泣いてしまうかもしれません。

 読み聞かせっていうのは絵本にとっては不可欠で、買って与えるだけじゃ絵本にならない。やっぱり、親が肉声で感情込めてやるのよ。読み方っていうのは自己流でいいと思うんですね。あまり感情を込めずに穏やかに読むといいって言われている事もあるけど、僕はそう思わないんだな。親子っていうのは感情を共有することが大事で、だからお母さんが泣けばいいんですよ、一緒になって。「あ、お母さんも泣いてる」とか「お父さんも泣いてる」とかって。それでいいんだろうと思うんですよね。

 『だいじょうぶだよ、ゾウさん』を学校で担任の先生が読み聞かせしたらね、途中で先生が泣いて行き詰っちゃったらしいの。そしたら、クラス中にどよめきが起こったって。子どもにとって、先生が読み聞かせしながら泣いちゃって言葉が続かなくなる、っていうのはすごいショッキングな経験だと思うんですよね。それでいいんだと思うの。「ああ、先生も泣くんだ」って。その中から、自分の心が、感性なり感情なりが、非常にきめ細かく育っていくんだと思うの。


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■ 翻訳したいと感じる絵本について     


―― 今までも様々な絵本を翻訳されてきた柳田さんですが、それぞれの作品の最後に必ず「訳者のことば」というのが記されていますよね。どの様に翻訳する絵本を選ばれるのでしょうか?

 ただ漫然と絵本なら何でもいい、楽しければいいとかじゃなくって、僕が訳すってなんだろうってなって考えるんです。

 僕は絵本作家でもないし児童文学者でもない。だけれど、今の日本の状況を見ていて、子どもたちの成育環境っていうのは本当に劣悪だと思うのね。親子の肉体的な接触、スキンシップ、そういうものが非常に希薄になっている。核家族化が進む中、マンションの中で子どもが孤立している。あるいは、母子が孤立している。そういう状況下で、子どもの心っていうものの成長が怪しくなってきて、ゆがみやすくなってきてる。それが僕が時代を見詰めたり、世の中の事件を見たり、あるいは時代の変化を見てると、もうすごく深刻な問題だなあって思ってるわけですよね。そっちから、絵本にアプローチしているんです。
 もう一つのアプローチとして、大人自身の心に潤いを取り戻さないといけないという思いがある。大人自身の心が枯れてるから、非常に索漠としてる。よくいわれるようにお金と物に振り回されてるみたいな。もうちょっと踏みとどまって自分を見つめてみましょう、と。あるいは、中高年になって病気をしたりとか、人生思うようにいかなくなったりした時にもう一度「生きるってなんだろう」とか「大事なものはなんだろう」とか考える上で、絵本っていうのは意外に普遍的なものを教えてくれる。気づかせてくれる。そういうアプローチと、僕には2つあるんですね。

 そういう意識があるから、この絵本は何を伝えたいんだろうかと考え、その伝えたいテーマなり、エピソードなりが僕の問題意識にピンと来るものに限定してるんです。編集者から作品を持ち込まれたり相談される事は多いのですが、お断りする例も多いんです。で、ピンっとくるものがあると「あ、これは訳したい」と思う。

―― 大きなきっかけとなった作品の一つが『エリカ 奇跡のいのち』なのだとか。

ehon9027.jpg 『エリカ 奇跡のいのち
(ルース・バンダー・ジー作  ロベルト・インノチェンティ絵 講談社)

 僕は翻訳始めて7~8年になりますけれど、その最初の頃、講談社で『エリカ 奇跡のいのち』っていう絵本を訳したんです。
 第2次世界大戦中のドイツで、収容所に向かう列車の窓からせめてこの子だけはと投げ捨てられた赤ちゃんが、農家の優しい女性に拾われて奇跡的に助かったというお話です。

 <お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。>という原文を読んだ時、ぼくは震えるような思いがしたんです。子育てがいいかげんになってる今の時代だからこそ、もう一度生きるか死ぬかの原点に戻って、子どもに対してどういう向き合い方をしなければいけないか考える。こんな強烈なメッセージはないと思って、それで「訳しましょう!」って言ったんです。
 そのとき一番苦労したのは、今はもう自分で孫もいるような主人公エリカという女性が、旅行中だったアメリカの女性に顔も知らない実の母の気持ちを推測しながら話をする。その綿々とつながる言葉ね。これをどう訳すかっていう文体が、おそらくこの絵本の成否を分けるだろうと。母の愛のすごさというものが伝えられれば、時代を超えて伝わっていくに違いないと。

 この絵本を訳してから、日本の親たちや子どもたちに「これは今伝えたい」というものがある作品に限定していこうと思ったんです。


―― 「伝えたい」という意識を持って絵本の翻訳をされるのでしょうか?

 『だいじょうぶだよ、ゾウさん』でもね、すごく意識的に原文直訳じゃなく、僕の言葉で訳しているんです。
<ネズミはいまや心の成長をし、前のように怖がらなくなっていました。>
 ここは原文にはないって言ってもいいような訳なんです。だけど、絵本の言葉っていうのは、ものすごく省略した、いわば研ぎ澄まされたエッセンスといっていいわけで、それを日本語に置き換える時には、言葉の背景にある作家の思想なり、あるいは作家が伝えようとしたものを読み取って、じゃあそれはどのような文体や言葉にしたら読者に伝わるかっていう、そういう考え方をしないと、いい翻訳にならないんですよね。


ehon8523.jpg 『だいじょうぶだよ、ゾウさん』 
(ローレンス・ブルギニョン・作 ヴァレリー・ダール・絵 文溪堂)
年老いたゾウは自分の死期を悟るが、一緒に暮らしていたネズミはそれを受け入れられない。しかし幾つもの季節を重ねるうちにネズミも成長して…。

 この作品で大事なのは「心の成熟や成長とかっていうものは時間経過の中で生まれてくる」、そこが描かれているということ。そうすると、心の成長という問題が別れの場面でとても大事になる。それをどういうふうに表現したらいいか。どの瞬間に言ったらいいかっていうのを考えて、翻訳したんです。
 もう一つは、旅立つゾウさんが心置きなくつり橋を渡っていく、つまり死を受容し、人生に納得して、何も恐れや不安がないということ。そのつり橋が壊れていたんでは、痛みや苦しみで、本当に人格を失うようなことになる。それを直すっていうことは、言うならば緩和ケアをするわけですよね。痛みも苦しみも不安もなく渡っていけると。その時に、いったいゾウさんの心模様なり、見送る者の心模様というのはどんな言葉だろうかと。
 原文では「fine」という言葉を使ってるんですよね。「fine」って何なんだってね。「いい橋つくってありがとう」って、そう言ってるんじゃないんだよね。要するに旅立ちというものの全体、つまり不安や恐れもなくあの世に行ける、そしてあの世へ行っても、そこには安心立命の地があるという、この全体を指して言ってるわけね。それを子どもにも分かる一語で表現したら何だろうかって、考えて、考えて、考えて、1カ月考えて。「だいじょうぶ」っていう言葉にしたんです。
 最後にゾウは振り向いて答える「こわくなんかないよ。だいじょうぶ」、こう言ってるんだよね。


―― 昨年には『でも、わたし生きていくわ』も含めて4冊も翻訳されているんですよね。それぞれの作品の、翻訳者から見たみどころというのを教えて頂けますか。

 ええ、それはもうさっき言いましたように、私自身の問題意識やテーマ意識にぴたっと来る、そういう本がたまたまあってね、4冊も抱えちゃって。
 それぞれ絵本の山場というか、メッセージを発している大事な場面というのが、一つか二つかあるんですね。そこをしっかり押さえて翻訳していくんです。

Ehon_30198.jpg 『その手に1本の苗木を』 (クレア・A・ニヴォラ 作 評論社)

 例えば「もったいない」運動で知られるようになったケニアのマータイさんの伝記絵本『その手に一本の苗木を』で言うと2箇所あるんですね。
 1つは、若き日にアメリカに留学したマータイさんがシスターである教師から「自分のことだけをかんがえるのではなく、もっと大きな世界のことを考えなさい」と教えられた。アフリカのケニアの農村地帯からアメリカへ行って、キリスト教的な世界の一つの人生観というものに触れたということは、大きなインパクトだったと思うんですね。それがマータイさんの一生を決めることになる。だから、それをケニアという国でどう生かすかという姿勢がはっきりとできるんですね。
 それと同時に、留守にしていた5年の間でケニアの国土がガラッと変わっていた。商業農業が入って来て、古典的な自然の森や作物を大事に育てていたというものが大量生産で一面森が切り払われている。砂漠化し、貧困と健康被害が広がっている。その様変わりを見て、マータイさんが意を決して植樹運動を始める。グリーンベルト運動を女性達に呼びかけるんです。最初は失敗してなかなかうまくいかないのだけれど、マータイさんはひるまずにやる。第二の山場っていうのが、失敗してもくじけないで続けるという、継続は力なりっていうこと、それがきちっと描かれてるんだよね。

 タイトルとして非常にヒントになったのは、刑務所や軍隊に行ったりまでして植樹をキャンペーンした時に、その兵士たちに「あなたたちは両手でこう銃を持ってる。何を守るんですか?」と呼びかける。「風が吹き雨が降るとこの国の大地が失われていく。銃は右手に持ち、左手に1本の苗木を持ちなさい。」って説くんです。これが一番タイトルにアピールするだろうと思って。軍隊相手っていうよりは、すべての人、仕事をする人でも誰でもいい、とにかく右手で仕事をし、左手に1本の苗木を持ちなさいって、そういう意味でこのタイトルを僕がつくったんですよ。原題は『Planting the trees of Kenya』(ケニアに木を植える)って言うんですけどね。

Ehon_29363.jpg 『少年の木』 (マイケル・フォアマン・作 岩崎書店)

 戦乱の瓦礫の中で暮らす少年が主人公の『少年の木 希望のものがたり』は何を描いているのか。この瓦礫の中にあっても、小さな植物の芽、あるいは命の芽に対して水やりをする。空き缶にたまった雨水で。この少年のピュアな気持ち、感性、大切さみたいなもの、そこからすべて再生のエネルギーが出てくるんだっていうことが、この本の中で一番大事だと思うんですね。
 だから「しっかり飲んでね」っていう言葉、これがとても大事だったんですね。この「しっかり」っていう言葉、ずいぶん翻訳で考えたんですけどね。
 それともう一つは、いったん育ったブドウ園がまた兵隊に引き抜かれちゃう。そのときの涙ね。くじけそうになる涙。でも次の年、再び大自然の力で芽が出てきたときに、希望を取り戻してブドウ園をつくっていくんです。マータイさんと同じですね、失敗しても立ち上がる、というこの2つ。命に対する本当にピュアな感性、そこからすべてが始まるということと、挫折しても立ち上がるっていうこと。ドストエフスキーの言葉で「1人の子どもの涙は地球より重い」って言葉がありますけれど、本当にこういう涙を流した少年がもう一度立ち上がるっていう、その大切さっていうのをよく描いてるなと思うんです。
 
Ehon_30294.jpg 『やめて!』 (デイビッド・マクフェイル 作 徳間書店)

 それから、特殊な表現で言葉のない絵本『やめて!』。原書は『NO!』です。
 暴力なり嫌なことに対して「嫌だ」と言える。単に自分が身を引く「嫌だ」じゃなくて、はっきり「やめろ」という能動的な拒否、戦争や弾圧で委縮した国家に対して「やめて!」と言うこと、それが世界を変えるんだということ。それを非常にシンボリックに表現している。
 不良少年になぐられそうになった幼い少年が叫ぶ「やめて!」、その瞬間から世界が一変している。この不良少年も一瞬びっくりして殴れなくなっちゃう。秘密警察は穏やかな市民を守る立場に変わり、そして兵隊たちは弾圧じゃなくプレゼントを持ってくる。戦車は破壊ではなくて農耕の手助けをする。飛行機は爆弾じゃなくてプレゼントを落としていく。しかも、それが不良少年と二人仲良く一緒になって遊べるよう自転車で。そういうように世界が変わるっていうこと。そのためには、とにかく暴力、戦争をやめるという、その意思表示が大事なんだっていうメッセージを、これほど強烈なイメージで語った絵本はこれまでになかったんじゃないかと思う。

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ヤクーバとライオン(1)勇気』『ヤクーバとライオン(2)信頼

 これは一昨年になるけど、講談社から「ヤクーバとライオン(1)(2)」っていう2冊を訳しました。絵の構成として、モノクロで非常に空白の多いユニークな絵本ですね。
 これも、暴力に対してはっきりと拒否する。非常に大事なのは、意思表示の大切さ。手負い傷のライオンと向き合ったとき、「本当の人間の気高さって何か」「人間の精神性って何か」ていうことをライオンが語りかけてくる。そこで少年が気付いて、そのライオンの命を奪うことをやめる。つまり、自分の名誉のために相手を殺すというようなことをやめるっていう、暴力否定の表現。
 その背景には更に「本当の勇気ってなんだろうか。相手を倒すことだけ、それが勇気なのか。自分が強くなることだけが勇気なのか。本当の強さっていうのは、それは踏みとどまるところではないか」と、哲学的な問いをしてるんですね。
 その中の「おまえには2つの道がある。」という一文は、僕が付け足した言葉なんです。殺すことを勇気とする立場と、自分は村八分になっても殺さないという真の勇気と、これをはっきりと読者に分かってほしい。そのために、ここで文脈をいったん止めて、メッセージ性を強くしたんです。原書でもこのライオンの言葉だけのページをつくってるんですね、相当意図的に。それを生かす為にもこういう訳し方をしたんです。

 これね、僕は喜んでいいのか、小学校で道徳の時間でこれ使ってるそうなの。先生は道徳の時間はいい意味で使ってくれてるんだなっていうことで、僕は感謝してるんだけれど、それはそれでいいと思うんですよ。だから、道徳なり、あるいはいわゆる自由時間なり、そういうとこで使って。そうするとね、やっぱりいじめた側に入ってた子どもが気付くと思うんですよね。


―― 翻訳された絵本を並べてみると見えてくること。

 翻訳した絵本作品全体を通して、どうしてこういうものが僕の視野に入ってくるか。
 幼少期から少年期に至る中で、子どもはそれぞれ発達段階がある。最初は親離れ、乳離れをしていき始める。そして自分で歩き出す。その次には今度は知的興味、好奇心が出てくる。それに対してどういうふうに応えていくか。他者に対して優しさとか、思いやりの気持ちを持つとか、本当の勇気とはなんだろうか、とか。例えばいじめという問題が起こったときに、いじめるグループに入っていれば自分の身は守れるけれど、必ず犠牲になる者が居る。そのときに、自分はどっちに属するのかみたいな、そういうことを問い掛ける。暴力否定なり、他者を犠牲にして自分だけがっていうのを否定していく、そういうのは本当の意味で人格形成の一番大事なところに行くわけですよ。

 僕の翻訳した絵本を全部並べるとね、成長段階のステージにそれぞれ全部合うようになってるんです。文溪堂で出した『くもをおいかけてごらん、ピープー』なんてね、子どもが最初に地面に足を付けて歩き出すときを描いていて、それが象徴的に自立への第一歩。それに始まって今ね、訳した本が14冊になったかな。14冊並べると、全部こう一列に並ぶ。最後にはこの死別というものにどういうふうに向き合うかっていくかという『だいじょうぶだよ、ゾウさん』があるんですね。


―― 今後もピンっとくる絵本があれば?
はい、翻訳したいと思っています。今も色々とね、検討中です。

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■ その他柳田さんの幅広い絵本活動     


絵本の紹介や、絵本の翻訳の他にも、絵本普及活動の為に様々な活動をされている柳田さん。そのほんの一部をご紹介しますと・・・。

●『みんな、絵本から』
柳田さんが子どもの成育環境への危機感と共に、10年間取り組んできた絵本とメディアと子育ての問題についてのエッセンスをまとめた本がこちら。

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みんな、絵本から

子ども達の「ノーケイタイ、ノーゲーム、ノーテレビ」を呼びかけながら、一方で絵本「読み聞かせ」が子ども達の心の成長をいかに促してくれるかというのを
<絵本「読み聞かせ」のすごい力10か条>
と、明確にあげています。
子育てに悩んでいる方、共働きで一緒にいる時間が少ない母親にとっても、とても心強いメッセージとして受け取ることができるのです。

●「柳田邦男絵本大賞」
絵本の普及活動の為には、自治体や教育委員会や学校などにも具体的にどんどん働きかけていくという柳田さん。大きく反応してくれる所も少なくないそうです。
例えば、福島県の矢祭町という所では、町をあげて絵本キャンペーンというのをやっているのだそう。去年の12月には第1回矢祭町絵本大賞というのを作って全国から手作り絵本を募集、「子ども読書の街・ふるさと人づくり」という大会が開催されたのだそうです。「とても素晴らしい作品が集まったんですよ。」と嬉しそうに語られる柳田さん。表彰式にも出席されて、作品を読み上げたり、子ども達と語りあったりされたそうです。
更に、読書推進活動が盛んな荒川区でも「柳田邦男絵本大賞」なるものが創設され、柳田さん宛の手紙という形で絵本の感想文を全国から募集したそうです。「子ども達の感想文に感動しちゃいましたね。」と柳田さん。「今度は僕の希望でね、受賞した最優秀と優秀の子どもたちに壇上に上がってもらって、僕と対話をしようという、そういう場をつくることにしたんです。」と今後の展望も語ってくださいました。

●映画『かぜのかたち』
小児がんの子ども達のサマーキャンプの10年間の記録を撮った映画。伊勢真一監督。
自主映画で最初は一日だけのロードショーだったところを、細谷先生や柳田さんの働きかけもあって各地で上映されるようになったのだそう。


その他にも様々な取り組みに積極的に参加されていて、本当にパワーにあふれている柳田邦男さんなのです。
長い時間ありがとうございました!最後に記念に・・・


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<取材を終えて>
 本文では紹介しきれないほど、絵本と子ども達にまつわる沢山の興味深いお話を、熱く丁寧に沢山語ってくださいました。特に、ノンフィクション作家である柳田さんらしく、事例を沢山交えて話してくださり、その説得力にただただ頷いてしまう取材陣なのでした。
 私達にできることと言うと、その一つ一つの真摯なメッセージを真正面からきちっと受けとめていくという事なのかもしれません。

 でも・・・絵本の面白さについて語る時の、子ども達の素晴らしさについて語る時の、柳田さんの心底嬉しそうで優しい笑顔は私の心の中に大切にしまっておこうと思います。

2010年02月03日

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ぶたが木にたわわの名場面を生み出した佐々木マキさんの大人気作品『ぶたのたね』
それから16年が経って続編『また ぶたのたね』が再登場した時は本当に驚きました。
今度は(わずか?)4年の時を経て再々登場の第3弾『またまた ぶたのたね』!!


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 「ぶたのたね」       「また ぶたのたね」   「またまた ぶたのたね

あれからおおかみはぶたを食べることができたのでしょうか・・・?
※各絵本の内容詳細は表紙画像をクリックしてください。

今回、その最新作の発売を記念して「ぶたのたね」シリーズ作者の佐々木マキさんよりコメントを頂くことができました!!

また、「ぶたのたね」シリーズを始め、佐々木マキさんの魅力的な絵本を数多く出版されているのが絵本館さん。その絵本館編集長有川裕俊さんが、『またまた ぶたのたね』の発売までの貴重なエピソードや佐々木マキ作品の魅力について熱く語ってくださいました。

絵本ナビ読者の皆さんに、是非じっくりと読んで頂きたい興味深い内容となっています。お楽しみください!


■佐々木マキ(ささきまき)
1946年神戸市生まれ。絵本に『やっぱりおおかみ』『まじょのかんづめ』『おばけがぞろぞろ』『くりんくりんごーごー』(以上福音館書店)、『変なお茶会』『ピンクのぞうをしらないか』『はいいろこくのはいいろひめさま』『ムッシュ・ムニエル』シリーズ(以上絵本館)、『やまからきたペンギン』(フレーベル館)、『ねむいねむいねずみ』シリーズ(PHP研究所)、『おばけのばむけ』(教育画劇)など。童話に『なぞなぞライオン』『おれはレオ』(以上理論社)などがある。

※佐々木マキさんの作品一覧はこちらから>>>



■ 作者佐々木マキさんにいくつか質問をしてみました!         


―― 『ぶたのたね』から20年、『また ぶたのたね』から4年!そして待望の第3弾『またまた ぶたのたね』。最新作について、「ここがポイント」というのがございましたら教えて頂けますか?


〈読者に楽しんでもらえるかどうか〉毎回これがポイントです。
私は絵本を子どものための娯楽と考えていますので、
おもしろいものを作るのが私の仕事です。



―― 今も変わらず大人気の『ぶたのたね』。誕生のエピソードなど教えて頂けますか?


なにか軽くて、ばかばかしいものを作ってみたかったのです。
あまりチカラをいれずに気楽にかいたのですが、20年のあい
だに思いがけず多くの読者を得ることができました



―― 『やっぱりおおかみ』からの<佐々木マキオオカミ>ファンです。
佐々木マキさんにとって、オオカミというのはどんなキャラクターと考えていますか?


『ぶたのたね』シリーズのおおかみは、しくじったり、ひどいめにあったりするのですが、そのわりにはあまり可哀そうとか気の毒という気がしてきません。それにめげないだけの強さと〈そのうちいいこともあるさ〉という楽天性を持っているからでしょう。
作者としては、とても使いやすいキャラクターです。


―― 絵本ナビ読者の皆さんにメッセージをお願いできますか?

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佐々木マキさんから直筆メッセージを頂きました!
・・・感激です。そして、4作目も期待しちゃっていいんですね?


■絵本館編集長有川裕俊さんに佐々木マキ作品の魅力についてお伺いしました!   

佐々木マキさんの魅力的な作品を数多く出されている出版社絵本館さんの編集長
有川裕俊さんの文章をご紹介します。



またまたぶたのシンフォニー            
              
                   絵本館 有川裕俊

佐々木マキさん。
ガロ世代の方には漫画家として、
村上春樹ファンには
村上さんの本のイラストレーターとして
お馴染みです。
ちなみに村上春樹さんは学生時代から
佐々木マキさんのファンだったそうです。
村上春樹の世界、佐々木マキの世界、
相通ずるものがあるわけです。
そして絵本作家としての佐々木マキさんは
子どもから大人まで、
その独特な世界へといざなってくれる
水先案内人でもあります。
絵本館には、そんな佐々木マキワールドを
たのしめる絵本がたくさんあります。
変なお茶会』や
ムッシュ・ムニエル』シリーズ。
そして、今回の『またまた ぶたのたね』の
前作、前々作にあたる『また ぶたのたね』『ぶたのたね』などです。

実は、この『ぶたのたね』は今から二十何年も前に、
今は作家として活躍の湯本香樹実さん(『夏の庭』『くまとやまねこ』など)から
「おもしろい絵本があるのよ」と教えてもらったのがきっかけで
出版することになった絵本です。
一見して「おもしろい!」と思いました。
ところがというべきか、うまいぐあいにというべきですね、
その出版社は一般の書店では
この『ぶたのたね』を販売していないとのこと。
それなら絵本館で出版させていただこう、ということで
絵本館版『ぶたのたね』が誕生したのが1989年。
以来、重版をかさね、今では親子2代で
楽しんでいただく人気絵本となりました。

2005年の夏の終わり、マキさんから
「有川さん、ながらくおまたせしました。
『ぶたのたね』の続編の構想が
やっとまとまりました」
という電話が入ったのです。
16年もたち、すっかり続編のことはあきらめていたので、
その時の社内のよろこびは大変なものでした。

『またまたぶたのたね』は、16年もたたず
2009年秋に原稿をいただきました。
『ぶたのたね』が1989年。
『また ぶたのたね』が2005年。
そして『またまたぶたのたね』が2009年。
だんだん間隔が短くなっています。
まるでブラームスのシンフォニーのようです。
ブラームスは第1シンフォニーを仕上げるのに20年かかりました。
ところが、第2、第3はあっというまだったそうです。
なにか堰を切ったようにということが芸術家にはあるのですね。

今回も、とてつもなく走るのが遅いおおかみが主人公。
なんとかぶたをつかまえて食べたい。
そこできつね博士から
「ぶたのたね」というものをもらいます。
ところが結末はというと・・・・。
このあとの展開は、
みなさん絵本を手にとってたのしんでください。
マキさんファンはもちろんのこと、
たくさんの子どもや大人が
たのしめる絵本がまたまた誕生!
と相成りました。

実は、こういったユーモラスな絵本をつくれる作家は
とても少ないのです。世界的に見ても少ない。
意外かもしれませんが、それでも日本は特別に多い国、
だと思います。
でも10人はいないかもしれません。
佐々木マキさんは、そんなユーモアやナンセンスを
絵本で表現できる数少ない作家のひとりです。

「ユーモラスな絵本やナンセンスな絵本を読んで
子どもに何が身につくのですか?」
と真面目な方から問われることがあります。
ぼくの答えは簡単です。
「子どもがユーモアや冗談をたのしめる人に
なってくれるといいな」です。
ユーモアって心の余裕、ゆとりです。
ナンセンスはいろいろな角度から
物を見る訓練に最適なものです。
おもしろいとおもっている、その上こんな余禄が
ついているんですから、いうことありません。
グリコではないけど、二度おいしいです。

真面目を金科玉条にしている人と生活するのは
つらいものです。
家庭でも学校、会社でも、ユーモアや冗談で
笑いがたえない生活がいい、とぼくはおもっています。
まあ、人それぞれですが。

大人はユーモアやナンセンスの絵本を見て
「大人のわたしがおもしろいとおもったのだから
子どもには無理だろう」とおもいがちです。
ところが、大人が考えるより子どもの
おもしろいものに対するキャパシティはずっと広い。

あたりまえですが子どもはおもしろいものに貪欲です。
それにおもしろくなければ長つづきしません。
読書にとっての肝心要はおもしろいです。
役にたつとか、ためになるというのは、
おもしろいとおもったあとに自然についてくるものです。
「なにごとも熱中してやれば自然となにかが身につく」
そんな気楽な気持ちで、子どもと絵本のことは考えるといい。
知識も教養も、人それぞれのおもしろいから生まれるものです。

これをとりちがえている大人は多い。
ここが絵本だけでなく、子どものことに関するボタンの
かけちがえのスタートです。
かわいそうですがとりちがえた人は、
あと混乱がまっているだけです。
つまり子どもに絵本を読んであげながらイライラすることに
なりかねません。
そんな話だとおもいませんか。  

繰り返します。
読書にしてもなんにしても、子どものおもしろいをおろそかにしない。
つまり興味や関心が芽生えたのですから、それを見まもる。
長つづきのためにもおもしろいがすべてです。
そして、気づいたら知識も教養も身についていた。
身についてこそ教養です。

なによりもおもしろいが最優先です。
子どもだけでなく、大人のあなたも
おもしろいが重要です。
大人のあなたがおもしろいとおもった絵本を
子どもにすすめる。なんの問題もありません。
言ったように子どものおもしろい絵本にたいする
キャパシティは大人が想像するよりずっと大きいのです。
このことは自信をもって言えます。
理由は、毎日届く愛読者カードです。
様々な「声」を日々読んでいるのですから
「おもしろいと思う気持に年齢は関係ない」
と、確信させられます。

たとえば『変なお茶会』。
「なぜなのでしょう、2歳の子どもが気に入って、おどろきました」
などというお便りがたくさんきます。
シュールな絵本。意外でしょうが、これがけっこう子どもには人気なのです。
ためしに子どもと見てください。
おもいもよらないことでしょうが、『変なお茶会』には
子どもの大好きなものがたくさん登場します。

わたしの子ども(すでに30歳すぎています。)、それに姪たち、
いまや孫たちにも人気の絵本です。
「子どものときも気に入っていたけど、
大人になった今もすきだなあ」。
姪のことばです。

最後にナンセンスの本領をあますところなく表現した
俵万智さんの文章をご紹介します。


子どもと私が手にしている絵本のラインナップを
見た友人が、「とてもいいけど、足りないものがある。
それは、ナンセンス系だ!」と言いました。
で、彼のオススメの中の一冊が、『ぶたのたね』でした。
何気なく読みはじめたのですが、まさか、ほんとうの
ほんとうに「ぶたのたね」だとは思っていなかった息子と
私(つまり、それほどまでに常識というものにしばられて
いたんですね)。
ぶたの実が、たわわになっているページを開いたときの
衝撃は、今も忘れることができません。
「ぎゃははははは、ぶただ、ぶただ!」
「ほんとうに、ぶたのたねだったんだ!」
二人で、こわれたように笑い続けました。その爽快感。
かたくなった心の筋肉が、ほぐされていくようでした。
ナンセンスの力というのは、こういうことなんですね。
後に本屋さんで、息子が『またぶたのたね』を見つけた
ときの目の輝き、それも忘れることができません。


俵万智さんの息子さんへ『またまたぶたのたね』を
ご紹介したくなる文章です。

2010年01月26日

絵本『ぶた』(SIKA)シリーズ
ユリア・ヴォリさんにインタビューしました!

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北欧独特の洗練された色使いで描き出す『SIKA』(邦題:『ぶた』)の物語はシュールでユーモアたっぷり。自由なコマ割りを用い,シンプルな様式の中に都会的で優しいユーモアに溢れ,ところどころに哲学的なエッセンスも感じられる作品です。
(ちなみに、「SIKA」とはフィンランド語で「ぶた」という意味なのだそうですよ。)

作者はフィンランドの絵本作家ユリア・ヴォリさん。

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■ユリア・ヴォリ (Julia Vuori)
1968年生まれのフィンランド出身の絵本作家。
『SIKA』はフィンランドの日刊紙「ヘルシンキ・サノマット」に掲載されていたかわいい主人公、ぶたのせつなく楽しい日々のお話をもとにした絵本。もともとは友人を元気づけるため描きはじめたという本作品はふっと気持ちがなごやかになる物語で愛情に溢れ、大人の女性たちの圧倒的な共感を呼んでいます。父親は絵本作家のペッカ・ヴォリ。

この度、絵本ナビ読者の皆さんから寄せられた質問(「ユリア・ヴォリさんへの質問大募集」企画より)をもとにインタビューさせて頂くことができました。遠くフィンランドからのユリア・ヴォリさんの声をお楽しみください!!


■ 自然と主人公になっていった「ぶた」・・・           

絵本「SIKA(ぶた)」シリーズは、何といっても主人公ぶたのキャラクターが魅力的!
好奇心旺盛で元気いっぱい、何にでも挑戦する姿が見ていてとっても楽しい気分にさせてくれますね。一方で、すぐに考え込んでしまったり、切なくなってしまったり、繊細な一面もあったりして。そんな時、いつも何とかしようと健気に努力し続けるぶたの姿はとっても強く、しかも愛らしく、子ども達だけでなく多くの女性が共感してしまうのも納得なのです。

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        『ぶた』                   『ぶた、ふたたび
   ユリア・ヴォリ 作  文溪堂          ユリア・ヴォリ 作  文溪堂
 



―― 主人公に「ぶた」という動物を選んだのはどうしてですか?

実は最初からメインキャラクターとして「ぶた」を選んだ訳ではありません。自然と主人公になっていったのです。初め「ぶた」は白黒で、他にキャラクターはいませんでした。「ぶた」はとても気まぐれで同情しやすい登場人物だったので、当然ながら即座に主役になりました。



―― 誰かモデルはいるのでしょうか?

SIKA(ぶた)は完全に作られたキャラクターで、現実に存在するキャラクターを元にしているわけではありません。ただもちろん、私が経験する事や知り合う人達によってSIKAも影響を受けています。

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更に、ブタを取り巻く友人達のキャラクターがとても強烈な個性の持ち主ばかり。でも、それぞれがぶつかり合うことなく、お互いを尊重し合って付き合っている様子がとても印象的です。
こんな声もありました。
私はペンギンが「殻を破ってこの世にあらわれたのは何故か」と問い詰められているお話の中のヒナが印象的で好きです。このヒナの生命力は1歳の息子に通じるものを感じます。<絵本ナビ読者の声より>



―― ユリア・ヴォリさんの中でお気に入りのキャラクターはいらっしゃいますか?

SIKAシリーズの中で特にこのキャラクターが好きということはありませんが、キャラクターを描き出している瞬間、そのキャラクターに全ての注意を払っているので、その時描いているキャラクターが私のお気に入りになります。



―― アイデアはどの様に浮かんでくるのでしょうか?ご家族からも影響を受けられることはあるのでしょうか?

SIKAのストーリーは、大体私の生活で起こったことからヒントをもらいます。そこから話を面白く装飾していくと、SIKAやキャラクターたちが自然とストーリーを上手く回し始めてくれるのです。私の友人や家族は、ストーリーの中のある部分によっては見覚えがあるのでSIKAの話に含まれているように感じているかもしれません。でも実際のストーリーは風変わりなSIKAの世界をベースに作り上げています。



―― 多くの読者の方の感想にもありましたが、色彩が独特でとても美しいですね。

色のこだわりに関しましては、私は鮮やかな色合いや独特な色のコントラストが好きで、作品に必ず使用する色の幅というのがあります。色を選ぶ際、私はまず気に入った一色から塗り始めます。私の目が満足できるように他の色を選んでいくと、他の色も自然とうまい具合にあるべき場所に収まっていくのです。

フィンランドの自然が大変色鮮やかな春の時期や、湖畔の小別荘で過ごす霞のたちこめた夏の朝などにも私の色のパレットは刺激を受けます。

自宅にある飾り物にも私の作品と似たような色の要素を見つけますが、私は3人の男の子の母親でもあるので、家に関しては基本的に実用性を重視しています。


■ 読む人に自由に楽しんでもらいたSIKAの世界・・・          

もともとは友人を元気づけるため描きはじめた、というエピソードが興味深いですね。読者の方からの反応についてもお伺いしてみました。



―― この作品をどんな風に楽しんでもらいたいですか?

実は、読者の皆様が持つ様々な感想に私自身も魅了されたりします。ファンのコメントを通して作品の新しい見識を知ることもあるのです。私は作品を読む人に対してSIKAをこう読むのが正しいとか、ストーリーを想像する上である特定の見方が大切だ、など指定しないようにしています。読者にとって、2回目に読んだストーリーの印象や見解が、最初に読んだ時と違うことは良いことだと思っています。



―― 作品を読んだ方からの反応で嬉しかったエピソードなどございますか?

特に印象に残っているのは、こんな二人のファンの方です。
一人は中高年の日本人の方で、銅線を使用し、小さくて素晴らしいSIKA像を私に作ってくれました。もう一人は若いフィンランド人の男の子で、どんなにSIKAの「SIKA JA OIKUKAS SIENI (日本未発売の「きのこ」に関する絵本)」が好きかを何通も手紙で送って知らせてくれました。私にとって、世代も文化も違うこのようなファンの方たちがSIKAの話を楽しいと感じてもらえていることは大変嬉しく喜ばしいです。


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■ユリア・ヴォリさん御自身についてもお伺いさせて頂きました!        



―― 子どもの頃好きだった絵本はございますか?また、小さい頃から絵を描く事はお好きでしたか?

私は1歳の頃から絵を描き始めました。
当然のことながら、幼い頃に読んだ、そして読んでもらった子どもの絵本には大きく影響を受けていると思います。特に感化されたのはトーベ・ヤンソン(Tove Jansson)の「ムーミン」シリーズやリンドグレーン(Astrid Lindgren)の本などです。
それから「不思議の国のアリス」、子ども用の詩に関する本、有名なおとぎ話などにも影響を受けています。コミックを読むことも好きで、動物図鑑で動物の写真を見ることも大好きでした。



―― 好きな作家さんや影響を受けられた作家さんはいらっしゃいますか?また、日本人の作家さんでもいらっしゃいますか?

私は、日本の芸術には大変興味を持っています。日本の短歌が訳された本も沢山読んでいますし、広重や北斎などの浮世絵は特に興味深いですね。学生時代には、フィンランドのシネマ記録保管所で観ることができる黒澤監督の映画を全て観に行ったこともあります。私にとって「スタジオ・ジブリ」「宮崎駿監督」というのもとても大事な存在で、東京のジブリ美術館に行った時は大変感動しました。それから和太鼓の芸術形式にも興味があります。



―― 絵本を創作されている時に、一番楽しいと感じる瞬間を教えて頂けますか?

私が絵本創作の際、一番楽しいと感じるのは、大まかなストーリーが頭に浮かび、SIKAとキャラクター達自身がどう描かれてほしいか、というのがわかった瞬間です。絵の構成は必ずしも用意できている訳ではありませんが、私の頭の中では、どのキャラクターがどこに配置され、どのように描かれるべきか、その時点で整理できています。たまに私でさえ驚くことがありますが、SIKAの世界では驚かないほうが不思議なのかもしれません。



―― 今後の作品について、少しだけアイデアを教えてくださいませんか?

今後も新しいSIKAのストーリーを沢山作っていく予定です。次にフィンランドで出版される新作絵本は、小さい子ども用のSIKAと数字に関する絵本です。SIKAのアルバムに新しいお話や新しいキャラクターも登場します。



■ 最後に・・・             


―― 絵本ナビ読者に向けて一言メッセージをお願いします!

『SIKA』を読めば、SIKAは読者の皆さんに、「もっと怠慢に過ごして、ブラブラすることを楽しんで、美味しいペストリーのお菓子を味わうこと」を勧めてくれると思いますよ!


ありがとうございました!
ユリア・ヴォリさんの頭の中でも、きっとSIKAたちは自由に動き回っているのでしょうね。日本にこんなに興味を持っていらっしゃるという事にも驚きました。嬉しいですよね。続編が本当に楽しみです。


さて、絵本ナビshopでは、SIKAのこんな可愛いグッズ達も取り扱っています!

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絵本ナビshopぶた(SIKA)コーナーはこちらから!>>>

絵本の雰囲気そのままにアニメにもなっています!>>>
SIKA公式サイトもお楽しみください>>>

2010年01月13日

絵本『ハンバーグハンバーグ』
作者武田美穂さんにインタビューしました!

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となりのせきのますだくん』『すみっこのおばけ』『ありんこぐんだん』などなど、子ども達に大人気の作品を沢山描かれている絵本作家武田美穂さん。子どもの気持ちを代弁してくれるかの様な内容を、とても明るい絵とユーモアたっぷりのお話で楽しませてくれるその作品の数々は、多くの読者から共感を呼んでいます。

そんな武田美穂さんの二年ぶりとなるオリジナル絵本が発売されました。
テーマは「おいしいおいしい絵本」。一体どんな内容なのでしょう。
武田美穂さんご本人にお伺いする事ができました!
また、現在開催中のちひろ美術館・東京「武田美穂の絵本づくり展」(2009年11月15日~2010年1月31日)の様子についても語ってくださっています。その作品の魅力をたっぷり味わってくださいね。


■ とにかく美味しそう!武田美穂さんの最新作『ハンバーグハンバーグ』

武田美穂さんの作品のファンは特に驚かれるかもしれません。今度の新作『ハンバーグハンバーグ』には、なんと食べ物しか登場しません!いつも大活躍する子ども達は絵本の画面の中には出てこないのです。ところが、読んでいくうちにそのあまりにも美味しそうに出来上がっていくハンバーグの様子に口を半分開けながら見入っている子ども達の姿がありありと思い浮かんでくるのです(笑)。

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ハンバーグハンバーグ
武田美穂・作 ほるぷ出版刊   絵本の詳細内容・みどころはこちら>>>


―― 「ハンバーグ」を題材に絵本を作ろう!と思われたきっかけなどあるのでしょうか?


ほるぷ出版の担当編集者さんとご飯を食べながら、「小説の食事のシーンとか、なにげに好きなんだよね。おいしそうに書いてあるとお腹がすいてくるよねー。」なんて話をしていて、「じゃあ絵本で、おいしそうー食べたーい、おなかグー、みたいなの作ろうよ。」と編集者さんが言い出して。
「武田さんになら絶対おいしそうに描けるよ!」との言葉につい気分よく乗ってしまいました。
その場でいくつかの料理を考えたのですが、やっぱり親しみやすいし、作る過程がおもしろいし、子どもは大抵好きだよね、ということでハンバーグで合意!


―― 小さな子でも楽しめる内容となっていますね。特にこだわりの点などはございますか?


リズム感のある、テキスト(文)にすること。
ハンバーグおいしそ~とか、うわ~あのぐちゃぐちゃやりたい~…とか思われる絵にすること。


―― 大人の私が読み終わった後も、思わず「ハンバーグが作りたい!」と思ってしまいました。この作品の為に実際にハンバーグはかなり作られたのでしょうか?また、ハンバーグは武田さんの得意料理なのでしょうか?


作りましたとも(笑)。
まわりはいい迷惑・・・。

昔、弟が好きでよく作ってあげてたので、自分では得意料理のつもりでいましたが、弟に言わせれば、よく焦がしてたよね、と。


―― ハンバーグに焼き目をつけていくシーンは本当に臨場感たっぷり。音、温度、においまで伝わってくるような。食べ物を描かれるということで苦労された点、面白かった点などございますか?


まさに。音、温度、においまで感じて欲しいと思って描きました。
資料写真をそのまま描いてはダメだけど、リアルさは出したい・・・と、少しずつアングルを変えたり塗り方を変えたり、何枚も描きました。
苦労したけどおもしろかった。


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▲ジュージュー聞こえてきますよね!

―― この作品をどんな風に楽しんでもらいたいですか?

この本は、是非、お母さんお父さんに読み聞かせして欲しいです。
(お兄ちゃんお姉ちゃん、おじいちゃんおばあちゃんにも)
ことばのリズム、めくりのリズムを工夫して、最初はリズムにのって、絵本にうたわせるように読んでみてください。
子どもさんが反応したら、二度目はゆっくり。見たいページはじっくり見せて。
読み終わって「ハンバーグ作って」と言われたら、はい、読み聞かせは成功です。
子どもたちにも、是非フレーズをおぼえて楽しく唱和してほしいです。

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▲『ハンバーグハンバーグ』の帯より。あまりに可愛かったので掲載してしまいました!


―― オリジナル絵本を出版されるのは二年ぶりだとお伺いしました。この作品に寄せる想いなどお聞かせ願えますか?

家族の介護で仕事を減らしていたので、オリジナルはだいぶブランクができてしまいました。
再出発の気持ちで、自分の原点にたちかえって作りました。
・・・といっても、ほんとのことを言うと、最初は、コマ割り入れたり、キャラを出したり、いくつかのバリエーション作ってみたりしてたのですが、
ある時ふと、シンプルに、ことばやめくりのリズムで料理の過程を追っていったら、すとんとお腹におちるものが出来ました。
喫茶店で、担当者相手にラフの読みがたりをしました。
「おもしろい、なんか美味しそう」と言ってもらえて、「おし!」と。
こみ入った物語じゃなくても、ひとつの料理を作る過程の中にも、起承転結…ささやかなドラマがあるんだ、とそんなのもやりたかったです。



■ 絵本作家武田美穂さんについて、少しお伺いさせて頂きます。

明るくてユーモアたっぷり、子ども達の日常に寄り添った内容の武田さんの作品。それでいて、繊細な心や結構大変な毎日をしっかり描かれていて、まるで子ども達を応援してくれているかのよう。武田さんの作品が学校や図書館で大人気なのも納得なのです。


―― 武田さんご自身、特に思い入れのある作品はございますか?

たくさんのお手紙をいただいて、読者を強く意識した『となりのせきのますだくん』と、ナンセンスに徹し、やりたいようにやった『ありんこぐんだん』は、特別な二作。
それぞれの編集者に、機会を与えてくれてありがとうと言いたい。

自分の中に強く残るシーンを絵本の中に入れ込んだ、『きょうはすてきなくらげの日』『か・げ』は個人的な思い入れのある作品。
『吾輩は猫である』は、尊敬する漱石さまと組めて?ただただ、感激の一冊。

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※内容の詳細は画面をクリックしてください。

―― 絵本のアイデアはどんな所から浮かぶのでしょうか?

結構日常のささいなきっかけで浮かんだりします。
こどもたちの手紙を読んでいて…という作品もあります。


―― 絵本作家になられた良かったなぁ、と思った瞬間を教えて頂けますか?

デパートの中の書店で、子どもが私の本を選んだのを偶然見たときは、うわーうわーうわー、という感じでした。
しかもお母さんがお金を払って、本を受け取ったら、その子、自分で持つ、と主張。
大事に抱えてくれるのを見たらもう、走っていって、「わたしがその本描きました~!」と言いたいような。
・・・やりませんでしたけど。


―― 今後こんな作品をつくってみたい!などございましたら教えて頂けますか?

笑える本。
ことばのリズムを大事にした本。
こどもの気持ち。わくわくや、不安や…。
・・・題材としてとりあげたいものは、いっぱいあります!


■ 原画をはじめ、絵本づくりのひみつも覗ける展覧会「武田美穂の絵本づくり展」

ちひろ美術館・東京で現在開催中の企画展「絵本はたのしい!武田美穂の絵本づくり」(開催期間2009年11月15日~1月31日)についてお伺いしました。


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『となりのせきのますだくん』より 1972年 ポプラ社
詳細はこちら>>>


―― 今回の展覧会では、原画の展示を始め、武田美穂さんの絵本づくりのひみつについても覗くことのできる内容になっているそうですね。武田さんご自身も美術館にたくさん顔を出されているとか。どんな雰囲気になっているのでしょう?


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企画段階で、ちひろ美術館の担当の上島さんに「長い会期なので、会期中、どんどん変化していく展示にしませんか!?」と提案されて、それは楽しそうだな、と、行くたびになにかしら持っていきました。

案内板を作らせてもらったり、いろんな場所にキャラクターをちょこちょこ貼らせてもらったり、・・・トイレにまで。(笑)
あこがれの美術館にこんなことしていいの?ちひろさま、すみません~、と心の中で詫びつつ・・・、楽しくて、行くたび、増殖させちゃいました。

二階の展示室は、デビュー前のちょっと恥ずかしい作品(汗)から、となりのせきのますだくん、コマ割り、ナンセンス、ハンバーグハンバーグ前のオリジナル「か・げ」まで、年代を追って、見せる工夫を凝らして展示していただいてます。

コマ割り作品については、本当に、前日遅くまで「どうやれば、面白くわかりやすく見せられるか」と、いろいろやっていただきました。意見を取り交わし、それによって全部できていたガイド版を、いきなり総取り替えしたり。
妥協のない誠実な仕事に感激。

あっ、「ざわざわ森のがんこちゃん」も、展示してます。ひみつの引き出し♪というのがあるので、是非見てください!
門外不出?の設定資料入ってます。ふふふ。

一階の多目的展示ホールは、それこそ会期中ばんばん変わっていってます。
今のメインは子供たちと作ったお化けとかいじゅう型秘密基地!
かっちょいいです。

もひとつ。ハンバーグハンバーグの制作過程を展示。本当は出したくなかった仕事修羅場時のお部屋の写真も公開…。(汗汗)


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▲『となりのせきのますだくん』の原画。その下には、その制作方法の説明なども展示してあるのです!

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▲最新作『ハンバーグハンバーグ』の制作過程も展示してあります。
 更に、打ち合わせの様子からハンバーグを実際に作っている様子の写真まで!


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▲武田美穂さんのお仕事部屋のお写真も大公開!ここから数々の作品が生まれていくのですね。

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▲仕事修羅場時のお部屋!壁は『ハンバーグハンバーグ』のラフで覆いつくされています。下からちらっとのぞいているのは、実際にハンバーグを作った写真ですね。


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▲この立派なオブジェは、美術館のワークショップで武田美穂さんと子ども達が一緒につくった「怪獣型秘密基地」。

―― 今回の展覧会の期間中には、子ども達とのワークショップも開かれたそうですね。

私のワークショップは、なにか教えるのではなくて、楽しく考えたり作ったりするための時間と場所と素材を用意して、はい、どうぞ!という感じ。
でも、こどもたちってもともとクリエイティブ。お互いの作品にも刺激しあって、びっくりするようなものを作ってくれちゃいます。
こどもたちのオリジナリティあふれるたくさんのおばけたちと、秘密基地、是非見てください!

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▲秘密基地を真剣に制作する武田さんと子ども達。
終了後に、子どもたちが武田さんに宛てたお手紙には
「みほさん、てつだってくれてありがとう」と書いてあったそうです!




■ 絵本ナビ読者の皆さんへ

―― 最後に絵本ナビ読者に向けて一言メッセージをお願いします!

よく、読みきかせする本の選び方を聞かれますが、
まずは自分が読んで、面白かったものを!それが一番大事だと思います。
小さい頃、自分のたからものを大切なともだちに見せたくてたまらなかった、あの気持ちで、
こどもたちに自分の大好きな絵本の良さを、伝えてあげてください。
(でも、それでも迷ったら、是非私の本を!)

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▲ こんな素敵な直筆メッセージを描いてくださいました。
   可愛い!そしておいしそう~。


武田美穂さん、ありがとうございました!
会期中、イソザキも息子を連れて展覧会を見に行ってきました。
原画がたくさん見られるだけでなく、その制作方法やアイデアの工夫なども垣間見ることのできる、とても充実した展示内容なのです。
「エンターテイメントに徹する」という武田さんの言葉がとっても印象的でした。
更に「怪獣型秘密基地」。息子はもぐり込んだままずーーーっと出てこなくなってしまい、困ってしまいました。子ども達にとっては居心地が良すぎるようです(笑)。

※展覧会の最終日、1月31日(日)14:00〜16:00にはみんなで作った秘密基地とおばけ達を公開解体するそうです!誰でも参加できるそうですよ。
詳細はこちらでご確認くださいね>>>

2009年12月18日

ハッピーローソン山下公園店で絵本ナビ棚展開中!

ハッピーローソンってご存じですか?

横浜・山下公園内にある、「子育て応援コンビニ」です。
遊具スペースがあったり、子ども大喜びの「お菓子の詰め放題」があったり、
ミルク用のお湯のサービスがあったりと、子どもと一緒に寄りたくなるコンビニです。

この店舗内には、絵本ナビショップの棚があるのです。

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※2009年9月の棚の様子

クリスマスに向けて、この絵本ナビショップ棚をリニューアルし、
また、絵本ナビセレクトのしかけ絵本で埋め尽くしたクリスマスコーナーが設置されました。
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※しかけ絵本スペシャル!クリスマスコーナー

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※先着50名様には絵本ナビオリジナルのクリスマスオーナメントとシールをお付けしています。

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※店内の様子です。

横浜にお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいね。


このハッピーローソンが誕生したのは2006年7月。
「子育て応援コンビニ」というコンセプトで、ママ社員である小嶋衣里さんがリーダーとなって立ち上がったプロジェクト、その奮闘ぶりはテレビや雑誌など多くのメディアで紹介されましたので、ご存じの方も多いと思います。

絵本ナビはそのコンセプトとプロジェクトチームの熱意に共感し、プロジェクトの立上げ当時からご一緒させていただいています。(当時は日本橋にコンセプトショップがありました)
このプロジェクトやお店の様子など、ローソンのサイトでご覧いただけます。
>>>ローソン-ハッピー子育てプロジェクト

ブルーナデザインのロゴもカワイイのです。

今はこの山下公園店1店舗だけですが、全国にできるといいのにな~と思います。

2009年12月08日

「ぴよちゃんえほん」シリーズが大人気!
いりやまさとしさんにインタビューしました。

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黄色いフワフワの可愛いひよこが表紙の『ぴよちゃんの かくれんぼ』『ぴよちゃんの おかあさんどこ?』を初めて目にした瞬間、これはママと小さな子ども達の人気者になる!と確信してしまいました。あれから6年余経った今、赤ちゃん向けからおはなし絵本まで18冊もでる大人気シリーズとなっています。
この度、その作者のいりやまさとしさんにインタビューさせて頂くことができました。

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「ぴよちゃんえほん」シリーズ一覧はこちらから>>>

いりやまさとしさんってどんな方? ぴよちゃんの誕生秘話とは?
たくさんお話をお伺いしました。お楽しみください!

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9月に下のお子様が誕生されたばかりだといういりやまさとしさん、父親オーラがたっぷり出ていてとても優しい雰囲気のような。おそらく、大変な時期なのでしょうが、そんな中、貴重なお時間を頂いての取材はスタートしました。


■ 「ぴよちゃんえほん」誕生のきっかけ                                  


―― シリーズの最初に登場したのが『ぴよちゃんの かくれんぼ』『ぴよちゃんの おかあさんどこ?』。「ぴよちゃんえほん」誕生のきっかけなどを教えて頂けますか?

「市販の絵本はぴよちゃんが初めてでしたが、それまでもイラストレーターとして様々なところで絵を描かせてもらっていたり、学研さんの保育誌などでもお仕事をさせて頂いていました。絵本作家として仕事をしていきたいというのは、漠然と、ずっとあったんです。ただ、絵本をつくるといってもなかなかアイデアがまとまらなくて。

そこで絵本ってなんなんだろう、と考えてみたんです。僕にとっての絵本とは、と。その時頭に浮かんできたのが、昔から読んでいた(福音館書店の「こどものとも傑作集」のような)何十年も読み継がれているような絵本。そういう絵本って、時が経っても変わる事のない普遍的なテーマで描かれている事が多いですよね。そういうものが描けないかな、と思ったんです。『かくれんぼ』だとか『お母さんを探す』といった子ども達にとって基本的な動作みたいなところでアイデアが出ないかな、と。

そこで考えてみたのがこんな形・・・」


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▲見せて頂いたのがこちら! 最初のアイデアを絵本の形にしたものだそうです。何と、これがぴよちゃんの原型なんだそうです!! 題名も同じ。でも何だかとっても素朴。味があって可愛いですよね。


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▲内容は今の「ぴよちゃん」とほとんど変わっていないそうなのですが、雰囲気はかなり違います。


「これが『ぴよちゃん』の原型となったラフなんですが、ひよこだけが主人公じゃないでしょ? 他の動物の仲間も登場していて、みんなでという感じ。全然今の『ぴよちゃん』じゃないんですよね。」

確かに、昔からある絵本のような落ち着きがあるような・・・日常生活の中の遊びとか動きをシンプルなお話で絵本にしたい、そういうテーマというのが最初にあって、つくられたそうです。まず『ぴよちゃん』というキャラクターが思いついて、という訳ではないのですね。

「だから本文はそんなに変わっていないんです。たまたま探すというテーマだったので、この時は最初からしかけも一緒に考えて。それを学研の編集の方にお見せしたんです。でも、なかなかすぐ絵本にはならなかったんですよね。少し時間が経ってから、編集の方から『ぴよちゃんというキャラクターを前面に出したらどうですか?』というアイデアをいただいて。そこからじゃあこうしよう、ああしよう・・・と具体的に決まっていって『ぴよちゃん』のえほんが誕生しました。だから、自分が最初に思い描いていたイメージとは全然違うんですよね。」

それがちょっと意外な気もする「ぴよちゃんえほん」シリーズ誕生のエピソードなのだそうです。


■ テーマ探しは子どもとの触れ合いの中で                                  


―― 「ぴよちゃんえほん」シリーズのお話は、先程もおっしゃっていた通り小さな子ども達の日常のひとこまを切り取ったようなテーマというのが大切な要素ですよね。そのアイデアというのはどんな時に浮かぶのでしょう?

「ぴよちゃんを描き始めた時には、もう上の子どもがいたので、子どもと普段接しているところから自然にテーマというのは見つかっていった気がします。子どもとの遊びの中でアイデアというのが出てきたり・・・。あらかじめ編集の方からテーマが来る時もあります。絵本の中に出てくるエピソードは、親子で旅行に行った時に出会った動物だとか、体験した事なんかが無意識で入っているかもしれませんね。(アイデアが浮かぶまで)苦しい時もありますし、割とすんなり浮かぶときもあります。」


―― ご自身の子どもの頃の経験からも影響される事はあるのでしょうか?

「例えば『おかあさん どこ?』というテーマ。よく考えたらちっとも楽しいテーマじゃないですよね。お母さんがいなくなっちゃうという、子どもがつらいお話でしょ。無意識に、知らないうちにこういうテーマが出たということは、自分の中の原体験として(迷子になったとか)そういう事があったのかな、とは思いましたね。同じ絵本を作っている人でも、もっと楽しいテーマで作っている人もいると思うのですが、僕の場合はこの本の様に、子どもの時の不安な気持ちがテーマとして現れてくることも。
そういう意味では、今でも全く新しいお話を作るときには、まず自分の子どもの時の経験を掘り起こしていく作業というのがありますね。過去が遠くなっていって、どんどん忘れていくから最近はちょっとつらいというのもありますど(笑)。」

そうおっしゃるいりやまさんですが、それを補う様な形で子ども達のことはよく観察されていたそうです。


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「(この仕事をしているおかげで)自由な時間が割とあるので、保育園の送り迎えなどはよく行っていたんです。保育園に行ったときに自分の子どもは勿論ですが、他の子ども達の様子も見たりして。ああ、子どもってこういう遊びするんだとか、こういう人間関係が出来ているんだ、とか。それをそのままぴよちゃんに当てはめたらこうなるかな、なんて。
自分がやりたいお話のテーマに使えるかな、と思ったら、前後のお話の肉付けは自分の世界観で広げていったり。人間の子どもの関係という基本のモチーフをぴよちゃんの世界に入れてみて、前後のお話はどうなるかな、と考えていくことが多いですね。」


■ 表現方法について                                       

―― 何といっても真っ先に目に飛び込んでくるのはぴよちゃんのそのホワホワ感! 他の作品も含めていりやまさんの作品のチャームポイントだと思うのですが、この感触が好きなど、こだわりがあるのでしょうか?

「ぴよちゃんは主にパステルという画材で描いているんですが、その画材がたまたま自分にすごく合っていた、というのが大きいですね。質感が動物の毛足の表現などにとても合っていて。ですからそのホワホワ感の表現というのはパステルと出会ってからです。勿論、以前は他の素材でも描いてみた事はあるんですけど、ちょっとまどろっこしくて。表現方法と素材がぴったりきた、という事だと思います。指で伸ばして描いたりする事が多いので、自分の手で描いている、という感覚が好きなんでしょうね。印刷で色が出にくい事もあり、編集者や印刷所にはいつも迷惑をかけてるんですけどね。」


―― 実際にぴよちゃんを描いている時のお写真を見せて下さいました! これは貴重ですね。
※ちなみにこれは、1月下旬発売の『多湖輝のNEW頭脳開発2歳 はじめてのくれよん』というワークの表紙イラストです。

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①鉛筆で下描きをしるす。              ②厚口トレシングペーパーをその上にのせ

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③下描きのアウトラインをうつします。       ④ステンシル(型)が出来ます。

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⑤本描きの紙を下描きの上にのせ、       ⑥パステルを粉にしてパフをこすりつけます。
ライトテーブルで下描きが見える様にします。

「僕が使っているのはハードパステルと言います。チョークみたいな感じですね。粉状につぶして使います。いらないスケッチブックをパレット代わりにして色をのせます。色を混ぜたりすることもできます。」

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⑦ステンシルをのせ、パステルをぬりこみます。 ⑧色鉛筆で形をととのえます。

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▲完成です!!

「指でぬる事もありますけど、お化粧で使うパフで色を塗るのが一番早いんです。ただ、買いにいくのが恥ずかしいんですよね(笑)。ちゃんと専門店で売っている高いものがいいんですよ。お化粧の筆とかも色々な太さがあるからいいなぁ・・・と思っているんですけどね。」

このように、直接塗りこんでいくから色はちゃんと定着するそうです。

「最後に色鉛筆でケバケバ感を出したり、目のハイライトに絵の具を使ったり。絵の具は本当にちょっとだけ、ポイントに使います。」

よく見ると、色鉛筆での書き込みも、きわの部分だけであまり描いていないのです。あまり描いてしまうと、とげとげしくなったり、印刷すると更にうるさく線が目立ってしまうそうで、その頃合いが結構難しいそうです。

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聞いちゃっていいのかしら、ちょっとしたコツも教えてくださいました。

「ステンシルをのせる時、わざとちょっと隙間があくようにテーピングをしているんです。そうすることでいい感じにアウトラインがホワホワっとなるんです。」

そしてそして、⑦と⑧の間には実はもうちょっと秘密の写真があるそうで・・・。

「この間の作業の途中で、実は絵に気を入れる作業があるんです。指先で・・・。」

ここから先はさすがに企業秘密だそうです! 制作期間としては、作画だけだったら1ヶ月位、でもお話を含めると1年くらいかかることもあるそうですよ。


―― もう一つの大きな魅力なのは、小さな子ども達も一緒に楽しめるしかけ。しかけもいりやまさん御自身が考えられるのでしょうか?

「そうですね。学研さんの保育誌でしかけのコーナーを担当していたりしたので、こういったシンプルなしかけのノウハウは最初から割と持っていたんです。ですからお話としかけは同時につくっている場合が多いですね。子どもに反応を見せながら・・・という事もありますね。」



■ 長く楽しめる絵本、『ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ』               

そんなぴよちゃん絵本の中でも、「おやこであそぶしかえほん」シリーズから始まり、赤ちゃん向けの「ぴよちゃんとあそぼ!」シリーズ、さらには「おはなしえほん」シリーズまで、「ぴよちゃんえほん」の中でも様々なジャンルへと広がっています。中でもいりやまさん御自身がとてもお気に入りの一冊だとご紹介してくださったのがぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ

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ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ
いりやまさとし 作・絵 学研刊  ※内容詳細はこちらから>>>


「僕は、リチャード・スキャリーという人の絵本が好きで。自分なりのスキャリーの絵本が作りたかったというのがあるんです。」
※リチャード・スキャリー:出版した絵本は200冊以上、「スキャリーおじさん」と呼ばれ、ABCの本や言葉絵本など、その多くが海外の子ども達に長く親しまれています。いりやまさんも絵本の仕事を始められる前から集められてたそうです。

「日本でそういう絵本ってあまりないんじゃないかな、自分なりのスキャリーの絵本ができたらいいなと思っていたら、作らせてもらえることになったんです。」

なるほど! 納得です。そういえば、こういう形の図鑑絵本って、ありそうでなかったかもしれません。ぴよちゃんと絵本の世界を一緒に進んでいきながら、出会っていく植物や動物や物の名前を覚えていけるなんて、理想的。子ども達は絶対夢中になるはずだし、親としても嬉しいですよね。


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▲まさに散歩の途中で』出会いそうな草花がいっぱい!子ども達に聞かれた時に答えてあげたいですよね。この絵本でならすぐに覚えられそうです。全てに英単語とその読み方まで記載されています。


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▲それまでも、ぴよちゃん絵本の巻頭巻末にこんな図解を入れていたそうで、ストーリーに出てくる植物や動物を「これなに? これなに?」と聞くなになに世代の子ども達に答える為のアンチョコとして、親御さん達から「助かる!」ととても好評だったそうなんです。

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▲『ぴよちゃんとひまわり』の見返しです。更にアップにすると・・・↓

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▲確かに子ども達って、一口にカエルと言っても「アマガエル? 何ガエル?」なんて意外と細かい具体的な名前を知りたがるんですよね。それでお話の中に出てくる絵図鑑を作ろうという流れもあったそうです。


―― 図鑑の絵を描くというのはどうでしたか?

「図鑑の絵は、描いてみたいなとずっと思っていたんです。でも実際描き始めてみると、丁寧に観察して描けば描くほど自分の絵の世界とのギャップというのが出てきてしまうので、そのへんの兼ね合いというのがね。本当にリアルな絵にしちゃうとぴよちゃんの世界じゃないし、だからと言って図鑑だからいい加減な描き方をしたくないし。デフォルメ具合が難しかったですね。物とかは自分の世界観で描けるんですが、植物、動物、虫などは描き始めてから大変だという事に気が付きました(笑)。だから実際より要素を少し減らしたり・・・というのはしています。」


―― 特に畑の場面というのは、しかけをめくる事で地面の上と下というのが見えて・・・すごく面白いですよね。

「野菜ってこういう風に育つんだ・・・っていう事って意外と知らなかったりしますよね。地面の上と下ってこんな風になっているんだよ、なすやきゅうりってこんな風になるんだよ、という事が一目でわかるページになっていると思います。」


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↓ページを開くと・・・
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▲スイカやかぼちゃが丸ごと転がっていたり、それぞれの葉っぱの形がわかったり。科学絵本としての要素もぎゅっと詰まっているページですね。見応えがあります。


―― 更に牧場や森の中、池の様子まで登場します。それぞれ本当に細かくしっかり描かれているのですが、やはり取材はされたのでしょうか?

「それはもう図鑑はいっぱいお借りしましたね。(学研さんですからね!! )
牧場は・・・行きました。と言っても、この本の為だけでなく、もともと牧場好きだったので(笑)、旅行に出かければついでに一緒に牧場を見に行ったりしていたんです。その時に見てきたものが生かされていますね!」


―― 最近、鳥にはまっている私の息子も喜びそうだと思ったのですが、例えば「きつつき」だとか、可愛らしいけどちゃんと種類がわかるように描かれているにが面白くて。やはり動物は好きですか?

「動物は子どもの頃から好きでしたね。動物園にもよく行っていたし、動物図鑑を揃えて一人で読んでいたり。実際に飼った事があるのは犬くらいだったんですけどね。動物番組だったり、ディズニーの動物のお話なんかも好きでよく見ていました。」

そんないりやまさんが絵本の中で動物を描かれる時には、ちょっとしたこだわりがあるようです。

「絵本の動物を描くときには、実際に見てからでないと不安がありますね。だから、それをきっかけにして今でもよく動物園に行きます。その動物を見ていると、動きでお話が膨らむ場合もあるんです。なんでのろのろしているのかなあとか。見た目だけでなく、特徴も含めてね。本当は野生動物を見られるといいんだけど、なかなかね(笑)。

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動物も個体差をきちんと描き分けるのが好きなんです。犬の種類もちゃんとわかるように描きたいと思っています。デフォルメして曖昧に描くのは、自分としてはちょっといやなんですよね。それを絵本の世界観に合わせて描くというのが好きなんです。怖い動物をいかに可愛くしていくかというのが楽しいんですよね(笑)。だから、結構描写はリアルなんですよ。

他の作品でアライグマを主人公に描いた絵本があるんですけど、よく『たぬきの絵本』って言われるんです。何か悔しいんですよね(笑)。こんなにこだわって描いているのに。僕の中では、たぬきとあらいぐまって全然違うイメージですから。」

こんなこだわりを聞いていくと、いりやまさんの絵の魅力の秘密が見えてきますよね。そうなんです、かなり実物に忠実なんですよ。是非実際に手にとってじっくり見てみてくださいね。

そして、この絵本のおすすめポイントはまだあります。


―― 英単語も同時に覚えられるようになっているんですよね。動物の鳴き声があったり、読み方もちゃんとわかりやすく記載されていたり。お母さん達も意外と勉強になっちゃいそうですね。

「これは、実際に小学校の教師をされている方からもお褒めの言葉を頂いてきました。小学校で英語の授業を進めていく時に、楽しい教材というものが少ないそうなんです。だからとても喜んでくれて、嬉しいですね。」

そういう訳で『ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ』は、とても幅広い年齢層で楽しめる内容となっているんです。ぴよちゃん絵本の中でも、言葉を覚え始める小さい子に限らず、ストーリーを楽しめるようになった小学生低学年に、更には英語の授業が始まる3年生にも。長く楽しめるというのが最大のポイントかもしれませんね!


■ シリーズを通して                                            

人気者となったぴよちゃん絵本は今では18冊以上も出版されています。

―― ぴよちゃんシリーズを長く続けられているというのは、気持ち的にどう感じられているのでしょうか?

「おかげさまで、こんなにたくさん出して頂いてとても嬉しいですね。でも、長く続けていく難しさというのもあります。最初の頃は、本当に自分の素直な気持ちで描けていたと思うのですが、テーマよりまずぴよちゃんが可愛いかどうかとか、キャラクターが確立してくるとそちらの方に依存してしいきがちですよね。そうなっていくのは自分では嫌なんです。本当に自分が描きたいものが描ければいいんですけど、そういうニーズがある時は、ジレンマがあります。でも、もしこのまま(シリーズとして)続けさせて頂けるならば、そういう部分は自分の中で努力をしていって、キャラクターも確立して、内容もグレードアップしていければいいなと思っています。質が落ちていくというのが自分の中ではいちばん怖いですよね。」


―― 赤ちゃん絵本だったり、もう少し長いお話絵本だったりと、ジャンルも広がっていってますね。

「ぴよちゃんに限らないんですけど、自分の中で描きたいなと思っているのが小学校低学年くらいの子が自分で読めるような絵本ですね。小学校2,3年生というのは、自分が絵本や児童文学を一番読んでいた時期なんです。だからというのもありますが、子どもが自分で読みたいと思えるようなものが描きたいと思っています。お母さんに選んでもらえるものをつくるよりも、もしかしたら難しいかもしれないと思うんですけどね。自分は、まだそういう絵本って出来てないな、と思うんです。本当に子どもの感覚で好きな絵本というのがまだわからないんですよね。」

だからこそ、これから描いていきたい本がまだまだあるんでしょうね。今後の展開が楽しみです。


―― 「ぴよちゃん絵本」の読者の方たちの反応で、嬉しかった反応や意外な反応ってありますか?

「自分がいいなと思っていたことを、読んでくれた人が共感してくれたときが一番嬉しいです。絵本を通じてその人とつながった感じがします。自分と同じ環境だった人が同じ事を感じてくれたんだとか、自分の言いたい事を感じとってくれたんだとか。

『まだ子どもはいないんだけれど、自分に子どもが生まれたら読んであげたいと思った』 そんな声を聞いてすごく嬉しかったですよね。『私が気に入りました。』って言ってくれて。」

『みどりのくまとあかいくま』などの作品で、実は大人のファンも多いいりやまさん。そういう意味では『ぴよちゃんえほん』にも切なさとか、優しさなど、通じるものがあるのかもしれませんね。



読者カードにも、「読んでいる私の方が癒されました」「読み聞かせていると親子で優しい気持ちになります」など、びっしりと感想を書いてくださる方が多いそうですよ。


―― <来年のクリスマス>に向けて大型しかけ絵本が準備中だそうですね。

ここで、担当編集者の方が進行中の絵本の見本を持ってきてくださいました。
※ 画像はまだお見せできないので、文章で想像してください(笑)。




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「うわーっっ! これはすごい!! 」
まだ未完成なのに、思わずそう叫んでしまうほど、とても豪華で素敵!
そしてもちろん、相変わらずぴよちゃんは健気で可愛くて。読み応え、見応えも充分なお話&しかけ絵本なのです。
でも、とにかくまた来年のクリスマスまでは待たなくてはなりません。その頃にまた詳しくご紹介しますのでそれまで楽しみにしていてくださいね。


■ 絵本作家いりやまさとしさんについて                                  


絵本作家いりやまさとしさんについても少しお伺いしました。
―― 絵本を描かれていて楽しいと思われる瞬間はどんな時ですか?

「絵をかくのは基本的に大好きなんですが、やっぱり形に残るものを作れる事が嬉しいですね。
読書家という訳でもなかったけど、絵本というのは小学校の時までよく読んでいて、すごく鮮烈に残っているんです。
絵本のいい所というのは、ページをめくっていく時に自分がそこの世界観に入れることですよね。ページを開いているあいだはそこの空間にいられるんです。自分でもそういう表現ができると嬉しいし、そうあるべきだと思っています。そういった自分の世界観を伝えていくには一番いい仕事かなと思ってます。」


―― 絵本作家になって良かったと思われるのはどんな時ですか?

「若い頃、自分がいいと思っていてもなかなか表現出来なかったことが、だんだん伝えられる様になってきて本当に生きていて良かったと思えるんです。わだかまっていた事なんかが解けて、自分の生きる場所、居場所が見つかったという感じです。これを続けていきさえすれば・・・という存在価値が見つかって本当に良かったと思っていますね。」

居場所が見つかる喜び・・・表現者ならではの深い想いが伝わってくる言葉です。



■ 絵本ナビ読者に向けて!                                 

―― 『ぴよちゃんえほん』シリーズをどんな風に楽しんでもらいたいですか?

「一番は、ぴよちゃんえほんが親子のコミニケーションのきっかけになってくれれば嬉しいですね。
なかなか絵本を読まなかった子が、ママと一緒に遊びながら読めるぴよちゃん絵本だけは読むようになって、そのまま絵本好きになってくれたという話も聞いた事があって。そういう風に絵本を読むきっかけになってくれればいいな、と思っています。」


―― まさに子育て真っ最中のいりやまさん。同じく子育て中の方に応援メッセージをおくるとしたら?

「子育てというのは、こうしたらいいというのは全然ないですよね。子育ても、生きていくのも悩みごとの連続です。正解はないと思います。子育てが、自分の思う通りなんて絶対いかないのは自分も経験しています。でも、愛情があれば悪い方には行かないんじゃないかなと思います。こういう(絵本ナビの様な)場所で情報交換出来ればより良い方向は見えてくるんじゃないかな、と思いますね。毎日僕も悩んでますよ。
( 現在ご長男が小学校一年生、次男は0歳です。)
毎日大変ですよ。応援どころじゃなくて教えてほしいくらい(笑)。男の子なんでね。『今日は元気に帰ってきた・・・』それだけでほっとする毎日ですよ。」

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ありがとうございました!

今後はしかけで遊べて、でもお話としてしっかり読める、そんなものを作っていきたいとおっしゃっていました。方向性をしっかりと見据えているかの様な表情が印象的。一方で、ぴよちゃんにはこれから先、色々なものや場所に出会って欲しいと思っていると、ぴよちゃん一色に染まっていた学研さんの部屋で話される姿は、まさに優しい父親の姿そのものでもありました!(実はいりやまさん、仕事の合間に家事も育児も積極的にこなしてしまう理想的なパパなのだという事を、後からそっと編集の方が教えて下さったのでした。)

今後生まれてくる作品からますます目が離せませんね。

最後に記念にぱちり。

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サンタの帽子をかぶったぴよちゃんぬいぐるみが終始雰囲気を盛り上げてくれました!
(※ちなみにこの「おっきなぴよちゃん」ぬいぐるみは吉徳さんから発売中だそうです。こちら>>>

いりやまさとしさんの作品はこちらから>>>
ぴよちゃんえほんシリーズはこちらから>>>

2009年12月02日

『おたすけこびとのクリスマス』
なかがわちひろさん&コヨセ・ジュンジさんにインタビューしました!

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「小さなこびと達が働く車を駆使してケーキを作る」
子ども達を喜ばせ、大人達を驚かせた前作おたすけこびとの登場からはや2年。
待望の第2弾が発売となりました!!一体どんな内容なのでしょう、気になりますよね・・・。

『おたすけこびと』の発売時に続いて、今回も絵を描かれているコヨセ・ジュンジさんが絵本ナビにいらして下さることになりました。
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『おたすけこびと』発売当初のコヨセ・ジュンジさんへのインタビュー記事はこちらから>>>

そして更に・・・作者のなかがわちひろさんが一緒に来て下さることになったのです!
新作『おたすけこびとのクリスマス』制作秘話やみどころ、そして前回のインタビューで語られる事のなかった裏話(!?)までお二人にたっぷりとお伺いすることができました。お楽しみください。

この日、お久しぶりのコヨセさん(ちょっと風邪気味のご様子)が絵本ナビオフィスに登場、続いてキリッとした素敵な雰囲気のなかがわちひろさん、更に編集長始め徳間チームの方々(全て女性!)が続き。それぞれオーラを発している女性達に囲まれているコヨセさんを拝見した瞬間「今日は何だか面白くなりそうだぞ」という予感がしてしまったのでした。そして・・・その予感は見事的中するのです。


 ■ 今度のテーマはクリスマス!                          

「おたすけこびと」シリーズ第2弾がこちら↓
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おたすけこびとのクリスマス』 なかがわちひろ・文 コヨセ・ジュンジ・絵 徳間書店
※内容詳細・みどころはこちら>>>


―― まずはコヨセさんにお伺いします。『おたすけこびと』に続く新作のテーマが「クリスマス」と聞いた時、どう思われましたか?

コヨセ・ジュンジさん(以下コヨセ、敬省略):「『えーーーっ?』と思いました。」(一同笑)

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クリスマスというのはあまりにも普遍的で大きなテーマなので、最初はどうしたらいいか呆然としてしまったというコヨセさん。ではどうやってこんな素敵な絵本が完成していったのでしょう、じっくりとお話を伺っていくことにしましょう。


―― 「クリスマス」というアイデアを出されたのは、作者のなかがわちひろさん(翻訳家、絵本や童話作家として活躍されています)だそうですね。そのアイデアはいつ頃から考えられていたのでしょうか?

なかがわちひろさん(以下なかがわ、敬称略):「前作『おたすけこびと』が完成した直後のコヨセさんは、疲労困ぱいしていたんですよね。でもしばらくすると、むくむくっと復活してきて(笑)次はどうするの?って聞いてくるようになって。じゃあどうしようかと具体的に色々考え始めたんです。
ただ、『おたすけこびと』という物語を考える時に、いくつもアイデアは出していたので、私の中ではクリスマスというテーマはかなり前からあったんですよね。今回、おたすけこびとに仕事を依頼したのは、お父さんでもお母さんでもなくサンタクロース。これで行こう!というのは、実はかなり早い段階で決まっていたんです。」


―― ほとんどの作品では絵も文章も手がけられているなかがわさんですが、この「おたすけこびと」シリーズでは文章の担当。特にこの作品は、とてもシンプルな言葉で書かれていますよね。具体的にどのような形で画家であるコヨセさんにお渡しするのでしょう?

なかがわ:「依頼人はサンタクロースということで、設定を考えながら15見開き(絵本の完成形)にわけて文章を書いていきます。そしてそれぞれの場面に、『ここではこんな事が行われている』とか、『こんなことがあるんじゃないかな』『こういうことがあると思うよ』というような具体的なイメージや説明を書き込んでいきます。だから、私の頭の中では場面割というのは出来ているんですね。でも、それを画家であるコヨセさんに伝える為に、絵を描くのではなく、文章だけで渡します。文章を実際に絵にしていくと、今度は色々つじつまの合わない事も出てきますよね。だから今度は、出来上がってくるコヨセさんの絵を見ながら、また設定を練り直したり、アイデアを少し加えていったり・・・というような作業を重ねていきました。」

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―― 夢のある存在として象徴的なサンタクロース、一方とても堅実で働き者のこびと達とくるま。一見、相反するような組み合わせにも思えますが、アイデアはすんなりと完成したのでしょうか?

なかがわ
:「全然すんなりじゃなかったです(笑)。
依頼人がサンタクロースという事は決まっていたのですが、じゃあ何を依頼しよう?こびとになにをしてもらおう?というのは色々考えましたね。昔から童話に登場するサンタクロースのお手伝いとしてのトムテという存在ともちょっと違う気がするなぁと思ったり。また、機械(働く車達)というテーマがあり、運搬業というイメージもあり。さらには緊急車両というテーマも浮かんできて。他にもイメージとしては、前作が白くすっきりした感じだったので、今回は夜のシーンで行きたいなぁとか。そういういろんなアイデアやイメージが合体して出来上がっていったんです。」

完成した作品を読んでいて改めて気がついたのですが、そういえば子ども達ってどちらの要素にも興味津々ですよね!
なかがわ:「子ども達は、サンタさんがプレゼントを家まで届けてくれるっていうのを、とても楽しみにしていますよね。その一方で色々具体的に心配もするんです。『サンタさんが来るといっても、うちにはえんとつがないよ。』とか『窓を開けておいた方がいいのかな』、『マンションだけど大丈夫かなぁ』とか。だから、『どんな家でも大丈夫!こういう小人たちがいて、それぞれの家に合わせてちゃんと配達してくれているから』、そういう事が言えるお話になっていると思います。」

なるほど。その絶妙なバランス感覚は、やはりなかがわさんならではなのでしょうね!子ども達の心を惹きつけてしまうはずです。
なかがわ:「小さな世界のこびとに、大きなミッションをやらせたい!という想いがあって。でもこれが結構難しかった。絵描きさんはもっと難しかったと思います。」



 ■ 大きなポイントはやっぱり「働く車」                        


さぁ、そこからコヨセさんの仕事がスタートします!今作でもやっぱり大きなポイントは「働く車」。前作でのインタビューで車両を描く為に色々と取材をされたというお話がとても印象的でした。今回は、更に精密に描かれているようにも見えますが・・・。

―― 今回も車両を描く為に、実際に取材はされたのでしょうか?

コヨセ:「機械についての取材はもちろんしました。今回は、パソコンや書籍で調べる事も多かったんですけどね。外国の車両なんかが見られますし。でもやっぱり、出かける時は必ずカメラを持参していました。というのは、描きたい車両が作業をしているのを見つけたらすぐに写真に撮っておかないと、次の日は既に次の工程に進んでいて見られなくなる事が多いんです。前回はそうやって撮った写真が頼りだったのでかなり必死でしたね。違う角度を見る為に色々な方向から写真を撮りに行ったり・・・。
ところが今回は、描き始めた時に、僕が住んでいる家の道路を挟んで向かい側の広い農地がつぶされて、マンションが建設される事になったんです。
まさに『欲しい角度で、欲しいクレーン車が』一生懸命目の前で働いてくれているんです!」
それは何という幸運!(笑)タイミング的にはバッチリだったのですね。



 ■ 前作との大きな違いは「おたすけ会議」                        


―― 内容としては同じくこびと達と「働く車」が大活躍している新作ですが、実は制作段階では、前作の時と大きな違いがあったそうで?

なかがわ
:「前作では作品が出来上がるまで、実はコヨセさんとは直接お会いしていなかったんです。初めてお会いしたのは完成した後だったんです。もちろん、作品についてのやり取りはありましたけどね。でも今回は定例おたすけ会議と言うのがあって、月に最低1~2度は行われていたんですよね。最後の方は2週間に一度のペースでコヨセさんと編集者と顔を合わせて。それが前作との大きな違いです。
そうやってこの作品を作っていったので、私としてはとても楽しかったですね。コヨセさんはどうだったか知らないけど。」(一同笑)

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コヨセ:「・・・そうですね、楽しかったですよ。(と前置きをしながら)僕の中では、今回はスケジュールが決まっていたので、それが一番大きな違いでした。前作では(僕が心配になるくらい)催促が全くなかったので時間を存分に使って描いていたんです。実は編集部の方はイライラしていたみたいですけどね(笑)。」

コヨセさんにとって初めての絵本である前作については、編集部の方も催促は敢えてしない様にされていたそうです。ところが今回のテーマはクリスマス。当然スケジュールが重要となってきます。会議では、まず編集の方がスケジュール帳を開いて待機していたそうで。そういう意味ではコヨセさんの環境はがらりと変わった?

コヨセ:「お尻をたたかれて描く快感を覚えたというか(笑)。でもそのお陰で結構いいペースで出来たんだと思いますけどね。」

―― そのおたすけ会議というのはどんな様子なんですか?

なかがわ:「おたすけ会議があるというと、コヨセさんが原画をクリーニングの袋にぷらーんぷらーんって下げながらやって来るんですよ。その原画を大きな打ち合わせ机に広げて、みんなで『わー!あそこが可愛い、ここが素敵!』って。『でもコヨセさん、ここはへんじゃない?』今度はつっこみが出始めて。そうすると、編集部の他の皆さんも集まってきて『あーだ、こーだ』と・・・。それでまたコヨセさんが『はーい』といって持ち帰って。泣きながらね(笑)女子がいじめてるみたいだったりして?
でも、絵になって初めて『この設定はこういうことだったのか』というのが見えてくるので『じゃあこうした方がいいね』とプラスしてみたり。
前作『おたすけこびと』の時に<こびと達の世界>というのがコヨセさんの中にしっかり入っていて、今回は彼の中でこびとたちを呼ぶというような感じに見えました。何も言わずにいてもこびと達が動いているんですよね。」

コヨセ:「そうですね、そういう意味では2回目の方がスムーズでしたね。」

最初に皆さんが登場された時に感じた、何だか和気合あいとしたこの雰囲気は、「おたすけ会議」を経て作られていったものだったんですね。納得です。



 ■ コヨセさんの描く絵のみどころは?                       


そうして全力を尽くして描かれたコヨセさんの絵についてお伺いしてみましょう。
―― 今回は「夜の世界」という設定。そこが前作との大きな違いですよね。音をたてちゃいけないなど、制約もあったのでは?

コヨセ:「そうですね。今回は全部背景があって、しかも夜。大丈夫かなーというのはちょっとありましたね。表紙で言うと前作が白で今回は黒。でも描いているうちに開き直りが出来て、今回は全く違うものになりそうだ、と思いながら描いていきました。」
でもその背景が描かれる事により、コヨセさんが持っている詩情的なものがプラスの要素として加わったのではと、なかがわさん。音についてもお伺いすると「意識していなかった」とおっしゃるコヨセさんに対して、すかさずなかがわさんが「今回は音はなしでいく、と言ったのはコヨセさんですよ!」と突っ込んでいました(笑)。文章でも「おとなも こどもも ねむるまち」「しーっ!ほえちゃ だめだよ。」という部分などがあり、お二人とも無意識にその辺りは実現されていたようですね。

―― 今回描かれた絵の中で、みどころを教えてください!

コヨセ:「やっぱりぎょうれつの楽しさですね。実際に家があるような住宅街を、そんなちっちゃいのがぞろぞろ歩いているっていう楽しさ。それだけで充分かなって。」
確かに夜の街を小さな小さな車両がずーっと並んで進んでいく様はかなりワクワクします!この玄関前の敷石の場面もかなりの迫力ですよね。

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▲車両が迫ってくるかのよう。他にも、小さなこびと達と大きな犬や敷石など、様々な要素がぎゅっと詰まっています。

コヨセ:「最初は、この絵の出来はどうなのかなぁという不安もあったんですよ。そしたら天の声(※)があって。「あれはいい!!って言ってるよ」という声を聞いて。それでああ、ここはこれでいいんだと思えたんです。」
※天の声とは誰なのか?後程じっくり説明します!
なかがわ:「この場面については、例のおたすけ会議でも、設定について(砂利道とか素材感についてとか)色々突っ込んでいて、コヨセさんいじめをたくさんしてたんです。ですので画家さんとしては混乱をしていたかもしれないんですけど、この車の見せ方についてはやっぱり素晴らしいと思いましたね。」

―― プレゼントの中味がとっても気になりますね。

なかがわ:「プレゼントの中味は男の子でも女の子でもどちらでも喜ばれるものにしました。でもこの包みの形は気になりますよね~。」
なかがわさんもおっしゃる通り、とても気になる形をしているプレゼント。やはり皆さんから色々な意見が出たようなのですが、実はコヨセさん、この絵を描かれる前に実際にプレゼントを包まれたそうなのです。その時の写真がこちら!(編集部からお借りしました。)

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確かに同じ形をしていまね・・・。コヨセさんいわく、「忠実に描いているだけです。」

―― 今回は大胆で迫力のある構図も印象的です。

コヨセ:「小さい小さいこびと達と、実際の玄関や窓の高さ、クリスマスツリーなどの大きさ。そのスケール感を表現するにはかなり苦労しましたね。そのまま一画面で描くと画面がすごく大きくなってしまいますしね。」
結果的にはとても独創的で大胆な場面がたくさん生まれています。クリスマスツリーを上から見た構図なんて、なかなか見たことないですよね。部屋の中での小人たちの大仕事ぶりも臨場感たっぷりに伝わってきますよ。

コヨセ:「部屋の中で登場するこの赤いトラックですが、設定はわかりましたか?おうちの中に最初からあったラジコンカーなんです。この家には大きなラジコンカーがあるという事は最初から調べがついているんです。(毎年のデータが蓄積されていて、サンタさんの支部からこびと達に指令があるそうなんです。)だから家の中でもスムーズに作業が進んでいくんですね。」
うーん、なるほど。子ども達ならきっと気がつくのではないでしょうか。言われてみれば犬がいる事も調べ済みの様子です。ちなみに、その赤いトラックはコヨセさんが持っているふるいブリキのおもちゃをモデルに描かれたそうですよ。なかなか味わいのある姿をしているんです。



 ■  天の声とは?そしておたすけこびと誕生秘話                      

―― さて、気になるのが先ほどコヨセさんのお話の中に登場した「天の声」。一体誰の声の事なんでしょう?

なかがわ:「天の声というのは・・・実は私の息子でして。」
ここで、そもそもの『おたすけこびと』誕生秘話まで話がさかのぼります!必読です。

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なかがわ:「うちの息子は、小さい頃から働く車が大好きだったんです。1歳の頃からゴミ収集車を見て興奮するような子で。だから、毎日色んな工事現場に連れて行かされたり(これが退屈!)、夜になると今度は『はたらくくるま図鑑』というのを持ってきて『読んで!』。それが、ひたすら説明を読まされている感じなんです。でも間違えば『ちがう!』と指摘されるし、毎晩それは砂をかむような読みきかせを繰り返してきたんですよ。面白くないなーと思って<働く車が出てくる絵本>を読んでも、彼には図鑑くらいハードなものじゃないと物足りないらしく。それで、母親が読んでも退屈しない働く車の本をつくりたい!という野心がその時芽生えたんです。

一方で、おうちでは誕生日の時にはケーキを作ってあげていたんです。スポンジにクリームをまっすぐきれいに塗っていくのって結構難しいでしょ?(私の頭の中には働く車図鑑がいっぱい入ってるから)ああ、ロードローラーが出てきてざーっとならしてくれたら楽なのにな!と思ったのがそもそもなんです。」
そういう状況になっても、ロードローラーはなかなか出てこないですよね!息子さんの働く車好きは相当なもののようです。更にお話は続きます・・・

なかがわ:「『きょうりゅうのたまご』という私の作品があるのですが、

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きょうりゅうのたまご』 なかがわちひろ・作 徳間書店刊

これは、<働く車と恐竜が好きな息子>のために作ったという絵本なんです。主人公の男の子が恐竜のたまごを探すために、ちっちゃなパワーショベルに乗って土の中に潜って行く場面があるんですよ。でも私、働く車に全く愛がないものですから、これは調べないと、と思ってコマツ・テクノセンタという所に行って取材までしたんです。

働く車に愛のあるおじ様方に車両について色々語ってもらい、大きなウインドウの向こうのデモンストレーション(広大な土地で実際に働いてその機能を見せてくれる場所があるそうなんです。)というのがあってじっくり眺めて。実際に私、試運転までしましたから!(何とその時の写真が『きょうりゅうのたまご』の著者紹介写真として掲載されているのです。是非見てみてくださいね。)そうして、私なりに一生懸命愛を込めて描いたのが『きょうりゅうのたまご』の中に登場するパワーショベルなんです。でもそれを見て息子が冷静にダメ出しをするんです!何か違う、と。」

それにしても、そのお話(『きょうりゅうのたまご』)はかなり面白そうですね・・・。
そんな一生懸命の取材時、一方でこんな出来事もあったそうなんです。

なかがわ:「ウィンドウの向こうの(巨大な車両達の砂を積み上げたりする)デモンストレーションをずーっと見ながら『これってさ、あの働く車たちがお菓子つくってるみたいだよね・・・。』とつぶやいたんです。そしたら横にいた編集長がガバっと起きて『それだ!』って言ったんです。それでお話をつくれという話になって『ああでしょ、こうでしょ、』なんてすぐ「おたすけこびと』のお話の原型ができちゃったんです。」
それが『おたすけこびと』が誕生する瞬間!でも・・・

なかがわ:「私絶対絵は描きたくないから!って言ったんです。それが条件。働く車に愛がある絵描きさんを探して作ってくれればいいけど、私は絶対にイヤ!そこから絵描きさんを探しているうちに白羽の矢がたったのがこちらのコヨセさん~!」

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「そうだったんですね。編集長がガバッと起きたんですね。」と相変わらずマイペースのコヨセさんなのでした。

なかがわ:「長くなりましたけど・・・そういう訳で、先ほどの『天の声』というのがその働く車両が大好きな息子なんだというお話です。
『おたすけこびと』が出来た時、校正段階で絵を見てよだれをたらしながら『これだよこれ!おかんの絵に欠けていたのはこれなんだ』『しびれるな~』とか言っちゃって。それで、その時からコヨセさんに『息子がここがいいって言ってるよ、ここがしびれるって言ってるよ』とか時々メールしていたんです。」

―― その息子さんが太鼓判を押したのが先程のあの場面なのですね。

なかがわ
:「今回はこびと達が外に行くという設定なので、車両がどうしても小さくなっちゃうでしょ。そういう状況説明というのも大切だけど、やっぱり働く車が好きな読者には「血わき肉おどる」というページも欲しいのだ!という事なんですね。子どもって、実はそもそもこういう目線で見てるんですよね。さっと視線が近づいて『ここがこうなって、これが回って・・・』なんて。そういう意味ではとても子ども達を満足させるページになっていると思います。これは男の子ならではの感覚なのでしょうか?なかなか女性チームではわからない部分なんですよね。」
『おたすけこびと』シリーズでの「天の声」の存在は、かなり重要な様です!?



 ■ 隠れたみどころを教えてください!                         

―― 絵本ナビ読者の為に、何か隠れたみどころを教えて頂けませんか?

なかがわ:「コヨセさんの、こびと達への愛というのを感じるお話をひとつ。この子たち、今回は冬服を着ているんです!気が付きましたか?」
気が付きませんでした~
なかがわ:「前作では綿のシャツだけだったんですけど、今回はフリースの上着をきて、あたたかいカラー軍手をしているんです。ブーツも長め、中にはもこもこが付いている冬仕様です。これはね、コヨセさんの父心なんです。」

―― コヨセさんもこびと達に関して、何かありますか?

という事で、コヨセさんにもいくつか挙げてもらいました。実際に購入された方はお手許で確認しながら楽しんでくださいね!

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☆ 18ページ、めくって19ページ目。
「前のページで転んじゃったこびとがいて、次のページではそのこびとにヘルメットを渡してあげているこびとがいます。」(細かいポイントですね。)
☆ 前作同様、服の色で仕事を分けているそうです。
「黄組み、赤組のひと」なんて気がついた小さな子もいるんだそうですよ。親子で考えてみてね。
☆ こびと達があの依頼人から荷物を預かっている場面では、ちゃんと仕事に専念しているこびと、嬉しくてはしゃいじゃっているこびとなど様々な様子が楽しいですよ。
☆ サンタさんの部屋に置いてあるマグカップに描いてあるこびとは、前作『おたすけこびと』に一度だけ登場しているらしいです!

―― サンタさんの部屋はどんなイメージで描かれたんでしょうか?

コヨセ:「寒い国の牧場的な所にある建物。外は寒そうなんだけど、中は暖かくて、というイメージですね。仕事部屋として整然としていて、棚はたくさんいるだろうな、とか考えながら。サンタさんの机の上には住所録もつんであります。」

なかがわ
:「サンタさんが着ているセーターもお洒落ですよね。コヨセさん、ニットものには愛があるんですよね。」
コヨセ:「ありますね。」
そんな所も見所かも?

―― 今回も見返し(表紙の裏の部分と、裏表紙の裏の部分)がかなり楽しい感じですね。

コヨセ:「ここには気が付きましたか?最初と最後の見返しのページは楽しいでしょう。」
なかがわ:「ここは女の子もキャー、ワーなんて言いながら楽しめるポイントですよね。この2ページだけで、子ども達はどんどん物語をつくっていくんです。絵によってどんどん世界が広がっていく、それがとっても面白いですよね。」

コヨセ:「この見返しの場面はね、作品の制作が始まって最初の頃に描きあげたんですよね。おたすけ会議に持っていって『これいいでしょ?』って言ったら、にこりともしないでチェックが始まったんです。」(一同笑)

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なかがわ、編集者:「そんなことないですよ!最初は感動してたじゃないですか。でも、それには理由がちゃんとあるんですよ。前作『おたすけこびと』の時、コヨセさんが想像以上の数のこびとを描いてきたのでびっくりしたんです。それはいいのですが、ちょっとおかしな事になっているこびとや塗り残しがたくさん見つかったんですよ。だから、みんなでチェックを入れる作業は恒例になっていて。でも、今回は一個も間違いはなかったですね。」
前回の取材では、こんな話は一つも出なかったですよね(笑)。



 ■ 子ども達にはこの作品をどんな風楽しんでほしい?             

―― 出来上がってみて、子ども達にはどんな風に楽しんでもらいたいですか?

コヨセ:「こういう内容のものは好きなように楽しんでくれたらそれでいい、私が言葉にする必要が全くないんじゃないかと思ってます。
以前、ある写真を見せてもらったことがあるんです。男の子が、こたつの上に『おたすけこびと』を広げて座ってテレビ見ている写真、それから今度は腹ばいになってその下に『おたすけこびとのクリスマス』が広げてあるという写真。どちらも目線はテレビなんですけど、それがすごくいい写真なんです。絵本の楽しみ方の景色としてね。それでいいんじゃなないかな、その子にしか楽しめない楽しみ方があっていいんじゃないかなって思いますね。」
その男の子は、まず朝起きると『おたすけ~』を抱えて、ごはんを食べるにも何をするにも取りあえず持って行動するそうなんです。「おたすけ~」は愛されているんですね・・・。

―― それでは、絵本ナビ読者である大人の方に向けてこの作品の魅力を語るとすれば?

なかがわ:「ありふれた言い方かもしれませんが・・・やっぱり想像力なんでしょうね。子ども達が各シーンの中で起きている色んなドラマを想像できるんですよね。例えばこのシーン。

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ある小さな男の子がね、このシーンを開いてじっと見ながら恍惚とした表情でため息をつくんですって!「ほお~」って(笑)。多分、彼には色んなことが想像できちゃうのでしょうね。単純に絵として見ると、もっと迫力あるページなんかが他にもあるんだけれど、このシーンには隙間がある。こどもがいっぱい想像できる隙間があるんです。もし、自分がこびとだったら・・・なんて、子どもたちの中ではすごい迫力で場面がせまっているのかもしれないですね。」
コヨセ:「このシーンは、全てを俯瞰(ふかん)しているんですよね。玄関先があって、小さい車がいて、小さなこびと達がいて、大きな犬がいて。そこが何が起こるのか。それを上から見下ろして。想像は尽きないかもしれませんね。」



 ■ 初めての絵本と今回の気持ちの変化                    


最後に『おたすけこびと』が絵本作品デビュー作、「おたすけこびとのクリスマス」が2作目となったコヨセさんにその心境などをお伺いしてみました。
―― 前作『おたすけこびと』が初めて手がけられた絵本だったコヨセさん、新作が出るまでに気持ちの変化などは何かございましたか?

コヨセ:「本当の事を言うと、2冊目は出ないと思っていたんです。1冊目のアイデアが秀逸すぎて。単純なことだけどスゴイ!と思っていて。こんなすごいものが2回はできないだろうなと思っていたんですよね。だから今回は、一作目を超えるものが出来るのかなぁというプレッシャーというのが結構ありました。
でも、出来上がってみると意外と好感触でほっとしているというのが本心です。読んでいる人がどう受け取るかというのは、想像できない部分もありますが、この作品を買ってくれるというのが僕の中では一つの答えとして受け取っています。そういう意味では、今はほっとしていますね。」

―― 子ども達の反応やレビューなどというのは未体験だったと思うのです。でも絵本というのは、そういう反応も含めて出来上がっていくんですよね。そういう意味では今回絵本が仕上がってからの気持ちも全然違ったのではないでしょうか?

コヨセ:「それはありますね。100%違いました。『おたすけこびと』の時は描き終わって編集の方に絵を渡した時点で終わった~と思ったんですが、今回は渡した時点で始まったという感覚でしたね。さぁどうする、どうなる、と。」

そうです、絵本ナビでの「おたすけこびとのクリスマス」はまさにこれからがスタートですね!
コヨセさんは本当に皆さんのレビューを楽しみにしてくれているんです。この絵本がより多くの子ども達に楽しんでもらえるように、皆さんで盛り上げていきましょうね。



 ■ 豪華なおまけ画像!                              


『おたすけこびと』を持っていらっしゃる方は気になっている方も多いかと思うのですが、著者紹介コーナーのお写真がとってもユニーク!

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制作時、なかがわさんのレシピをもとにコヨセさんが編集チームと共に徳間書店さんの中でケーキを作ったそうなのです。それがなぜか「ふくらまない!」。でも何とか作ったんだという証拠写真として撮られたのがコヨセさんのお写真。それを聞いたなかがわさんがわたしもつくるわ!と言い、「同じレシピでつくってふくらみました!」とかなり得意気顔なのがなかがわさんのお写真。エピソードを聞けば聞くほど笑ってしまいます。
「まぁ、環境、道具が悪かったんですよね。」なんて、目の前で編集の方にまた慰められているコヨセさんが更に可笑しいのです。

じゃあ2巻目はどうしよう、という話になって。絵が描き終わって気が大きくなったコヨセさんが「じゃあ僕つくります!」と言って作り始めて完成したのがこちらの写真。

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▲今回の撮影は徳間書店さんのエレベーターホール!

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▲背景もその場でコヨセさんが描いております。
「これ真夏だったんですよね・・・」(なかがわさん)

著者紹介ページなのに、顔がほとんど隠れちゃってますね?
なかがわ:「これは意味が深いんです。わたしがサンタ、コヨセさんはよく働くトナカイ」
コヨセ:「あー!そうだったんだ」
なかがわ:「知らなかったの?」

段々こちらも、この絶妙の掛け合いがクセになってきてしまってます(笑)。

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最後に記念写真をぱちり。
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イソザキも一緒に。なぜかポーズまで付けられて。すごい盛り上がっています。

お二人とも楽しいお時間をどうもありがとうございました。
この取材を通して、「おたすけこびと」という作品が作者にも出版社にも本当に愛されているという事がよーく伝わってきました!
ちなみに次回作は・・・気長にお待ちくださいとのことでした。

★コヨセ・ジュンジさんが絵本ナビ読者の為に素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!
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2009年11月24日

絵本『かわいいことりさん』他
翻訳者石津ちひろさんにインタビューしました!

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それぞれ個性的な翻訳絵本『かわいいことりさん』『サラちゃんとおおきなあかいバス』『おばけやしきにおひっこし』(全て光村教育図書刊)。これら3冊の翻訳をされているのは絵本作家、翻訳家として活躍されている石津ちひろさんです。

更にこれから発売される最新刊『ふゆのようせい ジャック・フロスト』の発売を記念しましてインタビューが実現しました!それぞれの作品の魅力について翻訳された石津ちひろさんからの口か語られるこの企画。何とも贅沢だと思いませんか?
インタビューを通して、絵本作家としての石津さんの魅力についてもたっぷりお伝えできると思います。どうぞお楽しみください。

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石津ちひろ
1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。

石津ちひろさんの作品はこちらから>>>
            

お会いした瞬間から、太陽の様に明るく気さくなオーラが伝わってくる石津ちひろさん。最初から笑いの絶えない楽しい雰囲気の中、取材をスタートさせて頂きました・・・。


◆特別な一冊『かわいいことりさん』                                                    

まず最初の一冊は、石津さんもお気に入りというこんな絵本についてお伺いしました。          

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かわいいことりさん』 
クリスチャン・アールセン・作 石津ちひろ・訳  光村教育図書刊
※作品の内容詳細・みどころはこちらから>>>


最初に出会った時から・・・。
小さな頃から鳥が大好きだったという石津さん。モチーフとしての鳥も好きで、色々小物を集めたりもされていたそうです。だからこそ、この絵本は、表紙をひと目見てとても気に入ってしまったそうなんです。

「でもそれ以上に、読んでみてその内容に強く心を惹かれました。人間にとって、避けて通れない「死」というものが大きなテーマになっていて、本当は悲しいお話なのですが、でも、もしこんな形で人生の最期が迎えられるのであればそれは幸せなことなんじゃないかと思えたんですね。この絵本の登場人物たち(鳥を観察するのが仕事のプリュームさん、鳥のさえずりが好きな奥さんのマドレーヌさん、そして孫娘のチェリーちゃん)みんなが鳥を通して密接なつながりがありますよね。そこのところがうまく出せればいいなと思いました。」

個人的にもすごく思い入れのある一冊
そもそも「動物が好きな人に悪い人がいない」という想いがあるとおっしゃる石津さん。この作品も、とにかく好きなお話だなと思って、心を込めて翻訳されたそうです。でも完成した後、石津さんにとって大きなある出来事があったそうで・・・。

「この絵本が出来上がったあと、(本作を出版された)出版社の方にお会いしたんです。その時に、なぜかしきりに自分の父の話をしたんですよね。普段あまり父の話をすることなんてなかったのに。実は、そのちょっと前から父は具合が悪かったのですが、出版社の方にお会いした後すぐに容態が悪くなったと連絡が入り、慌てて駆けつけて、その10日後に亡くなったんです。
そういうかなり悲しい事があって。でもこの本があったおかげで、『父はいつもそばにいてくれるんだ、見守ってくれているんだ』と思えて、支えになってくれたところがあったんです。絵本の中のチェリーちゃんのように、父から受け継がれていくものがあるんだろうな、と。父が最期に『みんながいるから幸せ』と言っていたのがとても心に残りました。
そんな風に自分の事とも照らし合わせながら、例えば悲しい思いをした人でも、この絵本を読めば何か救いを感じるんじゃないかな、と考えて。だからとても大切な一冊なんです。」

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作者クリスチャン・アールセンの魅力について
石津さんの目から、この作品の具体的な魅力についてもお伺いしてみました。

「登場人物、鳥、果物、ケーキなど、出てくる全てのものをすごく丁寧に描かれていて、愛情が感じられますよね。日常生活をとても大切にされている感じが伝わってきて、いいなと思います。色づかいもとても鮮やかで、お子様が見ても親しみやすいんじゃないかしら。それに、悲しみも喜びも感情を色で表現されていてるのも魅力的。
重厚なテーマを扱っているけれども、読んだ後にほのぼのとした気持ちになれるんですよね。それでいて大切なものは残る感じ。それは、絵の力によるところも大きいのかもしれませんね。『死』というものをいい意味で身近であたたかく描かれているところにとっても共感できます。」


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翻訳について
静かに淡々と、でも楽しさや愛らしさも伝わってくるような文章がまたとても魅力的。翻訳される時に気をつかう部分はあるのでしょうか?

「翻訳している時はいつも無意識ですね。原書の雰囲気を壊さずにと思って表現しています。しっとりと落ち着いた感じで、でも重くなりすぎず・・・という感じに自然と表現できたかな、と思ってます。」

原書のフランス語のニュアンスも出ていると喜ばれていた編集の方。きっと、英語とフランス語、両方に堪能な石津さんならではの表現もあるのでしょうね。

読み終えた後に・・・

「この絵本を読み終えた後に、家族や親子、または兄妹、夫婦間など少しでも感想を述べ合ったりしてくれたらいいなと思いますね。一冊の絵本なんですけど、一つの演劇、映画を観終わったような感じってあると思うんですよね。絵本以上の広がり、深みがあるような気がします。まだ小さいチェリーちゃんですが、こういう思い出があれば、きっとこれからの困難も乗り越えていけるんだろうな、なんて思ったりします。」



 ◆子どもの心に寄り添うお話『サラちゃんとおおきなあかいバス』                                                 

次にご紹介するのは、小さな女の子が主人公のこんな絵本。

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サラちゃんとおおきなあかいバス
ジェーン・ゴドウィン・作 アンナ・ウォーカー・絵 石津ちひろ・訳 光村教育図書刊
※作品の内容詳細・みどころはこちらから>>>

取材日の2~3日前に出来上がりを見られたばかりという石津さん、ちょっとほっとされた様子で話して下さいました。

まず名前をつけるところから
「原作では主人公の女の子は『LITTLE CAT(リトルキャット)』と表現されているんです。愛称なのかな?それで、まず女の子に名前をつけたいと思ったんです。親しみが持てるように『~ちゃん』がいいなと思って。絵本の中でも一番小さいですしね。それから、日本にもありそうだけど世界共通の名前は・・・と考えて。そしたら知り合いの娘さんの「サラちゃん」っていう子が思い浮かんだの。(石津さんの)娘に聞いてみたら『うん、ぴったりぴったり。』って言ってくれて。」

そうして決まった名前サラちゃん。

「親しみやすくて、愛おしい存在。でも本人にはすごく不安な気持ちがあって・・・。そんな感じが出せたらいいなと思ったんですよね。」

石津さんにとってのサラちゃん

「最初、原書で『LITTLE CAT』と表現されていたこともあって、猫好きの私としては、この子のことを見守ってあげなきゃいけない存在だなと思ったんです。でもそれと同時に、私自身、子どもの頃二人の姉の後ろをついてまわっていて、サラちゃんに自分を投影するような感じもあって。立場として両方の感情がありましたね。」

赤いバスとサラちゃんの関係
そんな小さなサラちゃんと対照的に、とても大きな存在として描かれている赤いバス。その関係性の変化もこのお話の大きなみどころですね。

「サラちゃんにとってのこの大きな赤いスクールバスというのは、楽しいのだけれど、どこかちょっとやっかいな存在でもあるんです。(お姉ちゃんはすぐに友達の所へ行ってしまうし、好きな場所にはなかなか座れないしね。)だけど憧れの存在でもあって。ある日、ハプニングがあったけれど、サラちゃんは一番前の特等席に乗って一日過ごせるんです。まるで自分だけの秘密ができたみたいに。『わたし、一番前にのったことあるんだもん。』って。その満足感でこれからの日々、もう赤いバスのことはずっと好きなんじゃないかなと思えました。
赤いバスというのは、『物』なんだけれど、サラちゃんにとってすごく大きな存在で、社会でもあるわけですよね。自分が小さいばかりにいつも損な立場にあるんだけど、ある日一人で不安な思いをして、でもそのおかげで一番前に座れるというラッキーなできごとがあって。」

そんなちょっとした事が、サラちゃん自身をリラックスさせるかけがいのない思い出になったのでは、とおっしゃる石津さん。大人の目線から見ると、本当に些細で微笑ましい出来事なんだけれども、確かに自分がサラちゃんの目線に降り立ってみると・・・これは大事件ですよね。サラちゃんの目線を追っていくうちに、子どもの頃の不安な気持ちを思い出したり、自分の中のそんな経験と結びつけて思い出したりして。
(実際この取材時にも、それぞれみんなの小さい頃の思い出や、バスの中での出来事などが次々と飛び出して大いに盛り上がったんです!)

「そんな心情の変化やバスの存在感の変化が、絵によって繊細に細かく、そしてとても愛らしく表現されています。読みながら、また眺めながら、子ども達は自分に照らし合わせて、また大人は思い出したり見守ってあげたりしながら楽しんでほしいですね。」



◆立派なご意見番!                                                              

少し話ははずれますが・・・『サラちゃんのおおきなあかいバス』についてのお話の中で、名前を決定される時に娘さんに相談されたとおっしゃっていましたね。

「娘には普段から色々手伝ってもらってるの(笑)。小さい頃からバレエを習っているので『くるみわり人形』などのバレエの絵本では、ポーズを全部チェックしてもらったり。作品についても意見を聞いたりするんです。結構ダメ出しがあるんですよね。『全然ダメじゃん。』『うん、随分よくなった。』『これじゃ石津ちひろじゃないよ。』なんて(笑)。」

ご家庭での雰囲気も伝わってきます。そんな一面が垣間見られると、石津さんにぐっと親しみを感じられて嬉しくなっちゃいますね。
さて、次にご紹介する作品では、そんな娘さんがご意見番として大活躍されたそうで・・・。



◆娘さんもお気に入り!『おばけやしきにおひっこし』                                                    


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おばけやしきにおひっこし
カズノ・コハラ・作 石津ちひろ・訳 光村教育図書刊
※作品の内容詳細・みどころはこちらから>>>

テンポの良い絵本の翻訳は結構大変!?

「この作品は絵がとってもくっきりしていて、文章が短くて、リズムがあって、きびきびしていて。軽やかな感じを・・・と思って訳してみたんです。そしたら娘から『全然ダメ、テンポが良くない』ってはっきり言われて(笑)。それでまた最初から全部やり直したんですよね。」

確かにこの作品は、先に紹介した2冊とはがらっと雰囲気が変わりますね。石津さんに対するこちらの勝手なイメージで想像して、こういうパキっとした感覚の作品の方がご自身に近くて翻訳しやすいのかなと思っていると・・・。

「翻訳の時は結構しっとり系の方がすんなりと出来上がるんです。言葉遊びなんかを作っていると、歯切れのいい言葉づかいがぱっぱと浮かぶんです。それが翻訳になると、こういうタイプの作品は、結構何度も何度もやり直しながら、絵と合わせてしっくりくるように完成させていく事が多いんですよね。(『リサとガスパール』シリーズなんかもそういう感じなのだそうです!)娘が感覚的にダメ出しをしてくれることも多いですね。」

それでも次に出来上がってきた石津さんの文章は、編集の方もはっとする程がらりと変わっていて、本当に感動されたのだそうですよ。結果的には、娘さんもこの作品が大のお気に入りとなったそうです!


作品の魅力
表紙からぱっと目をひくこの作品。オレンジと黒の2色の風景に、白い紙をはったような表現のおばけがとってもユニークです。作者はイギリスで活躍されているカズノ・コハラさん。まだとてもお若い方なのだそうです。翻訳者の石津さんの目から、その魅力を語って頂きました。

「使っている色自体はとても少なくて、構図もシンプル。でもここまでみごとに表現できるなんてすごいなと思いますね。人を引き込む力があるんですよね。すぐ目の前でその出来事を見せてくれているような。版画で表現されているんですけど、リアルに目の前で展開しているような躍動感があって。お話の方も、テンポが良くてぐいぐい進んでいきます。読み聞かせ会などで読んだとしたら、例えば絵本に慣れていないようなお子様でも引き込まれていくでしょうし、みんなが楽しんでいる様子が目に浮かぶようですね。」

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マージョリィとオスカー
この作品も、原書では名前はついてなかったそうです。そこで親しみを持ってもらうために名前をつけようという話になったそうです。ところが、カズノ・コハラさんは日本人の方なので(イギリスを拠点に活動されているので、原書は英語。)翻訳版を出版するにあたって、コハラさんご自身の指定で新たに名前がつけらたそうですよ。
女の子がマージョリィで、ねこがオスカー。魔女らしく、それでいてとってもキュートな名前ですよね。



 ◆最新刊は『ふゆのようせい ジャック・フロスト』                                                  

以上3冊に加えて、最後にご紹介するのはこれから発売される新刊『ふゆのようせい ジャック・フロスト』。『おばけやしきにおひっこし』の作者カズノ・コハラさんの新作です。取材時にはまだ出来上がっていなかったので、どんな内容なのか、石津さんに少しご紹介して頂きました。


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ふゆのようせい ジャック・フロスト
カズノ・コハラ・作 石津ちひろ・訳 光村教育図書刊
※作品の内容詳細・みどころはこちらから>>>

『おばけやしきにおひっこし』とはまた違った魅力!

「『おばけやしきにおひっこし』と同じ作者の方の新刊なんですが、雰囲気がまたガラっと変わって。こちらは冬の冷たくて澄み切った空気、ひやっとする感じが伝わってきますよね。色が本当にきれいで、空気感がすごよく伝わってきて。」
今作の舞台は冬。きれいな青い風景に、まばゆいばかりの白い線がとても印象的!

「季節は冬。退屈していた男の子の所へ、ジャック・フロストという『ふゆの精(日本語で直訳すると霜の精なのだそうです!)』が現れるんです。ジャック・フロストと一緒に、男の子は雪や氷の上であらゆる冬の遊びをします。この場面は実際に一緒に体験しているようで、見ていてすごくワクワクするんですよ。
でもある時男の子が聞くんです。『ねえ、ずっといっしょに遊べるの?』
ジャック・フロストは『遊べるよ。でもぼくの前で春の話はしないでね。魔法がとけちゃうから』と言うのですが・・・。(続きはお楽しみに。)
ちょっと切ない部分もあるのですが、最後にとてもあたたかい気持ちになれる内容です。
もちろん、雪がたくさん降る地方の子どもたちが読んでも楽しいですし、反対に雪を見たことがない様な暖かい地方の子ども達も、憧れの気持ちで楽しんで読めるかもしれませんね。」

これから要注目の作家さん
この作品では、前作とはまた違った魅力を発揮しているカズノ・コハラさん。冬の風景の描き方など、とても大人っぽく上品な雰囲気。でも登場人物たちがとても可愛らしく、そんなバランス感覚が何とも絶妙と石津さんも絶賛!コハラさんの作品は、出版されたイギリスでまず火がつき、更にニューヨークでも『おばけやしきにおひっこし』(初めての絵本!)でニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞に選ばれるなど、世界が注目する新進気鋭の絵本作家さんなのです。これからの展開も本当に楽しみですね。

翻訳版にだけ登場!
最後にとても石津さんらしいエピソード。『ふゆのようせい ジャック・フロスト』では男の子と一緒にワンちゃん(犬)が一緒に描かれています。原書では文章には登場していないそうなんですが、石津さんの翻訳バージョンにはちゃんと一緒に登場しているそうです。

「(編集の方に)言われて、『あぁ、そういえば』って気がつきました。ワンちゃんとか動物が出てくると無視できないんです、私(笑)。自然と登場させていました。」

そういえば『おばけやしきにおひっこし』でも、猫にもしっかり名前が与えられています。本当に動物が大好きなんですね。

今回ご紹介頂いた作品4冊に、石津ちひろさんが直筆サインを描いてくださいました!

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気になる作品がありましたら、是非チェックしてみてくださいね。
続いて、絵本作家石津ちひろさんについてもお伺いさせて頂きました。



◆絵本作家 石津ちひろさんが生まれるきっかけ                                                    

今回の特集の様に、絵本の翻訳家として大活躍されている石津ちひろさん。(「リサとガスパール」シリーズも全て石津さんが翻訳されてます!)でも「言葉の魔術師」と評される通り、回文やなぞなぞを初めとして言葉遊び絵本をたくさん生み出されている作家さんでもあります。その他絵本作品も合わせると、絵本ナビに登録されているだけでも170作品以上!そのラインナップを見ていくと、意外と慣れ親しんでいた絵本が実は石津さんの作品だった・・・という方も多いのではないでしょうか?そんな石津さんに、絵本の仕事に携わるきっかけとなったエピソードをお伺いしてみました。

全てのきっかけは回文から

「絵本の仕事を始めさせて頂くきっかけとなったのは『まさかさかさま 動物回文集』(絵・長新太 河出書房新社刊)でした。」
と石津さん。全ては回文がきっかけなのだそうです。

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「パリに留学していた時に、たまたま集まっていた2~3人の日本人のお友達とカフェでお茶をしていた時、『回文の作りっこをしよう。』という話になったんです。その当時、回文なんて知らなかったので聞いてみると『上から読んでも下から読んでも同じもの』とのこと。で、『例えば・・・きしゃのやしきとか?マカオのおかま?』なんて口に出してつくってみたんです。そしたらお友達が『紙に書かないで出来るんだ。すごーい、天才!』なんて言うから、『てんさい?じゃあ・・・さいさんててんさいさ。』どんどん出来たんです。それがすごくお友達に受けて。私こんなに受けたことなかったかも!なんて思った事が回文作りの最初のきっかけでしたね。」

うーん、何とも軽やかなきっかけ。口に出してみたら出来たなんて、石津さんらしいエピソードです。でも、ここからがもっとスゴイ。

回文が本になるまで

「それから日本に帰ってきて。暫く回文の事は忘れていたんですけど、ある日部屋にかすみ草を飾った時にふと『カスミソウ?逆さに読むとウソミスカ。じゃあ・・・わたし かすみそう うそみすかしたわ』できた!と。他にも『きりん ねていて ねんりき』『ちんぱんじいから かいじんぱんち』なんて色々思いついたんです。お友達に話してみたら、『それ絶対面白いよ!動物ばっかりで作ってみたらどう?』って言ってくれたんです。それで10個位書いてたんですよね。」
このお話を聞きながらも、石津さんの口からスラスラ出てくる回文に驚かされっぱなしです。いくらでも出てきそう・・・。

「ある日、何かのきっかけで河出書房新社の方から『お茶でも飲みにいらっしゃい。』と誘われたんですよね。飲みにいらっしゃいと言われても、何も持っていかないのも・・・と思って、作った回文を10個位持って行ったんです。そしたら『これ、面白いかも!』と言ってくださって。この動物回文を80~100個位書けたら本に出来るかもしれない、と言われたんです。」

もう、その帰りからずっと回文を考え始めたという石津さん。この頃お子様が誕生されたばかりで、なんと0歳の赤ちゃんを抱えながらずっと作っていらっしゃったそうです。目に見えたもの何でも回文にして・・・。

「そしたら130個位出来たんです。」

130個!そうして本を作る事になったら、今度は絵を長新太さんが描かれることになって。今では回文を書きながら絵が同時に浮かぶ事も多いという石津さん、この時の長さんとのやりとりで色々学ばれた事が多かったそうです。何ともうらやましい話ですね。その後も藤枝リュウジさんと組まれた人気シリーズなど、回文や早口言葉など言葉遊びシリーズは沢山出されてます。

お子様との生活の中で生まれた「なぞなぞのたび」
それにしても、まさに子育ての思い出と、回文作成の思い出が一緒になっている感じなのではないでしょうか?

「そうそう。だから娘は小さい時、原稿用紙のマスを○で埋めながら『オシゴト』『マシャカシャマよ』なんて言ったりしていましたね。ちょっと大きくなると、幼稚園のお迎えの自転車の上で『ママ早く帰りたい』って言うから、お腹空いたのかな?と思ったら『いい絵の考えが浮かんだの』なんて口にされて、驚いたこともあります(笑)。」

「そんな風にして家でずっと仕事していたから、じゃあもう日曜日だけは仕事をやめよう、娘となぞなぞでもしよう!・・・で生まれたのがこの『なぞなぞのたび』なんです。」

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まさにお子様との遊びの中から生まれた絵本だったんですね。この絵本、小学生に大人気です。この日も石津さん自ら出題してくれました。

「あさにはなくて ひるにあらわれ よるのあいだは ずっといて 
 あさになると またきえる さていったいなあに?」
さあ、皆さんも考えてみてくださいね!絵を見ながら考える問題なので、気になる方は本を覗いてみてください。(※答えは記事の最後で)

更につながっていって・・・
その『なぞなぞのたび』を、あるイベントでみんなの前で読む機会があったそうです。たまたま新沢としひこさん(シンガーソングライダー・絵本作家)が司会をしていらしたそうで。(新沢さんはすごく回文がお好きだったらしく、石津さんに初めて会われた時も「あの『まさかさかさま』の石津さんですか!』なんてすごく喜ばれていたそうなんです。)

「なぞなぞをいくつか読み終えた時に、新沢さんが『石津さんのなぞなぞって、何だか詩みたいだよね。』って言うから、照れ隠しに『知らなかった?私詩人なのよ。詩を書かない詩人なの。』って言ったんです(笑)。」

それをたまたま会場で編集者の方が聞いてらして、数日後、石津さんに声をかけられたそうなのです。「詩集を出しませんか。」って!それがきっかけで出来上がったのが『あしたのあたしはあたらしいあたし』。

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ここまでお伺いしていて多くの方も感じられているでしょうが、本当に<お仕事のしりとり>みたいだと思いませんか!何だかとっても不思議なお話です。その後も絵本のお話を書かれたり、翻訳の仕事をなさったり。大活躍の石津さんなのです。
石津ちひろさんの作品一覧はこちらからどうぞ>>>




◆娘さんとの貴重なエピソード!                                                 

お話の中で、度々登場している石津さんと娘さんとのエピソード。子育て中の方が多い絵本ナビ読者にはとっても気になる部分ではないでしょうか。そんな皆さんの為にとっておきの微笑ましいエピソードも教えてくださいました!

「実は、リサとガスパールの絵本の中でよく登場するセリフ『ひゃー、やっちゃった。』というのは、娘の口グセだったんです。よく驚いた時に『ひゃー!』って言ったり、失敗したら『やっちゃった。』なんて言っていて。」

そうだったんですね!あの可愛らしいセリフは、シリーズを通してもとっても印象的ですよね。あれ、そういえば『あしたうちにねこがくるの』の中にも「ひゃー、かわいい」というセリフがありますね?

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「あ、そうそう。これもそうですね。」
それから思い出したように・・・
「そういえば、娘が小学生の頃に移動教室をかねて山登りに出かけた事があったんです。その日に担任の先生が宿泊先から家に電話をかけてくださったんです。どきっとして、『何だろう?』 と思っていると、先生が『実は・・・娘さんが、猫を拾ったんです。』って言うんです。『それが・・・とっても可愛いんです。2匹なんです。』って(笑)。」

娘さんは猫を連れて帰りたいと泣くし、校長先生に確認をしなければならないし、ミルクをやらなければならないし、ちょっとした騒動になっていたようなんです。

「それで、家でわくわくしながら待っている間に私が考えたんですよね。『どんな猫なんだろう?』『山にいた位だからすごく弱ってるのかな?』『目は何色なんだろう?』なんて。そしてたらすご―く可愛かったんです!!まさに『ひゃー、かわいい!』です。あの絵本は、実はこの出来事がきっかけで生まれたんですよ。」

そのまま2匹の猫は石津さんのご家族になられたそうです。



◆最後に・・・                                                  

絵本作家になられて良かったと思われる事はありますか?

「もちろん、自分の作品が本として出来上がるというのはとっても嬉しいことです。でも、何よりも・・・これは答えにはなっていないかもしれないんですけどね。絵本の仕事を始めてから、この業界の方達が本当にいい方ばかりなので嫌な思いをした事がないんですよね。絵本作家の方にしても、編集の方にしても。とてもいい方に囲まれて生活できるというのが、本当に幸せなことだなあって思うんです。」

絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いできますか?

「絵本っていうのは一冊ずつ完結していますよね。でも、例えば自分の好きな猫の絵本であったり、乗り物の絵本であったり、テーマを決めて読んでみたり。そういう風に系統をつけながら読んでいくと、世界が広がっていって楽しいですよね。
それからなぞなぞだったら、お子様に読むだけでなく、自分自身も一緒に考えたりして楽しんでほしいですね。更に自分でもなぞなぞをつくってみたり、回文や折句なんかを考えてみたり、参加してみる事を是非おすすめします。
他にも、例えば今回ご紹介した『かわいいことりさん』の本を読んだ後だったら「鳥を見つけてみよう』とか、「サラちゃん~」だったらバスに乗ってみようとか、シーツでおばけになってみようとか、絵本を読んだ後、日常生活に結び付けて考えてみると楽しめるかもしれませんね。」

なるほど、そんな風に絵本を楽しめるのも実際に子育てを楽しんでこられた石津さんならではなのかもしれませんね。

「それから大きくなってから絵本を読む事によって、子どもの頃の感覚を思い出せるという効果もあると思うんですよね。自然体だった頃の感覚を思い出したり、小さい頃に親に読んでもらって嬉しかった時の感覚を思い出せたり。そういう意味では、親子で絵本を読む時間っていうのは子ども達にとっては宝物のような、本当に大切な時間なのでしょうね。」

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ありがとうございました!
色んな方との出会いがとっても嬉しいとおっしゃる石津さんですが、話していると、こちらの方が何だか幸せな気分になってくるんです。きっとまわりの皆さんもそう思われているのでしょうね。ついつい長い時間お話をお伺いしてしまいました。
翻訳のお話から回文のお話、更には子育てエピソードまで、本当に独自の才能に溢れている石津ちひろさんに魅了されっぱなしのインタビューでした。

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最後に記念にパチリ!
この後、ご一緒にお茶までお付き合い頂いたのでした・・・。


※なぞなぞの答えは・・・「る」


2009年11月18日

あなたのお気に入り「あいうえおん」は?
アンケート結果の発表です。

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今年の6月、絵本ナビメルマガで『あいうえおん』の特集号をご紹介しました。
メルマガバックナンバーは">こちら>>>

その際に作者のあきびんごさんからの宿題として、「お気に入りあいうえおん」を募集しました。
詳細はこちら>>>

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あいうえおん
あきびんご・作 くもん出版・刊

この度、大好評の絵本『あいうえおん』がそのままカルタになりました。

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あいうえおんカルタ


その発売を記念に、カルタの札を使ってアンケート結果をご紹介してみましょう!


■ あなたのお気に入り「あいうえおん」を教えてください!                 



★1位
・・・1位はこちらの2点。べんとうは大人に、ゼリーは子ども達に人気がありました!

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「ベンチで べんとうが べんきょう」

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「ゼリーに ぜんぶ ぜっけん」



★3位
・・・次に人気があったのは、りりしいトラがカッコイイこちら。

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「とんぼに とらが とまってる」


★4位・・・4位以下は票が割れました。あなたのお気に入りは入ってますか?

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「ポストから ポップコーンが ぽろぽろ」     「メロンと めだまやきの めがね」
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「ちりとりに ちいさな チンパンジー」     「おにの おならは おおきいな」

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「ざぶとんに ざると ざりがに」

★9位

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「てんしと てんぐが テニス」
「ぶどうがぶたにぶつかる」
「あひるの あかちゃん あまえんぼう」
「いぬが いちごを いただきます」

★その他 

「きゅうきゅうしゃに きゅうりと キューピー」
「ニュースで にゃんこの にゅうがくしき」
「たこと たぬきが たいそう」
「すずめが すべりだいで スキー」
「げんかんで げたが げらげら」
「しゃちが しゃしんにしゃべってる」
「ケチャップと ケーキが けんか」
「ばしゃに ばけた バナナ」
「だるまが だいこんに だきつく」
「ぎょろめの ギョーザが ぎょうれつ」
「うまの うしろに うしがいる」
「へびの へやは ヘルメット」
「コアラが こたつで こっくりこっくり」
「パンダが パイナップルで ぱくぱく」
「さると つるが るすばん」
「ちょうの チョコレート ちょうだい」
「うさぎの ギターは ギザギザ」
「ヨットが よっぱらって よちよち」
「あんパンが しんかんせんを うんてん」



■ オリジナル「あいうえおん」を思いついた方は教えてください!                 

●「さると サメが さかなつり」

●「はさみの はしに はえ」(ハサミの端にハエ)

●「はな(花)が はな(鼻)に はな(話)しかける」

●「ウーパールーパーが うけつけで うまれる」

●「かっぱの からは かめ」

●「スリッパの すきまに すずめばち」

●「おかあさんが おおかみと おてだま」

●「あめのひに あまがえるさん あささんぽ」

●「おとうさん おみせで おろおろおろ」

●「きゅうりの きゅうどう かにとかきがかった」

●「くつに くりが くっついた」

●「パパの パンが パンクする」

●「ぶらんこに ぶらさがる」

●「さんまが さかみち サイクリング」

●「ビ-ルに 備長炭で ビビンパ」

●「かっこう かけっこ かてるかな」

●「ごきぶり ごきげん ごみのやま」

●「さるが ささっと さっていく」

●「きりんが きしゃに きりきりまい」

●「まんとひひが まらかすもって まわってる」

●「遠方に エリンギ似の えんどう君」

●「ほんのり ホットケーキの 本心」

●「ななめの なめこが 泣き通し」


皆さん、力作ありがとうございました!!
あきびんご先生にお伝えしましたからね。

他の方もこんな風に是非「オリジナルあいうえん」を作って遊んでみてくださいね。
意外と白熱しちゃうかもしれませんよ。

絵本『おそばおばけ』のできるまで
谷川俊太郎×しりあがり寿×祖父江慎

クレヨンハウス刊 谷川俊太郎さんの「あかちゃんから絵本」シリーズ第9弾『おそばおばけ』で谷川さんと組まれたのは漫画家しりあがり寿さん!この異色の組み合わせは聞いただけでもワクワクしてきます。更にブックデザイナーとしてもひっぱりだこの祖父江慎さんも加わって。一体どの様にアイデアが練られていったのでしょう。今回、クレヨンハウスさんが制作風景を絵本ナビの為に特別にご紹介してくださることになりました。これは貴重です。お楽しみください・・・。

 ■ あかちゃんから絵本の新作はこの3人で!  


『おそばおばけ』は、なんといっても谷川俊太郎さん×しりあがり寿さん+祖父江慎さんという、すごすぎる組み合わせ。最初の打ち合わせからもう、びっくりの展開でした。
谷川さんが、しりあがりさんのために用意したテーマは「せん」。
「ひと筆描きの線」が主人公という提案に、「ライブでできちゃうかも?」と、祖父江さんがその場でコピー用紙を貼り合わせ、しりあがりさんが鉛筆を手に「えいや~っ」と描きはじめ・・・(このようすを詳しく知りたい方は、[月刊クーヨン]2008年4月号を読んでみてくださいね!)。

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第1回目の打ち合わせのようす。左から谷川さん、祖父江さん、しりあがりさん。「ひと筆描きでやったらどう?」「フムフム」
(撮影/宮津かなえ)


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打ち合わせのテーブルが作業台に! いきなり絵本完成!? と思いきや・・・。
(撮影/宮津かなえ)


しかしながらやっぱり、あかちゃんになりきって絵本をつくるには、少し時間が必要でした。
宿題として持ち帰ったしりあがりさん。その後考えることおよそ1年・・・。
着地点を求めて絵本はさまよいました。もう、「せん」は無理かも・・・そんな気さえしてきた頃、しりあがりさんのラフスケッチを見た谷川さんから、パウル・クレーのポストカードが。細い線で描かれたその絵は、なるほど不思議な魅力がありました。・・・やっぱり「せん」でがんばることに。

「せん」=「めん(麺)」というアイデアがひらめいてからは、祖父江さんの事務所で作画の日々。弥次さん喜多さんなど、ご自身のキャラクターはサササーッとものの数秒で描き上げてしまうしりあがりさんですが、このシンプルな線は、意外に難しい! 祖父江さんの「これ!」というOKが出るまで、ひたすら線を描き続けたのでした・・・。



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コズフィッシュ(祖父江さんの事務所)で、しりあがりさん作画中。


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しりあがりさん原画です。こうして「ぼく」と「おそば」別々に描かれたものを組み合わせました。


そうしてようやく完成した絵に、谷川さんが「おそばおばけ」のことばをつけてくれました。うひゃー、「そばばばーん!」だって……! 

「読んだひとはきっと、一日でつくったんじゃないかと思うよね」と言い合いながら、手塩にかけて、手間ひまかけてできあがった絵本です。でも、そんな苦労はみじんも感じさせないこのナンセンス&ユーモアが、すばらしいではありませんか??
読者の方からは、「一度読んだときから子どものアンコールが出た」などうれしいお便りが届いています。
(文/クレヨンハウス編集部 吉原美穂)


☆完成した絵本がこちら!

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おそばおばけ
谷川俊太郎・文 しりあがり寿・絵 クレヨンハウス刊
※内容詳細はこちらから>>>

谷川俊太郎 
詩人。21歳のとき、第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行以来、絵本、子どもの本、作詞、シナリオ、翻訳など、幅広く活躍。著作に『谷川俊太郎詩集』(思潮社)、『みみをすます』『わたし』『ことばあそびうた』(以上、福音館書店)、翻訳に『マザーグースのうた』(草思社)、『スイミー』(好学社)など。さまざまな画家、アーティストとの共作「あかちゃんから絵本」シリーズ(クレヨンハウス)は、今作が9巻目。

しりあがり寿
美術大学を卒業後、キリンビール株式会社に入社し、パッケージデザイン、広告宣伝等を担当。1985年、『エレキな春』(白泉社)で漫画家としてデビュー。近年はエッセイ、映像、ゲーム、アートなど多方面に創作の幅を広げている。著作に『真夜中の弥次さん喜多さん』(マガジンハウス)、『地球防衛家のヒトビト』(朝日新聞社)、『ゲバラちえ子の革命的日常』(中央公論新社)、『ゲロゲロプースカ』(エンターブレイン)など。

2009年11月04日

絵本『ピヨピヨもりのゆうえんち』
工藤ノリコさんにインタビューしました!

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絵本の中せましと動き回るピヨピヨ5人きょうだいが大活躍。
一度見たら忘れられない愛くるしさ!と噂の絵本「ピヨピヨ」シリーズ

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待望の第3弾ピヨピヨもりのゆうえんちの発売を記念して、作者の工藤ノリコさんにいくつか質問をさせて頂きました!ピヨピヨ一家の世界に、すでにはまっている方にも、今気になり始めている方にも、その魅力をより深くお伝えすべくご紹介していきます。


■ テーマは遊び!                                              

【質問1】最新刊『ピヨピヨもりのゆうえんち』のテーマを教えて頂けますか?

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ピヨピヨもりのゆうえんち』 工藤ノリコ・作 佼成出版社

「森の中の遊園地でみんなに楽しく遊んでもらえたら、と思って描きました。」


工藤さんがおっしゃる通り、この絵本の中ではピヨピヨひよこ達5匹はもちろん、登場する全ての子ども達はとにかくあちらでもこちらでも遊んでいます。まさに子ども達にとっての「至福の瞬間」がつまっている様です。


【質問2】この作品を描かれている時、工藤ノリコさんご自身の子どもの頃の記憶が根底にあったのでしょうか?


「記憶のイメージと、浮かんでくるイメージと、半々な気がします。
この『森のゆうえんち』は、子どもの頃に連れて行ってもらった 「こどもの国」とか「アスレチック公園」など自然の中で体で遊ぶだけの場所で 本当に楽しく遊んだので、ピヨピヨたちもきっと楽しいだろうと思って 連れて行きました。 本格的な遊園地で大がかりな乗り物にのるのも楽しいですが、 身ひとつで走り回って遊ぶのが、何より楽しいと思うので。」


【質問3】描いていて、特にここが「お気に入り」という場面はありましたでしょうか?


「巨大な木でみんなが遊んでいるシーン、みんな楽しそうで描いてて楽しかったです。 」


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↑夢中になって遊んでいる様子を見て、子ども達は自分の事の様に楽しくなり、大人はそんな顔を見て幸せな気分になってしまうのでしょうね。


■ 個性的なキャラクター                                          

広い広い「もりのゆうえんち」。ピヨピヨ一家はあちこち動き回りますが、同時に回りにはたくさんの家族がそれぞれの休日を楽しんでいます。それが一度気になり始めたら目を離せなくなってしまうのです。家族構成、性格、お弁当の中身など・・・登場する家族の数だけ繰り返し楽しめるほど!そして、実はこの脇役家族達はシリーズを通して登場しているんです。ブタさん一家、ライオンさん一家、クマさん一家、ゴリラさん一家などなどなど。
このように、工藤ノリコさんが愛情を持って描き出される登場人物やその表情はとても個性的!
キャラクターについてもいくつか質問してみました。


【質問4】個性的でインパクトの強いキャラクター、でもそれが実在の子ども達に重なって見えてくるのが不思議(例えば息子)。ひょうひょうとしているようでいて、でも好奇心に満ちあふれていて、好きなものにはまっしぐら!登場人物にはモデルがいたりするのでしょうか?


「いるような、いないような・・・。」


【質問5】「ピヨピヨ」シリーズの中で、特に工藤さんがお気に入りの一家というのはいるんでしょうか?


「どの家族も大好きです。」


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↑個人的にはカワウソ一家が気になって仕方がないのです・・・。(『ピヨピヨスーパーマーケット』より)


【質問6】「ピヨピヨ」一家のチャームポイントはどんなところ?


「お母さんがのんきなところでしょうか。」

だからピヨピヨ一家はいつも平和でハッピーな雰囲気にあふれているのかも?


■ 絵本作家工藤ノリコさんについて。                             

絵本作家工藤ノリコさんについても少しお伺いしました。

【質問7】 絵本作家になられて良かったな、楽しいな、と思う事を教えて頂けますでしょうか?


「思い浮かんだイメージを、読者の皆さんと共有できることが嬉しいです。 」

【質問8】 こんな絵本がつくっていきたい!というのがございましたら教えて頂けますでしょうか?


「文章だけのお話を書き、挿絵も少しつけてひとつの作品に仕上げてみたいです。」


【質問9】絵本ナビ 読者の方へ向けてメッセージをお願いします!

「絵本をひらいて、楽しい時間を過ごしてもらえたら、とても嬉しいです。」


■ 最後に・・・                                                  

最後に『ピヨピヨもりのゆうえんち』を皆さんにどんな風に楽しんでもらいたいか、素敵なイラストとともに直筆メッセージで描いてくださいました!

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工藤ノリコさん、ありがとうございました!
やっぱり可愛いピヨピヨ。すっかり工藤ノリコさんのペースにはまってきています。

そんな私にとって、そしてピヨピヨファンにとって嬉しいお知らせがあります。
今回の特集企画を記念して、ピヨピヨオリジナルグッズ絵本ナビ限定商品として販売できることになりました!

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↑ピヨピヨひよこぬいぐるみ。絵本からそのまま飛び出してきたような表情がたまりません!

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↑やっぱりピヨピヨは5匹じゃなくちゃ、という方にはお得な5個セットもあります!

購入は絵本ナビShopページからどうぞ>>>


工藤ノリコさんの絵本の世界をもっと覗いてみたくなった方は・・・

工藤ノリコさん作品紹介ページはこちらから>>>
工藤ノリコさん公式HPはこちらから>>>

2009年10月27日

絵本『てんごくのおとうちゃん』
長谷川義史さんにインタビューしました!

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パワフルでユーモアあふれる絵本の数々で、大人気の絵本作家長谷川義史さん。
そんな長谷川さんが、ご自身の「お父さん」をテーマにして描かれたのが今回ピックアップする作品『てんごくのおとうちゃん』。

この度絵本ナビでは、長谷川義史さんへのインタビューが実現しました!講談社創業100周年記念出版の絵本の一冊として制作されたこの作品、どんな想いが込められているのでしょうか。


「はいけい、てんごくのおとうちゃん、げんきにしていますか・・・。」
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『てんごくのおとうちゃん』 長谷川義史・作 講談社
※内容詳細・みどころはこちら>>>

作品の制作の他に、講演会やイベントなどでも全国をまわられている長谷川さん。その合間の貴重なお時間を頂いてのインタビュー、少し緊張しながらの雰囲気で始まりましたが、この作品について、またお父様との大切な思い出について、一つ一つのエピソードをとっても丁寧に語ってくださいました。



■ ずっとお父さんの絵本をかきたかった・・・                                                   

―― 「講談社創業100周年記念出版書き下ろし100冊」の1冊として制作されたこの作品。依頼された時はどう思われましか?

「100周年!・・・すごいなぁ。そんなんやらしていただいていいの?」
最初はそう思われたという長谷川さん。

「どんなんしようかと考えてね。僕の作品には面白いやつ、アホみたいなやつが多いでしょ?それからしっとり系(『おへそのあな』など)。A面B面みたいなもんです。それで担当編集者にどっちでいきましょうかと聞いてみたら、今回はしっとり系がいいかなと言われて。そこからしばらくして僕が『お父さんのことを描きたい』と言ったんです。」


―― 様々な題材がある中、なぜ「お父さんのことが描きたい」と思われたのでしょうか?

「ずっと、お父さんの本を描かなきゃと思ってたんです。」


―― それはいつ頃からですか?

「一番最初の絵本『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』を作った時はそんなこと思ってなくて。その時はただ絵本を作ってみたかった、自分の絵が全部ページに載っている本を作ってみたかったという想いが強くてね。

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おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん
長谷川善史・作 BL出版刊

でも、作った後しばらくすると、読んだ人達から反応が返ってきたんです。そんな事思いもよらなかったんで『絵本って素晴らしいなぁ』と思って。それで絵本の仕事をやり始めたんです。そうして何冊か描いているうちに、お父さんのことを描かなあかんなぁ・・・と思い始めたんですよね。

『てんごくのおとうちゃん』というのは本当の話で、実際僕が小さい時に父が亡くなってるんです。亡くなって随分経って、こんな人(絵本の中のお父さんを指差されて)もう誰も知らないんですよ。身内だって親戚だって亡くなっていくし、こんな人の事をもう誰も知らない。でも、自分にも子どもが出来て、絵本を描き始めて、何かここ(絵本)に描いとけばこの形で残るやん、と思って。誰も知らないんですけど、ここに登場させてあげたらこの人ここにいるじゃないですか。せっかくそれを表現することができる仕事してるんやから、いつかお父さんという切り口で描きたいなぁと思っていたんです。

ちょうど講談社から話があって、こっちとしてはいいタイミングだなぁと思って『お父さんの話を描いてもいいですか?』と提案したんです。」

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―― 普段描かれる時の絵本の取り組み方とは、違う感情が湧いてきたりしましたか?

「違いました。絵本を描くにあたって、絶対にやらないかん使命みたいなものを感じていたので、この作品描いたらもうええんちゃうか、後はもう子ども達が喜ぶようなものを描いたらいいなぁ、みたいに思った。時間もだいぶもらっていたしね。」



■ 『てんごくのおとうちゃん』ができるまで                                 

―― そんな思い入れのある本作品。一つ一つが本当に大事なエピソードなんだろうな、という事がすごく伝わってきます。お父さんの話でいくと決まってからは、内容はすんなり決まっていったのでしょうか?

「お父さんの話で行こうと制作が始まって。最初はこの中の一個のエピソードを中心に話を作り始めていたんです。飛行機のショーを見に行ってホットドッグを食べるくだりがあるんですけどね。それで一個の話を描いてたんです。『ホットドッグ』と仮の題をつけてね。」

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▲完成版にもエピソードの一つとして描かれています。

「その日の出来事を思い出して一冊にまとめて。9割方できていたんですけど、なんかしっくりこない。もうちょっとで出来そうだけど、なんか違うなぁって。
お父ちゃんが飛行機のショーを見に行こう、って言うんです。お母ちゃんは興味を示さないから、ぼくとおとうちゃんとねえちゃんの3人で行って。お母ちゃんなら絶対買ってくれないホットドッグを買ってくれて『やっぱりお父ちゃんってすごいなぁ』と思うんやけど・・・。家に帰ってきて、お母ちゃんはご飯作って待ってるやんか。ホットドッグを食べてきた事なんて知らんとご飯作ってんねん、という絵を最後に絶対入れたいなぁと思っていて。
そんなら、結局お母ちゃんもっていくねん。最後に。(一同笑い)
お父ちゃん、色々やったのに結局最後に母ちゃん(おいしいとこ)持ってくでしょ。

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―― お母ちゃんの絵本になっちゃう!?(笑)

「困った困った、えらいこっちゃえらいこっちゃ、仕事場の中をウロウロと歩いていたら・・・。
『てんごくのおとうちゃん』というタイトルがぴゅーってね、降りてきてん。急に。
天国のお父ちゃんに向けて、というストレートでシンプルなテーマが見えてきて、そうかそうか、これで描けばいいんや!と思って。
そこからすぐに、メモ帳みたいな紙に覚えているエピソードを全部書き始めたんです。お父ちゃんの事でぼく覚えてるエピソードって少ないんですよ。自分で覚えていることをワーっと書き出していったら、30分位で15枚ほどすぐに書けたんです。
それを、この話は先、これは後に持っていこう、これは亡くなる前の話、これは亡くなった後の話・・・順番を決めたり入れ替えたりして、すぐ出来たんです。それが出来上がった瞬間。そんな風にして作ったんです。」



■ 極めて私的な絵本                                             

―― この作品は「お父さんの死」というストレートなテーマがまずあるんですが、例えば私の息子(5歳)は普通に絵本として楽しんでいるんです。その中で「どうしてお父ちゃんは天国にいるの?」「どうして天国にいるはずなのに会えるの?」といった風に自然に質問が来て。子どもって構えるわけでもなく、そうやって目の前の事実を自然に受け止めていくんだなあと感じたんですね。長谷川さんは、実際この作品を描かれている時に、小さい子が読む、子どもが読む、そういう事は想定されていましたか?

「していないです。誰が読むとかは全然考えてなかったです。かえって講談社の人には『こんな個人的なものを出してもええんでしょうか?』と聞いたくらいです。」


―― 絵本を通して読み手に何か伝えたい、という感じではなかったのでしょうか?

「ただ単に父親をここに描いときたい、というのが大きな一つ。反対に、すごい人に言いたいなぁというのがもう一つ大きくあって。

この絵本ってね。人前で読むと自分と重なって泣いてしまう人とかいるんだけど、僕はあんまり悲しく捉えてほしくないと思ってるんです。できるだけ前向きに伝わりたいと。

僕自身、まわりの大人の人や近所のおばちゃんによく『かわいそうにかわいそうに』って言われて、それがすごく嫌やってん。小さかったからだと思うんだけど、たいしてそんなに悲しいこと、というような感覚がなくて。『僕より、死んだ人のがかわいそうやん』というのがすごいあって。それは今もずっと。『死んじゃったらあかんねんで、生きていることがいいんや。生きたいと思っているのに運命で死んじゃう事もあるんだから、生きてるって事ははほんまにありがたいことやねんで。』もしこの絵本で伝えたいとしたら、こういうこと!
死んでかわいそうやなという本じゃなくて、お父ちゃんは死んでしまうんだけれど生きているのがええんやで、というのを結果的に教えてもろているという本。悲しいと言うよりも、子どもはその状況になれば、そんなもんやなって元気に思って生きていくやん。そうやと思う。」


―― 絵本の中の「ぼく」も、いつもお父さんの存在を感じている様子がとても伝わってきます。実際に経験をされている御本人の言葉からは、とても力強いものを受け取ります。子どもにはそういう力があるんだという事が伝われば、肩の力が抜けるお母さん方もきっといるのではないでしょうか。

「別にそんなもんやなと思ってやってきたからね。」



■ 家族って切ない                                               

――とても私的、個人的な内容なのですが、エピソードや描写がリアルであればあるほど自分の中にも共通する切なさというものが伝わってくるような気がします。でもそれは、悲しくて切ない、というのとちょっと違う。自分の親のことを思い返したり、自分の子どもの事を想うとなぜか泣けてきたり、そういう感覚と近いのかもしれません。

「そう、家族って切ないねん。この絵もね、実際家にこんな写真があんねん。

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▲裏表紙の絵を見ながら・・・。
 
これは確か動物園に行った時の記念写真だったと思うんやけど、ただ動物園に行っているだけなのに背広とか白いブラウスとか着飾って。しょうもないことなのに、大変な事みたいにしている。自分もそこに参加しているんやけど、この人たちを客観的に見たら、なんかね。それこそ、ようわからんちっこい幸せみたいなもんですよ、これ。それを一生懸命やっている、そういうのが切ないねんな。
今、親になってみると自分もそういう切ない事をしているんだろうなあと思うこともあるし。」


―― 家族って切ないという捉え方もあるんだなぁとしっくりきました。そういう家族への想いみたいなものが全ての作品を通して根底に流れている気がします。

「そんなことないんですけどね(笑)。」




■ 小さい頃から・・・                                             

―― 他の絵本でもそうですけど、長谷川さんの作品というのは、登場人物の表情や風景など本当にしっかり描かれています。『てんごくのおとうちゃん』では当時の時代の雰囲気まで蘇ってくるようで。普段からよく観察とかされているんでしょうか?

「観察は好きなのかもしれない。やらしい人間やねん(笑)。
子どもの頃からそうだったね。あの人こんなんやで、あそこでこんなんあったよとか。例えば先生の絵を描いて、それを誰かに見せて誰かが喜ぶという、そういうのが好きで。自分で絵を描いてのめりこんでいくというより、描いたやつを人に見せて反応が返ってくるのが好き。今やってることと同じ様な事を、小さい頃からやっていたんやね。」

―― お父さんの記憶が鮮明なのはそのせい?

「でも本当にこのくらいしか覚えてないんですよ。」


―― その時に感じた感覚とか、見ていた風景とかすごく伝わってきます。

「やらしい子やったんかな・・・。詳しくは描いていないけど、お葬式の前後の事ってすごい覚えてんねん。思ったこと、考えたこと、周りの人の様子とかも。とんでもないことが起こっているという感覚はあったけど、わりと冷静で。そんな事を思い出します。僕だけじゃなくて、一年生くらいの子って、そんな風にすごいいっぱい考えてるんやと思う。」


―― ある日おとうちゃんとふと再会するシーンがありますが、実際にも?

「あれも本当にあったこと。身内にも誰にも言ってなかったエピソード(本邦初公開だったそうで!)。急に知らんおっちゃんに言われてん、『ぼく、だいじょうぶか?』って。一瞬にしてすぐ思ってん、『あ、お父ちゃんや』と。全然知らん、関係ないおっさんやろうけども、なんかそう思ったことをよく覚えてるんです。」

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―― 絵本を作っているうちに子どもの頃の記憶が鮮明になっていく、そういう事ってありますか?

「描く時は、思い出して鮮明になっていったりするんですけど・・・『てんごくのおとうちゃん』なんかは、リアルな絵にして一個の話にしているから、描き終わってなんか頭ごちゃごちゃになってる。本当にあった思い出なのか、創作がだいぶ入っているのかわからんようになっている、と言うのがほんまのところあるんですよね・・・。」


■ 本が完成してみて                                            

―― 完成した時の感想はどうでしたか?

「ほっとしましたよ、出来て。」

―― 改めて、この絵本をどんな風に読んで欲しいというのは?

「楽しむ絵本じゃないしなぁ・・・。」

―― どんな絵本か、と言うとすると?

「子どもってこんなんやで、元気に生きていくで・・・ということかな。

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大人は自分がいなくなったらこの子は生きていけない!とか、すごい悲観したりするけど、置いてったらいいねん。どないでもなると思う。大変かもわからないけど、別にそれでやっていくんで。ごっつい幸せになること自体がそないええことなんかなと思ったり。僕みたいに物を作る人間なんかは、いろんな事が起こった方が良かったりもするでしょうしね。
かわいそうだけど、例えばそんな事になったりしてもそれは一つの運命。その子にはとって好きな人っていうのは一生続く。死んだからといって、そこで忘れるわけではない。大好きなままずっといるでしょ。全然子どもは大丈夫なんですよ。

自分に子どもが出来て、その立場になってみて特に思うんですけど、この人(お父さん)つらいやろな、子どもを残してつらいやろうな、と。子どもは「元気にやってますよ」と笑っている、何やかんやあったけど、こんな感じで笑っているんです。」



■ 絵本作家長谷川義史さんについて                                   

――絵本作家長谷川義史さんについて少しお伺いさせてください。長谷川さんの作品を子どもに読んでいてと思うのは、子ども達が喜ぶツボみたいなものを知っているというか。子ども達の気持ちがリアルに描かれていたり。なんでわかるんだろう?と驚いたりします。子育てや日々の子ども達との触れ合いなどから影響を受けられているのでしょうか?

「自分の子どもからも勿論影響は受けてますし、イベントなんかで子ども達に言われる事も影響は大きいですね。
いいからいいから』という作品なんかは、まだ全然絵本になる前に、ライブ紙芝居と言って、みんなの前で大きな紙に絵を描いていっていたんです。それを3回くらい見に来た子がいて『絵本にして欲しい』と言うんです。
子どもって何でこれ面白いの?って言うのがあるでしょ。大人が考える理屈で面白いとかじゃなくて。僕も、自分でやりながら、こんなん面白いかどうかわからなかったんです。でも子どもは面白いと言う。それが絵本になったきっかけ。」

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いいからいいから』 長谷川義史・作 絵本館刊


―― 絵本を作られていて、楽しい瞬間ってどんな時ですか?あるいは、絵本作家になって良かったなあと思われる事はありますか?

「絵本作家になって良かったなあ、というのは本当に思う。自分の思ってた事を、みんながいいとか悪いとか反応を返してくれる。絵だけ描いていた時は、そんな反応なんかが返ってくるという事はなかったからね。それが一番嬉しい。
描いている時は、そんな楽しいとかはあんまりないです。ちゃんと描けるんだろうかとか、プレッシャーの方が大きいかもしれないです。出来上がったら、例えば絵本ナビとかみたいに感想を寄せてくれたり、記事なんかで取り上げられたりして。一人で世の中に出て行く成人した子どもみたいなもんですね。そういうのがすごく嬉しい。」


―― 絵本ナビ読者の反応も喜んでもらえているんですね!

「よく見てんねん、僕は。」


■ 最後に・・・                                                

―― 絵本ナビ読者へ、一言メッセージをお願いできますか?

「つくっている方は精一杯なので・・・5つ星くださいね!」(笑)


―― 長谷川先生も実は気にしてらっしゃる!?

「気にすんねん!
新刊出てしばらくしたのに、星どころか誰も反応を示してないと・・・あれもまたつらいものがあるねん(笑)。(レビューについて)こっちが思ってもない様な事が書いてあったりする時があってね。ああ、こういう風に捉えるねんなあ・・・とか。そんな事考えてないのになあとか。それもまた面白いねんな。」

最後に本当に嬉しいコメント、ありがとうございました!

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★おまけエピソード
2009年の12月、講談社は創業100周年を迎えられるそうです!これを記念して、「100人の作家による100冊の書き下ろし作品刊行」という企画を遂行中。昨年11月にその先頭を切って、絵本の部署からは「100年読み継がれる絵本」をコンセプトに、『エゾオオカミ物語』『えほんのこども』『とうさんのあしのうえで』『てんごくのおとうちゃん』の4作品が出版されました。

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 あべ弘士さん      荒井良二さん      いもとようこさん      長谷川義史さん
エゾオオカミ物語』  『えほんのこども』  『とうさんのあしのうえで』 『てんごくのおとうちゃん
※講談社HP特集ページはこちら>>>

そのうちの一冊が長谷川さんの作品なのです。
「締め切りも迫っていてこの作品を早く描かなきゃと思っていた頃に、ちょうど荒井(良二)さんがテレビ出てこの100周年の作品描いてはってん。(荒井良二さんの特集番組にて)それが、次から次へと出来ていくねん!3枚くらい。こっちはまだ1枚も出来てなかってん。ごっつ落ち込んで・・・(笑)。」と長谷川さん。すると、編集の方も同様に落ち込まれたそうで・・・「荒井さんあんなに進んでる!」って(笑)。
そんな思いもされながら(!?)完成されたこの作品、皆さん是非じっくりと読んでみてくださいね。

↓『てんごくのおとうちゃん』に寄せた、長谷川義史さん手描きメッセージをご紹介します!
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(C) 長谷川義史 (講談社「子どもの本通信dandan19号」より)

子ども達や読者の方の反応がとても嬉しいと、笑顔でおっしゃる長谷川さん。一方、制作について語られる時はとても真剣な表情に。その二つのお顔がとても印象的で、長谷川さんの作品や子ども達に向かわれる姿勢の様なものを少し感じる事が出来た気がします。
今後はどんな「あほうな」作品が生まれてくるのでしょう。子ども達同様、楽しみで仕方がなくなってしまいました!


2009年10月21日

絵本ナビ ユーザーグループインタビュー参加者募集のお知らせ

募集は締め切らせていただきました。
ありがとうございました。

2009年10月18日

絵本『きょうのそらはどんなそら』
作者のふくだとしおさんにインタビューしました!

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新刊『きょうのそらはどんなそら』の発売を記念して、ふくだとしおさんが絵本ナビにいらしてくださいました!今回は今までの作品とちょっと雰囲気が違うような・・・その辺りも含めてたっぷりお話を伺いました。

この取材が行われたのは8月の終わり。思いのほか日焼けをされているふくだとしおさんの登場です。聞けばこの夏は1歳8ヶ月(取材当時)になられた娘さんのベランダのプール遊びに付き合っているうちに焼けてしまった「ベランダ焼け」だそうで(笑)・・・そんな愛らしいお話などを伺いながら和やかな雰囲気でインタビューはスタートしました。

Ehon_29586_1.jpg ※みどころはこちら>>>
きょうのそらはどんなそら』 ふくだとしお+あきこ accototo ・作 大日本図書


<新刊『きょうのそらはどんなそら』制作秘話>


■ 『きょうのそらはどんなそら』での初めての試み                                     

―― とにかく色々な空が登場するこの絵本。空をテーマで絵本をつくろう、と思われたきっかけなどはあったのでしょうか?

かつて、ふくだとしおさんがご自身のHP上で、娘さんの誕生日に「その日の、各地の空の写真を送ってください」と募集されたことがあったそうです。

「日にちを告知して募集したら、本当に色々な都市や外国の空まで集まって。すごく面白かったんです。それを見た(担当編集者の)山本さんが『空の本をかきませんか?』と声をかけてくださったのが直接のきっかけですね。僕自身もともと小さい頃から空が好きだったこともあり、お話を頂いた機会にじゃあちょっとやってみたいな、と。」

目の前に『きょうのそらはどんなそら』の油絵で描かれた原画をずらっと並べてくださいました!

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▲何とも深い味わいで思わず見入ってしまいます。

―― 今回の作品は今までの作品とガラッと雰囲気が変わって油絵という技法を使って描かれています。背景や空をじっくり描かれる為に素材を変えられたのかな、とも思ったのですが・・・?

「そうですね、実際に空とちゃんと向かいあってじっくり描きたい、というのはありました。」とふくださん。

「最初は油絵で描くつもりじゃなく、いつもと同じように水彩で・・・と思っていたんです。でもどんな絵本にしていこうかと話している中で『油絵はどう?』と奥さんが言い出して。油絵だったら面白いんじゃないかな、と思えてきたんです。より空の雰囲気や奥深さが出るんじゃないか、と。
同じタッチじゃなくてもいい、という話をもらっていたこともあって描いてみることにしました。

油絵というと、今までも自分では描いてはいたのですが、絵本で使うのは初めてだったんです。
でもずっと水彩で描いてきていて、ちょっと慣れてきちゃっているなあ、という思いもあって。画材を変えることで完成図がみえなくなる、そういう状態で描ける面白さの方に惹かれました。自分自身が楽しめるんじゃないか、と。」


―― そうして新境地に進まれる事を選んだふくださん、今回は更に原画のサイズを決めないで描かれたそうなのです。

「キャンパスのサイズは決めないでください、と申し出たんです。とにかく自由に楽しく描きたいから、と。後はデザイナーさんに調節してもらって(笑)。
というのも、以前ジョン・バーニンガムの原画展を見に行った時にびっくりしたんです。実際の絵本と原画が全然サイズが違ったり、同じ原画なのに、サイズが全然違ったり、切り取って貼っていたり・・・もうむちゃなくちゃなくらい。
でも、絵を描く側の目から見たらそんな風なのが自由で楽しいなぁと感じていたんですよね。だから一度(原画のサイズを決めないで描くということを)ちょっとやってみたいと前から思っていたんです。」

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―― 実際描かれてみてどうでしたか?

「油絵を絵本にするということは、水彩と違って上から塗り重ねたりできるのでより自由に絵を変えられるんですよね。だから僕自身の気持ちは結構楽でした。大きさのこともあって、硬くならずにより自由に描けたような気がします。
こういう広い空を描く時に、表現がちまちまならずに良かったなぁ、と思ってます。」


―― 結構時間がかかったのでは?

「いや、結構早いですよ。乾く時間を考えなかったら一日一枚描けちゃうくらい。もともと描くのは早い方なんですけどね。
制作中に立ち止まってしまった、といったことはなかったです。全部の絵を同時に進めて描いていくんです。それを引き出しに入れておいて、それぞれに手を入れたり、また並べてみて眺めたり。そうやって常に全体を見ながら描き進めていきました。
原画を描く段階にくるまでは色々と変わったりしてそれなりに時間はかかったんです。描きたい空のイメージが固まるまでは何となくずっとふわふわしていて・・・。でもあるシーンが固まってからは早かったですね。」


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▲アイデアを練るためのラフ。小さいサイズでも本の形になっているのです。 可愛い!
 何種類ものラフが繰り返し制作されています。最初のものとはかなり違う内容になっています。


■ 主人公は子猫のプチュ                                  

―― 実はこの絵本の主人公である子猫は既刊『ぴっちゃんぽっちゃん』で登場する子猫<プチュ>なのだそうです。だから続編とも言えますね。そんなプチュに空を見させると何とも空の大きさが際立つ様です。一日中空を見て過ごせるのもプチュだからこそ?いい生活だなぁ、なんて(笑)。最初からプチュに空を見せようと思っていたのですか?

4477019459_c.jpg>※みどころはこちら>>>ぴっちゃん ぽっちゃん』 ふくだとしお+あきこ accototo ・作 大日本図書刊

「そうですね。こんな風に一日を過ごすのは、いたって猫らしい行動ですよね。
僕の実家で飼っている猫も3日間帰ってこない、ということがあります。どこかで別の名前で呼ばれていたりして。だから気ままに空を見てても違和感ないと思うのです。
人間の子どもが同じようにしていたら『ごはん食べているのかな』『トイレどうしているのかな』なんて気になっちゃう様な気もしますしね(笑)。」


―― 『ぴっちゃんぽっちゃん』でプチュはとても小さな世界の中での発見を描き、今作でのプチュはとても大きな世界との出会いを描かれているような気がします。特に暮れかかった大きな空のなかにたたずむプチュの小さな姿の場面がとても印象的です。

実はラフスケッチの3番目くらいで夕日の場面というのが出てきたそうなのです。それを見て編集の山本さんが「ふくださんが描きたいのはこれじゃないかな。」と思われたそうで・・・。

「なかなか定まらなかったイメージをうまく拾って頂いた、という感じですね。そこからどんどんと広がっていきました。その後は早かったですね。」


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▲見る者の胸にぐっとくる夕日の場面。プチュの小さなシルエットも何だか切ない気がして・・・。

「この夕日の場面についてはさみしい感じがするのではないか、と言う話もあったんですが、僕は子どもにとってそういう感情はとても重要だと思っているんです。
『さみしいな・・・』とか『かなしいな・・・』とか、そういう深刻ではない位の軽い『さみしさ』や『かなしさ』みたいなもの。或いは夕日をみて切ないと感じたり。今から振り返ってみると、そういう感情ってすごく豊かな気がするんですよね。そういう切ないなぁという感情を子ども達にも大切にして欲しいと思っています。

自分で改めて見ていても(この場面は)さみしい気がします。でもこういうのもいいんじゃないかなぁと思ってます。」


■ 記憶の中の空を探して・・・                                

―― 夕日の場面の切なさと合わせて、この絵本に描かれている風景というのも特に知っている訳ではないけれどとっても懐かしい感じがします。

「僕は小さかった頃、団地に住んでいたんです。
背景として描く場所をどうしようかと、小さい頃に住んでいた所と似たような場所を探していたところ、すごくイメージに近いところがあったんです。その辺りをぶらぶら歩いていたら、子どもの時の具体的な記憶じゃなくて<匂いのような記憶>といった感じのものがふわーとでてきて・・・。
この団地とか、この辺りを描きたいなと思ったんです。
なんかいいんですよね、団地って・・・(笑)。

大人の方が見ても、具体的な記憶をたどりながら『ちょっと懐かしいなぁ』と思ってくれるといいですよね。『あーこんな空見たことあるなぁ。』なんてゆっくり空を見てもらいたいな、というのもあるんです。」

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―― この絵本のために実際に空を探しに行かれたりはなさったんですか?

「実際に空を探しに行ったり、というのはしていません。具体的にこの空というのは決めてないんです。思い出の中に残っている空の印象が強いので、逆にそれを大切にしたかった、というのがあります。一応描く為に、夕日の色や青い色などは見て参考にしてはいますけど、具体的な場面というのではなく、今見ているものと自分の記憶を合わせながら描いていくという作業でしたね。ほとんど想像です。
雲のかたちもイメージなんです。(表紙にも登場するもこもこ雲とか)実際にはあんな雲はないとは思うけど、自分の子どもの時には本当に実際にあったような気もしたりして。それは自分が作り出しているだけなのか、本当なのかどうかはわからないけど、イメージの中には確かに残っているんですよね。
風景にしても団地があって、フェンスがあって、工場が遠くにあって・・・こういうのも記憶の一場面なんですよね。」


■ 最終的に完成するまでに                                

―― そんな風にイメージが固定していってから、更に完成するまでにはちょっとだけ苦労されたそうで・・・。               

「今回文章はちょっと悩んだかもしれませんね。
テキストは随分変わりました。最後にはかなり削ったりもしています。最終的に決定するまで、ちょっと違うなというのがずっとあって・・・。じっくり考えるというのではなくて、自分の心を広げて余裕をもたせた上で考えたいなと思ったんです。
そこで・・・旅行へいこう、と。
僕が好きな沖縄の小さな島へ一泊しに行きました。昼過ぎに着いて、夕方空を見てボーっとして旅館の部屋で文章を考えて。」

編集の山本さんがある日もらったテキストがあまりにも違っていて、それが凄く良かったのでふくださんに尋ねたら「旅行に行ってきました。」と答えられたそうなんです(笑)。

「真摯に空と向かいあってみたいなあと思い、家の中ではなく、ちょっと外に出て自然に言葉が浮かんでくるような状態、環境をつくったんです。」

結果的に読んでいる人の想像力や懐かしい記憶を喚起させるような、とてもシンプルな文章が出来上がったのです。


―― 作家ふくだとしお+あきこ accototoとして、奥様のあきこさんといつもお二人で制作されているそうですが、今回でいうと具体的にどんな作業分担になったのでしょうか?

「通常はストーリーは二人で考え、色づくりは奥さんです。『あたたかさを感じる茶色』といったふうに、イメージを伝えます。今回は自分の記憶を呼び起こしてながら一気に表現したかったので、この作品に関しては色も含めて僕が主体となって制作しました。奥さんは、構想とか絵本全体のながれを考えたりとか、今回は一編集者的な役割りでしたね。」



■ 子どもの頃に見た空の記憶は宝物。                         

―― この作品をこんな風に楽しんで欲しい、というのはありますか?

「今の子どもたちを見ていると、(ゲームをやっていたりして)ちょっと目線が下向きの様な気がするんです。もっと空を見てほしいなと思いますね。空って本当に毎日違いますよね。勿論似たような空もあるんですけど、厳密にいったらやっぱり絶対違う。

僕自身が子どもの時、あるきっかけがあって『ああ、空好きだな』と思ってから結構空を見るようになったんです。近くにあったマンションの一番高い所に登っては、兄とお小遣いを出しあって買ったカメラでしょっちゅう空を撮っていました。その12階でいつも撮っているうちに、そこに住むおばさんとも知り合いになって『今日はどう?』なんて聞かれたりしてね。そんな会話ですごく仲良くなったりもしました。ライフワークみたいになっていましたね。それって本当に豊かだったなぁと思うんです。

言葉では何も語らないけど、空は語ってくれるんです。嫌なことがあったら空を見て、より悲しくなる場合もあれば、そこから回復することもあったり・・・。幼いながらに空と向き合っていて。例えばきれいな夕方を見れば早く写真を撮りに行きたいなぁと思ったり、元旦だけは兄と分かれてそれぞれ朝日を撮って見せ合ったり。そんな興味を毎日自然に感じていました。
子どもも大人も、もっと空と向かい合って欲しい、そこかららもっと感じて欲しいなぁと思いますね。」


―― お話しを伺っているだけでもソワソワしてきます。何だか毎日空を見ていないのが損した気分!?になってきたりして。

「例えば子どもが凄いものを発見したかのようにキラキラした目で『おかあさん、雲が動いているよ!』なんて言ったりしますよね。子どもにとっては大発見です。親は流さないで一緒に付き合ってほしいですよね。
また大人になると当たり前になっている事でも、時間を巻き戻して子どもの気持ちになってみるとそれはすごい感動するっていうことは沢山あると思うのです。そういう薄れていく感動というのを大切にして欲しいな、と思います。」

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「子ども達だけでなく、お母さんやお父さんにもこの絵本を一緒に見て欲しいですね。これをきっかけに空を見ながら色々話したりしてくれたらこの作品を描いて良かったなと思えます。」



■ ご自身について伺いました。                                         


<子ども、家族と絵本の関わり>

―― 『うしろにいるのだあれ』を始めふくださんの作品は「ひとりじゃないよ」と、とても大きくて温かい愛情を伝えてくれていると思うのですが、最近ではもっと具体的なテーマ、例えば『みんなにこにこ』の様にお友達との関わりだったり、心の変化が描かれていたりする気がします。お子様が誕生されて、制作にも変化がうまれたのでしょうか?

「子どもにあたえる、という気持ちは強くなった気がします。例えば食べものでも安心感のあるもの、からだにいいものをと考えるように、描く側としてはやっぱりからだにいいもの、心にいいものをあげたいなと思いますね。

今までは作品のダミーを机の上で声に出して読む程度だったのですが、今は子どもを膝に乗せて読んでみたり。反応が見られるので、実験ではないけれどそういう役割りを担ってもらってはいますね。

言葉の重要性、音としての言葉、リズム感、そういうものを以前よりも意識するようになったかもしれません。色に関しても発見が多いですね。絵を並べて描く事が多いのですが、子どもが反応するかなと思って塗った色がそうでもなかったり。明るい色にぱっと反応するけど、じっと見ているのは意外と暗い色だったりするんですよね。

大人が思う『子どもはこうだ』という枠みたいなものは、実は存在していないのではという事がわかってきたんです。子どもはもっと広い範囲でものを感じているんですよね。
だから、もっと僕自身は自由に描けたらいいなと思うようになりました。子どもが誕生して、自分の世界を広げてもらったような感じがするんです。」


―― ふくださんのアトリエはリビングと仕事場が隣合わせ、そして奥様も一緒にお仕事をされるので境界がないそうです。それはとっても大変な事ですけど、家族にとってはとても密な時間、そして作家としてもとても影響を受ける事は多いのでしょうね。

「子どもには仕事って言う感覚がないので、わたしにも描かせろ!と言わんばかりにクレヨンを持ってきて描こうとしたり(笑)。」

やっぱり大変!?

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<絵本作家としてのふくだとしおさん>

―― 絵本作家になられて一番よかったな、たのしいなと思われる瞬間はどんな時ですか?

「絵本をつくる、それ自体がすごく楽しいです。だから、それが今できているという事が嬉しいですよね。仕事っていう感覚があまりなくて、好き勝手に絵本がつくっていられて、それが仕事になっている・・・という感じ。もちろん、制作している際には迷ったり悩んだりという事があって、それは言い換えると苦しいという事になるかもしれない。でも、僕はそれも含めて楽しいと感じます。わからないからいいのであって、逆にゴールが見えていて、それに向かって作っていくのは何だか面白くないと思うのです。ああでもない、こうでもないと言いながら出来上がったものを後で見て、その過程も含めて楽しいなと。
原画が出来上がっちゃうと、もういいや、次の作品!ってなってしまいます。そういう意味ではちょっと無責任かもしれませんね(笑)。」


―― ずっと絵はお好きだったんですか?

「そうですね。もともと絵は好きで、その頃から感覚は変わってないですね。一枚の絵と、文章を含めた何枚かの絵のつながりで表現するという違いはありますけど、基本的にはあまり変わってないです。一枚の絵の良さもあるけど、絵本というのは絵を何枚も連ねて展開していって一つの作品にします。表現の幅が出ますよね。その作業自体が面白くて自分自身が楽しんでいるんだと思います。」


―― 今後こういう絵本が描きたい、というのはありますか?

「次にこういう絵本が描きたいな・・・と思って描き留めているノートは結構たまっています。だからアイデアはたくさんありますね。今後こんな絵本をつくっていきたい!というよりは、その時その時自分の中で出てくるものを、ちょっと時間をおいて熟成してみて、いいものになりそうかなと思ったら出していきたいな、と思っています。

絵本を通して何かを具体的に強く伝えたいというわけではなく、また面白ければ何も伝わらなくてもいいと思っている訳でもないんです。大切なものがちょっとあればいいかな、と。具体的に言葉でいう場合もあるけど、そうじゃなくて空気みたいなもので語れたら一番いいなと思ってます。
子どもは言葉じゃないところで通じ合えるところがあると思うので、(今回の本も)そういうものが伝わればいいですね。」


■ 最後に・・・                                        

――絵本ナビ読者の方へメッセージをお願いします!

「子どもと絵本を読む時、はっきりいっちゃえば僕はどんな絵本を選んでもいいと思うんです。
親子で読んでいる雰囲気が一番大切です。
親がぎすぎすしていたり、忙しそうにめんどくさいなと思って読んでいるのは例えどんないい絵本でもよくないと思うんです。あまりいい本じゃなくても、親がその子にすごく楽しませたいなとか、読んであげたいなと思うと、多分それは子どもに伝わると思うんですよね。
絵本というのを親子の楽しい時間をつくる道具として使ってもらえればそれだけで充分です。
親も余裕を持って絵本を読む時間というのを本当に大切にしてもらいたいですね。絵本を読んでいるというだけじゃなく、違うコミュニケーションが存在していると思っています。」


ありがとうございました!
制作について話される時と、お子様について話される時と同じくらい楽しそうな優しい笑顔がとても印象的なふくださんなのでした。

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絵本制作は全てが楽しくて仕方がないとおっしゃるふくださんですが、それはもしかしたら新しい事に立ち向かう時の答えが見えない時の不安や悩み、それさえも楽しんでしまえる大らかな心と才能の持ち主だから出てくる言葉なのかもしれません。改めて天性の絵本作家さんなのかもしれないなぁと感じてしまうのでした。
きっと子育てに対しても同じ姿勢で取り組まれているに違いありません。
今後も御本人の中の好奇心がなくならない限り、ずっと私達を楽しませてくれる作品を生み出されていくのだろうという確信がもてて、何だか嬉しくなりました。

★絵本ナビ読者の方へ向けて素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!

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2009年10月13日

『わたしのワンピース』誕生40年!
西巻茅子さんのアトリエを訪ねました!

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わたしのワンピース』が出版されたのは1969年。なんと今から40年も前のこと。
その間にこの絵本がどれだけたくさんの子ども達を楽しませてくれたのでしょう。
そしてこれからも小さな新しい読者がどんどん生まれていくのでしょうね。

絵本ナビでは『わたしのワンピース』生誕40年を記念して作者の西巻茅子さんへのインタビューが実現しました。
子どもの頃に読んでいたというファンの方へ、これから読まれるという方へ改めて絵本『わたしのワンピース』の魅力をお伝えしたいと思います。

西巻茅子さん プロフィール
1939年、東京に生まれる。東京芸術大学工芸科卒業。学生時代からリトグラフ、エッチングを手がけ、日本版画家協会展新人賞、同奨励賞受賞。「子どもが画をかくときの気持ちや大胆さを大切にしたい」と語るとおり、のびやかな線と明るい色調で描かれるその世界が、子どもの心に自然に受け入れられている。代表作『わたしのワンピース』は親子二代にわたるファンも多い。『ちいさなきいろいかさ』(もりひさし文/金の星社)で第18回産経児童出版文化賞受賞。『えのすきなねこさん』(童心社)で、第18回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他作品多数。

鎌倉にある素敵なアトリエ兼ご自宅に住まわれる西巻茅子さんを訪ねてお話を伺ってきました!

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■ 子どもが選ぶ絵本『わたしのワンピース』                        

―― まず最初に、『わたしのワンピース』という絵本が誕生するまでのエピソードをお伺いできますか?


この絵本が出版されたのは40年前、その頃はオリジナル絵本(作家さんが絵と文章、両方描かれている絵本)がほとんど出ていなかった時代だったんですね。ほとんどの絵本は物語(名作や民話など)があってそれに絵をつけるというかたち。
私は物語じゃない絵本をつくりたいと思ったんです。絵が変化していくことが面白くて、その変化を楽しめる絵本。要するに絵そのものを楽しむ絵本をつくりたい、と思っていたんです。例えば児童文学と言われるものや長い物語を短く簡単にして絵本をつくる、という様なものはつくりたくないなあと。
それでとにかく沢山絵を描いていって生まれたのがこの『わたしのワンピース』なんですよね。

ehon134.jpg 『わたしのワンピース』 西巻茅子・作 こぐま社


―― 読者の方には、「ミシンカタカタ」と楽しそうにワンピースをつくる場面や、色々な柄のワンピースを着せ替えのように楽しむ場面にとっても興味を持たれている方も多いかと思うのです。西巻さんご自身の小さい頃の体験に基づいている部分もあるのでしょうか?


小さい子どもの頃の体験の影響がすごくある、ということは後から気づくんですよね。描いている時はあまり意識していなかったんです。いたずら描きしているうちに絵が出来ていって、ストーリーと言いますか、全体の枠組みが自然に生まれてきたんです。

本ができ上がってからね、小学校からのお友達が言うんですよ。
「あなたの小学生時代そのままじゃないの!」
その時は「えー??」と思ったんだけど、確かに私の家は父が絵描きなので、大きなアトリエがあって、そこには沢山絵があって。私が遊ぶというとそこで絵を描いて遊んでいたんですよね。それに母が洋裁をやっていて、朝から晩までミシンの音をさせていたんです。父のアトリエの半分はミシンと洋裁の台で埋まっていて、布やきれが散乱しているような家だったのよね。仕事をした後の残りきれがいっぱいタンスの中に入っていて、それを引っ張り出して遊んでいたり。多分、絵を描いているうちに子どもの時に遊んでいた様な事が全部出てきたんでしょうね。


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―― そうして出来上がった『わたしのワンピース』。でも出版された当時は、なかなか大人には評価されなかったそうですね。


その頃の時代は、「子どもとはこうあるべき」「ためになるおはなし」といったものをいい絵本、心が打たれたお話と言って紹介される事が多くて。私の中にはちょっとした反発心もありました。
そういう事もあって出版された当初、大人は評価してくれなかったなという思いはありますよね。絵を見て「なにこれ?何が言いたいの?文字がほんの少ししかないからわからない。」なんて言われたりしましたよ。
でも出版されてから5~6年経ってくると、徐々に子ども達がこの絵本を好きだという事がわかってきたんです。子どもが自分で選んで本棚から借りていってしまうから「本棚にはいつもない絵本」。そうやって図書館の方が新聞の記事で紹介してくださったんです。いつもは名作と言われる絵本を「よい絵本」として評価している欄だったのに、こういう内容を記事として紹介されたので私はすごく嬉しかった覚えがあります。



■ 子どもの絵を描く力の確かさ                                             

―― 確かに絵本ナビのレビューでも「子どもが先に夢中になって」という意見が多いのが印象的ですよね。それは何と言ってもこの絵本の「絵の力」、西巻さんの作品を見ていると、子ども達の絵を描くときの楽しいという感覚にあふれていて想像力を凄く刺激されるような気がしてくるのです。プロフィールにも記載されている「幼い子どもたちの絵を見る目、絵を描く力の確かさ」という言葉もとっても気になります。その辺りも絵本作家になるきっかけとして影響しているのでしょうか、お伺いしてみました。


絵本の仕事を始める前に幼稚園の子ども達を集めてお絵描き教室を開いていたんです。そこで子ども達が教わらなくても素晴らしい絵を描くんですよね。自分達で夢中になってどんどんいい絵を描いていく姿にとてもびっくりしました。何年が続けているうちに、子どもというのはみんな絵が描けるんだ、絵が好きなんだ、ということがわかったんです。描くのも見るのも好き。あまりにも一生懸命絵を描くその姿に「絵との関係」というものが大人よりもずっと親密な感じがして。
だから子どもの絵本を描くという仕事を選んだような気がするんです。

版画家になるという道もあったのですが、子どもから大人までもっと沢山の人に見てもらえるこの仕事がいいと思ったんですね。また、こぐま社さんの絵本の制作方法がリトグラフという当時私が使っていた版画の技法に限りなく近い形の印刷方法だったのも良かったんだと思います。


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■ 人気の秘密                                                       
 

―― 例えば表紙の絵や花模様のワンピースを着ているうさぎさんの絵。個人的に子ども心にとても印象に残る場面です。書店などで並んでいる表紙を見ると安心感があるというか、「あ、これこれ。」と思える。実はすごくデザイン性があるのではないかと思ったのですが。


私は大学でデザイン科の専攻でしたので。大いにデザインを意識して表紙をつくっていますよ。またページをめくるたびに布の四角やワンピースの三角の形が大きさを変えながら何度も登場してくる場面づくりなどもね。でも実はそういうことをなかなか誰も言わなかったですね。
本が出来た時は「なんでワンピースは花模様になったの?」と、言葉の世界の事での批評をすごくされた覚えがあります。絵画的、デザイン的な視点で絵本をみるという人があまりいなかったんですよね。だから「どうして?なんで?」と言われてなかなかOKが出なくて。私は絵本を理屈で描いているわけではない、という気持ちがあったし「絵が楽しければいいじゃない」と。子ども達は、この絵本を見てぱっと惹きつけられて手にとっていたと思うんですよね。当時はそのまま支持してくれた大人はほとんどいなくて、子ども達だけが支持してくれた、って感じはありましたよね。

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―― 子どもにとってワンピースは永遠の憧れですよね。大人が思っている以上に子ども達はこの絵本を夢のあるファンタジーとして受け止めていたのではないでしょうか。


そうだと思います。私も子どものころ着せ替え人形遊びをしょっちゅうしていました。そのころはリカちゃん人形なんかはないので、紙で洋服を切り抜いてつくったりして。
まさにこの絵本そのままですね。そういうのは子ども達みんなの日常の遊び。女の子はそういう遊びが好きよね。大人になってもおばあさんになっても変わりませんけどね(笑)。だから受け入れられたのでしょうね。


―― 「ラララン ロロロン」「ミシン カタカタ」「にあうかしら」などの言葉も、読者がこの絵本が好きな理由としてあげられています。


この絵本を作っているとき、最初は絵だけで言葉はありませんでした。「絵を見ているだけでわかるでしょ?」と。言葉は後から付けたんです。だから童話になっていないんですよね。絵を見せていく為の応援歌、伴奏みたいなものかな。
だから絵と一緒になって印象に残るのかもしれませんね。


―― この絵本を制作された時は子育てをされていたんですか?


いいえ、まだ子どもが生まれる前でした。だから子どもっていうものは私にとってまだよくわからない存在だったんですよね。でも「すごくセンスがあって、絵を見る能力があって、あの素晴らしい絵を描くのが子ども」だという事は知っていたから私も本気で絵を描かなくちゃ、と当時は思っていました。絵を描く時の芯の部分って言うのかな、子どもと共通の感覚で絵を描きたいと思ったんです。

私は学生時代から絵の勉強をしているし、絵もいっぱい描いていたので流行のファッションや絵のことはよくわかっていました。子どもはそんなこと何もわからないですよね。人間が絵を描きたいと思う、そういう基本的な気持ちだけで描くんです。目の前にクレヨンや紙があればただ絵を描きたくてぐっと気持ちを集中させて描くのです。

私もそんな風に描きたいと思ったから、いわゆるデッサンなど習ってきた技法は全部捨てて、そういうものを使わないで絵を描こうと思ったの。だからこの頃は、子どもの為に絵本を描くということではなくて、私自身の表現が子どもの表現に近づけようと思っていましたね。
それが子ども達の感覚とフィットしたのかもしれません。


―― この作品が40年経った現在も子ども達が同じように楽しんでいる、という状況についてどうお感じですか?


描いている頃はね、そんなことになるとは夢にも思っていなかったですよ。今は「やったー!」と思ってます(笑)。

その頃の私は普遍性に向かって仕事をしようと思っていたと思うの。子どもの絵を見て「これが人間が絵を描く時の本当の形だ」と思って感動して、こんな風に「絵を描きたい」という普遍性を持って仕事をしていけば通用するんだろうと考えていたんです。
若い時っていうのは色んな事を考えるんだけど、その通りにいくことってほとんどないんですよね。でも私は40年続けてこの絵本が受けれられているという事は、あのとき私が考えて感じて仕事をしたことは良かったと思えるんです。子どもが「良し」と言ってくれたことはとてもありがたいと思っています。



■ 他の作品についても伺いました。                                             
  
 
―― 子どもの持つ本来の優しさが感じられる「まこちゃんのおたんじょうび」や「ふんふんなんだかいいにおい」という作品もとても好きなんです。

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まこちゃんのおたんじょうび』『ふんふんなんだかいいにおい


(一般的に)親が子どもに色々教えたり諭したり教育したりするものだと思われていますけど、私は子どもが生まれた時にはあんまりそういう風に思わなかったんですよね。「やっぱり子どもはすごいな」と思ったんです。
子どもの中には「自分が食べているものがおいしかったら半分あげましょう」という気持ちをみんな持っているんです。「わけてあげよう」という気持ちというのは誰の心にもあって、それが大きい子もいるし、小さい子もいるし。その気持ちは普遍性があると思うんですよね。だから自然と「みんなでわけあって」という社会が生まれたのだと思うのです。立派な考えだからそうしなさいとか、誰かに言われたからそう決めて生まれた訳じゃない。子どもを育てていてつくづくわかったんです。人間の中にあるものの良きところ、お互い認め合った部分、その感覚が社会化されて社会というものがうまれてきたんだなと思うようになったんです。

私の本は、お説教でもなく、「優しくしてあげましょうね」と言っている訳でもないです。みんなの心の中にあるもの、私の心の中にあるもの、そういうものが行き交えばいいんじゃないかなと思ってます。良き部分を皆さんも、と言うのではなくてね。
楽しむというのは自分の中にもあるから楽しめるんですよね。物語の楽しみってそういうものだと思うのです。

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―― 西巻さんの作品と言えば、可愛らしい動物たちがたくさん登場します。何かこだわりがありますか?また、その中でも猫さんは具体的に描かれている事が多いというか西巻さん御自身を見ている感じもしますね。


動物は特にこだわりはなくて、何の動物でもいいの。でも「わたしのワンピース」のうさぎは子どもの頃によく描いていたうさぎ、そのままですね。
(後から伺った話ですが、絵本の完成までには本当にたくさんのうさぎを描かれたそうですよ!)

猫はね。モデルがいるからね。わりと便利に使わせてもらっていますよ(笑)。物語の進行役として活躍してもらうこともありますね。『おもいついたらそのときに!』なんかでは、原稿には猫はいなかったんですけど描きたくて描いたんです。
えのすきなねこさん』もね、猫でなくてもよかったんですけど。子どもの時から猫がいつもそばにいたから表情なんかが描きやすいんですよね。


―― その『えのすきなねこさん』もとても楽しい絵本なのですが、絵描きさんの心情も垣間見れるような気がして・・・こちらもとても好きな作品です。お父さまが絵描きでいらっしゃったというのも関係あるのでしょうか?


そうですね。この作品は父を描いたんです。父が亡くなった時、絵を描く道具をいくつかアトリエから引き取ったんです。その道具を見ているうちに描いてみようかな・・・と。自然にできあがったのがこの絵本でした。父は朝から晩まで絵を描いていましたからね。

Ehon_2247.jpg 『えのすきなねこさん

 


■ 読者の方からの質問です!                           

―― 『わたしのワンピース』の「ラララン ロロロン」をどういう風に読んだらいいのか教えてください。

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(困ったわね、と笑われてから)「読んでください」とよく言われるんだけど・・・。
一度馬場のぼるさんの横で『わたしのワンピース』読んだ事あって、馬場さんはご自身の絵本をとても面白く読むんです、味があってね。
でも私は基本的に人前で気取って読むのは恥ずかしくて、ぱっぱぱっぱ普通に読んだら後から馬場さんが、
「ああいう読み方もあるんですよね。いいんですよね、西巻さんのよみかたで。」
優しく微笑みながら無理におっしゃってくださって(笑)
そんな風で私は結構素っ気なく読むんです。

でも読む人が楽しそうに読んでくれる、それはそれでとってもいいですよね。
例えばお母さんが楽しそうに歌を歌いながら読んでくれるのもいいです。
そういう所で、お母さんという個人と子どもという個人の交流が生まれる。私の絵本を通して交流があるというのがとっても素敵だと思います。そこにその人らしさがあるというのがいいんですよね。そうするとまた自分の子どもにもお母さんの記憶を伝えていったりしてね。


―― 影響を受けた絵本作家さん、或いは画家さんはいらっしゃいますか?


影響を受けた絵本作家というのはいなかったんですけど、絵を描き始めた当時にレオ・レオニの絵本『あおくんときいろちゃん』を見た時に「あ、これでもありだ。」と思えましたね。抽象というものを子どもが理解できる、という一番原点的な本だと思います。「あおくん」と名づければそれが「あおくん」になる・・・これでもいいんだな。「わたしのワンピース」をつくりながらそう思った事を覚えています。

画家で言えば・・・20世紀の近代絵画のピカソ、マチス、クレー、シャガールなんかはみんな好きでした。ちょうど絵を勉強している学生時代はそういう素晴らしい画家た沢山活躍していて。すごくいい時代でしたね
だから影響は受けていると思います。


―― どういう時にストーリーを思いつくのでしょうか?


今も四苦八苦してますよ(笑)
若い頃はふっとあふれ出てくる感じでしたけどね。40年やってくると色々な知識もついちゃうし、でも自分の中にあるピュアで子どものような心の中からぽっと出てきた様なものでつくりたいと思っていますし。そうやってうろうろしながらふっと出てきて出来上がることもあります。締め切りがあってこれこれと手順を踏んでつくっていってと言うのは無理ですし、そういう風にはつくりたいとは思っていないですね。


―― ご自身の作品の中でも思い入れのあるものは?


やっぱり『わたしのワンピース』ですね。


―― 娘さん(絵本作家の西巻かなさん!)と仕事のお話をしますか?

あまりしないですね。彼女の個性の中から生まれてくればいいと思っているので。できたものについてお互い話すことはありますけど。私も彼女が子どもの頃、自分の作品を見せて意見をしつこく聞いたりしていましたけどね(笑)。

 
―― 絵本作家になって一番楽しいと感じる時は?


やっぱり絵を描いている時が一番好きなのね。だから楽しいのは絵を描いているときです。
絵本の組み立てが決まって、後は描くだけのとき。それはすごく楽しい!
だからって朝から晩までずっと描いているといい絵がかけるとはかぎらないんですけどね。


―― オリジナル作品と他の作家さんと組まれて描く作品との違いはありますか?


作家さんと組んで描く絵には基本的に締め切りがありますし、原稿を読んでから描きます。オリジナルは絵が先に浮かんできて創作します。だから作業内容は全然違って、特に原稿がある場合は文字にとらわれるという意味ではそれなりに苦労したりもします。でも、それはそれで両方やってて良かったと思っています。だから楽しい絵本も出来てくるし、自分の絵が変化していったり、発想が広がっていくのが楽しみでもあります。


―― 絵本との関わりかたなど、絵本ナビ読者に向けて何かメッセージをお願いできますか?


子育てしているお母さんは、人生の中でいちばん充実している時だと思います。
充実している時間をほっとできる時間にするために絵本があるような気もするんです。
だから、大人も子どもと一緒に絵本を楽しんで欲しいですね。


―― 子ども達へは・・・?


子ども達へのメッセージは絵本です。
楽しんでくれればいいですね。



■ 最後に・・・                                     

<取材を終えて>

『わたしのワンピース』『まこちゃんのおたんじょうび』など、お子様が誕生される前に生まれた名作が多いというのも意外な気がしますが、

「子どもが生まれてから描き始めなくて良かったと思っている。子どもの好みに寄り添いたくなっちゃうし、喜ばせたいと思ったけどうまくいかなかった。私の個性もあるのだと思うのですがそこに創作の不思議さがある。自分の子どもに向かって行けば、普遍性から離れていくという事もあるでしょうし。」

そう語ってらした姿がとても印象的でした。

「絵本は見て楽しければいい!」そう言い切る西巻さん。でもその為には本当に真剣に子ども達と向かい合わなければいけないという覚悟が垣間見られるのです。
絵本作家である前に、一人の芸術家としての側面も見せて頂いた様な気がしました。


★★おまけ画像★★

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▲とっても素敵な雰囲気。お父様のパレットやイーゼルなどもさりげなく飾られて・・・

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▲「ワンピース」のぬいぐるみ発見!可愛いこけしちゃんは形が「ワンピース」にそっくり。お友達が見つけてくれたそうですよ。


とても明るくて本当にさばさばとはっきり語って下さる西巻さんのお話に魅了されて、あっという間に時間が経ってしまいました。
「年を取ってくると大変なのよ。」なんておっしゃっている姿も何だかとっても楽しそう。
今も「何かいいものがうまれないかな。」と毎日一枚は必ず絵を描いているそうですよ!

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ありがとうございました。

西巻茅子さんが絵本ナビ読者の方に向けてこんなに素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!

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2009年10月07日

『ゴリララくんのコックさん』発売記念!
ユーモア絵本のすすめ

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とにかく笑える絵本、面白い絵本をと、たくさんの「ユーモア絵本」を生み出されてきたのが出版社絵本館さん。
大人になった自分は「笑っている方が楽しいに決まっている」って事を知っているのに、子どもが絵本を読みながら笑ってばかりいると不安になる・・・なんて、考えてみれば不公平な話ですよね。

絵本館さんが今オススメしたい!という作品がきむらよしおさんの最新刊ゴリララくんのコックさん。もちろん思いっきり笑える絵本です。
この特集記事では、きむらよしおさんの作品の魅力とともに「なぜユーモア絵本なのか」というテーマまで含めて絵本館編集長有川裕俊さんの言葉をお借りしてご紹介したいと思います。
きっと子ども達と一緒に「面白い」絵本をもっともっと読みたくなるに違いありません。

    
 ■ この面白さ、ただものではありません。                               


きむらよしおさんの最新作がこちら!

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ゴリララくんのコックさん』 
きむらよしお・作 絵本館
※内容詳細、みどころはこちらからどうぞ>>>

★作者のきむらよしおさんにコメントを頂きました!

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きむらよしおさん
『ゴリララくんのコックさん』へのひとこと

アナは空間だけではアナになりません。
アナというものは何もない中空を囲っているカベを含めていうのでしょうが、その囲われた空間は何もなくはなくて「何もない」があるともいえます。
ちくわやパスタ類を食べるときは、その「何もない」、つまりアナも一緒に食べています。でも、アナを食べているという感覚はありません。本当はアナも食べているのですが、カベだけを食べていると思っています。


★更に絵本ナビ読者の方へ向けて直筆メッセージも描いてくださいました!

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★絵本館編集長有川さんがその魅力について語ってくれました。


「きむらよしお・絵本の魅力」 絵本館 有川裕俊

知ってるかな、車のハンドルにはクリアランスというものがある。止まっている車のハンドルを持つと少し動く。つまりハンドルにはゆとりというか余裕がある。
一般的には「ハンドルのあそび」といっている。そのあそびの機能がないと事故になる。ハンドルにあそびがあるから車は真直ぐ走る。遊園地のゴーカートのような車が街を走ったら大変。事故だらけ。あそびは車にとってなくてはならないものだ。

人間の精神も車と同じであそびがないと大変。なにより生活がギスギスするし、つまらない。人間らしく暮していくためにも心にあそびがないと、他人とすぐぶつかってしまう。トラブルだらけ。

気むずかしくて、ギスギスした仏頂面の家庭、会社。
考えただけでもぞっとする。

それにひきかえ、あそびやユーモアが、子どもというか人の一生にどれほど資するか、はかりしれないものがある。
平安時代『梁塵秘抄』の昔から「遊びをせんとや生れけむ」と日本では言ってきた。もうすこし日本人も伝統を重んじたほうがいいのではないか。


俳画というものがある。芭蕉も画いたそうですが、代表者、完成者は与謝蕪村。
『ほろにがい人生の悲しみ、心のそこからわきでる感情、それをおもてだっては表現しない日本人の感性、その境地を蕪村は俳画の世界で表現するようになった。
その俳画に「ベタづけ」と「匂いづけ」という言葉がある。
蕪村以前の俳画は、絵と句のつながり方が直接的だった。そういうベタづけをきらって、蕪村は匂いづけという絵と句をはなしてそこをやわらかく連想でつなげるようにしている。蕪村の俳画は絵と句が響きあうそういうやわらかい構造になっている。
見る人が読みとるたのしさ。見る人が参加していく参加型のジャンル。省略のきいた絵で句の意味とつかずはなれずあらわされている。』
この俳画についての長い引用は学習院大学小林忠先生の言葉です。

これはまさに絵本にたいする言葉でもあります。
今の絵本はほとんどが「ベタづけ」。子どもはわからないことが多い。だから説明してあげねばと思う。そんなおせっかいな、というか野暮な大人がつくった絵本が多い。なにごとも絵解き、説明だからおもしろいわけがない。見る人に読みとるたのしさがない。
「匂いづけ」絵本では「おもしろい」が第一。まず子どもが感覚的、直感的におもしろいと感じなければ想像力も湧いてこない。そのためには、なにより作家が絵本を創ること自体、おもしろくなければ、はなしにならない。


きむらよしおさんは、この「匂いづけ」絵本を創れる稀な絵本作家。『ゴリララくんのコックさん』という絵本には、きむらよしお的なあそびがちりばめられている。
その広大なあそびのフィールドのかなたにちくわの穴とちくわという虚と実が交錯している。『ゴリララくんのコックさん』に続く『ゴリララくんのしちょうさん』、『ゴリララくんのおぼうさん』は、更に「虚と実」「匂いづけ」が色濃く躍動している。
こんな絵本は今までなかった。

シリーズとは別の『はしれ、はしれ』という絵本に至っては「疾走する虚空」と言いたくなるほどの世界が描かれている。あるいは「静と動」それとも「虚空のなかの哀愁」かな。
しかしすべてのベースにあるのが愛嬌。そこにきむらよしお絵本の魅力がある。
ほんとうにすばらしい。絵本もここまできたか、という気持になれてうれしい。
こうした絵本を多くの子どもたちが楽しんでくれると、ことのほかではあるのだが。

最後にぼくのすきな蕪村の句を一つ。
「學問は 尻からぬける ほたるかな」


★きむらよしおさんの人気作品

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ぎょうざつくったの』              『ねこガム
 


■ 「ユーモア絵本」のすすめ                                       

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いいから いいから
長谷川義史・作 絵本館刊

冒頭でも述べた通り、絵本館の絵本はどの作品もとにかく面白い。笑える。
そしてのびのびしているのです。
これは「こだわり」なのか、「偶然」なのか。
ユーモアを愛する絵本館編集長の有川さんにちょっとお話を伺ってみました。


「なぜユーモア絵本なのか。」  絵本館 有川裕俊


心ひかれる。すきな言葉です。なにごともおもしろいから、
あるいは気になるから心ひかれる。
絵本選びも心ひかれるが基本です。

読書にとって、おもしろいが子どもも大人も大前提です。
ところが現実はおもしろいだけでは不安になってしまう大人が多い。大人たちは「人間、おもしろいだけでやっていける訳がない。へたをすると人間としてふぬけになったり、ふざけた人間になりかねない」と考えているのではないか。

反対に役に立つとか、ためになるとかそんなことなど考えずに、ただただおもしろいので夢中になって本を読む。
すると言葉に対するセンスとか、考え方にはいろいろな道筋があることとか、人とコミュニケートする能力とか、気持を明るくさせる方法とか、知らず知らず身につく。気づいたら役立っていたり、ためになっていた。
これがいい。
読書とは本来そういうものです。そうおもいませんか。

人間そういった経験を何度かするうちに、あるものが身についたりする。それを教養といいます。
なにごとも夢中になってやっていると、力も自然とつく。
おもしろいをマイナスに考えるのはやめましょう。


子どもが自ら考え行動する癖を身につけるか、つけないか。
これはその子の人生にとって重要なことです。
そのためには大人が心しなければならないことがある。子どもがなにか夢中になっているとき、大人はそのじゃまをしないことです。

絵本にかぎらず、ついつい大人はなにごとも教育的な見方で子どもをみてしまいがちです。考えて考えてなにが子どもに役立つだろうかとおもってしまう。
しかし、おもしろくなければなにごとも長続きしません。本もおもしろくなければ次を読む気がおこらない。読書にかぎらず、子どもにとっておもしろいがすべての行動の原動力・エネルギー源なのです。
どんなに高い車でもガソリンがなければ走りません。あたりまえです。同じく、どんなに世評高い良い絵本を与えても、子どもにおもしろいという気持ちが生まれなければ読書の習慣は身につかない。
すべてはおもしろいがスタート。

そんな笑える絵本、ユーモラスな絵本を子どもと一緒に
みなさんたのしんでください。
そのためには、まず大人のあなたがおもしろい、ユーモ
ラスだと思った絵本を読んであげることです。
くれぐれも大人のあなたがおもしろいとおもった絵本です。
子どもの年齢とか理解力を気にしてはいけません。


※更に有川さんのコラムを味わいたい方はこちらで楽しめます!>>>


★そんな絵本館の作品はこちらから

絵本ナビ内絵本館特集ページ>>>
絵本館HP>>>

★更に他の出版社さんのおすすめも教えてくれた太っ腹な有川さん!

 「本当に太っ腹(メタボ)で困ってます。トホホ」(有川)


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330330-8.gif 12.jpg ISBN4-569-68369-X.gif  Ehon_17128.jpg

※絵本の内容詳細は画面をクリックしてください!

更にこちらの特集もどうぞ
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「笑いがとまらない!ユーモア絵本」特集はこちらから>>>


それでは皆さん、思いっきり笑ってくださいね。
 

2009年09月30日

クルミ森のおはなし①『クルミおばばの魔法のおふだ』
作者末吉暁子さん、画家多田治良さんにインタビューしました!

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「ぞくぞく村のおばけ」シリーズ「きょうりゅうほねほねくん」シリーズ、「ざわざわ村のがんこちゃん」シリーズ(テレビ版脚本、読み物)等々でユニークな作品をたくさん生み出されている作家末吉暁子さん。末吉暁子さんの作品はこちら>>>
そんな末吉さんが新たに取り組まれたのが「クルミ森のおはなし」シリーズ。その第1弾が発売されました!

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クルミおばばの魔法のおふだ
作・末吉暁子 絵・多田治良  ゴブリン書房

夏休み。コータとお姉ちゃんのユカは、おじいちゃんに「クルミ森」につれてきてもらいました。セミ採りに夢中になったコータは、みんなとはぐれてしまい、木と葉っぱの手足をした女の子・クルミっこと出会います。コータはいつのまにか「クルミおばばの森」へ迷いこんでしまっていたのです・・・。(小学校初級~)続きはこちらから>>>                            

クルミ森の豊かな自然を舞台に繰り広げられる、ちょっぴり不思議でゆかいな物語です。
そして、物語をより奥深く、より魅力的にみせてくれる絵を描かれているのが多田治良さん。
「おばけ屋」シリーズのおおらかで大胆な絵が魅力的な画家さんです。

そんなお二人が、発売を記念して絵本ナビオフィスにお越しくださいました!
作家さんと画家さんのおふたりに同時にインタビューというのは初めて。
物語はどの様に生まれてくるのでしょう、絵本を制作される時との違いはあるのでしょうか、
大変貴重なこの機会にちょっぴり緊張しながらも・・・「クルミ森のおはなし」シリーズについて、またお二人御自身の話、読者に向けてのメッセージなど沢山お伺いしました。


■ 「クルミ森のおはなし」誕生のきっかけ

―― このお話は何と言っても、大きくて立派なクルミの木がとても印象的。そんな木のあるこのクルミ森を舞台に物語を書こうと思われたきっかけというのはあったのでしょうか?

末吉暁子さん(以下敬省略):「たまたま去年の秋頃、うちの夫が子どもの頃、戦争で疎開していた、高尾山の麓の小仏峠という所へ出かけたんですね。そうしたら、そこへ到る途中に森があって、それがとてもいい感じだったんです。更に、他にも色々な出来事や思い出があった場所をまわったりしながら、疎開していた家にも行ったんです。戦時中なので60年以上も前だったのにも関わらず、当時子どもだった方々が夫の一家の事を覚えていて下さったんですよね。
そんないろいろな事があってから、また森の風景を見ると全然違うように見えたんです。ああ、こんな森が舞台になった物語を書いてみたいなぁと思ったんです。ただ、そこにクルミの木そのものはなかったんですけどね。」


―― ではクルミの木は想像されて書かれたんですか?

末吉:「そうですね。ただ、実際にはその森の入り口付近に大きな美しい紅葉の木が立っていてとても印象だったんです。
そこで物語としては、クルミの木の実、木の精、そういうものがクルミおばばに繋がるような象徴的なものとして思い浮かんだので、森の入り口に立つクルミの木というものを想像して書いたんです。小川の風景や渓谷、森の印象などはそのままです。クルミの木は(絵を描かれた)多田さんが実際に近くで見に行って来てくださったんですよね。


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 またこの物語にはおじいさんが出てきますよね。おじいさんの話を通して疎開や戦争などの話も伝えたいというのもあるんです。ただ、最初からそういう事を言っても今の子はピンと来ないだろうという事もあって、最初は面白いお話をつくったんです。
これからシリーズが進むにつれてそういう事も伝えられたらいいなとは思っています。」

―― (多田さんにお伺いします)見返しにはクルミ森の地図も描かれていますね。こういう地図などは末吉さんと多田さん、お二人で決めながら描かれるのですか?

  多田治良さん(以下敬省略):「いいえ、すでに末吉さんの文章が最初にありました。そのストーリーを読みながら僕の中で、クルミ森とはこういう森でこういう小川が流れていて、クルミの木はこういう木かな・・・など想像しながら描いていきました。
  近くの目黒区の林試の森公園という所にクルミの木がありまして、そこでスケッチしたりして。それをまた末吉さんにぶつけてみて、いやここにはこういうのがあった方がいいというやりとりがあったりして。そんな風にして出来上がっていきました。」


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―― 絵を描かれる方はそんな風に実際に取材をされる方も多くいらっしゃるかと思うのですが、末吉さんも物語を書かれる時に実際に見られたものからインスパイアされる事は多いのですか?

末吉:「そうですね。頭の中だけでつくっちゃうとなんとなくリアリティがなくなっちゃう、という事もあるんですよね。また、実際に風景を見たことで内容ががらっと変わった、ということもありました。

以前、林明子さんと組んで書いた絵本『もりのかくれんぼう』という作品なんですが、最初に思い描いていたイメージは真っ黒い森のイメージだったんです。
  林明子さんはもともときちっと取材をされて絵を描かれる方なので一緒に軽井沢の森の方へ見に行ったんです。紅葉の真っ最中で、金色がとってもきれいだったんですね。それで文章はころっと変わりましたね。<きんいろにけむったような秋のもり>というイメージになったんです。」

 ★1977年に長編第1作として書かれた「星に帰った少女」の舞台となった場所を、リニューアル出版の機に再び訪れている取材記録が末吉さんのHPに掲載されており、こちらも作品と合わせてご覧になるととても興味深い内容なのです!こちらから>>>
  


■ キャラクターの魅力

―― 末吉さんが書かれる物語の魅力の一つはそのユニークなキャラクター!例えば「ぞくぞく村のおばけ」のユニークなおばけ達、破天荒で子どもらしい性格の「がんこちゃん」や一風変わった登場人物などなど。今回も架空の世界と現実の世界の橋渡しをしてくれるくるみっこを始めとして色々なキャラクターが登場しますね。


末吉:「そうですね。やんちゃな男の子コータだったり、ひきがえるのヘータロだったり、おばばだったり。特にクルミおばばについては「森の守り主」と言っていいような、超自然的な存在というものを一度描いてみたかったというのがあるんです。ちょっと怖いような、でも親しみがあるように人間くさいような部分も出してみて。顔もくるみの殻をちょっとずらした感じのカスタネットみたいな感じで・・・なんて言ったら多田さんがイメージ通りにキャラクターを描いてくださって!とても気に入っているんです。」

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―― そんな独特な性格を持つユニークな登場人物を多田さんが描き出されたんですね・・・

多田:「末吉さんの文章から、おばばはこんな感じかな、コータやくるみっこはこんな感じかなと想像しながらキャラクターをつくっていきました。僕が考え出したものを末吉さんや編集の津田さんに提示して、また練り直したりして。それなりに色々と時間はかかりました(笑)。」


―― 確かにこの物語の中で、クルミおばばとくるみっこのその姿は物語の印象を決めるとっても大事な存在こんなやりとりの中で生まれていくのですね。

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▲そして生まれたクルミおばば!確かに性格がにじみ出ているような。

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▲おばばの部屋。細かく見れば見るほど魅力的!
切りかぶのテーブル、細い草の葉で編んだテーブルかけ、ひょうたんや貝殻のおちゃわん、
木のいすやベンチなど、眺めていると更にその物語の世界を深く楽しめるのです。

末吉:「今制作中の2巻目には、おじいちゃんのちょっと不思議なことが描かれていますよ。」

そういえば、最後の方の終わり方には色々な含みがあるような(おじいちゃんの思い出、とかね)。一体どんな展開になるのでしょう。



■ 森の四季の移り変わりを描く

―― 「クルミ森のおはなし」はシリーズを通して春・夏・秋・冬と森の四季を描き出される予定なのだそうです。最初に登場した第1作目の季節は「夏」。随所に夏ならではの魅力にあふれた表現が登場します。生い茂る緑の木々は見ているだけでも気持ちよく、今にもセミの大合唱が聞こえてきそうです。そしてクルミおばばが作るかんろ水、ひんやり冷たくて美味しそうにみえますね・・・。

末吉:「そうですか?かんろ水は読者の方に飲みたいかどうかは微妙、と書かれた事がありますよ(笑)。確かに色々なものが入っていますし、特に極めつけの秘伝のたれがね。」

―― そういえば、見た目は何だか美味しそうなのですが、想像のつかない色々なものが入っているんです(詳しくは読んでみてね!)
じゃあ、さすがに実際につくってみたなんてことは・・・?

末吉:「そこまではしませんよ(笑)。架空の飲み物なので実際には手に入らないものをわざと持ってきてるんです。どんな味なのかなぁと、読んでくれる人が想像してもらいたいですしね。でも、しそジュースとかは最近ちょっと凝っているんです。しそを煮て、こして砂糖と酢を入れて出来上がり。すっとして美味しいですよ。」

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―― クルミ森の四季を描きながら、子ども達に感じ取って欲しいことは何かありますか?

末吉:「自然や森が生かしているものは人間だけでなく、小さな虫から小さな動物、それから大きな動物まで全部ひっくるめて生態系として森の中でめぐりめぐって生きているんです。人間だけが生かされているわけじゃない、そういう部分が描けたらと思っています。」

―― そういう自然というものを絵にするのは難しいですか?

多田:「僕は東京の下町育ちなんです。だから田舎の森で遊びまわった体験というのはあまりないんです。どちらかというと森は憧れの存在ですよね。それは大人になった今も子どもの時も変わらないですよね。森の中を走り回ったり、動物に出合ったり、その時の驚きなんかを体験したかったなぁと思うのです。例えば、大人になって子どもと一緒にキャンプに行ったりしても、うっそうとした森の奥を見てしまうとちょっと怖くてそれ以上は立ち入れなくてくるっと引き返してしまったり(笑)。そういう部分も含めて表現したいなあとは思ってますよね。」


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―― 1巻目が「夏」と言う事は、2巻目は・・・?

末吉:「秋の森が舞台です。秋のクルミまつりが行われるんです。紅葉の美しい森と、お祭りに集まってくる森の新しいキャラクターが沢山登場してきます。」

多田:「そうなんです。新しいキャラクターは沢山描きました!あ、今日はちょっと持ってきていますよ。」


今まさに制作の真っ最中とのこと。そのラフをちょうど持っていらっしゃったという多田さん、編集の津田さんも初めてご覧になるというその貴重な場面にラッキーにも居合わせてしまうというハプニングもありました。(遠くからその様子を拝見させて頂きました。)

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▲紅葉の場面の美しさに目を奪われます・・・。まだ未決定なので完成品は発売を楽しみにしてくださいね。


■ 『クルミおばばの魔法のおふだ』のみどころを伺いました!

―― これから読まれるであろう方に向けて、おふたりに改めてこの物語のみどころをお伺いしてみました。

末吉:「クルミっこ達と一緒に歌ったり楽しんでもらえたら嬉しいですね。
例えばいつもちょっと不機嫌なヒキガエルのヘータロや、こわいところもあるけど豪快で人間味のあるおばば、やんちゃなコータなどのキャラクターも、例えば声に出して読まれるんだったら声色を変えてみたりして楽しんで欲しいですね。」

―― 歌も沢山出てきますよね。
末吉:「以前、テレビ版がんこちゃんの中でもよく途中で歌が入っていたんですね。それで子どもたちが嬉しそうにしているのがいいなあと思って。それからは読んでいる子ども達が喜んでくれるように、機会があれば歌の場面を入れたいなぁと考えるようになったんですね。」

―― 楽しい詩が印象的。メロディーもあるんですか?

末吉:「リズムやメロディーなんかは特に考えていないので、読んでいる人が好きなように適当に入れて楽しんでくれると嬉しいです。」

―― (多田さんにお伺いします)特にここは見てもらいたい!という場面を教えてください。

多田:「おばばの家の場面(※上記参照)や、おばばの家の入り口の場面なんかですね。(※クルミの殻が並べて飾ってあったりして、こちらもとても愛らしいんです。)
後はやっぱりおばばなり、くるみっこなり、コータなりのキャラクターですね。」

―― 今回の多田さんのタッチは、既刊「おばけ屋」シリーズの絵のタッチと驚く程違いますね!

多田:「今回はタッチをがらっと変えてください、という要望もあり細い線で細かく描いています。」

(※編集の津田さんよりこのあたりをご説明いただきました)
ファンタジーの中でもこの本のように骨子がしっかりしていて、リアリティーの延長線にあるファンタジーであるという事や、コータが現実と架空の森を行き来するという事もあり、リアルさを保ちつつ異世界に行くという意味でも今回はこのような細密なタッチでお願いしました。

確かに森の様子や、部屋の様子、表情など細かい部分まで描かれていることが、子ども達にとってもかえって安心して架空の世界を楽しんだり思いっきり想像したりできるのかもしれませんね。
更に、森の木々の大胆で大らかな表現と線描とのバランスも独特で面白いのです。更に2巻目からの表現方法も楽しみになりますね。


■ 末吉暁子さん御自身について伺いました。

―― 今後こんな物語を書いていきたい、というのはございますか?

末吉:「今まで小さい子向きの童話から高学年向けの児童文学まで色々な物語を書いてきました。でもやっぱり小さい子が喜んでくれると嬉しいんですよね。

先日もね、「ぞくぞく村のファンです」って近所の幼稚園に通っているという女の子がお母さんと一緒にお手紙を直接自宅に置いていってくれたんです。小さい子が自分で読んで面白いって言ってくれるのがいいじゃないですか。親から勧められたり課題図書で選んだという訳でもなく自分で選んで読んでくれたのが嬉しいですよね。

だからこれからも、こんな小さな子達が喜んでくれる様な物語が一番書きたい!と思っています。また、絵本というのは全然つくり方が物語とは違うものだと思うのです。だから、やっぱり小さな子でも読める物語というものを作っていきたいですね。」

―― 「ぞくぞく村」は特にテレビ絵本(NHK教育テレビ)になって放映されてからの反響も増えたのでは?

末吉:「そうですね。最近また反響が増えたように思います。テレビ絵本がきっかけとなって、また本を読んでくれたらそれはとても嬉しいですよね。
このテレビ絵本というのは、ナレーターの人の感じで大分印象が変わったり、ちょっと動いたり、そのバランスが結構面白いですよね。」

―― 最後に絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いできますか?

末吉:「親子で一緒に楽しめるというのは低学年向けの童話ならではだと思います。
子どもと一緒に読みながら、親の世代の人もちょっと童心に返ってストーリーの楽しみを共有してもらえたらと思います。

また小さい子向けの童話にとって、絵はとても重要なんです。
「クルミ森のおはなし」なんかも絵を見ただけではちょっと笑ってしまう、なんて場面があると思います。
そういうところは絶対親子で共有できると思いますね。

そんな風に本を読みながら親子で一緒に共有(笑ったり楽しんだり)できたらいいですよね。」


★末吉暁子さんが絵本ナビ読者の方へ向けて素敵な直筆メッセージを書いてくださいました!

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■ 多田治良さん御自身について伺いました。

―― 多田さんはずっと広告やイラストの仕事を手掛けられてきたそうですね。「おばけ屋」シリーズでの大らかで大胆なタッチはずっと児童書を手掛けられてきた方と思うくらいのびのびと魅力的な絵だと思います。児童書、絵本を描かれるようになったきっかけというのはあるんですか?

多田:「学生の頃から絵本の世界には興味があったんです。仕事をしている時は広告の仕事が多かったので、なかなか機会がないという事もあったんです。
それで、粟田と(デザインスタジオで一緒に仕事をされているあわたのぶこさん)そろそろ始めますか・・・と児童書の創作に取りかかりました。「おばけ屋」シリーズの時は、墨と筆ではみ出すような感じで描こう!とはじめたものです。」

※現在は、あわたのぶこさんとのコンビで数々の作品を発表されている多田さん。多田さんの作品はこちらからどうぞ>>>

―― 絵本も読みものも制作されているそうですね。今回の「クルミ森」のように物語の絵を描かれる時の楽しさはどんな所でしょう?

多田:「やっぱりストーリーですね。ストーリーの世界の中でどういう絵にしようかと考えたり、流れを断ち切らないようにしながらどう描いていくかと考えながら制作していきます。

広告の仕事の時は一枚で完結させていく事が多いのですが、こんな風にストーリーのある世界をつくっていくのはまた全然違ってそういう流れを感じながら、という部分が楽しいですね。」


―― 最後に絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いできますか?

多田:「本をじかに手にしてページをめくる楽しさ。次に何が出てくるのか期待する感覚。
そういう手触り感というのは子どもには必要なんだと思います。
本に触れることでそんな経験をたくさんして欲しいと思いますし、子ども達が思わずめくりたくなるもの、楽しさで惹きつけられるものをつくりたい、というのは常にあります。
僕は、これからもそんな風にものをつくっていきたいと思っています。」

★多田治良さんが絵本ナビ読者の方へ向けて素敵な直筆メッセージを書いてくださいました!

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このまま一つ絵本が出来上がっちゃいそうですね。


■ おまけ画像!

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▲末吉暁子さんが特製「がんこちゃんせんべい」を送ってくださいました!可愛い。
  「がんこちゃん」らしくなかなかの歯ごたえでした(笑)。


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▲こちらは多田さんの近刊絵本です!また雰囲気が全然違いますよね。
(書店では流通していないものの為、残念ながら現在は購入できません。)

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▲最後に記念にパチリ。

末吉暁子さん、多田治良さん、ありがとうございました!

2009年09月24日

絵本『こうえんのかみさま』作者すぎはらともこさんに直筆メッセージを頂きました!

小さな女の子が公園で出会ったちょっぴり不思議なお話『こうえんのかみさま』。
ユーモアたっぷり、ほのぼのとしたお話は、子ども達には勿論、大人が読んでも懐かしい気分になれそうです。

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こうえんのかみさま
すぎはらともこ
・作 徳間書店

内容の詳細はこちらから>>>


◆作者のすぎはらともこさんよりこの作品に寄せてコメントを頂きました!

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幼い頃見たかもしれない、でも忘れてしまった色いろなものを想像して、この本を描きました。
偶然捕まえた泣き虫なこうえんさまと出会い、まあが見る「景色」が、いちばんのみせ場と思っています。
大人の方は、眠った記憶を呼び起こし、小さい方はこれからの出会いを思って、お読みいただければうれしいです。

◆本作品を担当された編集の方にもすぎはらともこさんの作品の魅力をお伺いしました。

著者似顔絵からも伝わるように、すぎはらさんは絵本の主人公まあちゃんをそのまま大きくしたような女性。ちょっとおっとりした雰囲気ながら、さらっとおもしろいことを言ってしまう・・・『こうえんのかみさま』は、そんなすぎはらさんならではの、とぼけた味の絵本です。
絵本ナビ読者のみなさんに向け特別に、<こうえんさま>とはどんな人(?)か、すぎはらさんに伺ったところ・・・

1.公園の安全を守る人。
2.みんな知らないけれど「動くお地蔵さん」みたいな身近な存在。 
3.時には、ケンカやケガからも守ってくれる。 
4.乗り物に乗ることもある。季節によって、種類を変えるらしい。 
5.人に見られないよう、生活している。・・・だそうです。

絵本を読んだ後、公園で「こうえんさま」を探す子どもたちに出会えたら・・・と夢見ています。すぎはらさんの次回作も、どうぞ楽しみにしていてくださいね!


◆すぎはらともこさんが直筆メッセージを描いてくださいました!

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本当に素敵なメッセージ、ありがとうございました。
これからも目が離せない絵本作家さんですね。
新作を楽しみにしています!


2009年09月22日

絵本『ねこのミルとねずみのチムニー』制作秘話のご紹介!

こんな可愛らしい絵本があります。

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ねこのミルとねずみのチムニー
原 裕朗・作 森山杳里子・絵 ブロンズ新社・刊

この作品を出版しているブロンズ新社さんの担当編集者の方が山縣綾さん。
山縣さんがこの絵本の事を語られる時、まるで我が子を見るような視点でおっしゃるのがとても印象的で、思わずこの原稿を依頼してしまったのです。
編集の方の目線を知る機会というものは、読者である私達にとっては意外と少ないものです。
その想いの深さは、作者の方に勝るとも劣らずなのです。

『ねこのミルとねずみのチムニー』の制作秘話、作者の方とのやりとり、本作品のみどころなど普段伺えない貴重なお話から、原さん、森山さんの愛猫のお写真まで見逃せない記事となりました!絵本とともにご堪能ください。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


原さんと森山さんの手がけられた、とある作品を見て
私がご連絡をとらせていただいたのは、
さかのぼること7年前でした。

当時おふたりは、別のプロジェクトを手がけておられ
「絵本を描きませんか ?」という依頼に
こたえていただけない状態・・・難しいというお返事でした。
もちろん、編集者をしていれば、そのような事はあることですから、
その時は、「うう・・・(涙)」と落ち込むけれど、
翌日になれば明るく次へとむかっていく図太さが必要です。
「そう、物忘れの良さも、編集者には必要なのさ・・・」
などとうそぶきながら、
月日は流れ流れて2009年。
突然、その電話はやってきました。


「こんにちは ! 原です ! おぼえてますか ? ?
むかし作りたいとおっしゃっていたような
絵本の作品ができたんですけど、
ブロンズ新社さんでどうかなーと思って。
だいぶ遅くなっちゃったけど」

変わらぬ歯切れのいい、作家の原さんの声。
本当に久しぶりの、うれしいお電話でした。
早速お目にかかって、見せていただいたのが
この『ねこのミルとねずみのチムニー』。
7年ぶりの再会でした。


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あまえんぼミルとしっかりもののチムニーが友達になり、
はじめておうちに招待されるところから、物語は始まります。

お花をたずさえてドキドキしながらの訪問。
ところが猫のミルは、小さなねずみのおうちに入れない。
はじめてのご招待を楽しみにしていたミルは、
あんまりがっかりして泣き出します。
「せっかくよんでもらえたのに、中にはいれないよー」
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「泣かないで、きっといい方法があるよ」
やさしいチムニーが頭をひねって・・・
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そうだ ! と、思いついたのは、
ミルの体をバラバラに招待すること。

ええ! ! 一体どうするの?

・・・というが、物語のあらすじ。


まず、めくりの面白さをいかした
おもしろい構成に目がくぎづけに。
ねずみの家の「中」と「外」の場面をくりかえしながら、
ミルとチムニーの中と外からの
かわいい会話が進んでいきます。
読み聞かせてあげたら、小さな子も楽しめる
楽しいストーリーです。

家の「外」は豊かな自然に囲まれたシーン  
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ミルの表情が、なんともいえずかわいらしい !
まずは玄関から、おそるおそる前足を入れてお邪魔します。


家の「中」は、楽しいインテリアとチムニーの表情にフォーカス !
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前足にそっと触れているチムニーの、
なんとうれしそうなこと。
でもそういえば、小さなころ、
仲良くなったお友達と手をつなぐのって
うれしはずかしの、大切な瞬間だったなぁ。
そんなはじめての友達との間に生まれる
うれしい気持ち、いたわりの心が
この本のテーマ・・・だと思います。

全篇、生き生きとした2匹の表情としぐさが
たまらなくチャーミング。
そして、クラシックな雰囲気の水彩画で描かれた
森の野の花や自然がとても美しい。
植物が大好きな画家の森山さんが
動物たちとのサイズの対比や、季節にまでこだわって
丁寧に描いています。

お話とイラストをいただいてから
さらにディスカッションをしつつ構成を整えて
イラストにも加筆、修正を加え
テキストを何度も見直していただき
最後は色校正で四苦八苦(淡い水彩画は色が出しづらいのです)。
試行錯誤の末、先日・・・
やっとやっと本の形になりました。

早速できあがった本を見に、弊社にお越しくださった
著者の原さんと森山さん。

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20ウン年来、コンビをくんで
さまざまにお仕事をされてきたふたり。
一般書や、雑貨・アニメなどのお仕事も手がけてきました。
でも、絵本の仕事は中でも特別。
完成して本当にホッとされたご様子です。

聞けば
作家の原さんは、4匹の猫と3匹の犬たちと、
画家の森山さんは、2匹の猫たちと暮らす
大の動物好きコンビ。
森山さんはハムスターを飼っていらしたこともあるそうで、
猫とねずみの動きや表情の自然な愛らしさに
なるほどと納得させられたのでした。

さてここで・・・
著者のイメージの源である猫たちを
感謝もこめて、特別にちょっぴりご紹介・・・


原さんのおうちの4匹。

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森山さんのおうちの2匹。

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気ままな2匹はうわさによると
旦那様より大切にされているらしいですよ・・・

実は原さんのおうちには、
さらに3匹の犬たちもいるんです!
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そろって何を見ているのかなぁ?

みんな、すっかり家族の一員・・・なんですね。
どのこもそれぞれに個性的で、かわいいです。

さてさて「ミルとチムニー」、
実はすでに第2弾を制作中。
2作目のラフが先日あがったのですが
これがまた、すばらしいできばえ !
ここで、お見せしたいくらいなのですが・・・
それは来春、乞うご期待です。
かわいい2匹が、自然の中をかけまわる
元気いっぱいの作品になりそうです。

シリーズ第1弾『ねこのミルとねずみのチムニー』
子どもから大人まで、楽しんでいただける絵本になっています。
どうぞ2匹と、友達になってあげてください。


編集担当 山縣彩

2009年09月14日

絵本『おはなをどうぞ』作者三浦太郎さんにインタビューしました!

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くっついた』などのあかちゃんえほんシリーズ、『まかせとけ』などのはたらくくるまシリーズ、その他『バスがきました』『おしり』など小さい子が喜んで読む絵本がママ達にも大人気の三浦太郎さん。待望の最新刊の登場です!

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おはなをどうぞ』 三浦太郎・作 のら書店・刊

大人の女性も思わず手をのばしてしまうほどラブリーな表紙!
一体どんな内容なのでしょう?
三浦太郎さんにお話を伺ってみました。


■ いつか女の子が登場する絵本を・・・。                                 

三浦さんの作品の中でも「のりもの」がモチーフになっている(男の子が喜びそうな)絵本が印象にあるからかもしれませんが、今回は女の子らしさが全開の華やかでとても愛らしい絵本ですね。


うちの子は女の子なので、いつか、女の子が登場する絵本が作りたいと思っていました。
私自身はのりものやデザインが好きなのですが、実は、かわいいものも得意なんです。


■ お花をだれかにあげたいな、そう思う気持ちが素敵。                          
 
とにかくお花が咲き乱れている場面の鮮やかさ、美しさに目が釘付けになってしまいます。眺めているだけでも心が浮き立ってくるようですね。
本作でお花をテーマに絵本をつくろうと思われたきっかけを教えていただけますか?


後書きにも書いたのですが、スーパーに行くと娘が必ず、
お母さんにあげるからお花を買ってとせがむのです。
子どもはプレゼントをもらうだけでなく、あげたりするのも大好きです。
時にはそれがちょっと気前がよすぎたりなんかして。
お花を見ていて、綺麗だな、だれかにあげたいな、そう思う子どもの気持ちが、
とても自然で素敵に感じられたことから、お花をテーマで絵本にしようと思ったのです。


その後書きには娘さんとのこんな素敵なエピソードが書かれています!


<<お花をあげたい気持ち>>
娘といっしょによくスーパーへ買物に出かけます。そのスーパーは入り口のところで少しだけお花を売っていて、娘はそれを見ると毎回、「お母さんにあげるから買ってー!」とせがむのです。
 子どもは、やっぱりお母さんのことが大好きで、好きという気持ちは何かをあげたい、という気持ちになってあらわれるようです。
 生まれて最初にお花をあげたい相手、それはきっとお母さんなのでしょう。子どもにとってお母さんの笑顔は一番の幸せで、とても大切なものなのです。
 そんなこともあって、休日にお花をおもいっきり摘むことのできるところへ行こう! ということになり、南房総へ出かけました。澄んだ青空の下、腕いっぱいにお花を摘む娘はとても満足げで、それを見ていた私もなんだか優しい気持ちになりました。   
(『おはなをどうぞ』後書きより抜粋)


■  子どもの目線から見た大人は・・・?                                    

女の子と動物達のやりとりを見ていると、微笑ましかったり、ちょっとハラハラしたり。誰かに喜んでもらうのは嬉しいことだけど・・・。女の子の繊細な心の変化が画面全体から伝わってきます。その表現方法へのこだわりを教えていただけますか?


この本に出てくる動物たちは、子どもを取り巻く大人たちです。
子どもの目線から見ると大人はとても大きく威圧的に見えることでしょう。
そして、大人たちの言葉に喜び、時に不安になったりします。
しかし、最後は子どもにとって一番安心できる場所に帰ることで、
また子どもたちは成長していくことができるのだと思います。


そんな三浦さんの言葉を胸に読み返してみると、自分が子どもだった頃の記憶が重なって蘇ってくるようです。そして最後の場面ではとても幸せな気持ちになれるのです。きっと子ども達も同じように感じているのでしょうね。


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■ この小さな優しい物語を演出するのは鮮やかな色彩。                         

オレンジやピンクなど、色の鮮やかさもとても印象的な本作品。
通常の印刷方法とはちょっと違うとお伺いしましたが・・・。


簡単にいうと版画に近い印刷です。
色同士をできるだけ掛け合わせずに、
そのものズバリの色を印刷しているので発色が良いのです。
このような印刷方法()は古い本によく見られます。
色が重なった部分が少し違った色になるのもこの印刷の特徴です。

※特色印刷
作り方の工程の説明については複雑になってしまうそうなので、印刷についてのみ
簡単にわかりやすく教えていただきました。




■ この作品をどんな風に楽しんでもらいたいですか?                          

子ども達には勿論、大人の方にも喜ばれそうなこの作品。読者にはどんな風に楽しんでもらいたいですか?


子ども向けに作ったのですが、
出来上がると大人でも楽しんでもらえるのではないかと思いました。
出産祝はもちろん、誕生日や母の日にお花と一緒にプレゼントするのにもいいと思いますよ。


■ 三浦さんご自身についてお伺いさせて頂きます。                            

絵本を制作されていて、一番楽しい時はどんな瞬間ですか?

アイディアが頭の中で浮かぶ瞬間、これが一番楽しくワクワクします。


絵本作家になって良かったなぁと思われた事がございましたら教えて頂けますか?

私はイラストレーター時代に仕事をしていて、分担作業で自分の満足のいく作品を作ることが、
どれだけ難しいかを知りました。
絵本はある程度すべて、自分で決めることができます。それによって大変なことも増えますが、
自分のアイディアをかなり近い状態で、形にできることはとても幸せなことだと感じています。


今後どのような絵本を作ってみたい、作っていきたいと思われていますか?

最近は子どもも大きくなったので少しお話のあるものを作ろうと思っています。
私は子どもと寝る前に絵本を読んでいるので、長いお話は読むのが疲れます。
ほどよい長さのお話。子育てをしているとこれが重要だったりします。


■ 三浦太郎さんからのメッセージです!                                  

最後に、三浦太郎さんに絵本ナビ読者の方へ向けてのメッセージをお願いしました。


絵本は子どもが読むものだけど、大人が決めて買います。
楽しい絵本が好きな親は、子どもに笑顔になってもらいたい。
優しい絵本が好きな親は、子どもに優しくなってもらいたい。
きっと、そう願っています。
たくさん、自分だけの絵本に出会ってください。


素敵な直筆メッセージも描いてくださいました!


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絵本とまた違った味わい、ちょっと得した気分になっちゃいますね。
ありがとうございました!

三浦太郎さんの作品>>>
三浦太郎さんのHP>>>

2009年09月09日

絵本『アイラのおとまり』の魅力とは?
翻訳者まえざわあきえさんにお話を伺いました!

アメリカではロングセラーとして35年も愛され続けているという絵本『アイラのおとまり』
子どもから大人まで惹きつけてやまないこの作品、一体どんな内容なのでしょう。
待望の新装復刊を記念して、翻訳者のまえざわあきえさんにこの作品の魅力を語って頂きました!  


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アイラのおとまり
バーナード・ウェーバー 作  まえざわあきえ 訳 
ひさかたチャイルド/チャイルド本社 刊
          

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▲翻訳家まえざわあきえさん。

※こちらの写真はミュンヘン国際児童書図書館内にある、絵本作家ビネッテ・シュレーダーのコーナーで撮影されたものだそうです。後ろにあるのはビネッテ・シュレーダーがデザインした機械仕掛けの作品だそうで、小さな扉を開くと、オルゴールがなって中の景色や人物が動くそうです!


■ 『アイラのおとまり』の原書との出会いは・・・。                                                                                         


まえざわさんは『アイラのおとまり』の原書に出会われた事が翻訳の道へ進むきっかけになったとお伺いしています。その時のエピソードなどを教えて頂けますか?


 アメリカの大学留学中、英米文学科の絵本の授業で『アイラ』に出会いました。教授が持ってきた絵本のなかに『アイラ』を見つけたクラスメートたちから、「読んで!」コールが起きたのです。教授は、「しかたない……」といった感じで、『アイラ』を読み始めました。原書のリズムは、くるくると変わるアイラの気持ちにぴったりでした。学生たちは、笑顔で聞いています。子どものときにアイラを読んだ彼らが、おとなになっても愛してやまない様子を目の当たりにして、絵本の力を改めて感じた瞬間でもありした。

 そしてわたしも、この本のとりこになりました。おとまりに誘われて、大喜びしているアイラの無邪気なようす。次の場面から一転、アイラは真剣に悩み始めるのですが、その表情もまたかわいい。

 アイラを取り巻く家族にも、魅せられました。お父さん、お母さんの愛情がつたわってきますし、お母さんがソファでゆったり新聞を読み、お父さんはチェロをひいて……なんていう心の余裕にもあこがれました。

 五歳年下の弟のいるわたしには、おねえちゃんの気持ちも痛いほどわかります。弟がかわいいからこそ、家で甘やかされている弟に、世間で受けるかもしれないキツイ一撃を教えてやらずにはいられないのです。(最近わたしの弟にそんな話をしたら、「いや、受けたほうにしてみれば、あれは愛情じゃない、ただのいじわるだった」と言われ、とてもショックでした……。)
レジーも、ちょっとずるいけど、いっしょうけんめいで、そこがまたほほえましい……。

 最後に安心して本を閉じることができるのも、いいなあと思いました。


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 授業のあと、アメリカの公立図書館で、『アイラ』を読み聞かせしている場面にも遭遇しました。子どもたちが、身を乗り出すようにして絵本を見ています。アイラがぬいぐるみをつれていかない、というと、みんな、小さな肩をがっくりと落とし、「オー…」とためいき。やっぱりつれていこう、となると、こんどは「そうだよ!」「つれていったほうがいいよ!」と歓声があがります。


 アメリカの子どもたちは、ごく小さい時から、親とはべつの部屋で寝ます。わたしのアメリカの友人たちは、親と寝ていた記憶はなくて、もの心ついたときには、ぬいぐるみと寝ていた、と言います。ひとり泣きながら寝た夜のことも、ぬいぐるみだけは、ぜんぶ知っているのです。そんなぬいぐるみと離れて友だちの家で寝るのは、すごく勇気のいることに違いありません。だからアイラの問題も、他人事ではないのです。

 こんなにみんなに愛されている絵本なら、日本の子どもにだって読ませてあげたい……。そう思ったのが、『アイラ』の翻訳を思い立つきっかけでした。

子どもの頃まるで自分の事のように共感しながら読んでいた子たちが、大人になっても嬉しそうにお話を聞いている様子。なるほど「絵本の力」というものの原点を感じるエピソードです。きっと日本の子ども達にも愛されるでしょうね。


■ アイラの素直さが伝わるように・・・。                                                                                         

お話自体はちょっと長めなのですが(48ページ)、アイラと一緒の気持ちになって迷ったりドキドキしているうちにあっという間に読める印象を受けました。小さな子でも楽しめそう!翻訳される時に意識された事はありますか?


 アイラの素直さが伝わるように……と思いながら訳しました。それから、英語で読んでもらったときの軽やかなリズムも、忘れないように――。重たいリズムでアイラが悩んでしまったら、聞いているほうも、しんどいですから……。

 日本でも、いろいろな方が読み聞かせしているのを聞いたことがあります。会話が多いせいか、読む人によっていろいろなアイラやレジーが登場して、とても楽しいです。みなさんにも、ぜひ、声に出して読んでいただけたらと思います。


■ 作者のバーナード・ウェーバーさんは家族をとても大切にされている方。                                                                                        

作者のバーナード・ウェーバーさんはどんな方なのでしょうか? 


 ウェーバーさんは、グラフィック・デザイナーをしていたとき、彼の作品集を見たアート・ディレクターたちから、児童書のイラストも描いてみてはどうかと勧められたそうです。ちょうどそのころ、ウェーバーさんは自分の三人の子どもたちに絵本の読み聞かせをするようになり、絵本の魅力にのめりこんでいきました。子どもをつれて図書館へ行くと、夢中になって絵本をあさるので、子どもから、「パパはおとなの本棚に行って」と言われたとか。それから絵本を作るようになったそうです。

 「自分の作品は、家族の愛情や支援があってこそできたもの」と、ウェーバーさんは家族をとても大切にしています。その気持ちが、また、絵本に反映されていると思います。


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バーナード・ウェーバーさん。
(作品やエピソードから受ける印象どおりの愛らしさ!!嬉しくなっちゃいますね。)


 ■ 『アイラのおとまり』のみどころを教えてください!                                                                                        


 アイラにふりかかった問題や、家族とのやりとりのようすは、年齢や文化を超えて共感できるものだと思います。だれでも子どものころには、おとなから見ればささいなことで不安になった経験があるのではないでしょうか。

 でもよく考えてみると、おとなだって、他人から見れば取るに足らないことで悩んだりするし、心に不安があれば、なかなか決断を下せない・・・。「これがあると安心」「これがないと不安」というものだってあるはずです。アイラは、だれの心の中にもいるのだと思うのです。この本が長く愛される秘密のひとつは、このあたりにもあるのかもしれません。


 また、ウェーバーさんは、絵本の形をうまく活かして、言葉では語りつくせない感情の機微を伝えたり、読者を物語の世界に引き込んだりします。

 たとえば『アイラ』で、真っ白なページに、「だけど おねえちゃんが いうんだ」とか、「そしたら おねえちゃんは いうんだ」とか、でてくると、たいてい次のページのおねえちゃんのセリフはいじわるです。こんなふうに決まったパターンを繰り返すと、小さな子どもでも、次にどんなことが待ち受けているのか予測できます。予測できると、子どもたちはますます絵本に引き込まれていきます。

 以前、3歳の男の子に『アイラ』を読んであげたことがあります。物語中盤、真っ白なページに書かれた「でも おねえちゃんは いうんだ」という一文を読んだら、その子は次のページへ進もうとするわたしの手をおさえこんでいいました。
「ねえ、おねえちゃんも、『つれてくのがいい』っていって!」

 おねえちゃんのいじわるは、もう、聞きたくない、アイラには、ぬいぐるみを連れて行ってほしい――と、いうわけです。この絵本を初めて読む3歳の子でも、展開を予測していたのです。この子の頭の中には、自分だけのアイラの世界が広がっていたに違いありません。

 ウェーバーさん自身、絵本を余すことなく楽しんで作っているなあと思うのです。


■ いつか自分でも、アイラのようなかわいいお話を・・・。                                                                                        



まえざわさん御自身についてお伺いします。こんな絵本を翻訳されていきたい、というのがありましたら教えて頂けますか?

 おなかを抱えて笑ってしまうような話でも、涙が止まらない話でも……何度でも読みたくなるような絵本、何かの時に取り出して、また読んでみようと思うような絵本を訳せたら、幸せです。いつか自分でも、アイラのようなかわいいお話を作ってみたいです。


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▲こんな可愛い手書きのサインを頂きました!!
 まえざわさんのつくったお話、楽しみですね。ありがとうございました。
 

2009年08月26日

『山からきたふたご スマントリとスコスロノ』

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山からきたふたご スマントリとスコスロノ』 
乾 千恵 再話 早川純子 絵 松本亮 監修 福音館書店

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詳しくはこちらもどうぞ(福音館書店HP)>>>