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2010年08月11日

8月17日より「全ページ1回だけ立読み企画」開催します!

8月17日より「全ページ1回だけ立読み企画」開催します!
こんにちは、絵本ナビ事務局長のカナガキです。

本日の日本経済新聞朝刊で記事が出ましたが、8月17日より1ヶ月間の期間限定で、「キャベツくん」「なにをたべてきたの」など約30作品について、絵本ナビメンバーに限り1回だけ「全ページ立読み」を可能にする企画を実施します。


絵本ナビのWebサイト上で、絵本を無料で「全ページ」立ち読みしていただくことができます。ただし、「1回だけ」。

※立ち読みサービスをご利用いただくには、絵本ナビにメンバー登録し、サインインする必要があります。
メンバー登録がまだの方は、まず下記ページよりメンバー登録をお願いします。
絵本ナビ メンバー登録のご案内

※「1回だけ」とは、該当作品の全ページ立ち読みボタンをクリックしてから、30分間見られることをいいます。


私たち現代の子育て世代は、常に時間に追われています。

絵本が子どもによいのはわかっています。
親子で絵本を読む「幸せな時間」は、とても大切だということも。

でも、子どもにどんな絵本を選べばよいのでしょうか。
子育てに忙しい毎日の中で、絵本選びにかけられる時間は十分ではありません。
小さな子を連れて、本屋さんでゆっくり絵本を選ぶことは簡単ではありません。

そんな子育て世代の絵本選びが、苦労から楽しみに変わるようにと、絵本ナビは8年前に誕生しました。絵本の情報をワンストップで見ることができ、プロの紹介文や読者の「生の声」、中面画像、数ページの立ち読みと、少しでも作品について判断ができるように、情報を増やしてきました。

それでも、それでもやっぱり、ネットで購入するということは、「エイヤ」で買うことに他なりません。
そう、親にとっては、我が子に読む絵本は、きちんと全部読んでから与えたいのです。


おもしろがって聞いてくれるだろうか。

今の我が子の発達段階にあっているだろうか。

怖いシーンはないだろうか。

自分の育児方針と違うメッセージが入っていないだろうか。

心に残る作品だろうか。

お気に入りの一冊になるだろうか。

購入して本棚に加えておきたい作品だろうか。

・・・興味を持った作品について、街の本屋さんのように全ページ立ち読みができたら・・・

これが正直な気持ちだと思います。

一方、本の作り手からすれば、「家のパソコンから全部読めてしまったら、本を買ってもらえなくなってしまう」ということになります。

本が売れなければ、書き手も作り手もいなくなり、優れた作品は生まれなくなってしまいます。これは実に当たり前のことです。

でも絵本は、絵本に限っては「全部読めるようにした方が、本を買ってもらえるのではないでしょうか」という仮説を私は立てました。

子育て中の親の一人として、7年間にわたり全国の子ども達に絵本を読んで来た者として、月に50万人がご利用いただいているサイトの代表として、たどり着いた一つの結論です。
もちろん、立ち読みができればその絵本を買うわけではありませんが、立ち読みできなければ買いにくいのは事実でしょう。


今回のトライアル企画は、期間限定です。
この期間中に、どれだけの方が立ち読みをしてくれたか、どれだけの方が購入してくれたか、によって、今後絵本ナビで全ページ立ち読みができるかどうかの運命が決まります。

そこで皆さんにお願いです。もし、この企画の主旨に共感するところがありましたら、ぜひお友達にも「絵本ナビで全ページ立ち読みできるよ」と伝えてください。

また、この企画について、アンケートであなたの感想を教えてください。 そして、もしお気に入りの作品に出会って購入されることになりましたら、今回はぜひ絵本ナビからお買い求めください。


絵本ナビはすべての子どもと親を応援します。


★全ページ立読みOK企画は8月17日からです。

2010年08月02日

谷川俊太郎さんにインタビューしました!

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「ことばのえほん」シリーズ全3冊は1972年に刊行された絵本。当時、あかちゃん絵本がまだ今ほど広まっていない時代に、詩人・谷川俊太郎さんと画家・堀内誠一さんが、“幼児とことば”について、感覚を研ぎ澄まして創りあげた珠玉の名作です。37年間、堀内さんの書庫に眠っていた幻の絵本がくもん出版さんから復刊され、再び私達も楽しめるようになりました。

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更に、40年前に堀内誠一さんが描かれていた英語版「かずのえほん」に谷川さんが新たに詩を書き下ろし、『かずのえほん いくつかな?』として登場。

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その発売を記念して、谷川俊太郎さんへのインタビューが実現しました!38年前になる制作当時の貴重なエピソードを伺いながら、それぞれの絵本のみどころ紹介してくださっています。また、今は亡き「天才」堀内誠一さんとのやり取りの話なども登場します。
お楽しみください!!


谷川俊太郎(たにかわしゅんたろう)
1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、詩、絵本、翻訳など幅広く活躍。1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『マザー・グースのうた』(草思社)、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)、『もこもこもこ』(文研出版)、「まり」(クレヨンハウス刊)、「わたし」(福音館書店)、「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)他多数の作品がある。翻訳作品も多数。

堀内誠一(ほりうちせいいち)
1932年東京生まれ。グラフィックデザイナー、絵本作家。主な絵本作品に『くろうまブランキー』『くるまはいくつ』『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』『ちのはなし』(以上福音館書店)、『おひさまがいっぱい』(童心社)、『かにこちゃん』「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)など多数。また著書に『父の時代 私の時代』(マガジンハウス)、編著書に『絵本の世界・110人のイラストレーター』など。1987年没。




■ 「ことばのえほん」シリーズの誕生


―― 「ことばのえほん」シリーズが作られたのは今から38年も前のことですね。誕生のきっかけなどのエピソードを教えて頂けますか?

 当時、波瀬満子さん(※)たちと設立した「ことばあそびの会」の活動の中で言葉遊びの詩なんかを書いていたんですね。日本語の響きの面白さを伝えたいというのが発想のもとになっているんです。そこから絵本をつくってみようという話になって。だから音の方から入っているんですね。1972年にこの「ことばのえほん」シリーズが発売された時はソノシートと呼ばれる薄いレコードが付いていたんですよ。

波瀬満子(はせみつこ)・・・パフォーミング・アーティスト。劇団四季・仮面座を経て、1977年詩人谷川俊太郎らと「ことばのあそびの会」を設立。以来一貫して“ことば・パフォーマンス”の道を歩き詩やことばあそびをステージ構成し、表現するジャンルを確立。著書に『しゃべる詩あそぶ詩きこえる詩』『あいうえおとaiueoがあいうえお』他。
谷川さんと波瀬さんの対談集『かっぱ、かっぱらったか?』(太郎次郎社)に「ことばのえほん」シリーズ誕生にまつわるエピソードがたっぷり掲載されています!


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 3冊一緒に出すということで、やはり変化をつけなければいけないと。まず1冊目『ぴよぴよ』はヒヨコの冒険物語でストーリーがあるもの、『かっきくけっこ』は、その当時から日本の50音というのがすごく音的におもしろくて、その多様さは世界でもちょっと稀な言語だという事を「ことばあそびの会」でも表現していたので、それをそのまま2冊目にして。日本語というのはすごく擬音語や擬態語が豊富で、いくらでも作れちゃうようなのが一種の長所だと思うんだけど、3冊目の『あっはっは』は笑い声のバラエティーでやろうではないかというので作りました。3冊とも擬音語などのいわゆるオノマトペが基本的な発想ですね。


■ オノマトペだけでつづるひよこの冒険物語『ぴよぴよ』


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ぴよぴよ
谷川俊太郎・作 堀内誠一・絵 くもん出版
“しゅばしゅばしゅば”“とぷん”“きいいっ”など、オノマトペだけでつづるひよこの冒険物語。
詩人・谷川俊太郎とデザイナー・堀内誠一が、1972年に“幼児と言葉”の関わりを真摯にとらえて作った絵本です。

―― 『ぴよぴよ』というのは、言葉だけ抜き出してみると本当に短い言葉ばかりですよね。“ぴよぴよ”“もーう”“しゅばしゅば”などなど。それがこういう物語性を持った絵本になっているというのがとても不思議な感じがします。

 そうですよね。それは堀内さんの才能にすべてお任せしてますね。


―― 谷川さんは、絵本を創作される時には絵を浮かべながら考えられるのでしょうか。

 いや、ほとんど僕はないですね。他の絵本の場合で、どうしても画面がこうであるべきだというのが必要な場合には、ちょっとメモをしたり、それからラフスケッチを見て意見を言うことはあるけど、堀内さんとの作品に関してはそれはもう全然なかったと思います。いきなり(絵が)出来てくるっていう。


―― “めええ”とか“もーう”とか、声に出されながら創作されるということは・・・

 いやいや、そんな不気味なことは言いませんよ(笑)。「もーう」なんて気持ち悪いじゃん。


―― 頭の中でパパパッとひらめいていく感じですか?

 そうですね。僕は作るのは速いほうだからそんなに時間はかからなかったと思うんだけど。『ぴよぴよ』はある程度ストーリーを考えなきゃいけなかったから、もちろんそれは考えましたけどね。他の2冊は音だけでストーリーがないでしょう。


―― 堀内さんとのやりとりというのは、どんな感じで行われていたのでしょうか。このテキストをお渡しする時は色々説明とかされたりは・・・?

 全然ないんですね。もう渡せばそれでできちゃう、彼は。『ぴよぴよ』では順番だとかは多少書いたかもしれませんけどね。


―― 堀内さんと組まれるきっかけとなったのは?

 『マザーグースのうた』(※)が一番大きな仕事ですね。これは「渡せばそれでできちゃう」、本当にそんな感じでしたね。僕が訳したものを出版社の方が堀内さんに送ってくれるだけ。後はそれを全部レイアウトして順序も決めて、それで1冊目、2冊目、3冊目って彼が作ってくれる。彼は編集者としての才能もすごいんですよ。
※『マザーグースのうた』(全5集、草思社)・・・英米人なら子どもの頃に必ず親しむ伝承童話集、マザー・グース。明確な意味のない口承の歌を、独自の解釈で表現している本作はベストセラーとなった。谷川俊太郎×堀内誠一のコンビが好評を博し、『わらべうた』(上下巻、冨山房)も刊行されている。


―― その中で信頼関係を築かれたのですね。堀内さんなら安心して任せられると。

 本当にそうです。テキスト以上のものを描いてくれるということは、最初からわかってますので。


―― 堀内さんが描かれた絵をみて予想外だったというものはありますか?

 『ぴよぴよ』のひよこがあまり可愛くて。こんなに可愛く、しかもほとんど一筆書きみたいな感じで描いてるじゃないですか。丁寧に描いている訳じゃないよね。そこにすごくびっくりしましたね。こんな単純な書き方で、ここまで表情が出るっていうかな。ひよこの心理まで伝わってきますよね。


■ 50音に親しみをもたせたい!『かっきくけっこ』


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かっきくけっこ
谷川俊太郎・作 堀内誠一・絵 くもん出版刊
“あいうえお”を絵にしたらどうなるの?声に出して体で感じるあいうえお絵本。シンプルで選びぬかれた文章を、親子で声に出して読んでみてください。いきいきとした絵とともに、イマジネーションがどんどんふくらみます。


―― 2冊目は『かっきくけっこ』。この「あいうえお」の表現には鳥肌が立ってしまうといいますか、こんな絵本が出来るなんてもう驚きです。今また新聞の書評などでも評判になっているようですね。

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▲「さしすせそ」のページ。字がそのまま絵になっています!

 「さしすせそ」の行をこういう表現でやるなんてね。本当に簡単には思い付きませんよね。普通のグラフィックの人には思い付かないと思うんだけどね。


―― 子どもと一緒にこの絵本を声に出して読んでみると、発音やイントネーションがまた全然違ったりしてまた新鮮!この絵本は子ども達にどんな風に楽しんでもらいたいと作られたのでしょうか?

 子どもじゃないんですよ、最初は。「ことばあそびの会」の人たちはもともと演劇の出身なんだけど、翻訳劇の劇団だったものだから、それに飽き足らなくなって。演劇の基礎はやっぱり詩だと思って詩の朗読を始めたグループなんですね。その人たちも最初は近代詩なんかを割とかっこよく朗読してたんだけど、だんだんそういうのがつまらなくなって、我々と一緒に仕事するようになってね。僕は随分音だけのナンセンスなやりとりとか、そういうのを彼らと一緒に考えてやってたんですね。
 日本語の50音というのは今は文字の表みたいになってるけど、あれはもともと音の表であると。全部母音で割ってるわけですよね。子音プラス母音で。その母音が全部あいうえおで、いってみればあれは全部韻を踏んでるわけです。日本語に初めて接した東南アジアの留学生が感動してたっていうんですね。こんなきれいにひらがなが表になってるのは素晴らしい、文字と音の秩序が見事だと。我々も学校で習っただけだから、そんな大したものだと思ってなかったんだけど、言われてみると確かに50音というのはおもしろいと。それを文字で見るだけじゃなくて声に出してみると、ものすごく多様な声の出し方があるんですよね。「ことばあそびの会」ではそれを舞台でやっていたんです。


―― そういった活動をそのまま絵本で表現して、読む時に体感してもらえればという感じでしょうか。

 そうですね。堀内さんも楽しんでますよね。そういうことを堀内さんは十分認識してくれていて、いろいろな書き方で文字を色と形で書いてくれたから。
 これは38年前だっけ?そんな前だと思わないじゃないですか。今みるとすごい新鮮でしょ。堀内さんの感覚っていうのは、やっぱりすごいっていうことですよね。
 それとやっぱり文字と絵だけじゃつまらないから、実際の声も入れましょうみたいなことで、ソノシートが入ってたんです。『かっきくけっこ』に関しては、どんなものにしようかということを、「ことばあそびの会」の人たちと堀内さんと一緒に一度ぐらい打ち合わせしたんじゃないかな。録音の時に堀内さんが付き合ったという記憶はないんですけどね。


――「ソノシート」はどんな内容だったのでしょうか?

 いや、すごくいいかげんにやってましたよ。みんな半分遊んでるわけですからね。『あっはっは』では「あーっはっは、いっひひひ、くすくす、ガッハッハ」ってだたもう笑ってる声だけが入っていたりね。


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―― 堀内さんの絵は、シリーズ3冊の中でも『かっきくけっこ』は飛びぬけて多彩な表現をされていますよね。ご覧になった時の印象は覚えてらっしゃいますか。

 こちらは堀内さんに任せっぱなしでさ。もうなんか当然できてきたみたいな。堀内さんなら当然だろう、他の人には絶対できないよね、みたいな話はした記憶がありますね。


■ 50笑い声だけで絵本をつくろう!『あっはっは』


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あっはっは
谷川俊太郎・作 堀内誠一・絵 くもん出版刊
いひひ”“うふん”“くすくす”“おほほほほ”の違いがわかるかな?笑いのオノマトペ絵本。いきいきとした絵とともに、イマジネーションがどんどんふくらみます。


―― 3冊目は『あっはっは』。笑い声「あっはっは」ときて「いひひ」・・・子どもでも大人でもそのニュアンスの違いがすぐ伝わるすごくわかりやすい内容ですね。

 そうですね。日本語の笑い声の擬音っていうのは、本当に結構おもしろいから。
 『みみをすます』(福音館書店)という詩集の中で、色々な足音が出てくる箇所があるんだけれど、英訳する時にみんなすごい苦労したんですよね。ローマ字表記にした人もいたくらい。英語の場合は、強く踏むとか、足を高く上げるとか、なんかそういう類の動詞がそのまま擬音語になっていたと思う。音として結びつかない。だからその時に日本語の擬音語っていうのはすごいなと思ったんです。


―― 改めて絵本で見せられると、ああ日本語の笑い声の表現って感情に直結しているんだな、と。

 そうそう。日本語の笑い声はほんとうに「ひひひ」って何となくずるいような感じがする。誰が読んでもそういう表情になるよね。それがおもしろいなと思って。笑い声でやろうっていうのは、最初から決めてたんです。


―― そこで堀内さんの絵というのが男の子と女の子の顔の表情だけ!すごく目を惹かれます。ページが進んでいくと共に2人の間の微妙な雰囲気というのが、変化していって・・・。

 誇張の仕方がね。並々じゃないんですよね。漫画的なんだけど、漫画ではなくてやっぱりちゃんとアートしてるっていう感じがしますね。
 この『あっはっは』『かっきくけっこ』の2つと似ている、合体した様な絵本を少し前に出したんです。中辻悦子さんという前衛の絵描きさんなんですけど、2人の人間が「あいうえお、かきくけこ」で対話する絵本を作ってくれたんですね。(※)それが堀内さんの具体的な絵と全然違うんですよ。それはそれですごく良くて。あいうえお、かきくけこで対話してる感じがよくでてるんですけど。その表現方法の違いも面白いですよね。
※『ふたり』(クレヨンハウス)・・・そっちが「ぎぐぐぐ」なら、こっちは「げ ござざざ」で、どうだ!おつぎはだあれ?いざ、ご対面ですよ。


―― この『あっはっは』の絵は特に線にスピード感があるような気がします。ものすごい速さで出来上がったという話も伺ったのですが・・・。

 ほとんどジャズのアドリブみたいに描いてたんじゃないかな。全ての仕事において速いので有名だったんで。その当時も雑誌「anan」(※)を手がけていたでしょ。あれ、全部やっぱり自分で作るわけ。ものすごい速さでやったみたい。もう天才と言うしかない。
※「anan」(マガジンハウス)・・・1970年3月創刊の女性向けファッション雑誌。堀内誠一さんは創刊号~49号までのアート・ディレクションを担当。
 『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』(平凡社)がおすすめ。堀内さんの全仕事がわかりやすく紹介されています!



■ 38年経ってみて・・・


―― 「ことばのえほん」シリーズを出された当初のまわりの反応は、覚えてらっしゃいますか。

 それはあんまり。今のほうがずっとフィードバックがありますよね。それこそネットや何かで。当時はそんなのなくて。我々としては「ことばあそびの会」の仲間と、とにかく音が出る絵本を作ったことで大満足だった記憶があるんですよね。


―― 今38年経って、改めて見て思われるところはありますか?

 今だったら、もうちょっと複雑な構成にしていたかもしれないなと思うんだけど。でも、堀内さんが生きてたらやっぱりこれだな。堀内さんって、すごく単純なものがうまい人だから、変に複雑にしない方が絵が生きるような気がするんですよね。絵が雄弁だとテキストは本当に無口ですむんですよ。僕はそのほうが好きなのね。絵本っていうのは絵が主役で、テキストは最小限のほうがいいと思ってるんですよね。
 だからこれは当時はまだ異端の絵本ですよね。絵本といえば物語があって、ちょっと教訓があってみたいな時代でしょう。だからこれはよくやれたなと思って、嬉しかったですよね。


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■ 美しくて楽しいかずのえほん『いくつかな?』


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かずのえほん いくつかな?
谷川俊太郎・作 堀内誠一・絵 くもん出版刊
40年前に堀内誠一が描いた絵本のイラストに、2010年、谷川俊太郎が新たに詩を書き下ろしました。かたつむりがおさんぽしながら1から10まで数える、美しくて楽しいかずのえほんです。

※本書は株式会社フレーベル館より1966年に刊行された『Counting Fun』(堀内誠一・絵)と1969年に刊行された『A Snail goes Counting』(堀内誠一・絵)をレイアウト修正し、新たに谷川俊太郎氏が文章を書き下ろしたものです。


――そして最新刊『かずのえほん いくつかな?』です。

 この作品は今回初めて見たんですけどね。即興的な発想といいますか、すごく堀内さんらしさが出ているという感じがしますよね。楽しそうに描いていて。



この絵本の前身となる1冊目、『Counting Fun』が出たのが‘66年。まさに「anan」出版に向けての準備が始まり、ホリウチは自身の勤める広告制作会社の仕事のほか、絵本児童書関係の挿絵や装丁、季刊誌のアートディレクションなど、今羅列してみても呆れるほどの仕事量でした。つづく2冊目の『A Snail goes Counting』が出たのは’69年。届いたのを初めて見て、あら、かわいいと思ったのを覚えています。どちらも仕事先のデスクで描いたのでしょう。気張らず楽しく、当時のホリウチにとっては息抜きになったのではと思われます。・・・

 (『いくつかな?』堀内誠一夫人である堀内路子さんのあとがきより抜粋)

―― 「すごく忙しい時に息抜きのように描かれた」という言葉がすごく印象的で。

 仕事が息抜きになるって、やっぱりすごいですよ。普通ならないんだけどね。
 普通こういう数の絵本って、型どおりの絵になりそうじゃないですか。僕も今まで見たこともあるしやったこともあるけど、この絵本は本当に単純に描いてるんだけど、型どおりじゃなくて楽しいんですよね。絵そのものにリズムがあるから言葉もつけやすかったですよね。
 英語だとoneは全部oneでしょう。日本語だと犬が出てきたら「いっぴき」となるし、人形だと「いっこ」だし、紙だと「いちまい」でしょう。リズムがなくなっちゃうんですね。oneで始まるリズムががね。だから翻訳って難しいなと思ったりするんだけどね。これはすんなりと。

 堀内さんの中には数を教えようなんていう態度は、全然ないんじゃない?だから自分がおもしろいと思うものを数かぞえの中にアイデアとして入れて描くのが楽しいって、それだけですよね。


■ 堀内誠一さんについて


―― 堀内誠一さんってどんな方だったのでしょうか?

 堀内さんっていうのは、東京の下町生まれでね。保守的な江戸っ子と言いますか、生活はすごくきちんとした人でしたね。
 僕は叱られた事があってね。うちの娘が小学生の頃、いつのまにか「お父さん」って呼ばなくなったんですよ。俊太郎さんって名前で呼ぶようになったのね。周りにいたアメリカから帰って来た家族の影響なんかがあると思うけど、向こうは父親も母親もファーストネームで呼ぶじゃないですか、その話を堀内さんにしたらね、色をなして怒られちゃってね。そんなのよくないと。ちゃんとお父さんと呼ばせなさいと(笑)。この人すごいきちんとしてるなと。


―― 絵を観ているとそういう雰囲気はしないですよね。

 全然違うよね。でも、どんな絵でも描ける人だったからね。描けっていえば浮世絵だって描けたんじゃない?


―― 当時、谷川さんにとって堀内さんはどんな存在でしたか?

 死んでもらっちゃ困る人だったんですよ、本当に。死なれた時はみんな、どうしようかって言いましたよ。堀内さんはちょっと遠くにいて、しかもすごく知識教養のある人だったからね。本当に尊敬していて、人柄もすごく好きで、とにかく絵は最高っていう感じですよね。

 酔っぱらいでさあ(笑)。パリに行った時に、安野光雅さんと3人でレンタカーでノルマンディーの方に旅行したんですよね。割と気の知れた仲間だから、楽しかったんだけど、堀内さんはパリにずっといるくせにフランス語がほとんどしゃべれないんですよ。全部娘さんに任せていたらしくて。車の運転もしないの。彼もヨーロッパじゅういろいろ回ってるんだけど、全部電車とかバスで回ってるらしくて。しょうがないから僕と安野さんが運転するんです。後ろの席で何してるかっていうと、カルバドス(りんご酒)を飲んでるだけなの。だから車の中がどんどんリンゴ臭くなってくるわけ。


―― 一同(笑)。

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 泊まるホテルもぶっつけでいくわけだけど、彼の趣味が変わってて。いいホテルは嫌なんです。長距離トラックの運転手が泊まるような、そういう安い宿が好きなのね。それで見つけてここに泊まろうって言うわけね。こっちはフランス語ができないから、堀内さんが行って交渉してくれるのかと思ったら、全然飲んでるだけなの。しょうがないから安野さんがおぼつかないフランス語で交渉して(笑)。もうまいっちゃってさ。一応案内してくれるということで、シャルトルという有名なお寺がある所に最後に寄ることになってたんだけど、彼がもう本当にいい加減な道案内人だから、行ったらもう閉まっちゃってたの。入れないんですよ!それでもうしょうがないから、夕方から夜中まで高速走ってパリに帰って来たんだけどね。
 本当は腹が立つはずだよね、だけどが腹が立たないんだよね。あれは本当に楽しかったです。


■ 谷川俊太郎さんと「絵本」


――本当に沢山のジャンルに渡り活動をされている谷川さんですが、谷川さんにとっての「絵本」というのは?

 簡単に言うと映像メディアですよね。今のインターネットや何かとも共通のもので。
 僕は若い頃から写真に興味があって、親に写真機を買ってもらって写真を撮ったりしていて。それからまもなくフォトストーリーという写真に物語をつけるようなのが、ある程度女性雑誌なんかで流行って。そういう仕事がきたんですね。それからまもなくドキュメンタリー映画の脚本の仕事がきて、それからテレビの仕事をして。それと絵本の仕事がだいたい並行して入ってきた感じで。だから最初から映像と言葉の組み合わせというのには、すごく興味があってね。詩だけじゃなくて、それと絵とか写真がつくということで表現の範囲が広がるので。それをずっとやりたいなと思っていたので、絵本をどんどんやるようになっちゃったんですね。

 桃太郎とか一寸法師とか、日本の伝統的な本じゃない絵本に興味があって。物語を書くのは苦手だったので、いわゆる認識絵本と言われるジャンルですね。最初にわりと意識して作ったのは、『コップ』(福音館書店)という写真絵本。あれはコップをいろいろな見方で、ただ水を飲む道具じゃないということを作った。ああいう形の絵本がわりと自分の得意分野だったんです。


―― そうすると、子どもに向けて・・・というよりは表現の一環として?

 そうですね。もちろんある程度難しい漢字を使わないとか、子どもにわからないような言葉は使わないというのはあるけど。僕はあまり子どもに向けてということよりは、まず大人が面白がってくれなきゃ、子どもも面白くないだろうという感じですよね。


―― そんな谷川さんが最近関心を持たれているジャンルというのはありますか?

 詩のメディアとして、つまり電子メディアとか紙もあるんだけど、何かちょっと違うものもしようかと思って。今、顕微鏡で読む詩というのと、電光掲示板で読む詩というのをやってるんですね。


――顕微鏡……!!

 肉眼じゃ見えないんですよ。見るとちゃんと詩がね、立体的にエッチングというか、彫り込まれていて。ちょっとずつずらしながら読む。 まあ、これは遊びですけどね。


――詩というのを一つのテーマにして、それをどう読んでもらうかと考えるだけで、いくらでもアイデアが出てきそうですね。

 そうね。もうiPadなんかだと文字も動かせるしね。いろいろなことができるし、映像も入れられるしね。

※実はこの取材の前の日に「Twitter」に谷川さんがご本人の言葉が初登場!「お仕事の流れで・・・」とおっしゃっていましたが、どんなジャンルやメディアについても瞬時にその特徴や役割を消化されているその姿勢に脱帽してしまうのでした。


■ 最後に


―― 最後に絵本ナビ読者に向けても一言お願いします!絵本をこんな風に読んだら面白いんじゃないか、とか・・・。

 それは親の才能にかかってるんだけどね(笑)。


―― なるほど(笑)。

 少なくとも、親のひざの上か何かに座らせて、絵本を同じ目線で読んでほしいと思うのね。時々前に子どもを置いて、向かい合って読み聞かせるお母さんもいるじゃない。親子でやる意味がないと思うんですよ。だからスキンシップぐるみで絵本を読んでくれると、絵も生きるし言葉も生きるっていう感じがしますね。
 例えば毎晩2冊か3冊ずつ子どもに読んであげていたとしても、その読み方がすごく速くてまったく義務感みたいにしてバーッと読んで「おやすみなさい」っていうお母さんもいて。そういう読み方でいいのかなって思ったこともあります。
 やっぱり親がまず楽しまないとね。

― ありがとうございました!

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最後に記念にぱちり。


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▲サインを描いてくださっています!!さらさらっと速いのです。

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▲「あの世からのサイン」!堀内誠一さんが生前使ってらしたというハンコも押して頂きました。

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▲新作『いくつかな?』も合わせて「ことばとかずのえほん」シリーズ全4冊箱入りセット。
 中味もわかるように持ってくださいました!!

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▲応接間に飾られていたラジオの数々もご紹介しちゃいます!
 (谷川さんが組み立てられたものばかりだそうです)


<最後に・・・>
 とても緊張しながらお伺いした“あの谷川俊太郎さん”のご自宅でしたが、気さくに対応してくださり貴重な時間を楽しく過ごすことができました。
 この日お会いした谷川さんは日焼けされていて、とてもアクティブなイメージ!運動をされているのかとお伺いしたら「いや、全然僕はスポーツ音痴で、スポーツは体に悪いって思い込んでるから、スポーツはしたことないし見たこともほとんどないんですよ。今やってるのは呼吸法だけ。」とのお返事(笑)。それでも、どこにでも電車なんかでお一人で出かけられるらしく、フットワークは今も昔もとても軽いのだそうですよ。

みんなで書こう!『おはぎちゃん』レビュー大賞

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   みんなで書こう!『おはぎちゃん』レビュー大賞
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「第3回 子どもの絵本大賞in九州」でみごと9位にかがやいた『おはぎちゃん』。
こころあたたまるこの作品のレビュー(感想やエピソードなど)を大募集!
ご応募いただいた方の中から、ここでしか手に入らない、著者お手製のグッズを
差し上げます!
応募ルールをご確認の上、ふるってご投稿ください!


みんなで書こう!『おはぎちゃん』レビュー大賞

募集期間は2010/7/31~2010/8/22です。

2010年07月21日

絵本『もねちゃんのたからもの』
作者のたかおゆうこさんにインタビューしました!

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主人公は森の近くに住む女の子もねちゃん。もねちゃんには「秘密のたからもの」がたくさんあるのです・・・。
想像をふくらませる楽しさを、生き生きとえがいているのがこちらの絵本。
何だか面白い事を考えてくれそうなもねちゃんの表情を見ているだけでワクワクしてきますよね。

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もねちゃんのたからもの
作・絵 たかおゆうこ 徳間書店
もねちゃんは、宝物集めが大好き。ある日「ひみつの宝物、見にきていいよ」という手紙を、紙ひこうきにして飛ばしたら、きつねの子がやってきて…? なめるたびに味のちがうあめや、海だってひとっとびのなわとび…わくわくする宝物がいっぱい!
※みどころ、内容詳細はこちらからどうぞ>>>

作者のたかおゆうこさんにインタビューしました!
子どもらしさに満ちあふれたこの物語、どのように思いつかれたのでしょう。エピソードと共にご紹介します!

たかおゆうこ(高尾裕子)
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。大手玩具メーカーの企画デザイン室を経て渡米。アメリカでカリグラフィー、水彩画、銅版画などを学ぶ。帰国後、グリーティングカード、広告、雑誌、絵本の分野の仕事を手がける。主な絵本に『ハムスターのハモ』『ハモのクリスマス』(福音館書店)、『ふゆの日のコンサート』(架空社)、挿絵の仕事に『ねずみの家』『帰ってきた船乗り人形』『池のほとりのなかまたち』(徳間書店)など。



■絵本『もねちゃんのたからもの』誕生のきっかけは・・・


―― 子どもならではの夢や想像力にあふれているこの作品。特に、自分だけのたからものを次々見せてくれるもねちゃんの自慢気な様子にとっても惹かれます。物語誕生のきっかけなどがありましたら教えていただけますか?

「このオルゴールきれいでしょ。それからこの首飾り、天使のキラキラ音がするよ・・・」などと、遊びにきていた幼稚園のお友達らに、サンタクロースからもらったとされる歴代の品々をとくとくと自慢している娘を目撃。お友達らもさるもの、「へえっ、いいじゃん」「うわあ、わたしもほしい」とのりのりにのって会話そのものを遊びにしている子ども達の様子がとても心に残っていました。

私自身はガラクタのようなものに物語を重ねてたからものにしていました。願いがかなう石、魔法の棒、丸いガラスの粒になった人魚の涙、雨を降らせる小瓶、天国からの紙飛行機・・・などなど。

おもにこの二つが作品のきっかけになったような気がします。


―― 自分の好きなものがはっきりしていて、どんどん楽しい想像をふくらませてしまうもねちゃん。一方、きつねの子はちょっと控えめで怖がり。頼もしいもねちゃんと繊細なきつねの子、それぞれがとても魅力的なキャラクターですね。

もねちゃんは、くいしんぼうでいたずら大好き正義感もすごくあるんだけど、ちょっとずるいところもあるのかな。でも、つまらない時も悲しい時も怖い時も、想像力で自分や他者を楽しくしてしまうような女の子。
実は文章には書かれていませんが、冒頭もねちゃんのお母さんは用足しにちょっとでかけてしまうのです。その間不安なので、楽しいことを思いついてしまうわけです。お留守番の不安な気持ちが後半のきつねの子への共感に繋がります。でもそんなこと誰もわからないかな(笑)
きつねの子は、繊細で臆病ですが、ものごとを見つめる力が強く、理解する力、受けとめる力がとてもある子です。


―― 透明感のある色彩や雰囲気がとても味わいのあるたかおさんの絵の世界。作品によって表現方法が少し違うのも印象的ですね。『もねちゃんのたからもの』では、とっても自由で可愛らしくて、より子どもの世界に近づいている感じがします。

将来どうなるのかわかりませんが、私は今のところ、はじめに物語ありきなのです。物語のまとっている空気が重要で、それを全力で表現しようと思うと毎度違う絵の雰囲気になってしまうわけです。

この作品(『もねちゃんのたからもの』)は、明るくてのびのびしていて軽やかに描きたいと思いました。だから描いていてとても楽しかったです。やみつきになりそうです(笑)


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■動物が好き!


―― 絵本をよく見ると、小さなハムスターがいつもさり気なくもねちゃんに寄り添っていているのがとても可愛いですね!もともと動物はお好きなのでしょうか?

動物はとても好きです。動物をずっと見ているとなぜか涙がでてきます。一番の号泣は白イルカ。
私のそばにはいつも小さな動物がいます。現在は猫とカメ。過去には、もちろんハムスター11匹も!
それがいないと、自分が未完成のような気さえします。
まるで、ポケットモンスターやライラのダイモンみたい!?


■絵本ナビ読者の皆さんへ・・・


―― 『もねちゃんのたからもの』をどんな風に楽しんでもらいたいですか?

ただ楽しんでもらえたら幸せです。そして、想像の翼を広げてじぶんだけのたからものを見つけてくれたらもっと嬉しいです。ついでに自慢ごっこも。そんなことをニンマリと眺めているゆるりとした大人がたくさんいるといいなあー。


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―― 絵本を通して、絵本ナビ読者の方に向けて一言メッセージをお願いできますか?

固定観念をもたないで、いろいろな絵本をたくさん見て読んで一家の一冊を見つけて下さい。
仕事や家事や子育てで疲れた時こそ一冊の絵本を子ども達と。過ぎてみるとその時間は二度とない珠玉のような時間に思えてきます。


―― 今後どんな絵本をつくってみたいと思われますか?

おもちゃ、木の実、ピアノ、雪、海賊、花、星、小さな人達、小さないきもの・・・。
取り組んでみたいネタはたくさんあります。
耳をすまして目をこらして、聞こえてくる見えてくる物語をつかまえたいと日々願っています。

ありがとうございました!!
最後にたかおゆうこさんから絵本ナビ読者に向けて直筆メッセージを頂きました!

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▲「絵本は心を耕す玉手箱」素敵なことばですね・・・。
 あれ、よーく見ると見た事のあるような表紙の絵本が!絵本ナビで見つけてみてね(笑)。

2010年07月13日

『学研の図鑑』夏のレビューフェスタ開催!

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    『学研の図鑑』夏のレビューフェスタ開催!
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レビューフェスタ開催期間中、ニューワイドの対象図鑑にレビューを投稿して掲載されると、
もれなく『おばけエビのたまご』をプレゼント!!
その他の対象図鑑に投稿すると、抽選で『しかけクラフト&ぬりえセット』を10名様に差し上げます。

『おばけエビ』ってなに?と思ってしまった方はおばけエビ動画もありますので、
下記ページから詳細をご覧ください

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『学研の図鑑』夏のレビューフェスタ

2010年07月12日

絵本『めかくしおに』のできるまで

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夏にぴったり、ちょっぴり怖い妖怪の登場するこんな絵本が発売になりました!

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めかくしおに』 
もとしたいづみ・文 たんじあきこ・絵 ほるぷ出版
雨上がりの夕方、神社の鳥居の向こうには、こわくて、ちょっぴりあたたかいもののけ達が待っている。のっぺらぼうに、ろくろっくび、かさこぞうに、ぬらりひょん。不思議な世界に迷い込んでみれば・・・。きつねのおめんで「めかくしおに」をした少女つきこがもののけの世界に迷い込んでしまうお話です。

文章は『すっぽんぽんのすけ』『ふってきました』のもとしたいづみさん、
絵は『ありさんぽつぽつ』や『春はあけぼの』のたんじあきこさん。
絵本ファンならとてもワクワクしてしまう組み合わせですよね。

『めかくしおに』はそんなお二人の出会いによって生まれてきた絵本なのだそう。
その制作過程は一風変わったものだったそうで、その様子を、担当編集者の方の目線から紹介して頂けることになりました!私達読者はめったに見る事のない、形になる前の作品というものにも触れることができるとても興味深い内容の記事となっています。お楽しみください!

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もとしたいづみ
作家・翻訳家。絵本に『どうぶつゆうびん』(産経児童図書出版文化賞絵本賞、あべ弘士・絵)、『ふってきました』(日本絵本賞、講談社出版文化賞絵本賞、石井聖岳・絵、ともに講談社)、「すっぽんぽんのすけ」シリーズ(鈴木出版)、幼年童話に「あかちゃんライオン」「おばけのバケロン」シリーズ(ポプラ社)、 『チョコレータひめ』(樋上公美子・絵、教育画劇)他多数。東京都在住。

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たんじあきこ
1972年生まれ。イラストレーター、絵本作家。NHK教育テレビ「英語であそぼ」内のショートアニメ『Yum.Yum.Yummy』のキャラクターデザインを手がける。絵本に『ゆきのひのチムニーちゃん』(学習研究社)、『ありさんぽつぽつ』(主婦の友社)、『春はあけぼの』『チコちゃんこまったこまったね』『まいごのはちのぼうや』(ほるぷ出版)、挿し絵として『魔女とふしぎな指輪』(フレーベル館)、『レッツらっくごー!わはは編』(小学館)他多数。東京都在住。


■『めかくしおに』ができるまで 

 今回ご紹介する絵本『めかくしおに』は、作家(もとしたいづみさん)と画家(たんじあきこさん)が何度かやり取りをしながら完成していった本なのだそうです。
 その時の様子を思い出しながら完成までの過程を、編集を担当されたほるぷ出版の中村宏平さんが語ってくださいました!

2008年9月18日 打ち合わせ。

中村から、もとしたさんとたんじさんで、妖怪の絵本をつくろうと提案

(※このように、文章が出来上がる前に、画家が決まっていて、なおかつ事前にみんなで会う、ということ自体、そんなにあることではありません。多くの場合、まず本文テキストができあがり、その後でその内容にあった画家に依頼することの方が多いと思います。)

2008年10月26日 もとしたさんからプロットが届く。

以下、もとしたさんのメールの抜粋です。

現代の家族が旅行へ。古い旅館に泊まる、という話。

その由緒あるという古い旅館は夕闇にぽつんと建っている。

家族構成は両親と姉弟か姉妹。昔の人の姿で出迎えた女将と女中たち。

大人船と子ども船にわかれて、小さな川を部屋まで移動。

おもしろがる両親と、わくわくするけどちょっと怖い子ども達。

霧が濃くなる。。。と、船頭さんの姿が、あれ? 別のものに見え。。。

不思議なものたちが現れて。。。

決して怖いだけではない、かわいかったり楽しげなものたちだったり、

薄暗がりに潜むものたち。

脅かそうというものではなく、一緒に遊ぼうよ、という感じのもののけたち。

数時間経ったように思えたが、部屋に着いた船からおりると、

なにも変わったことはなかったという親。

どうやらものの3分ほどのことだったらしい。

部屋に用意された食卓を囲む。

わーい、おいしそう! と喜ぶ子どもたちだが

何かがありそうな予感の旅館。

というもやもやっとしたものを感じさせるラスト。


 本来ならここで、編集者と作家(もとしたさん)で打ち合わせをして、この方向でいこうとか、もう少し怖い感じに、などの意見交換をして、実際の本文を書いてもらうのがふつうです
(※このプロットだしをすっとばして、いきなり原稿をいただくこともあります)。

 でも、作家と画家が会うことから始まった企画なのだから、その前に、一度、たんじさんに、この設定文を読んでイメージしたものを絵に描いてもらおうと思いつきました。そこで、もとしたさん、たんじさんの快諾を受け、イメージ画を依頼しました。

2008年12月上旬 たんじさんのイメージイラスト完成。

 たんじさんらしいかわいらしいイラストながら、もとしたさんのプロットのもつ不思議な雰囲気を醸しだした、よいイメージイラストでした。
 最初のプロットでは「何か怪しげなお化け屋敷」といった雰囲気だったのが、イメージイラストは、それをさらに一歩踏み込み、「もののけの世界(国)に行く話」というイメージがより強く打ち出されていました。

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▲イメージイラストのコピーを特別に見せて頂きました!


2009年1月 もとしたさんからの新プロット届く。

以下、もとしたさんのメールの抜粋です。



1、母と姉、弟の3人でおでかけ。主人公は女の子。お買い物に弟は邪魔だと感じている。

2、姉としての役割にうんざりしてるところへ案の定、弟が「カエルだ! ほら!」
「こんな所にいないよ!」「いたよ!」と駆け出す弟。「動いちゃだめだって。もう!」
とプリプリしながら追いかけていく姉。

3、「どこまで行くのよ!」と橋を渡りながら(あれ? 橋なんてあったっけ?)

と振り返ると、見知らぬ時代の見知らぬ町。

4、弟は見失うし、さっきの場所はないし、様子がおかしいし。。。途方に暮れていると

5、笛の音。自分と同じ背格好の、お面をかぶった少女が吹いている。

6~13物怪の協力で見つかる弟(カエルのような物怪と遊んでいる)。渡れるけれど、戻れない橋であったこと。(帰りは舟で戻るしかない)
*弟を発見し、ほっとする気持ち。
*弟が活躍し、それを頼もしく、一人の人間として見直す気持ち。

13、少女の計らいで、物怪に戻る手配をしてもらい、無事帰ることができる。

14、元の場所へ。時間の経過はなかった様子。(母が傘を買って走って来る)

15、手に握っているものによって、物怪の世界が確かにあったことを姉弟は確認し合う。


 たんじさんのイメージイラストに触発されて、主人公の子どもたちが初期プロットよりアクティブに動くストーリー展開になりました。

 けれども、ここから、何回も打ち合わせやメールのやり取りをして、物語はこのプロットとも全く別の形に変わっていきました。「めかくしおに」の決定稿となるテキストが完成するまで、ここから半年かかりました。

 イメージイラストが表現している「主人公がもののけの国(世界)に行って、そこでさまざまな妖怪たちに出会う」というイメージを大切にしたいという思いが、もとしたさんに強くあり、それを絵本の限られた紙面の中で納得の行くストーリーにしたてていく、というところで試行錯誤を繰り返しました。


 実は、人間の世界の中でもののけ(や妖怪)に出会うお話はたくさんあるのですが(初期設定のように、お化け屋敷のようなところでもののけに会うというのもその一つです)、完全に人間の住んでいるところとは別に存在するもののけの世界(国)に、人間が迷い込むという物語を絵本で描くのは、かなり難しく作品の数もあまり多くないのです。
(※小説ならば問題ないのですが、「なにをきっかけに別の世界に行ったのか」「どうやって戻ってくるのか」「その別の世界は人間の世界とどうちがうのか」といったことを絵本という限られた紙面のなかで表現するのが難しいのです。)

 ですから、主人公がどのような経緯でもののけの国に行ったのかに、もとしたさんは、ものすごく悩み、ストーリーも二転三転しました。



案1)先祖が泥棒で、物の怪たちから盗んだものを主人公が持っていたので、連れてこられた。

案2)物の怪学校の卒業試験で、人間をこわがらせていた。

案3)咲かなくなった物の怪の花を咲かせるためにには、人間の子の力が必要だった。

案4)お面をかぶった物の怪が、人間の子と遊びたくて、連れてきた。

案5)お面をかぶって鬼ごっこをしていたら、もののけの国に迷い込んでしまった。


 この案5が、決定稿の設定になり、タイトルも「めかくしおに」に。この設定変更にともない、姉弟という設定から、主人公が一人でお面かぶってもののけの国に行く物語に変わっていきました。


2009年7月 ようやく原稿完成、ラフ画作成へ。


最初のプロットからだいぶ物語が変わったため、たんじさんには、キャラクターからつくりなおして、ラフを描いていただきました。

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▲表紙絵のラフのコピーより。(ほぼ完成形ですね。)


2010年4月 本文イラスト完成



2010年6月 絵本刊行


物語とイメージイラストが互いに影響しあうことで、この絵本は少しずつ形になっていきました。作家さんと絵描きさんが往復書簡をやりとりするようにして作り上げたおかげで、文章と絵の雰囲気がうまく合わさった素敵な絵本になったと思います。

※『めかくしおに』で重要な役割をする「お面」ですが、最初のプロットが出来た時のの打ち合わせのときに、たんじさんが持っていたポストカードが、元になっています。このイラストをもとしたさんが気に入って、ストーリーのなかに「お面をかぶった少女」を登場させようと考えたのが原点です。

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▲とてもイメージの広がる素敵なイラストです。


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▲つきこが「お面」をかぶったまま・・・。心に残る、とても印象的な場面が誕生しました。


■もとしたいづみさん、たんじあきこさんが絵本ナビ読者に向けて直筆メッセージを描いてくださいました!!


絵本の完成を記念して、作者のお二人が絵本ナビ読者の為に素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!


もとしたいづみさんより


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たんじあきこさんより

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2010年07月09日

秋山あゆ子さんの最新刊
『みつばちみつひめ どどんとなつまつりの巻』

はちのす城に住むお姫さま「みつばち みつひめ」
美しい着物、豪華なお部屋、沢山の家臣にかしずかれ、何不自由ない暮らしをしているのです。
でも、みつひめにとってはちょっと退屈。好奇心の赴くまま外に飛び出してしまいます。
そんなみつひめのおてんばぶりが突き抜けている前作てんやわんやおてつだいの巻で、すっかりみつひめファンになってしまった読者野方も少なくないのでは?
さて、今度の舞台は夏です!大好きなおっちゃんばち達とこっそり夏祭りに出かけるみつひめですが・・・?


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みつばちみつひめ どどんとなつまつりの巻
秋山あゆ子・作 ブロンズ新社


★その“みどころ”を編集を担当された沖本さんに伺いました!

ご存知「みつばちみつひめ」シリーズの第2弾がついに出来ました!
今回はみつひめを孫のようにかわいがる、おっちゃんばち軍団も初登場。みつひめは、このおっちゃんたちと、生まれてはじめてのなつまつりに出かけます。かいこ印のわたあめに、じゅえきソースやきそば、ミズグモのヨーヨーつりに、ムシーカステラ・・・虫の世界のおまつりも、人間界に負けず劣らずにぎやかで楽しそう。花火師・ほたるやげんじが、どどんと夜空に打ち上げる「ほたる花火」も圧巻です。どこのお家にもそっくりな子がいそうな、おてんばひめの活躍にもご注目ください。

虫をこよなく愛する秋山あゆ子さん。原稿取りに来た編集者にアゲハ蝶の幼虫を見せてくれたり、画用紙の上を小さい虫がうろうろしても「困っちゃうな」などといいつつ、そのまま遊ばせてあげていたり。そんな虫への深い愛情が、比類なきこだわりとなって、絵本の中で炸裂しています。虫の種類と浴衣の柄が対応していたり、ほたる花火の筒がほたるの幼虫の形をしていたり、数え切れないほどの遊びがあちこちに隠れています。その一端を知っていただこうと、今回は絵本に特別ふろくを挟み込みました。絵本のなかに描き込まれたあれこれを、親子で探して遊んでみて下さい。
ラフからもわかる通り、秋山さんの絵はとにかく精緻。六角形建築が見事なみつばち城も、細かい計算をしてパースをとっています。その分時間がかかるのも当然。本当に夏前に出せるの?と、青ざめつつスケジュール調整したのも、宝物をいただくように、原画を一枚ずついただきにあがったのも、もはや遠き思い出。。。
楽しいものがぎゅっとつまった、夏にぴったりの「みつひめ」、どうぞお楽しみください!
(編集担当/沖本)


★貴重なラフを見せて頂きました!


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▲出来上がった楽しい絵本からは想像つかないほど、その下書きは精密に描かれていてびっくり!!「はち」の世界が舞台ということで、部屋から小物などあらゆるものが六角形に描かれているのは気がついていましたか?そのパースは全て正確なのです・・・。

▲下の絵は、出来上がった絵に登場する虫たちそれぞれの名前が書き込まれているメモ。
 編集沖本さんの為に書かれたそのメモは、こちらに生かされました!


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▲今回の新作についてくる「特別付録・さがしてみよう!」。
 ここに上げられている虫たちを絵本の中で探してみよう。かなり夢中になります。


★作者の秋山あゆ子さんが絵本ナビ読者の為に素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!

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▲わーーー!みつひめが、おっちゃんばちが、まつむしきょうだいが・・・えほんナビに来てる!!
    

★秋山さんのサインは本当にスゴイ!!

絵本ナビ読者の為に描いてくださったサインを見てびっくり!全部違う絵なんです!!
あまりにも感激してしまったので、その1部をちらっとご紹介しちゃいます。

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▲今回は100冊すべてこんな感じで違う絵が入っていたのです・・・。色々なみつひめがいっぱい!


★更にご用意してくださったおまけもユニークです。

今回、絵本ナビの為にサイン本のおまけとしてこんなユニークなおまけもプレゼントしてくださいました!


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▲みつひめや、登場する虫たちが嬉しい!紙定規。
※おまけは上の4種類のうち2枚が届きます。

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▲こちらは「みつひめくるくる」。
くるくるとは・・・?どうやって遊ぶの?しっかり説明も添えてあるから大丈夫。届いてからのお楽しみです。秋山さんの書き下ろしの絵がまたおもしろすぎます。


秋山あゆ子さんの作品一覧はこちらから>>>
ブロンズ新社さんのHPにも秋山さんの情報が沢山掲載されています!>>>

絵本『オヤジの海』作者さくらせかいさんが遊びに来てくださいました!

絵本『オヤジの海』を出された絵本作家、さくらせかいさんが絵本ナビオフィスに遊びに来てくださいました!

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オヤジの海』 
さくらせかい・作 自由国民社

海が大好きなちびっこ少年《コエタロウ》。
波乗りにチャレンジするけれど、いつもいつも「オヤジの波」に乗れないでいます。
何度も何度も失敗をくりかえし、「やめよう」「もうやめよう」と思うのです。
でも…。「最後にもう一度」と、波に向かいました。
迫力満点の波たちは、いったいどんな「オヤジの波」なのでしょう。
全ページ試し読みができます>>>

まず、絵がとっても独創的!
色も構図も大胆で、表情も豊かで笑っちゃうほど。
ユーモラスなんだけど、読んでいるうちにほろっとする瞬間があって・・・。

作者のさくらせかいさんはどんな方なのでしょう?

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さくらせかい
徳島県生まれ。5歳までは山や川に囲まれた環境に育つ。いろいろなアルバイトや職業に就きながら、カルチャースクール等にてイラストレーション、絵本を学ぶ。スペイン、メディア・バッカ社の『21人の赤ずきん(スペイン文化庁こどもの本準グランプリ受賞)』に作者の1人として参加(2006年)。07年にイラストレーター、絵本作家として独立。2010年1月『いしゃがよい』(福音館書店・こどものとも年少版)で本格絵本デビュー。絵本作品に『オヤジの海』(自由国民社)など。東京都在住。

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↑こちらがデビュー作『いしゃがよい』(福音館書店・こどものとも年少版)。
エンさんのこぐ自転車に乗るパンダのファンファン。
この図だけでも何だか面白そう。絵もストーリーもユニークなんだけど、
読んだ後に心が温まる作品です。

続いて発売されたのが、この作品『オヤジの海』です。
コエタロウの前に何度もたちはだかるのが、「オヤジの波」。
乗ろうとして何度も失敗を繰り返すコエタロウ。
それをあざ笑うかのように、ますます大きくなって迫り来る「オヤジの波」。
何度もやめようと思うのですが・・・。
自分自身で乗り越えなくては何も始まらないのです。

この作品を、色々な思いをもとに制作されたというさくらせかいさん。

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かつて絵本作家荒井良二さんが講師をされていた絵本スクールで初めて描かれた作品なのだそうです。そのあまりに自由な画風に荒井さんも驚きの声をあげられたとか。

作品を見ながら、驚きのエピソードを披露してくださいました!
何でも、さくらさんが昔サーフィンを始めたばかりの頃、
1人で練習するうちに波に流されて8時間も漂流していた事があるそうなのです!!
サーフボードにつかまりながら「だめかな・・・」とも思ったのですが、
何とか自力で泳いで戻ってこられたそうです。
でも、誰もその様子を見ている人はいなくて、海の家のおじさんに
「練習熱心な若者だなぁと思ってた」と言われたそうで・・・。
  
自分自身で乗り越える・・・という事を体感されたという経験も
この作品に反映されているのかもしれませんね。

原画を持って来てくださいました!!

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写真だとわかりづらいのですが・・・
透明なプラスチックダンボールの素材に描かれているのです。
だから発色も鮮やか。

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原画自体に厚みがあります。後ろから色が透けて見えるのは・・・


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▲裏側からも絵を描かれているから!とても不思議な感覚です。
 
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かつて、小学校の用務員さんとして長く働かれていた経験もあるそうで、
いつもさくらさんのまわりには子ども達が集まってきて、絵を描いてあげていたのだそう。
不思議と子どもをひきつけてしまいそうな雰囲気を感じるので、
そんな様子がすぐに思い浮かぶのです。


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さらさらーと、味のある線でサインと絵を描いてくださいました。
長新太さんを愛してやまないと伺って納得!

本当は他にもたくさん「おもしろエピソード」を披露してくださったのですが、
それはまたの機会にご紹介します。
その持って生まれたユーモア感覚。
今後また生まれてくるであろう傑作が今から楽しみです!

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ありがとうございました。

絵本『あれあれなんだろな?』
作者すぎはらけいたろうさんが遊びにいらして下さいました!

先日、絵本ナビオフィスに出版社のキッズレーベルスタッフと一緒に遊びに来てくださったのは、こんな絵本の絵を描いている作家さん・・・

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あれあれなんだろな?』 
すぎはらけいたろう・作 キッズレーベル

あれあれなんだろな?
こぶたのクイ、うさぎのチー、おさるのポッポ。
3匹がみつけた、あんなもの、こんなもの。その正体は・・・
好奇心いっぱいの3匹がくりひろげる、びっくり楽しいものがたり。
イタリア・ボローニャ国際絵本原画展にも入賞した、新鋭イラストレーター・すぎはらけいたろうさんの、初のオリジナル絵本です。
その作品の完成を記念して、絵本ナビオフィスに遊びに来てくださいました!


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すぎはらけいたろう
愛知県出身。2001年名古屋造形大学短期大学部卒業後、カナダのトロントに渡る。2003年帰国後デザイン会社に勤務。デザイナーを経て、2007年渡英。ロンドンを拠点に制作活動開始。2009年帰国。ジャンルにとらわれない自由で力強い表現で幅広く活躍するイラストレーター。2009年ボローニャ国際絵本原画展入選。すぎはらけいたろうさんのHPはこちら>>>




デザイナーとして活躍されていたすぎはらさん。
初めての絵本を制作されることになった大きなきっかけは、
やはり2009年ボローニャ国際絵本原画展で入選されたこと。
その時に「誰か一人の為に作品を描いてみたら」というアドバイスをもらったそうです。

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その時に思い浮かんだのが親戚の男の子。
大人しいけれど、目がとてもキラキラしているのが印象的だったそうです。
『あれあれなんだろな?』は、その子に向けて描かれた絵本でもあるのですね。

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▲こぶたのクイ、うさぎのチー、おさるのポッポの仲良し3人組。
そんなお話を少し伺っただけでも、途端にキャラクターに愛着がわいてきてしまいますね。

今回、すぎはらさんが絵本『あれあれなんだろな?』の原画をたくさん見せてくださいました!!

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色彩が豊かで、可愛らしいけどとても味のある雰囲気の魅力的な絵は、全て紙のコラージュで制作されています。

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カラフルな紙に混ざって、楽譜の様な紙や、かなりいい味を出している古そうな紙も使われていますね。

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色を塗ったり、模様を描いたり・・・予めコラージュ用の素材はたくさん作って用意しておくのだそうです。

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味のある古紙などもお好きだそうで、ロンドンに住んでいらした時にたくさん収集されたとか。
ロンドンの蚤の市というのは、古いものが何でも売っているそうで、
なんと古いホテルの領収書まで束で売られていたそうなのです!
それも作品のどこかに生かされているのかな・・・?

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遠くから眺めていても・・・

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近くでじっくり見ていても飽きないので、時間がどんどん経ってしまいます。

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今まで制作されてきた作品もたくさん見せて頂きました。

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板橋区立美術館で開催された「2009イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」のちらしは
すぎはらさんの作品が使われていました!

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また少し大人っぽいテイストの作品も素敵でした。

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こんな力作まで!!
これ、実は完全手作りのしかけ絵本なのです。なんと豪華な・・・。
いつかこんな作品が商品となって購入できる日がくればいいですね。

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閉じられたスクラップブックの表紙。あまりにも味があったのでぱちり。
もちろんお手製だそうです。

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最後に記念撮影!ありがとうございました。
また素敵な力作の登場を待っています。

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後日、取材で見せて頂いた原画のメイキングのお写真を送ってくださいました!
こんな風に制作されているのですね。


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「どの部分を使おうかな?」
“紙のハギレ”の山をガサゴソ。真面目な表情で選定中。

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作品づくりは1ページづつ順番に…ではなく、すべてのページを同時に制作していくそう。カッターナイフで切り抜いているのは、うさぎさんの顔?でしょうか?

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うーんと近づいてみると、コラージュの立体感がよくわかります。

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絵本の顔ともいえる、大切な表紙のイラスト。まもなく完成です!

紙のもつ、柔らかで温かみのある風合いを大切にすることを心がけて作品をつくっている、というすぎはらさん。
作品の素材となる紙の多くは、年代物の古い紙。
数100年以上も昔の古い日記帳や手紙、ホテルの領収証、楽譜など、年月を経て、黄ばんで変色したような味わいのある紙がお気に入りで、以前住んでいたロンドンでは、蚤の市に足繁く通って、さまざまな紙素材を見つけ出していたのだそう。
時間のあるときには、ちぎった紙片を何枚も重ね貼りし1枚の紙に繋げて、すぎはらさんが “紙のハギレ”と呼んでいる“素地”をつくります。
ここから作品に必要な部分を切り抜いたり、絵の具やクレヨンで着色したりしながら、作品づくりは進められていくのだそうです。

2010年07月06日

4コママンガ 「その後のほんとのおおきさ動物園」(不定期連載!)

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2010年06月28日

光村教育図書の絵本の世界
轟編集部長、鈴木編集長にインタビューしました!

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石を集めていたお父さんの実話を絵本にした『あたまにつまった石ころが』や、ケニアに住む女の子ハンダを主人公にした楽しいお話『ハンダのびっくりプレゼント』、「めざまし屋」という耳慣れないお仕事の出てくるイギリスの絵本『メアリー・スミス』、韓国の絵本『いぬとねこ』・・・などなど絵本ナビでも人気のあるこれらの作品。舞台となっている国も画風も様々ですが、どれも一風変わっていて心に残る絵本ばかりだと思いませんか?

そんな興味深い絵本を沢山発行されている出版社が光村教育図書さんです。最近では2010年度コルデコット賞金賞受賞作となった『ライオンとねずみ』や、日本でも大人気の建築家ガウディを主人公にしたノンフィクション絵本『ひらめきの建築家ガウディ』など更に気になる新作が次々と登場、注目されている方も増えているのではないでしょうか。

そこで今回絵本ナビでは、光村教育図書、書籍編集部の轟(とどろき)部長鈴木編集長にご協力頂きまして、会社の成り立ちや絵本にかける想いなどをわかりやすく語っていただきました!


―― まず最初に、光村教育図書さんの成り立ちについて簡単に教えていただけますか?

轟:「光村」と聞くと、国語教科書を思い浮かべる方が多くいらっしゃると思います。
 小学校、中学校、高等学校用の教科書を発行しているのが、光村図書出版という出版社です。「光村教育図書」は、光村図書出版の関連会社で、光村図書出版発行の教科書に準拠した教材――ドリルやビデオ、CDなど――を発行している出版社です。

鈴木:絵本ナビを利用されている方のなかには、光村の教科書や教材で学んだという方もいらっしゃるでしょう。今、お子さんが光村の教科書、教材で学んでいるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。


―― そうだったんですね。それでは光村教育図書さんが絵本を発行されてからはどの位経たれるのでしょうか?

鈴木:「光村教育図書」は、昨年創立45周年を迎えました。でも、絵本を発行するようになってからは、12年ほどです。翻訳絵本を中心に発行していますが、まだ100点にも満たないんですよ。


―― 絵本を発行されるきっかけなどはあったのでしょうか?

轟:そうですね。きっかけというか…。子どもと、もっと深くかかわりたいという思いがあったから、でしょうか。
 光村は、長く子どもの教育にかかわってきました。子どもたちに、光村の教科書や教材で、豊かな知識を身につけてほしい。知識を生かして、自分の夢を実現してほしいと願ってきました。
 ところが、バブルが崩壊したころからでしょうか。どうも子どもたちに元気がない。夢がない子どもが多くなったように思うんです。それは、もう、知識うんぬんではなく、感覚、感性の問題かなと。今の子どもたちは、思いっきり笑ったり、怒ったり、泣いたりすることが、少ないんじゃないでしょうか。
 教科書や教材は、先生が選んで、児童、生徒に与えるものですよね。でも、絵本は、子どもが自ら手に取るものなんです。
 私たちは、子どもの心をゆさぶりたいんです。絵本をとおして、子どもの心をゆさぶりたいと思ったんです。


―― そんな想いのもとに発行された絵本の数々。世界各国の絵本やノンフィクション絵本、新しい作家さんの作品など、とてもバラエティに富んだ内容になっていますね。一方で、どの絵本にも一筋縄ではいかないという共通点があるといいますか・・・。

鈴木:ありがとうございます(笑)

轟:今のところ、翻訳絵本を中心に発行していますが、作品は、かなりこだわって選んでいます。
 先ほどの話にも関連しますが、子どもたちに元気がない原因は何だろう? 夢をもてない原因はなんだろう? と考えたとき、この日本に閉そく感を感じている子どもが多いんじゃないかという気がしたんです。それならば、子どもたちの目を、世界に向けさせてはどうかと。日本以外の国や民族の文化、いろいろな人の生き方や価値観に触れたら、子どもの心は解放されるのではないかと。


―― 作品を選ばれる際のポリシーというものはあるのでしょうか?

轟:ポリシーといえるかどうかわかりませんが、とにかく、「本物」を選ぶようにしています。

鈴木:子どもにおもねるような作品、見栄えがいいだけの作品は、読んだときは楽しいかもしれませんが、心に残りません。
 「あれ、なんだかこの絵本、ひっかかるな…」そう思ってもらえたらしめたものです。何度も読みかえしたり、何年後かに読んだときに、その作品の言いたいことにハッと気づく、それでいいんじゃないでしょうか。
 そういう意味でも、普遍的な作品、10年、20年と読み継がれる作品を選ぶようにしています。


―― 御社の「絵本もくろく」では「バラエティー豊かなおすすめ絵本」「ノンフィクション絵本」「アジア・アフリカの絵本」等々ユニークなジャンル分けがされていますね。おすすめジャンルや作品を教えていただけますか?

<バラエティー豊かなおすすめ絵本>
鈴木:ここでは、新刊を中心にご紹介しているのですが、ジャンル分けしづらいというか…(笑)、どういう絵本と言えないような、個性的な絵本を集めています。
 『かあさんを まつ ふゆ』、『空の飛びかた』、『水曜日の本屋さん』は、平凡社さんの「この絵本が好き!」でランクイン(「アジア・アフリカの絵本」で紹介している『1つぶの おこめ』も)していますが、口コミで広まっているようにも思います。ありがたいことですね。


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かあさんを まつ ふゆ』 ジャクリーン・ウッドソン文 E.B.ルイス絵 さくまゆみこ
空の飛びかた』  ゼバスティアン・メッシェンモーザー作 関口裕昭
水曜日の本屋さん』 シルヴィ・ネーマン文 オリヴィエ・タレック絵 平岡 敦


轟:作家として注目していただきたいのは、『ハンタイおばけ』や『おはなしの もうふ』を描かれている、エレナ・オドリオゾーラさんです。

鈴木:どうです、このおばけ、キモかわいいでしょう(笑)。エレナさんの描く独特な世界、はまりますよ~。

轟:
それから、『おばけやしきに おひっこし』や『ふゆのようせい ジャック・フロスト』を描かれているカズノ・コハラさんも、これからますます楽しみな作家さんですね。


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ハンタイおばけ』 トム・マックレイ文 エレナ・オドリオゾーラ絵 青山南訳
おはなしのもうふ』  フェリーダ・ウルフ/ハリエット・メイ・サヴィッツ文 エレナ・オドリオゾーラ絵 さくまゆみこ訳
おばけやしきに おひっこし』 カズノ・コハラ作 石津ちひろ
ふゆのようせい ジャック・フロスト』 カズノ・コハラ作 石津ちひろ訳


<ノンフィクション絵本>
轟:「絵本もくろく」にはまだ掲載されていませんが、今年発行した、『変わり者 ピッポ』や『牛をかぶったカメラマン』、『ひらめきの建築家 ガウディ』は、この夏休みに、子どもたちにぜひ読んでいただきたい絵本です。
 ガウディは日本でもよく知られていますが、ほかは、日本ではまず知られることのない人たちです。好きなことを究める生き方について、ご家庭でも話題にしてほしいですね。


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変わり者 ピッポ』 トレイシー・E・ファーン文 ポー・エストラーダ絵 片岡しのぶ
牛をかぶったカメラマン』 レベッカ・ボンド作 福本友美子
ひらめきの建築家 ガウディ』 レイチェル・ロドリゲス文 ジュリー・パシュキス


―― その「ノンフィクション絵本」紹介コメントの“歴史上の人物でなくても、人にはそれぞれの歴史があります。絵本でえがく、フツウの人のスゴイ生き方。”という言葉がとても印象的です。子ども達にはどんな事を伝えたいと思われていますか?

鈴木:ローザ』のローザ・パークスは、自分の信念をつらぬいた人です。『メアリー・スミス』は、めざまし屋という仕事をしていた人。『あたまにつまった石ころが』のお父さんは、石集めが趣味で、趣味が高じて博物館の館長になった人です。
 どの人も、“フツウの人”なんです。
 価値観が多様化するなかで、私たちは、日々さまざまな選択をせまられています。生き方も、ある程度選択できるようになりました。でも、何のために生きるのか? 誰のために生きるのか? 何を大切にして生きるのか? そういった、人間の本質にかかわることは、答えがいろいろあるわけではなく、国がちがっても、時代がちがっても、同じなのではないかと思うんです。
 だから、「スゴイ生き方だな~!」と思う人でも、目指しているところは同じというか・・・。そういうことを感じとってほしいですね。


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ローザ』 ニッキ・ジョヴァンニ文 ブライアン・コリアー絵 さくまゆみこ訳
メアリー・スミス』 アンドレア・ユーレン作 千葉 茂樹
あたまにつまった石ころが』 キャロル・オーティス・ハースト文 ジェイムズ・スティーブンソン絵 千葉 茂樹訳

―― 最新作の中からおすすめ絵本とみどころを教えてください!

轟:何といっても、出たばかりの『ヒヤシンスひめ』がおすすめです!
 体が浮いてしまうお姫さまのお話なんですが、これは笑えますよ。このユーモア、絵本ナビをご利用の方々に、きっと気に入っていただけると思います。


―― 今後、どのような絵本を発行されていきたいと思われますか?

轟:翻訳絵本でも気をつけていることですが、日本語のすばらしさ、言葉のひびきの楽しさ、美しさに気づかせるような絵本を出していきたいですね。
 それから、海外に向けさせた子どもたちの目を、もう一度日本に向けさせたいです。翻訳ではなく、創作に挑戦するのもいいかもしれませんし、日本を舞台にした絵本もいいかもしれません。
 まだまだやりたいことはいっぱいありますよ(笑)


―― それはとっても楽しみですね!最後に絵本ナビ読者へのメッセージをお願いします。

鈴木:私たちは、1冊の絵本との出会いが、その子どもの人生を変えるかもしれない…、そういう思いで取り組んでいます。大人になって、自分の子どものころを振り返ったとき、絵本を読んだ思い出を、宝物のように感じてくれたらいいなあと思いますね。

轟:絵本ナビの読者の皆さまには、いつも励まされております。絵本を読んで、思ったこと、感じたこと、一言でいいので、レビューを書いていただけたらうれしいです。皆さまのご期待にそえるよう、一同ますます頑張ってまいります!

―― ありがとうございました!

絵本を発行されている出版社さんのお話というのは、また違った視点を感じる事が出来て新鮮ですよね。
その熱い想いに触れることで、作品を手にとる大きなきっかけの一つになってもらえればと思っています!

光村教育図書さんの作品はこちらから>>>
光村教育図書さんの公式HPはこちらから>>>

2010年06月23日

絵本作家たごもりのりこさんにインタビューしました!

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江戸時代の大阪を舞台に、「きくきく屋」というくすりやに奉公する小さな丁稚(でっち)、
こまめどんの日常を大阪人ならではの人生の知恵を交えながらテンポよく描く
なにわのでっちこまめどん」シリーズ。とにかく泣いたり、笑ろたり、大忙し!

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  『どっちもどっちの巻』    『ねずみこわいでちゅうの巻』   『どろぼうどいつやの巻
     作・村上しいこ 絵・たごもりのりこ  佼成出版社

作者は村上しいこさんです。設定がとってもユニークですよね!
江戸時代の大阪。くすりやで働く丁稚。この独特な世界は絵の力なくして表現はできません。
そこで登場するのがたごもりのりこさん!
佼成出版社の担当編集者の方に誕生秘話エピソードを教えていただきました。


村上しいこさんご夫妻と奈良観光をご一緒していたときでした。興福寺で、昔の奈良の町なみを描いた絵が目に留まり、「あ、しいこさんの時代ものって読んでみたい!」と思いつくまま、その場で、しいこさんにご相談。「自分が描くならば、では大阪で」ということで、あれよあれよという間に“こまめどん”が誕生しました。笑いと人情味あふれるテキスト。その絵は――?
 そのとき「!」と頭にうかんだのが、たごもりさんでした。テキストを読みこんで読みこんで、作品世界を魅力的に広げてくださる、たごもりさん。そののびやかで温かな画風は、きっと、こまめどんをいきいきと、絵本の中で動かしてくださるだろうと、大いなる期待とともにお願いしました。もちろん、できあがりは期待以上でした!

そして完成した「なにわのでっちこまめどん」シリーズ
今回はその発売を記念して、たごもりのりこさんへのインタビューが実現しました!その作品への想いを語っていただいています。


たごもりのりこ(田籠範子)
骨董屋を経て、絵本作家・イラストレーターに。主な作品に『そらうで』(講談社)、『ごっほんえっへん』『ばけばけ町へおひっこし』『ばけば町のべろろんまつり』『ばけばけ町でどろんちゅう』(以上、岩崎書店)、『おったまげたとごさくどん』『どうぶつどどいつドーナツ』(共に鈴木出版)、挿画に『鬼の市』(岩崎書店)、『ぼくんち戦争』(PHP研究所)、『うちゅういちのタコさんた』(国土社)など多数ある。公式HP>>>



■ 舞台は江戸時代の大阪!ユーモアたっぷり人情物語


―― 「なにわのでっちこまめどん」シリーズのお話の内容を初めてご覧になった時の印象を教えていただけますか?

大阪の江戸時代とな!と、最初は慌てふためきました。
でも、登場する目かつら売り、のぞきからくり、南京玉すだれ等々・・・昔ちんどん屋さんの仕事をしていたこともあり、路上の演芸や商売は、興味のある分野でもありましたので、これらを描ける機会をいただけたことは、とても嬉しかったです。


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▲ちんどん屋さんのお仕事とは!!その好奇心が存分に生かされている場面ですね!

―― この作品の大きな魅力は何と言っても“こまめどん”の愛嬌!くるくると変わる表情を見ているだけでも楽しくなってきます。たごもりさんは“こまめどん”を描かれる時にはどんなキャラクターとして考えられたのでしょうか?

こまめどんの顔立ちは、関西弁のテキストをいただいた時、頭にすぐに浮かびました。関西弁には、それだけの強い力、押しの強さ(笑)があったといいますか。「こんな 顔やろう?そやねん!」と、こまめどんに言われている気分でした。泣き虫だし、つまみぐいしちゃうし、ばんとうさんに叱られつつも、「まあ、ええやん!」と明る く丁稚奉公している、そんなところがこまめどんの魅力でしょうか。

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▲この表情!!確かにセリフを読んでくるとこんな表情が自然に浮かんでくるかも・・・!?


―― こまめどんだけでなく、作品に出てくるその他の登場人物たちもとても表情豊かで大らかで魅力的ですね。たごもりさんのお気に入りのキャラクターはいらっしゃいますか?

こまめどんを、時に見守り、時に叱咤する、ばんとうさんですね。実はいかりや長介さんがモデルなんですよ。


―― 時代は江戸、舞台は大阪のくすり屋。設定がかなり具体的ですよね。絵を描かれるにあたって、大変だった点、面白かった点などを教えていただけますか?

「浪速名所獨案内」(なにわめいしょひとりあんない)という、大阪の古地図があるのですが、作者の村上しいこさんが、その古地図をもとにしてイメージを膨らませたお話だったのです。残された数少ない当時の資料から、お話に合わせて画面を再構築しなければなりませんでした。絵本としては、実際の当時の状況から異なる創作部分もあるのですが、“タイムマシン”と“どこでもドア”がどんなにか欲しいと思ったことか!(笑)

面白かったのは、大阪と江戸の違いを意識できたことです。
大阪だと鍋の把手が無 いものが一般的、とか、まな板の足の数が違う(今回、絵にはしませんでしたが)とか。あとは、薬屋さんゆえ、へっつい()にはお客さんにお茶を出せるよう茶釜がいつもあったり、数も多かったり。長屋の台所と商家の台所も、違うものだな あと、思ったりしました。
※竈(かまど)


■ ユニークな経歴!


―― そのような感想が出てくる事自体が驚きで、さすがはたごもりさんと思ってしまうのです。骨董屋で働かれていたご経験があるそうですね!絵本の制作に影響はあるのでしょうか?また、その頃から絵本の制作には興味を持たれていたのでしょうか?

西荻窪のベビヰドヲルという、古人形や昔の玩具、生活道具を扱うお店で、たまにちんどん屋さんの仕事に呼ばれたりしながら、7年ほど働いてました。日常的に数多く の昔のものに触れられたことは、今の自分の財産になっています。ただし、自分で開業したお店はあっという間に閉店させてしまったので、商才は無かったようです。

骨董屋で働く前に、図書館の児童書コーナーで働いておりました。下っ端図書館員ゆえ、よく閉架書庫の整理などしながら、こどものとものバックナンバーなどを読み あさってましたね。絵本にのめりこんでいったのは、この頃です。鈴木三重吉の赤い鳥の復刊バックナンバーなどもこっそり読んでいたので、昔の絵本や、古いものへの興 味も、この時に生まれました。


―― 「なにわのでっちこまめどん」シリーズ3冊、それぞれの「ここは見てほしい!」というポイントを教えていただけますか?

一巻「どっちもどっちの巻」では、目かつら売りや、のぞきからくりなど、当時の子どもと一緒に遊んでいるよ うな気分を味わえてもらえたらと、思います。

二巻「ねずみこわいでちゅうの巻」は、町人のようなねずみ達とのやりとりですね。また、暗くて怖い蔵の中だというのに、そこはやはり大阪の子ども、妙にのりのりでもあるだいきちどんとこまめどんの姿に注目です。

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三巻目「どろぼうどいつやの巻」は、疾走していく言葉遊びと、次々出てくる町人達と共に、泥棒追いかけ、息をぜえはあ切らして下さい。


―― 子ども達にはどんな風に楽しんでもらいたいですか?

小学校のイベントに伺った時、高学年の子達でしたが、丁稚という存在そのものを知らなかったんです。そりゃ確かに大村昆さんの丁稚ものとか、よく知ってる今の子 ども達がいたらそれはそれで驚きかもしれません。(大阪の子どもは知ってるのかも しれませんね。)
子どもが働き手でもあった時代、実際の丁稚奉公は絵本とは異な り、過酷な面もあったかと思いますが、東京、大阪、関係なく、江戸時代の丁稚気分を楽しんでいただけたらと思います。


―― 今後どのような絵本をつくっていきたいと思われますか?

しばらく江戸時代ものが続いてるので、昭和あたりにタイムスリップなんてのもいいですね。
しかし、まあ、まだまだ未熟者ゆえ.・・・、ひたすら精進といいますか、筆を動かし、学び、表現していきたいと思います。

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―― ありがとうございました!


merumaga.jpg 西荻窪・ベビヰドヲルにて撮影
▲お話にも出てきました、たごもりさんが以前長いこと働かれていた古物屋さんを背景に。
 ベビヰドヲルのサイトはこちらです>>>

温かく、ユーモアたっぷりの絵なのですが、細かい部分にたくさんのこだわりも垣間見えて・・・その幅広い表現力こそが大きな魅力のたごもりのりこさん。今後どんな風に更に開花されていくのか本当に楽しみですね!


2010年06月09日

絵本作家山村浩二さんのアトリエを訪問しました!

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人気絵本くだもの だものに引き続いての名コンビ作品が発売となりました!みずみずしくて美味しそうな野菜たちが準備運動をしている様子が何とも愛らしい表紙の絵本おやおや、おやさいです。言葉遊びの達人石津ちひろさんの文章をユーモラスな絵で見事に視覚化しているのが山村浩二さんです。

今回はその発売を記念して、山村浩二さんのアトリエ訪問インタビューが実現しました。
山村浩二さんは、アニメーション作家として、その作品の国際的な受賞が60を超えるほどの大活躍をされている方なのです。そんな山村さんの絵本の制作方法とは・・・?
『くだもの だもの』、『おやおや、おやさい』のお話を中心に、制作の秘密からみどころなどたっぷりお話をお伺いしました。素敵なアトリエの様子も必見ですよ!


山村浩二(やまむらこうじ)
1964年、愛知県生まれ。東京造形大学絵画科卒業。短編アニメーションを多彩な技法で制作。作品に『パクシ』『年をとった鰐』など。『頭山』がアカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート、6つのグランプリ、『カフカ 田舎医者』が7つのグランプリなど、国際的な受賞は60を超える。絵本に『くだもの だもの』『おやおや、おやさい』(福音館書店)『あいうえおとaiueoがあいうえお』(小学館)など。東京都在住。


■ ユーモラスな言葉と絵のコラボレーション作品『くだもの だもの』 制作のひみつ


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 『くだもの だもの』 石津ちひろ・文 山村浩二・絵 福音館書店
▲夏の海水浴場でくり広げられる果物たちの愉快な行動を、ユーモラスな絵で描いた言葉遊びの絵本です。

―― 絵本ナビでも人気の絵本『くだもの だもの』。まず石津ちひろさんの言葉遊びの面白さというものがあって、そこに、山村浩二さんの愛嬌のある絵によって違う世界が広がっていき、子ども達も大喜び。暗記してしまうくらいです。その組み合わせがとても絶妙なのです。まず不思議に思うのが、どうやってその2つの世界が組み合わさっていくのか、という部分です。

 最初に石津さんのテキストを頂くんです。その時は構成(順番や組み合わせ)というのは決まっていないんですね。石津さんの案として、果物にまつわる様々な言葉遊びをたくさん頂いて。だから、実は実際に本文に使われている以上の数のテキストがあったんです。


── その石津さんのテキストを最初に見られた時の印象はどうでしたか?

 それはもう本当に、楽しいなと思いました。果物たちが生き生きと動いてる様子が見えてくるといいますか。
 でもそこで、単純に言葉の絵解きだけの絵本じゃ面白くないかなというのがあったんです。石津さんのテキストを読んでいく中で、たまたま「海水浴」というテーマで、夏とかスイカが出てきたところから一つの情景が浮かんできたんですね。一個一個は、本当にばらばらの言葉遊びなんですけど、「海水浴」という所に関連するところで組み合わせていけば何かストーリー性が出てくるんじゃないかなというのが見えたんです。


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「かいすいよくには いかない スイカ」
▲海水浴の誘いに、スイカさんのうちに行く所からストーリーが始まります。


―― そこからなぜかパパイヤのパパが砂浜でパンを焼いたりと、思いもつかない展開になっていって(笑)。

 そうなんですよ。これはパパイヤの言葉遊びなんですけど、最初はテキスト的には「海水浴」というのはどこにもなかったわけですね。じゃあ、海水浴場でパンを焼く情景というのはどんなのだろうと考えていって。一つの場を設定することで、言葉遊びだけじゃなくどんどん絵の世界が広がっていって、キャラクター性といいますか、登場人物たちが生き生きとしてくるんですね。そうやって、言葉から情景やシーンをイメージしていうるちに海辺という舞台が見えてきて。そこからだんだんこちらも遊び出すんですね。

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── そうやって色々な場面が登場しながらお話として全体が進んでいく一方で、その間のつながりといいますか、サイドストーリーみたいなものも描かれていますよね。そういう遊び的な部分というのは子ども達も大好きですよね。

 言葉遊び自体はそれぞれが単体ですが、そこで何かストーリー性を持たせることで絵本に膨らみを出せるかなというのがまず見えてきたんです。それは言葉の順番だけでも変わってくるんですよね。そこの間にうまく関連させて、例えば「ビワのお詫び」の場面にうまくつなげていったりとか・・・色々なシーンを後からパズルのように組み合わせていくことで、だんだん立体的に絵の構成も決まってきたんです。


── その段階で、石津さんとのやりとりというのはあるんですか?

 基本的にお任せいただいていました。逆に僕はすごくやりやすかったといいますか、楽しくやらせていただけましたね。


── この作品の大きな魅力、人気の秘密の一つとして登場する果物のキャラクターというのがあると思います。果物に手足がぴょんぴょんって生えていて、キウイの腕は毛むくじゃらだったりとか(笑)。表情もすごく豊か。そのキャラクターはどんな風に誕生したのでしょうか?

 『くだもの だもの』では、必ず果物が登場して色々なことをしてるので擬人化していかなければいけないですよね。絵の方法としてどうしようかなという部分は、少し苦労しましたね。
 方法としては色々あったと思うんですけど、一つは単純に果物そのものを感じてほしいというのがあって。果物はリアルに描きたい、果物自身を簡略化はしたくないなと。それで、手とか目とかささっと描いたように、わざとちょっと粗くしているんです。しっかり果物から生えている手というふうにはしないようにして。ついでに、ちょっと描き足したみたいな印象にしていこうかなというのは、絵を描いていくうちに思い付きました。それで、例えばキウイだったら毛がいっぱい生えてるから毛深いんじゃないかとか(笑)。果物を見た時にそのキャラクターが浮かぶような感じにしたいなという風に思って描いています。


── ああ、それででしょうか。果物の描写が本当につややかで美味しそう!1~2歳ぐらいの小さな子ども達でも、果物を見て美味しそうというのはわかるんですよね。

 しずる感っていうんでしょうか、フルーツなのでみずみずしさみたいなものを感じさせなきゃなというのはありました。だから、普段は空想で描く場合も多いのですけど、本作は全部本物を見て描いたんです。でも、季節的な問題で手に入りにくい果物も随分あって(笑)。秋も深い頃、ちょっと冬に差し掛かっていたのかな。スイカもなかなかなくって。ビワやさくらんぼなどは、贈答品の高級なものを編集部の方に手に入れていただいたりしたんです。スモモもちょっと難しかったですね。種類がとても多いので、これぞスモモという典型的なものにしないとというのがあったりして。

 おもしろいのは個体差があるといいますか、同じみかんでも一つずつ表情が違うんですよね、そうすると、やっぱりこの一つのみかんをモデルに描き上げないといけないというのがあって。だから、ラフはちょっとラフで描いておいて、本番が本当に本番なんです。最後に実物を見ながら描いてきちっと仕上げる段階がすごく重要。表情やキャラクターが決まる瞬間ですので。そのタイミングをうまく見計らって。だから、果物ごとに描いていくんです。同じ果物が登場するところはそこの果物だけを仕上げていくみたいに。だから全体にはまだ色が付いていないんだけど、みかんの部分だけは仕上がっていて、こっちのフルーツはまだこれからという感じで。最後のほうで、脇役的なスターフルーツみたいなのを描いて(笑)。でも、スーパーで探すのはすごく楽しかったですね。


―― 絵を描かれる時の素材というのは・・・?

 インクと色鉛筆ですね。背景の感じは水性のインクで、キャラクターそれぞれは油性のカラーマーカーで色をつけます。画材としては3種類使って描いています。背景の感じで全体の空間、雰囲気を創っていって、鉛筆で落書き的な手足と、逆にもっと果物の細かいディテールの質感のほうと、うまくつなげて違和感ないようにしている感じです。



■ 続刊『おやおや、おやさい』のテーマはマラソン大会!


── 続いて、今度はフレッシュな野菜がたくさん登場する『おやおや、おやさい』。石津さんも作者の言葉として「子どもの頃の元気でイキイキとしていた野菜に、絵本の中でふたたび出会うことができた」とおっしゃっている通り、山村さんの描く野菜たちはごつごつしていて、張りがあって。そしてマラソン大会を繰り広げるのです。こちらもやはり同じような制作方法で・・・?


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おやおや、おやさい』 石津ちひろ・文 山村浩二・絵 福音館書店刊
▲今日は野菜たちのマラソン大会。「そらまめ そろって マラソンさ」「りっぱなパセリは つっぱしる」韻を踏んだような言葉とユーモアたっぷりの絵が実に楽しい絵本です。

 基本的には同じつくり方です。野菜も本物を見ながら描きました。やはり季節柄手に入りにくいものも色々あって、その辺りの苦労は同じでした。
 
 でも、実際に画面上に描き始めてから気がついたんですけど、野菜は比較的長いものが多いんです。セロリだとか、大根だとかもすごく長いわけですよね。全部リアルに描きたいというのが基本的にあるので、小さい野菜と一緒に画面上に収めようとすると・・・「あ、これ、難しいな。うまく収まらないや」なんて(笑)。厳密にいうと実際の大きさの比率は違いますが、それぞれの形の比率は変えないように。うそをつかない様なバランスで、長いものは長いものっていう印象をちゃんと画面に収めるのが結構難しかったです。果物の場合は大体丸いので、あまり意識しなくても良かったんですけど、野菜になってみたら長いのと丸いのと太いのって、すごく形がばらばらなんですね。賞味期限もそうで、ものによってはすぐにしなっとなってきちゃうんですよね。

 それから人参の“葉っぱ付き”というのは売ってたようなイメージがあったんですけど、いざ探してみるとこれが売ってないんですよ。大根はまだ時々葉っぱ付きは売ってるんですけどね。それが自分では意外だったんです。でも、そこはちょっとこだわって。子ども達が知ってるのは、この黄色い部分の人参だけだと思うんです。これ、実際は体の一部を切られてるわけですね。それがかわいそうだなと思って、なるべくちゃんと丸のまま描こうと。厳密に言うとツルとかも取られちゃっているんですけど、まあ一体化してるものは付けてあげたいなと。やっぱりキウイなんかも、イメージとしては切られてた緑の中身のほうが、果物として印象深いと思うんですが、やっぱりその切り身のままのキャラクターというのは、こわいかなと思って。浮き輪の柄でらしさを、演出していますね。そういう所はなかなか難しく、面白い部分でした。


── ストーリーの最後の展開で意表をつかれると言いますか、はくさいのこのキャラクターが笑っちゃいますよね。誰かモデルでもいるのかな、と思ったのですが・・・。
 
 モデルというのはいなかったんですけどね。これは本当に、石津さんの「はくさい はくしゅは てれくさい」という言葉から連想して、こういうキャラクターなんだろうなって、自然に出てきて。わーって騒がれたりすると、そっちに気持ちが行っちゃって、本来やってることを忘れちゃうみたいなね(笑)。そんな事をしている間にとうがらしのとうさんが・・・って。この最後の終わり方もストーリー的に、意外性を持たせて(笑)。


―― 『おやおや、おやさい』の隠れたみどころみたいなものがありましたら教えて頂けますか?

 全部実在する野菜を描いているんですが、同じような葉っぱの緑の感じで違いを出すのというのが結構難しかったんですね。このシーン(スタートしたマラソン選手達を沿道で沢山の野菜が応援するシーン)なんかは、一番楽しみながら描いたのですが、ここも色々な野菜が出てくるんです。頭の葉っぱの部分しか見えていないんですけど、ちゃんとホウレンソウだったり、春菊だったり、三つ葉だったり。葉の形をよく見て、その違いでわかるように。パセリも葉がもこもこしていて立派です。はちまきができるくらい。そういう意味で、今回は“葉物”に力が入ってるかもしれないです。はくさいにしても。描きがいがありました。


── 言われてみると!これは親子でクイズ遊びが出来そうですね。意外とお母さんも答えに困っちゃったりして(笑)。


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■ アニメーションというジャンルと比べて・・・


―― 素人の勝手なイメージですが、アニメーション作家の方といいますと、どんどんイメージが膨らんでいってとにかく沢山の枚数の絵を描いたり、描き込むのがとにかく好きだったりするのかな、と思ってしまうのですが、絵本ですと場面が限られていますよね。そういう部分で苦労などはありましたか?

 やっぱり絵の見せ方が違うんですよね。当然、アニメーションの場合は動きで説明できるので、その動きの枚数を重ねることで展開できるわけですね。だから例えばラディッシュがダッシュしてるんだったら、やっぱりダッシュしてるスピード感というのは現実的な時間として出せるわけです。ところが絵の中だと、停止しているんだけど、この人は速そうに見えるだとか、色々な事を含めて一場面でそれを表現しなければいけない。絵本の中で出来ることというのはまたアニメーションとは違ってくる、という実感はありました。両方の仕事をしていてすごく勉強になっていますね。そのたびごとに発見があります。


―― 違うジャンルでの表現もされているからこそお伺いしてみます。絵本のおもしろさというのは、どんなところにあると感じられますか。

 絵本というのは戻れるんですね。サイドストーリーを見つけた時もそうですけど、子どもは気になったらもう1回、「あのキャラクターってなんだっけ」みたいにページをめくって後ろに戻れるわけです。映画は1つのディレクションを僕らが作って、それを見てもらう。それから考え感じてもらうという感じですけど、その体感の仕方というのがまったく違うんですよね。そこはおもしろいですね。
 それから、絵本の感想なんかを見ると、すごく親子で読んでくれているんだなと感じます。アニメーションというと、テレビの前で座りっぱなしで見ているという印象があるんだけど、絵本の場合は親子で読んでいるその間、どういうことが起こっているかというリアクションがすごく見えてきて。そこはちょっとアニメーションとは違うのかなという気がしますね。


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―― この絵本は親子でどんな風に楽しんでほしいですか?

 親子それぞれで色々なストーリーを見つけてほしいと思います。絵本の中では、どのキャラクターがどの辺に、どの場面でどこにいるのかというのを、結構細かくつながりを考えて描いていますから。実はこの辺でこのキャラクターがいたんだ、みたいなのを見つけながら楽しんでもらえたら嬉しいです。


■ 更に最新作の情報も!


―― ここに出来上がったばかりの最新作『おかしな おかし』があります。(月刊誌こどものとも年少版2010年7月号※)先ほど拝見させていただいたんですが、今度の主役はお菓子!とにかく美味しそうなお菓子が次から次へと登場して・・・本当にどれも子どもたちが泣いて喜びそうな内容になっていますね。「お菓子」という題材は石津さんの方からのご提案ですか?
※こちらは絵本ナビでは取り扱っていない商品になります。詳細・問い合わせはこちら>>>

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『おかしな おかし』 石津ちひろ・文 山村浩二・絵 福音館書店刊

 いや、お菓子というアイデアは僕なんです。実は最初、石津さんと編集の方から「お魚」で、という話があったんです。今までの絵の作り方は、目鼻のない所にそれをつけてキャラクター化するという方法。ところが、魚はもうキャラクターですよね。鮭なら鮭で。切り身にキャラクターつけるわけにもいかないしなあ、と思って。だから目鼻のない、本当には生物ではないもののほうがいいんじゃないですか、例えばお菓子とかパンとか・・・と提案させていただいて。そこで、石津さんの方からお菓子で行きましょう、という事で決まりました。


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―― お魚もおもしろそうですけど、言われてみると確かに・・・。絵を描かれる側の方ならではの発想ですね。ところで、お菓子というと例えばお菓子の家だとか、ちょっとファンシーな感じを思い浮かべるんですけど、こちらは思い切り汗が流れていますね。

 石津さんからいただいた言葉の中に、体操という言葉が出てきたのでそこからイメージして。オリンピックだと広がり過ぎてしまうし・・・ということで身近で色々なスポーツが出来るスポーツジムが舞台になりました。プリンやゼリーが飛び跳ねていたり、ドーナツやクッキーがサッカーをしていたりします(笑)。

 お菓子は意外と地味でしたね。焼き菓子が多いので、茶系のものが多いんですよ。やっぱり果物が一番カラフルにできましたね。野菜はグリーン系が多いので、爽やかな印象。お菓子はなるべくポップな感じにしたかったんですけど、お菓子そのものは意外と地味なんですよね。でも、そこで「おいしさ」のほうにちゃんと目がいってもらえれば。

 やっぱりお菓子も本物を見ながら描きました。それはすごく楽しかったんですけども・・・食べたくなるんです。お菓子は描くものじゃなくて、やっぱり食べるもんだと(笑)。おまんじゅうを見ながら鉛筆で描いてるのはすごく変で、こりゃあ口に持っていくもんだろうって。果物ですと静物画として、まだ冷静に見られたんですけど。お菓子を眺めてるのは、すごく変な感じがしました。
 でも娘も喜んでいました。モデルが最終的には食材になるので。果物や野菜の時もそうでしたけど、普段買わないようなものを買うから大変おもしろかったですね。意外と美味しいだとか、料理に入れてみたり。全部食べるようにしてましたね。


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―― 1つの作品が完成するまでにはどの位の期間がかかるのでしょうか?

 プロジェクトとしては、だいたい1年以上前からお話をいただきます。ラフから進んでいくんですけど、そのラフが固まるまでの時間と、実際色をつけていく作業というところで、トータルでやはり1年ぐらいですね。設定、ストーリーなどを決めるラフのやりとりでは数ヶ月かかかっています。でも、作業自体は比較的早いので、実際色をつけたりしているのは2カ月か3カ月ぐらいで仕上げているんじゃないですかね。




■ 山村浩二さんご自身についてもお伺いしました


―― 子どもの頃絵本を読まれた記憶はございますか?

 実は子どもの頃、僕はそんなに絵本を読んでいなかったんですね。物語絵みたいなものは見ていた覚えはあるんです。世界名作童話集などで絵が沢山ついていると、絵に興味があったりとか、昔話の絵本だとかはすごく読んでいた記憶があるんですけど。漫画世代で、物心ついたころはもう漫画を読んでたほうが、印象としては多くて。

 絵本の世界が本当におもしろいなと思ったのは、子どもができてからですかね。例えばエリック・カールさんとかの絵本を見たりして、ああ、おもしろいんだと。子どもに見せながらそういうものに気づいていったというのがあります。

 絵自体は見るのも描くのも大好きでしたね。漫画やアニメーションは学生の頃から作っていて、それがいつのまにか今の職業になっていたという感じです。


―― その中で、絵本を描かれる事になるきっかけというのはあったんでしょうか。また、絵本を描く事について興味はおありでしたか?

 特に大きなきっかけってあったのかな。アニメーションだけの仕事というのは、なかなか最初のうちはメインではできなかった部分もあって。仕事を始めた頃から挿絵の仕事はやっていました。ガリバー旅行記だとか、シャーロックホームズなんかの物語につけるイラスト。こういう挿絵の仕事は好きでした。テキストからイメージして絵をつくるというのは、結構初めの頃からやってたんですね。振り返れば、児童書の世界には何かしら関わっていますね。

 最初の絵本というのは福音館書店さんの『サカナカナ?』(月刊誌こどものとも0.1.2 2002年1月号※品切れ)です。絵本らしい形で仕事ができた最初だった気がします。

 絵本を描くということにはすごく興味がありましたね。やはり絵描きの興味として、絵本画家の人たちというのはすごく魅力ある人が多いので、絵を描くという立場からは、絵本を描いてみたいというのはずっとありました。だからといって、最初から絵本作家を目指そうみたいなところじゃなくて、やはり自分の興味の中心がアニメーションにあったものですから、どうしてもそこが中心にはなっていたんですけど。


―― 現在、当然アニメーションの仕事も並行されているんですよね。取り組み方や時間のかかり方は全然違うのでしょうか?

 そうですね。アニメーションのほうが、どっちかというとコツコツやっていかないと出来上がっていかなくて。絵本は気持ちをうまく持って行って。もちろんそれなりに両方時間はかかりますけどね。やはりある意味で、同じ絵なんですけど、自分の気持ちが切り替わるので、両方の刺激になるというか。うまくそれぞれの仕事がプラスにできてるんじゃないのかなという気はしています。


■ 最後に・・・


―― 絵本や絵本を通しての楽しみ方など、絵本ナビ読者の方へのメッセージをお願いします!

 子どもとのコミュニケーションとして、絵本は映像よりも密に親子がコミュニケーション取りやすいのかなというのはありますね。読み聞かせだったり、一緒にページをめくっていったりというところで。

 それから、僕自身は絵を描くので、絵本の選び方としては、やはり絵に興味があると見るんです。絵本には色々な要素があるのですが、特に絵の部分、そこには言葉以上の何かがあって、そこに魅力があるからこそ、絵本というのがあると思っているんです。単純に物語の読み聞かせではなくて、その絵から発しているものというのはなかなか言葉には置き換えられないけど、その絵本や画家さんそれぞれの雰囲気というか、独特に発しているものがあるんです。絵を描く立場としてはそういう絵の面白さ、絵が発している魅力みたいなところから絵本を探してみるのもいいのかなという気がします。
 子どもにとっても、そこで感受性が養われるのではないかなと。子どもの頃に見たビジュアルイメージというのは、たぶんずっと残っていくと思うんですね。目からの触角といいますか。そういうものが記憶にすごく結びついていくというのはありますよね。大人は言葉や良い物語というので選びたがるところがあるんですけど、やっぱり忘れちゃいますよね。その雰囲気とか印象という方が、強く記憶に残ったりするんです。


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 自分で表現するにあたっても、そこは難しいところですね。うまくいい気持ちで描けていないと、ちょっとした事で元気な感じが出ていなかったりしますし。同じ絵でもちょっと変わっちゃうんですね。例えば野菜でも果物でも、それと接しているときの自分がうまい具合にいかないと、美味しそうと思っていないと、美味しそうに描けないですよね。単純な話ですけど。


ありがとうございました!
記念にぱちり。

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 お話を聞いていると気が付くのですが、山村さんにとって制作中の「難しい」や「苦労」というのはイコール「面白い」なんですね。そんなお話をされている時は決まってとても楽しそうな表情をされているのです(笑)。創作絵本にもご興味があるという山村さん、今後どの様に世界が広がっていくのか本当に楽しみです。


★今回、素敵なアトリエにもお邪魔させて頂きました!

この場所から、子ども達を喜ばせてくれる絵本も、世界中で絶賛されているアニメーション作品も生まれていくのですね。

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▲これが作品の生み出される机!アニメーションの原画もずらり・・・思わず緊張します。

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▲カラーインクやペン、色鉛筆など。主に制作に使われている画材がびっしり。


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▲制作の時はいつも音楽を聞きながら。アニメーションの原形フェナキストスコープ(驚き盤)を見つけて、絵本ナビ取材スタッフも福音館書店編集チームも思わず夢中に!簡単な解説までして頂いて・・・。


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▲素敵な本棚の間から、ちらりと見え隠れしていたラフ画。どうやら新作絵本の制作も進行中の様ですよ!

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▲やはりアトリエの主が座っているとしっくりきますね。サイン本も描いて頂きました!

2010年05月26日

絵本作家さこももみさんにインタビューしました!

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大きな頭にくりくりおめめ。可愛いお洋服に身をつつんだ男の子と女の子、「ゆっくとすっく」
小さなお子様を持つお母さん達の間では気になっている方も多いのではないでしょうか、
人気シリーズ「こんなときって なんていう?」の絵を描かれているさこももみさん。イラストレーターとしても活動される一方、最近では、創作絵本も手がけられるなど絵本作家として更に活躍されています。

そんなさこももみさんの、またまた可愛いらしい新シリーズが登場しました!
主人公の名前は「ペコルちゃん」
ね、気になるでしょう。新刊のお話からご自身のお話まで、笑いの絶えない「さこももみワールド」をたっぷりご堪能ください!

さこももみ(佐古百美)
1961年東京都生まれ。東京学芸大学美術教育学科卒業。小学校教員を経て、イラストレーター、絵本作家になる。絵本、雑誌、書籍、企業のWEB等で幅広く活躍している。主な作品に「こんなときってなんていう?」シリーズ(ひかりのくに)、「イーノとダイジョブ」シリーズ、『まんま』『ねんね』(講談社)、『へんしん!ぱんやさん』(教育画劇)、『トトとライヨ じてんしゃのれた!』(アリス館)、『ぼくはひなのおにいちゃん』(文化出版局)、「ペコルちゃん」シリーズ(くもん出版)など多数。日本児童出版美術家連盟会員。広島県在住。


■ 子ども達がまねをしたくなる絵本「ペコルちゃん」シリーズ


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ペコルちゃんのたべものでんしゃ』 『ペコルちゃんのおでかけスイッチ』 
さこももみ作  くもん出版
▲パパとママがそれぞれ登場、どちらも楽しめるのが嬉しいですね。


―― ママと一緒の『たべものでんしゃ』、パパと一緒の『おでかけスイッチ』。「ペコルちゃん」シリーズの2冊は、どのように生まれたのでしょう。テーマやきっかけなどがございましたら教えて頂けますか?


 「うちの子がこの絵本の真似をして困ります」という声が聞こえてくるような絵本がつくりたかったんです(笑)。子どもが楽しんでほしいというのがまず一番にあります。読んだときに、「もう1回読んで」だけじゃなくて、本の中のことを実際にやってみたくなるようものにしたいなと。

 それから絵本を読んでくださるお父さん、お母さんが子ども目線に下がって自分の子どもの頃のことを思い出して一緒に楽しんでほしいな、というのもあって。どうしても親の立場からすると、しつけ的なもの、勉強に役立つものといったものを選びたくなると思うのですが、そうじゃなくて大人が子どもと一緒になって楽しめる余裕があるようなものになるといいなと思ったんです。

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―― 確かに子どもが楽しいと思う事といえば部屋中が散らかったり、物が壊れたり、だいたい親は・・・

 「ああ~やめてよ~」っていうこと多いですよね。だけど子育ての時期を過ぎてしまった私から見ると、そういうのがおもしろかったのに・・・というのがあるんです。大きくなるとしなくなっちゃいますからね、もったいないなと思うんです。お母さんが困って、「もう!」って言うんじゃなくて、一緒になってユーモラスに、そう目くじら立てずに(笑)、あの頃しかやらないことを、させてあげるのが一番いいかなと。楽しんでほしいなというのがあったんです。


■ 子どもの目線に下がって楽しんで!『ペコルちゃんのたべものでんしゃ』


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ペコルちゃんのたべものでんしゃ
ママのかばんのなかには、何が入っているのかな?
牛乳に、バナナに、にんじんに…。ペコルちゃん、ひっぱりだして並べはじめましたよ。

――『たべものでんしゃ』では、ママが電話をしているすきにペコルちゃんがお買い物袋から次々と色々なものを取り出していきます。見ているだけではらはらします。こんな小さな子の前に卵が出てるなんて!「あらあらあら」といママ達の声が絵本の向こうから聞こえてきそうです。しまいには買い物袋に入っちゃったりして。

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 そう、卵。でも卵パックのカシャカシャっていう音もね、触ってみて初めてこういうものだという感触がわかるでしょうし。子どもって、「これは危ないからやっちゃだめ」とか、「次から触っちゃだめ」というと、触りたくなってやっちゃうんですよね。だから体験するってすごく大事なことなんです。
 うちの子もよくこんな風に袋やダンボールに入ったりしていました。結構大きくなるまでやるんですね。特に男の子はダンボールがあいてるのを置いておくと、そこに入ってテレビを見てたりするんですよ。

―― そういえば自分も・・・。この絵本を読んでいると、自分の子どもの頃の事まで思い出したりして。

 そうなんですよ。自分はやっていたくせに、子どもにはやってないふりして、「やめなさい!」ってね。
 だからこの絵本には「子どもの頃、自分もやったでしょ?」という意味も入っていたりするんです。色々やって失敗して大きくならないと、というのがあって。だめって言われることほど、きっと楽しいんだろうなというのはありますよね。こんなことを推奨しちゃいけないんですけど、絵本だって三角形にして立てて、トンネルにして。その中に小さい人形入れたり、ビー玉コロコロとやったりとかって。それはやりたくなるだろうな、って思っちゃいますよね。

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―― この絵本の題名は『でんしゃごっこ』とありますが、最初のページを開いても乗り物が出てこない。あれ?と思って読んでいくうちに「なるほど!」という展開になって。いつのまにか、ペコルちゃんが電車の運転手さんになっているんですよね。頭が固くなった大人が見ていると、この発想はなかなか思いつかないような気がします。どんな風にアイデアを思いつかれたのでしょうか?

 私も子どもの時、家にあった椅子を全部倒して、その中に入って妹と一緒によく電車ごっこをやりました。いろいろな物を並べて。子どもって物を並べますよね。廊下や畳のへりをずっと、レゴブロックを並べたりだとか。誰でもやってるんじゃないかな?並べたらそれが何かに見えてきて。たまたまできたものからどんどん想像がふくらんでいって遊びが展開していくんです。
 ペコルちゃんも最初から電車を作ろうと思ったわけじゃなくて、色々袋から出して並べているうちにこうなっちゃったんですね。

―― 途中でママが「やめなさい」と言ってしまったら、その展開までは行けない。このお話は、最後にママが子どものやっていることを許容して、子ども目線まで降りてきて初めて成り立っているんですね。

 ペコルちゃんが袋に入っている時、お母さんがその姿を発見して、「あっ、そういうことか。じゃあペコルちゃんは運転手さんね」なんて、そういう発想ができるお母さんでいてほしいなと思うんです。「だめ!」って言いそうになるところを、ちょっと眉毛を下げてね。
 うちの場合でも、上が男の子で下が女の子なんですけど、2人で遊んでいるのを見て、「お母さんだったらこうするよ」って入っていっちゃう。この広告の紙を使ってこうやったらこうなるよとかって。うるさいかもしれないですけど、遊ぶのが結構おもしろかったので。そういう遊び方や親子の雰囲気というのが、自然にお話になったのだと思います。



■ 最後におすのは何スイッチ・・・?『ペコルちゃんのおでかけスイッチ』

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ペコルちゃんのおでかけスイッチ
パパとおでかけのペコルちゃん。電車に乗るときは、カードをぴっ。バスでは、ブザーをぶーっ。見ると必ず押したくなる、いろいろなスイッチです。

―― 今度はこちら『おでかけスイッチ』についてお伺いします。まず、一日の生活の中でこんなに色々なスイッチが出てくるというのが発見です。この子ども目線というのには感心してしまいます。スイッチが登場する舞台も変化していくのですが、やはり「電車」の場面には目がひかれます。この電車はどう見ても○○線ですね(笑)。改札口のICカードの場面もリアルに描かれていて。

 やっぱりわかりますよね。○○線のあのにおいや色が好きなんです。ピンクが。何も見ないで描いているんですけどね。イメージがどうしてもそっくりに・・・。「同じなら同じに描いてください」って言われて「いえ、いえ、別にそんな」って(笑)。
 電車に乗る時のICカードの「ピッ」というのは、昔はなかったですよね。あまり絵本にもなっていないかと。そこは今っぽさを出しています。それから、車掌さんの「降りる方が済んでからご乗車ください」と言う場面は、ものまね上手なお父さんがそっくりに読んでくれるかな、という期待も込めて。芸人さんみたいに面白く言ってくれるかなあ、なんて。


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―― 「駆け込み乗車はおやめください」など色々ある中で、このセリフはさり気なく順番に乗車することを教えられるからいいですよね。

 それもあって「降りる方が済んでから~」にしました。お父さんに言わせようという話もあったんですけど、あまり教育的にしたくないですし。せっかく子どもが楽しんでいるからというのがあるので、車掌さんのセリフにして、ものまねしてくれる人はどうぞしてくださいという感じで。とにかく、どんな風でもこの絵本を通して楽しんでほしいというのが一番です。

―― そうやって色々なスイッチが登場した後、最後はおばあちゃんのお鼻を「ぴんぽーん」。一日中スイッチに目を奪われていた子どもならではの発想ですよね。ああ、そう言われてみればお鼻もスイッチに似てるかも!?

 すかさず、おばあちゃんがペコルちゃんにこちょこちょスイッチを押しかえす。ここで“スイッチごっこ”になるんです。こちょこちょってされると絶対笑っちゃう、笑いのスイッチみたいなものですね。
 このおばあちゃんみたいなユーモアってすごく大事だと思っているんです。笑いの免疫力ってよく言いますけど、家の中で笑わなくなったら、本当におうち自体がいい方向にいかなくなるな、というのはありますね。とりあえず笑っておけば大丈夫、どんな説教されるよりも、子どもってやっぱり一緒に笑っていたいですからね。そう思うんです。

―― さこさんのご家庭でも「笑い」が絶えないそうですね。

 うちの主人はおかしな人なんです(笑)。話をしているとたいがい笑っちゃうんです。だから子どもと4人で食事をしていても、「今日仕事場でこんなことがあったんだけど・・・」という話なんかをおかしな話にしてしまう。それに対して子どもらも「それはどうのこうの」と意見を言ったりするんですけど、最後はゲラゲラ笑ってしまうという感じで。あんまり怖いお父さんじゃなくて。機嫌が悪い時というのをあんまり見たことがないんですね。ただ、やっぱり私がイライラして、申し訳ないけどうちの長男に「ペン」というのは、何回かあって。冷静になって後から「さっきは怒りすぎてごめんね。」と言うと「いや、僕もごめんなさい」となって、最後には笑顔になるんですけど。我が家ではそんな感じなんです。


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 子どもって基本的にはおもしろいですよね、おかしなことをするので。だから、お母さんの計画通りにいかなくて、子どもがハプニングを起こすと、キャーッとなっちゃいますけど、まあ例えばお食事が1時間遅れようが、外食になろうがいいじゃない、というふうに思っていたら、もうちょっと楽しくできるかなと思うんですね。

―― 「ペコルちゃん」シリーズは、何回読んでも楽しめる絵本。だから「もう一回読んで!」言われる事が多いと思います。でも、変な表現かもしれませんが「くり返し読むのが苦にならない」絵本というのは、忙しい時期でもある小さな子を持つ親にとってはとても大きなポイントでもあって。

 「もう一回読んで」と言われる絵本がつくりたい、というのはありますね。
 『おでかけスイッチ』の方には「もういっかいやって」というセリフを最後にいれたせいか、実際に読まれた方から、最後までいくと「もう1回!」という声が多くあがると言ってくださって。スイッチを「ぴっ」、「ぶー」、「ぴんぽーん」って、繰り返し押して遊んでもらえたらいいですね。兄弟がいると、「今度は私が押すの」みたいに取り合いになったりして。実際のスイッチでもそうですよね。うちもいつもお兄ちゃんが先に押しちゃって、下がべそかいたりしていましたからね。絵本だったら、何回でも繰り返せますから。



■ 主人公はペコルちゃん。

――この2作品の主役はもちろんペコルちゃん。ペコルちゃんはどんな子なのでしょう。キャラクター設定みたいな事はされるのでしょうか?

 好奇心旺盛でちょっといたずらもする子ども、それを大人が大きな目で見守って一緒にふざけちゃおうというイメージが最初にあって。そういった所から、この子の見た目を色々考えて、いくつかキャラクターを描いたんです。どちらの方がよりイメージに合っているか、他の方の客観的な意見も聞きながら決定しました。男の子にも女の子にも見えて、ちょっといたずらっ子っぽい感じで、髪型は毛先がくりんとはねていて・・・。それがペコルちゃんです。

―― ペコルちゃんって、名前もすごくかわいいですよね。

 これはね。例えば「カズオ君」とかにしちゃうと日本人、日本という国限定になっちゃう。「○○子ちゃん」だと女の子になっちゃう。あだ名なのか本名なのかわからないような、ちょっと不思議な名前ってないかな・・・と考えてるちょうどその時期に、テレビのニュースから「ペトコパーク」っていう言葉が1週間ぐらいずっと聞こえてきたんですよ。アメリカのメジャーリーグチームの野球場なんですけどね。「ペトコ」ってかわいいなと思ったんです。だから最初は「ペトコちゃん」にしようと。でも「コ」がつくと女の子っぽいね、というので「コペルニクス」のひっくり返しみたいなことで「ペコル」。
 子どもは大人が見ない見方というのをする、いろいろな発想をひっくり返したことをやっちゃうというという部分がコペルニクス(地動説を唱えた人)にも通ずるかなと思って。見方を変えると全然違う風になるのにな、というところを引っかけているというのもあるんですね。


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―― これはさこさんの全作品に共通する事でもあるんですけど、子どものちょっとした仕草やポーズがとても可愛いのです。例えば『おでかけスイッチ』の最後「もういっかいやって」のポーズだとか、『たべものでんしゃ』の袋に入っている時のペコルちゃんの得意気な表情だとか。「そうそう、この格好、この表情、うちの子もやるやる!うちの子にそっくり!」と思ってしまうんですよね。

 「もういっかいやって」のこのポーズ、やりますよね。くすぐられるから腰は引けているんだけど、でもやりたい!っていうね(笑)。どの作品の時も、「うちの子に似てるんです」というのはよく言われます。男の子も、女の子も。だからどっちにも見えるというのは多いですね。中にはコスプレの写真を送ってくださる方もいるんですよ。「ゆっくとすっく」のゆっくみたいに赤いバンダナした写真を送ってくださって。やっぱり親近感を持ってくださるというのは嬉しいですよね。


■ 原画を見せていただきました!

この日はなんと、「ペコルちゃん」シリーズの貴重な原画も見せてくださいました!

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▲絵本の中の色々な場面の原画が次から次へと出てきます。


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▲やはり原画は色が美しい!魅入ってしまいます。

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▲この画像では読めませんが、ボタンの下の「お降りの方はこのボタンを・・・」の説明も細かく書き込まれています。

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▲ペコルちゃんの「もういっかいやって」のポーズがたまりません!右は「おでかけスイッチ」の扉の絵。ここに題名が入ります。

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▲上の扉の絵を近くで見ると、窓から顔が覗いています。更に近づくと・・・お出かけ前のペコルちゃん一家だ!
「卓上ルーペを使って描いています。私もう、お米に南無阿弥陀仏かけるかもと思うんですけどね(笑)。」とさこさん。
実物は本当にぎゅーっと小さいのです。目の位置は裸眼じゃ描けないとのこと。



■ 絵本作家さこももみさんについてお伺いしました!


―― さこももみさんご自身についてもお伺いさせていただきます。絵本作家になられたきっかけというのを教えていただけますか?プロフィールを拝見して、教師をされていたという部分にやはり目がいってしまうのですが。

 教師をしていたのは、2年だけなんです。小学校の図工の先生を2年間していました。
 小さい時からずっと絵を描くのは好きだったんです。だけどそれを職業にするというのは、1回も考えたことがなくて。大学受験の時に、小学校の先生になりたいと他の科目を受けようとしたんですけど、友達から「なんで美術で受けないの?」と言われ、「あ、そうか」と。それがきっかけで試験に向けて絵ばっかり描いているうちに、こんなに面白いんだ!と思うようになったんです。大学に入ってからも、先生じゃなくて絵の方に気持ちが向いたりもして。でも、昔は今みたいに職業がいくつもあって選ぶという感じではなくて、とにかく大学を出たら生きていかなきゃというのがありましたし、もちろん子どもは好きだったので、教育実習などしているうちに美術、図工の先生だったらいいなと思ったんです。小学校の時の図工の先生が大好きだったというのもありましたね。

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―― その後、ご結婚を期に教師を辞められて、広島に行かれたそうですね。

 普通の主婦になったんです。もう引退した感じで。でも本当に絵を描いたり作ったりが好きなので、子どもにパズルなどを作って、それを普通に楽しんでいたんですよ。そうしたら大学の同級生で出版社の編集部に勤めていたお友達が、たまたま広島に出張で来た時にうちに泊まって。パズルを写真に撮って帰って。それがきっかけで、イラストカットの仕事をするようになったんですね。
 絵本を描くというのは、自分では話を作る力もないですし、絵もまだまだだですし、一生やっていくうちに1冊ぐらい話がくれば嬉しいなあ、ぐらいに思っていたんです。そうしたら、くもん出版さんのドリルの表紙の絵を描いた時に、「かわいいな」と思ってくださった編集の方がいて。ドリルの表紙なんかを見ながら、まだ絵本を描いてない人に頼みたいと思っていたらしいですね。その表紙を見て、名前を見て、インターネットで検索したらHPが出て来たので、ということで突然お電話がかかってきて「(絵本は)描いたことありますか?」と言われて「ないです」、「描きませんか?」「描きます」って。

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こんなときってなんていう?おそとであそぼう』『こんなときってなんていう?おうちのなかで
たかてら かよ・作 さこ ももみ・絵 ひかりのくに刊                    
▲出来上がったのが人気シリーズ「こんなときってなんていう?」
実際に経験するシーンを集め、その時何と言ったらいいかを考え覚える赤ちゃん認識絵本。

―― まるで絵本界のシンデレラストーリーのようですね!

 そうなんです。これが5年ぐらい前だったと思うんですけど。絵本ってどうやるんだろう、っていう状態で始まって。最初の打ち合わせの時にこんな内容ですということで文章をいただいて、自分なりに描いたものを見せて、何回か直しをしながら詰めていったという感じでしたね。

―― 「こんなときってなんていう?」のシリーズは、発売当初から話題になっていましたね。その後も続編が出るほど人気が出て。こんなに大反響となったのは驚きだったのでは?

 最初だったので、そういうものだと思ったんですよ(笑)。「かわいい」と言ってくださるけれども、どうも自分はあまのじゃくのせいか、「本当にそう思ってるのかな」という思いもあったりして。でも評判も良くて、「うちの子に似てる」とか色々感想として書いてくださる方が増えて。
 絵本の仕事が初めてだったので、なんだか毎日勉強という感じで。絵本が面白いかどうかっていうのは、客観的には全然わからなかったですね。ラフを描いて出して、「こういう風にした方がいい」と返ってくると、「ああ、なるほどな」といちいち感心して。「ああ、そうかそうか」と思いながら描いていました。でも最初のラフは全く自由に描かせていただいたので、それを面白いと言ってくださったのが自信になって、「頑張ろう!」と思えたというのはありました。これだけの分量をお話に添って好きに描かせてもらうというのは初めてでしたし。絵本は、どこかで出来たらいいなと思っていた仕事だったので。


―― それまでも、読み手として絵本に触れてこられたご経験は?

 私も親に絵本を読んでもらって育ちましたし、子ども達にも幼稚園から低学年ぐらいまでは読み聞かせもしていました。ただ、これを描いた時にはもう子どもたちは大きかったので、ちょっと読まない時期があって。ブランクがあって。「その絵本は読んでなかったよね」というので図書館に通ったりしながら制作していました。

―― その後、創作絵本の方も手掛けられるようになられたんですよね。文章の方というのも「やってみませんか」と依頼されて?

 文章も、と言ってくださったのは、この作品が最初なんです。


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イーノとダイジョブのおはなし もりでみつけたよ』 さこももみ・作 講談社

 メールのやりとりの文章やブログを見ていると、書ける人だからと言ってくださって。口頭でこんなお話で行っていいですかと、編集者さんと話した時に、「双子のきょうだいがおつかいを頼まれるんだけど、寄り道をする話」と言ったんですね。そうしたら、そういう風に短く言えるお話ならたぶん大丈夫です。パパパっと言えると、たぶんうまくいきますよって言ってくださって。励ましてくださったんでしょうけど。それで、書いてみたんです。この原稿はほぼ直しはなかったんですよね。『サンタさん~』のほうも含めて、わりとすんなりいったんです。


■ 作品へのこだわり

―― 今のところ、さこさんの作品というと小さい子に向けたものが多いという印象がありますね。その辺りにこだわりはありますか?

 編集の方が低年齢のお子さんをお持ちの方が多くて。「こんな本が欲しい」というものが、皆さんわりとはっきりあったんです。だから、リクエストから始まるものが多いですね。また、この年代は一番読み聞かせをするという機会が多いですよね。だから、私の作品を最初に目にするのが小さい子向けの本だったという事で、この年齢向けのものが描ける人なんだと思われたというのもあるのでしょうね。

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まんま』 『ねんね』 さこももみ・作 講談社刊
▲「好き嫌い」「おやすみ」のリクエストから生まれた絵本

それから例えばこんな絵本。

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ゆっくのどこどこかくれんぼ』 『すっくのどこどこかくれんぼ
たかてら かよ・作 さこももみ・絵 ひかりのくに刊
▲さりげなく読み始めると、探しきれるまでやめられなくなるやみつき感があるんです!

 この絵本を描いたら、今度は「細かいものが描ける人なんだ」となって。「おお、こわい」と思いましたね(笑)。
 この本は、「下の子に買ったのに小学校高学年の上の子が取り上げて30分も見てた」とか聞きます。あと、うちの父がもう80過ぎなのに「これはいいぞ」とか言って。「俺はばんそうこうが最後までわからなかった。どこだ?」って聞かれたりとか(笑)。結構幅広く楽しんでいただけてます。

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―― この絵本の中でもそうですけど、さこさんの絵本に出てくる子ども達のお洋服一つ一つがすごく可愛くて、お洒落でもあって。今どきのお母さんもその辺りに反応されている方も多いかと思いますね。

 後から読んでも、その絵本を読んでいた時の時代というのを思い返せるようなものがいいなと思っているんです。だから、今を意識した服装にしているというのはありますね。「今度はどんな服を着せようかな」って自分でも楽しんでいます。小さい子たちが何人かいっぱい出てくると、一人一人どの子にもちゃんと平等に着せたいって思っちゃうんですよね。髪型も今度はどうしようかなとか。結構それぞれ考えて描いています。

―― その他にも、食べ物とかお料理、お部屋の中が描かれている絵本もありますね。例えばインテリアだとかお料理だとか、さこさんご自身がお好きな分野というのはあるのでしょうか?

 お料理はそんなに得意分野じゃないんですけど、子どもはやっぱり美味しそうな絵をつまんで食べようとしますよね。「まだお話の内容はわからないけど、食べ物のページになると食べる真似をするんです」という話も聞くので、なるべく美味しそうに描きたいなというのはあります。

 それから食べ物って大事だなと思ったのが、うちの子が幼稚園の時にお弁当をずっと持って行っていたんですけど、下の子が全然泣かないんですよ。他の子はみんな「お母さーん、お母さーん」って泣いてるのに泣かないので、「お母さんいなくても寂しくないの」って聞いたんです。そうしたら「お弁当があるとね、お母さんがいるみたいで寂しくないの」って言ったんです。どへーっと思って(笑)。その話をしたら幼稚園の先生が泣いちゃって。新しく幼稚園に入ってくるお母さん達が「お弁当を作るのは大変だな」って思われるから、入園説明の時にこの話を毎年しています、と今でも言ってました。今はもうその娘が「私は名言をはくからね」なんて言うんですけどね(笑)。
 だから、できれば食事は一緒にしたらいいなというのはあります。他はたいしてね、親から伝えることがないので。食べ物は大事です。生きていかなきゃいけないですからね。


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ふわふわホットケーキ』 さこももみ・作 小学館
▲こんな美味しそうな絵本も!


―― さこさんが絵本を制作される時、ご自身の小さい頃の経験や、子育ての経験、あるいは教師をされていた頃の経験が生きている、という事はありますか?

 教師というのは短い経験でしたので・・・。でも、やはり印象的な子はいますよね。面白い事をする子や言う子、名言をはいたりする子だとか。私の場合は子どもを育てた後だったから、色々見てきたものから絵本が出来た、というのはあるかもしれません。幼稚園の時には、他の子もいっぱい連れて家で遊んでいるのを見ていて、ああ、こんな子もいるんだなというのもありましたし。そういうのって大人だけで暮らしていると、なかなか。もちろんお子さんがいらっしゃらなくても、自分の子ども時代を豊かに過ごされた方は、そのまま本にできるのだと思いますね。

―― 絵を拝見していた時、子どもをじーっと観察する人じゃないと描けない絵なんだろうな・・・と想像していたんです。お話を伺っていると、先生をされていた時も、子育てをされていた時も、絵本を描かれる前からずっと「ああ、この子おもしろいな」という観察がやっぱりお好きだったんだと感じました。そんなストックがたくさんあるといいますか。

 そうかもしれないですね。子どもってお尻とか頭の後ろがこう出っぱっている感じとか、なんてかわいい形してるんだろうとか。今でもやっぱり観察しちゃいますね。今はもう身近に小さな子がいないので、ひとりで地面を見ていたりとか、そういう子を見かけると、怪しいおばさんに見られない程度にじーっと外からにやにやしながら見たりして(笑)。声をかけるとやめちゃうから。飽きないですよね、子どもを見てるとね。動物を見てるのと一緒で。



■ 描いているときは本当に楽しい。

―― それでは、絵本を制作されている時に面白いと感じるのはどんな瞬間ですか?

 絵を描いてる時は、ずっとにやにやしてますよ。「締切が・・・」とか「いつ描けますか」とか「修正ここも、ここも」と言われると、もうがくっとなるんですけど。いざ、描き出すとにやにやしながら描いてる感じはありますね。だから本当にこれだけやってていいよって言われたら、それが一番いいんですけど。まあ家事もありますからね。そうもいかないんですけどね。

―― 絵本作家になられてよかったな、と思われる時はありますか?

 直接感想が聞こえるというのは大きいですね。イラストカットの仕事の時は、描いて納品して出来上がったら、もう終わりっていう感じがあったんですけど、絵本の場合は「この絵本を読んでみてどうだった」とか、「うちの子とそっくりです」とか、「うちの子がこの本でこう言いました」という反応が、今はインターネットのおかげで絵本ナビさんでもそうですけど、感想が見れますよね。そうすると、ああ、描いてよかったなと思います。


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―― 絵本ナビのレビューのほうも楽しみに読んでくださっているんですね!

 そうですね。「ああ、こういうふうに読んだ方がいるんだ」と、逆に思いもよらなかったこともあったりするので。あとは、「やっぱり子どもはここを見つけてくれたんだな」とかね。テントウ虫がいっぱいるとかいうのを喜んでくれるお子さんがいたり、あそこにあれがあったとかいうのを見つけてくださると、「絵を読んでくださってるんだな」と実感できて嬉しいですね。(他の作家の)皆さんも読んでいるんじゃないでしょうか。

―― 絵本の読者の方に直接会われるという機会もあるんですか?

 地元の方で読み聞かせをしてくださいという事が、時々あるんですけど。子どもがわーっと寄ってきて、それまでお母さんに「静かにしなさい」と言われてた子が、しーんとしてこちらを見てくれるのが、すごく可愛くて。「イーノとダイジョブ」を読んだ時には、前にいた女の子が「次は何かな」って見ると、りんごだと思ったら帽子だったりっていうね。「次は何々かな」って言うと、「違う、きっと違う」って言ってたりとか。入り込んでくれているのが嬉しいですよね。ああ、子どもはやっぱりどの子も絵本が好きなんだなあっていうのがあって。

 絵本を読んでもらうというのは、ある程度の年齢になっても好きですよね。専門学校にちょっとイラストの授業をしに行っているんですけど、二十歳ぐらいの子もすごく喜ぶんです。読むと、また先生なんか持って来て読んで、なんて言って。幼稚園の時や、お母さんが読んでくれたとか、その絵本がうちにある、ということで思い出すみたいですね。「えー、こんな大きな子が」と思うけど、あたたかいものを思い出すのかな、という気がしますね。

 お母さん自身も、今の世代のお母さんはきっと小さい頃読んでもらって育っているでしょうから、自分の小さい頃のこともやっぱり思いだすのでしょうね。



■ 絵本ナビ読者へのメッセージ

―― 最後に絵本ナビ読者の方に向けて、絵本との触れ合い方や楽しみ方などのメッセージをお願いできますか?

 子どもと向かい合っちゃうと、どうしても親って上から目線になっちゃうんですけど、絵本を読む時って、ひざの上だったり、お布団の中だったり、一緒の方向を見ていますよね。顔は見えないけれども、同じものを二人で見るという。あれがすごく絵本の素敵なところだなと思うんですよ。向かいあっちゃうと、どうしても何か言わなきゃ、という雰囲気になるじゃないですか。親らしくしなきゃと思っちゃう。でもこの姿勢だと同じものを二人で楽しむっていう、そういう感じがいいんです。

 読み聞かせの方達に読んでもらうのは、自分では選ばない本に出会うきっかけにもなるし、いいと思うんです。でも、身近な親御さんが読んであげるなら、自分だけに読んでくれている感じがどっぷり味わえたほうがいいと思いますね。同じ方向を見るって、素敵だなと思うんです。「絵本読んであげるよ」っていうと、もう決まりきったようにひざの上に来るっていう風なね。ああいうかわいい時代はそんなに長くは続かないので(笑)。例えば長男がいて、下に赤ちゃんが生まれると、ひざを取られちゃうし。それをしたくてもなかなか2人いっぺんにはひざに乗れないでしょうしね。だから片一方が寝てる時は片一方にそうしてあげれば、一番いいのかもしれないんですけど。本当にそれができる時間というのは、大事な時間だと思いますね。


―― ありがとうございました!

↓さこももみさんの素敵な直筆メッセージをご紹介します!

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最後に記念にぱちり。
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「読み聞かせの最中には、是非お子さんのこちょこちょスイッチも入れてみてくださいね!」
(さこももみさんより)

絵本作家さんだと忘れてしまいそうになるほど、気さくな雰囲気のさこももみさん。
ユーモアたっぷりに、ご家庭のお話から制作のことまで語ってくださいました。
思わず「今度はこんな絵本を描いて!」と頼みたくなってしまう編集者の気持ちもわかるよう!?
子どもの目線を忘れない大人の方というのは本当に素敵だな、と改めて思いました!


2010年05月11日

【新企画】レビューコンテスト開催中!レビュー大募集!

期間中、対象作品はレビュー掲載時のポイントがもれなく2倍、最優秀レビューに選ばれると著者があなたやお子さんの似顔絵入りの色紙(まさに家宝!)を描いてくれるというスペシャル企画です。

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特別企画『しごとば』『続・しごとば』レビューコンテスト

特別企画『しごとば』『続・しごとば』レビューコンテスト


2010年04月21日

「ゴーゴー・ミッフィー展」松屋銀座×絵本ナビ企画
ゴーゴー・ミッフィー展開催記念ストラッププレゼント!

ミッフィー誕生55周年を記念した大規模な展覧会「ゴーゴー・ミッフィー展」が開催されます。

人気絵本8作の原画やスケッチ200点が日本初公開!また、展覧会限定のオリジナル・グッズも数多く販売されます。ミッフィーファンなら見逃せませんね。

2010年4月22日(木)より、全国巡回の皮切りとなるのが東京松屋銀座8階大催事場です。
その松屋銀座さんが、絵本ナビユーザーの方へ向けて、素敵な特典をご用意してくださいました!

「ゴーゴー・ミッフィー展」開催期間中【2010年4月22日(木)~5月10日(月)】に、会場入り口受付にて「絵本ナビの特集ぺージを見た」と言うだけで、なんと先着100名の方に「ゴーゴー・ミッフィー展開催記念ストラップ」をプレゼント!!
お近くの方は、是非この機会にお立ち寄りくださいね。

「ゴーゴー・ミッフィー展開催記念ストラップ」
※招待券をご利用の方と中学生以下は対象外とさせていただきます。
松屋銀座 ゴーゴー・ミッフィー展 の詳細はこちら

ゴーゴー・ミッフィー展 の詳細はこちら

絵本ナビ×講談社 ミッフィー誕生55周年記念特設ページ
絵本ナビ×講談社 ミッフィー誕生55周年記念特設ページ

Illustrations Dick Bruna © copyright Mercis bv,1953-2010 www.miffy.com

2010年04月20日

絵本作家たかいよしかずさんにインタビューしました!

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 明治製菓「マーブルチョコ」キャラクターの「マーブルわんちゃん」など、数多くのキャラクターデザインを手がけられるとともに、「怪談レストラン」シリーズの挿絵や絵本「おはなし・くろくま」シリーズの創作など幅広く活躍されているたかいよしかずさん。ミキハウスさんの小さなお子さんから楽しめる絵本のディレクションも、数多く手がけられてきたそうです。
 その中から、今回はたかいよしかずさんがイラストも手がけられている「いろいろしかけえほん」シリーズ「わくわくとびだすえほん」シリーズ「とびだすなりきりえほん」シリーズのお話を中心にお伺いしました!

 普段は大阪で活動されているたかいさん。忙しいスケジュールの合間をぬっての取材にも関わらず、創作活動について、ご自身について、とてもパワフルで楽しいお話を沢山してくださいました。それもそのはず、たかいさんの名刺の肩書きには「HAPPY CREATOR(ハッピークリエイター)」なる文字が!人を楽しませることにかけてはプロなんです。その辺りの話も含めてお楽しみください!


たかいよしかず
明治製菓「マーブルチョコ」キャラクターの「マーブルわんちゃん」、大阪・ミナミの千日前商店街のマスコットキャラクター「みにゃみん」など多くのキャラクターデザインを手がけるとともに、イラストレーターとしても活躍中。挿し絵に、「怪談レストラン」シリーズ(童心社)、絵本にとびだす絵本『きょうりゅう』『ゆうえんち』『たべもの』(ミキハウス)、『こえがきこえる ワンワンおめん』「シール絵本シリーズ」(ポプラ社)、『へなちょこポヨヨンおえかきブック』(講談社)、「おはなし・くろくま」シリーズ(くもん出版)など多数。



■ 一緒につくっていくのが楽しい「しかけえほん」!


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「いろいろしかけえほん」シリーズ 
わくわく サーカス』『どこどこ どうぶつ』 たかいよしかず 作/絵 三起商行(ミキハウス)
▲ひっぱったり、まわしたり、いろいろなしかけが登場します。丈夫なボードブックとかわいいどうぶつたちが小さい子に嬉しいシリーズです。

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「わくわくとびだすえほん」シリーズ
きょうりゅう』『ゆうえんち』『たべもの』  たかいよしかず 作/絵 三起商行(ミキハウス)
▲ページをめくると、子どもたちの大好きな恐竜・乗り物・食べ物がダイナミックに飛び出します!


―― いろいろなタイプのしかけ絵本。どれも小さな子でも楽しめる、シンプルだけど驚かせてくれるしかけ、元気になるような絵が特徴ですね。こういったしかけ絵本のアイディアというのは、どのように考えられていくんですか?

 基本的にはクライアントさんありきなんです。まずミキハウスさんの担当の方から、「今度、とびだす絵本を出したいんです」とか、「こういう動きを使って何かできませんか?」という様なお話をお聞きします。本によって違うんですけど、担当者の方から例えば「動物のテーマでこんな感じでいきたいです」など、具体的にアイディアがある場合もあるし、「テーマはあるけどあとは好きに考えてください」と言われる場合もあります。色々ですね。もし、ある程度アイディアがあったとしても、僕の方で「こんなんどうですか。」と言って、そこにどんどんプラスさせて頂いて、そうやって一番いいものを出しましょう、という感じです。

 僕は、普段からとびだす絵本とかしかけ絵本がすごい好きなんです。動くとか、飛び出すとか、すごく楽しいですよね。おはなし絵本というのも勿論楽しいですけど、そこに動きがつくっていうのは、やっぱり子どもたちの興味を引くと思うんです。


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―― つくっている時は「子どもたちを驚かせたい」と思われながら?

 そうですね。でも、仕事をしていて一番思うのは、まず担当の方に喜んでもらいたい。そこなんです。きっとそれが、この本を見てくれる方にも伝わるやろう、という思いではやってますね。あとは、自分は何が面白いかっていうことですよね。

(ミキハウス編集者の方より)
 たかいさんは、すごくイマジネーションが豊富。最初に私たちから提案させていただきますが、「こういうほうが面白いですよ」っていう発想は、本当に沢山持っていらっしゃって。そういった意味では制作させていただく中で、本当にどんどん、どんどん、たかいさんワールド満載の世界になっていくというのが、ご一緒しての感想です。



―― 基本的なことをお伺いしてしまいますが、しかけ絵本をつくられる時、「しかけ」と「絵」というのは同時に考えられるのですか?

 例えば、「じゃあ、飛び出す絵本作りましょう」ということになった時に、「どんな物を飛び出させれば面白いかな」ということを、まず最初に自分の頭の中で考えるんですよ。要するに机の上ですね。でも、机の上で考えることってやっぱり限界があるので、「あ、もうこれ以上自分の頭の中の物は全部出した」となったところで、やっと外に出て市場調査をしたり、いろんな物を見て「あ、こんな手もあるんや、そうか、そうか」と。また帰ってきて、もっとどんどん、プラスしていけないかな、と考える。

 例えば、食べ物だったら「ラーメン食べさせたいな」って思うんですね。


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 ▲そのラーメンを食べているしかけは、音が聞こえてきそうなくらい!印象的。

 そのラーメンを食べるしかけがどうしても作りたい、ズズーってすすって。こんな面白いのないよなって。でもね、ページをもどすとまた口からバーッって戻るんです(笑)。そこが、なんかおかしくてね。
 だから最初に、「こんなふうに動いたらいいな」というイメージが、頭の中にある程度あって。もしサンプルで同じような動きのあるものがあれば、「この構造を使ってこういうことできませんか」と相談をさせてもらいながら。なかなかそこでうまく動かない事もあるんですよね。僕の頭の中では「もっとこんなふうに動いてほしい」という思いがあって。
 結局、しかけ作りを専門にされる方に入ってもらえて、その思いをミキハウスさんを通して伝えて頂けたので、とても楽しいものができたと思います。残念ながら僕はその方とお会いする機会はなかったんですけどね。


―― 自分で考えて、それを自分でつくっていく・・・という制作過程とはまた全然違うのがしかけ絵本なんですね。色々な人の手や意見が入っていって。大変ではないですか?

 きっと、そこが一番面白いのだと思います。僕は、本を作る時いつでも、担当の方との「勝負や」と思ってるんですよ。どっちが面白いものを作れるかとか、色んなことを考えられるかというね。それはどこの出版社でも同じで、その担当の方と「勝負しましょう」というスタンスで挑むんです。僕が「こっちの方が面白くないですか」というと、向こうから「こっちの方がもっと面白いと思います」というのが出て、で、「本当、そうやな」と思ったら、それを形にして行く。それでもね、やっぱり自分のほうが面白いと思ったら、「こっちの方が面白いと思うんですけど」ってしつこく、ずーっと言い続けるんですよ(笑)。

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 だから僕の場合、基本は作家ではないと思っているんです。半分デザイナーで、半分イラストレーターっていうスタンスで仕事に向き合うんですね。作家さんといえば、「自分はこれが描けます、この世界はどうですか」というのがあって、合う人がいると「じゃ、お仕事しましょう」となる。デザイナーは、クライアントさんありき。クライアントさんの要望をどれだけ聞いて、それを自分の中に取り込んで、形にできるかっていうところが一番の基本なので、コミュニケーションがないと絶対成り立たない世界なんですね。そこでいろんなことお聞きして。クライアントさんが言うことと、消費者の思ってることとは、相反することが結構多いんです。だから「じゃあ、今回は両方の意見を聞いて、このへんで線を引きますよ」っていう、線引きをできる人がデザイナーになってほしいなと思うし、僕もそうありたいと思っています。どっちの目線にも、どっちの立場にも立てる、そんなふうに思いながら、仕事はしてます。



■ ほかの人の立場にたてる絵本

―― この「とびだすなりきりえほん」シリーズというのがまた面白いですよね。

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「とびだすなりきりえほん」シリーズ
『どうぶつごっこ』『にんきものごっこ』
▲開くとお面になっていて、真ん中に穴が開いています。そこから顔を出すと・・・。

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▲犬にへんしん!              ▲海賊にへんしん!
※顔が大きくはみだしているのは、子どもサイズだからです。

 これも「お面を使って遊べるものを作りたい」「男の子バージョン、女の子バージョンがほしい」というお話があったんです。それで「こんなものが、飛び出したら面白いんじゃないですか」とか、いろいろお話させてもらって。
 これ、すごく面白いんですよね(笑)。小さい子がこうやって顔を出して。顔を出している方は、どうなっているか見えないんですけどね。鏡でうつしてみるとか、だれかにやって見せてもらうとか。やってもらったりすると、すごく盛り上がるんですよ。


―― 色々な人や動物になりきれるっていうのが、子どもたちにも喜ばれそう!

 変身できるって、子どもにとってすごく楽しいですよね。僕は、よく着ぐるみの絵とかも描きますが、そういうのって絶対楽しい。例えば子どもが怪獣をかぶって、お父さん、お母さんに、「自分は怪獣だー」って言って。もう、そうすると子どもの方が強いですよね。「お前たちやっつけてやる、えい、えい」とか言って。そうやってなりきれるっていうことで、色々な人の立場に立てるようになれるというか。それが怪獣の立場であったり人間の立場であったり、ちょっとでも絵本を通してそういうことを感じてもらえればいいなと思うんです。

 いつも、子どもたちに何を伝えたいのか、考えているんですが、その中の一つとして、相手の気持ちが分かる人になってほしいなっていうのは、すごく思うんです。例えば、今のいじめの問題にしても、もし自分がされて嫌なことは、やっぱり人にはしないとか、それが基本。そういう人間としての一番の大切なところが、僕の絵を通して伝えられたらなって思ってます。それで、「なりきる」ということで、その人の気持ちに立てるっていう、入り口になってくれるかもしれないということですね。


―― 動物の気持ちになってみる、というのも。

 動物の気持ち。僕は、そういう気持ちになるとね、お肉食べれなくなっちゃいます(笑)。昔、水族館に行ってね、エイにさわったんですよ。そしたらすごく可愛くて、もうそれからエイヒレ食べるのやめよ、と思ったんで、もうお肉大好きなんで、ウシもブタも触らんとこ、と思ってます(笑)。



■ 肩書きは「HAPPY CREATOR」!

―― 冒頭でも少し触れましたが、たかいさんの名刺の肩書きには「HAPPY CREATOR(ハッピークリエイター)」の文字が!

 つかみはこれでOKなんです(笑)。最初に、パッと出すと、「え、HAPPY CREATORって、なんですか?」となるんです。元々会社に入った時は、「イラストレーター」という肩書きを名乗っていたんです。でもそのうちに、今僕のやりたいのは単にイラストを描くことではなくって、それを通していろんな方を楽しい気持ちにさせられる、もっともっといろんな事をしていきたいなと思って。その後「ライフデザイナー」という肩書きを経て、現在の「HAPPY CREATOR」になりました。絵本やデザインだけでなく、更に、映画を作ったり、美術館をつくったり・・・いろんなことをしたいという気持ちがあるんです。


―― いろいろなジャンルに渡って活躍されてるのも、すごく納得ができますね。絵本でも、やっぱりたかいさんの作品というと、元気になれる色を使われているイメージがあるんです。そのあたりもこだわられているんですか?

 好きな色、というのはありますね。実は、昨日たまたま資料を探していたら、古いノートが出てきたんです。そこに、「好きな色の組み合わせ」と書いてあって、色のチップが4枚貼ってあったんです。それがまさに、「おはなし・くろくま」シリーズの表紙の色だったんですよ。


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▲かわいくて好奇心いっぱいの“くろくまくん”が活躍する「おはなし・くろくま」シリーズくもん出版)。

 20年前のノートだったんです。すっかり忘れていたんですけど、「変わってへんなー」と思って。愕然となったけど、「あ、やっぱり芯は一緒なんやな」とも思って。変わらないといけないところと、変わってはいけないところが、ちゃんと自分の中に共存できてたんかなって、ちょっとだけ思えたんです。

 特に、ミキハウスさんの本の場合は、ミキハウスさん自体が子供服のメーカーさんで、まさに赤がメインカラーだし、元気な色使いですよね。たまたまそれが、ぼくの好きな色と、ピタッと一致してたというところも大きいですよね。
 自分の中では、そうやって派手な原色を使う自分もいて、一方で渋い色も使える自分もおったらええなって、思うんですけど、なかなか渋い自分は出てこないんです。もっと考えてやれば出せるはずやってすごく思うのに、結局気が付いたら、カラフルな色になってるんですよ。「おはなし・くろくま」シリーズは、とりあえずカラフルに見えてても、2色しか使っていないんです。敢えて雰囲気はいつもと変えてみたんです。


■ 作家たかいよしかずさんの原点はウルトラマンの怪獣!?

たかいよしかずさんご自身についても少しお伺いしてみました。

―― 子ども達を楽しませるために、普段から、リサーチをしたり観察したり・・・ということはあるんですか?

 あんまりないんですよね。子どもが何が楽しいと思ってるかというのを知るのは、絶対大切なことやなって思います。でも会社で仕事していたら、なかなか機会ないし、じゃあどうやってその話を聞くのか、子どもさんのいるお宅に行って話を聞くとか、電話して聞くとか・・・。たまに小学生ぐらいの子どもさん集めて、図書館とかでワークショップを頼まれるんですよ。その時に、子どもたちと一緒に紙工作とかやって、子どもがどうするのかなとかね、どこまで想像力が発揮できてんのかなとか、見ながら。自分も楽しいからやってるんですけど、やりながら、観察はしてますかね。あと、うちの奥さんが保育所にアルバイトに行っていたり、子どもの絵画教室をやっているので、よく話を聞いたりしてます。


―― そうすると、ご自身が子ども時代の目線にもどって作品をつくる・・・という部分が大きいのでしょうか?

 大きいですね。僕は、子どもの頃、めっちゃとんでもない子どもだったんです。大人しくはなかったですね。虫とりがすごい好きで。うちの近所は、お墓にクヌギの木がいっぱい生えてたんですよ。で、学校終わるといつもお墓に行って。でも、そのクヌギの木が生えているところって、墓石が並んでいる奥なんです。で、その低い段のお墓をかこっている石にパッと飛び乗って、「すいません、すいません」って言いながら、木にパッて飛びついてワーって登って、木の穴に手つっこんで、クワガタムシ捕まえたりとかしてるような子どもで。


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 僕ね、小学校のたぶん2年くらいの時に、将来は昆虫博士か怪獣博士になろうと思っていたんです。僕の今やってる全ての作品の原点は、ウルトラマンの怪獣やなと思ってます。一度だけ、グループ展に展示するための作品がつくれなくなった時があったんです。色々悩んだり、試行錯誤したり。映画を観に行ったり、他の人の作品を見に行ったり。でも、なかなか進まなくて。その時、自分は何が原点にあったのか、よく考えたんです。そしたら「あ、ウルトラマンの怪獣や」と気が付いて。そこからは早かったんです。

 そういう経験もあって、今やってる仕事は全て、子どもの時の体験がベースやなって、思います。だから、今までやってきたことは、何一つ無駄なことはなかったなって思えるんです。


―― もう子ども時代からのずっとが、今の仕事につながってるという感じでしょうか?

 もう、ずっとずっと続いてますね。幼稚園のころから絵を描くのが好きで、でも、もう既に、同じクラスに自分よりも絵の描くのがうまい子がいる、っていうのを知ってたんですよ。もう、こいつには勝てない、自分が絶対一番とは思えなくて。既に挫折なんですよ。そしたら違う小学校に行ったんで「やったー」と思っていたら、小学校にもまた自分よりも絵がうまい子がおるんですよ、「あ、こいつにも勝たれへん」って。その子に、ノート持っていって「怪獣の絵描いて」って言って、よく描いてもらってたんですけどね。でも自分は、将来漫画家になりたいな、って思っていたりして。本当に、今やってる仕事は、天職と思いますね。今まで自分の中では自分が一番じゃなくて、自分も一番になりたいなって思って、仕事をやってます。絵のうまい人は山のようにいるけど、その中でこういう仕事につけて、ずっと続けていけられているのは、すごくありがたいことだと思っています。


■ きっかけは教育実習で・・・

―― 絵本作家になりたいと思われたきっかけ、というのはあったのでしょうか?

 きっかけは、大学の4回生の時に、母校の中学校に教育実習に行ったときです。先生になるつもりはなかったんですけど、行く以上は、「こんなこと教えてあげたいな」っていうことを作っていって。そしたら先生には「いや、学校のカリキュラムがあるから、それに沿ってくださいね。人物デッサン」と言われて。「人物デッサン、僕一番嫌なやつやんか」って思いながら。

 でも最後の日に、その頃友達と作っていたアニメーションを生徒に見せてあげたりして、「今学校で教えてもらってることはほんの一部のことで、美術っていう世界には、もっといろんなことが沢山あるんですよ」っていうことを、伝えたんです。その時に、美術の先生だったらできそうかなって思ったんです。でも、今の中学校は、生活指導のできる人が先生になるべきなんだと思いました。ただ、自分の中には、子どもたちに伝えたいことがある気がしたんですよ。じゃあ、何が伝えたいかなって、どうやって伝えられるのかなって思った時に、「それなら僕は、将来絵本作家になって、子どもたちに絵本を通していろんなことを伝えてあげられたらいいな」と、その時決めたんです。

 だからって、学校を卒業してすぐに絵本作家になれるわけではないので、イラストレーター、デザイナー、キャラクターデザイナーといろいろ仕事をしてきました。そこから段々と縁があって、幼年雑誌などのお仕事をさせてもらえるようになって。そこがスタートですね。


―― ミキハウスさんの本のディレクションもたくさん手がけられるようになったとお伺いしました。

 ちょっとずつ声がかかるようになって、だんだん絵本界の方向に来たときに、今から多分14~15年ぐらい前ですかね、ミキハウスさんのお仕事をスタートさせてもらって。この10何年で、多分50冊以上は絵本を作らせてもらっているんですよ。ミキハウスさんの場合は、音の出る歌の絵本なんかを沢山出させてもらってるんですけど、それは僕が絵を描いてるのではなくて、もともとうちの会社のデザイナーさんが作ったキャラクターが、ミキハウスさんの出版の方のキャラクターに決まって、ラフは僕が担当の方と打ち合わせして全部描いて「これ、どうですか」「OKです」、と決まればそれをイラストを描いていただく方に「このまま絵を描いてください」って言って。僕がディレクションを全部やってたんです。

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 本当にそこでいろんなノウハウも勉強させてもらったし、ちょっとずつ自分のオリジナルなキャラクターやイラストでお仕事がいただけるようになって。その頃、マーブルわんちゃんのキャラクターや他の仕事が一斉にスタートした感じでしたね。どんだけ仕事しててん、すごいやん、そのときの僕って、って(笑)。


※たかいさんがディレクションされた最新作品は「マーブルくんのいちにち」という布えほん!遊びながらあいさつやしつけを学べてしまう、充実した内容になっています。こちら>>>


■ 小学生に大人気となった「怪談レストラン」シリーズ

―― たかいよしかずさんといえば、「怪談レストラン」を思い浮かべる小学生のファンもたくさんいるでしょうね!

 『怪談レストラン』は、会社に電話がかかってきたんです。「童心社といいますが、今度怪談話の本を出したいので挿絵の絵をお願いしたいんです」と。「すいません、僕、怖い絵は描けないんです。かわいい絵だったら描けるんですけど。」と言って一瞬断ろうとしたんですよ。そうしたら、担当の方が「いや、たかいさんの作品は絵を見て知ってるんです。お話が怖いので、挿絵は怖いような、かわいいような絵が希望なのでお願いしたいと思いました。」と言われて。それを聞いて、「大丈夫です、やります」と自信満々に答えました。自身満々に答えたものの、原稿を送ってもらって読んだら、おばけよりも人間がいっぱい出てくるんですよね。「しまったー」と思いました。人間描くのはあまり得意ではなかったもので。


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「怪談レストラン」シリーズ童心社)。結構怖い話が収録されていますが、たかいさんの絵がほっとさせてくれますね。
※「怪談レストラン」シリーズの挿絵は、たかいよしかずさんと、かとうくみこさんが担当されています。

 なので最初は、人間を描く練習を沢山したり、おばけが出そうな場所を探したり。そしたら、本当に偶然に目の前にいかにもな廃墟が現れたことがあって・・・。それは本当に怖くて、でも写真は撮って。結局写真には何もうつってなかったんですけど、自分が小学生の時に感じた怖いという気持ちが体の中にがーんと入ったんです。だからスタートできたんだと思いますね。仕事を始めるにあたって、自分がどれだけ気持ちを入れられるかというのは大切なところやなって思いました。
 僕はデザイナーなので、このシリーズのデザインも任せてもらいました。最初は全5巻だったんです。「表紙は全部真っ黒にしてください」と言われたんですけど、「それは怖すぎるからダメじゃないですかね」と。それで今のカラフルな表紙になりました。今では全50巻プラス別冊3巻が出てきます。


■ 最後に・・・

―― 絵本作家になられて「ああ、楽しいな」と思う瞬間だったり、「よかったな」と思う瞬間というのはありますか?

 僕は毎年神戸でずっと個展をやっていたんです。14~5年間。震災の前からずっとやっていて、震災が起きた前の年にもたくさんお客さんに来ていただいて。
 
 震災の後、僕には何ができるのかって考えたんです。そんな時、友達のイラストレーターが大阪で個展をしたので見に行ったら、そこでその子が作ったポストカードを売っていて。その売り上げ金は全部震災の復興の為の寄付に回します、と書いてあったんです。「あっ、これやったらできるやん」と思って、僕も始めたんです。僕一人の力では知れてるので、知り合いのイラストレーターの人に声をかけさせてもらって。そしたら、そこからどんどん、どんどん紹介してもらって、ものすごい数が会社に来たんです。それを、いろんな人が個展やってる会場や、知り合いのギャラリーさんに行って「これ置かせてください」とか頼んで。集めたお金を、じゃあどこに寄付するのが一番いいかなって考えたときに、やっぱり子どもたちやなと思ったので、「あしなが育英会」というところが子どものためのケアハウス、レインボーハウスというのを建てたいというのが掲載されていたので、そこに全部寄付したんです。なんぼ寄付したかもう全然覚えてないですけど。
 
 本当に沢山の人が「使ってください」って言って送ってくれたんです。長新太さんからもポストカードが届いたときには、もうびっくりしたんですよ。「長新太さんから来たよ。どっからこんな話回っていったんやろ?」と思ってね。黒井健さんが「私はポストカード作ってないんで、テレホンカードを送ります」って言って送っていただいて、本当に嬉しかったですね。こんな自分でも、自分のできることで人の役に立つことがあるんやと思ったら、この仕事についてよかったなと思いました。

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 あと、実はうちの会社で今年新入社員が二人いるんですけど、そのうちの一人の子が、小学校6年のときに初めて僕の作品をその神戸で見て、将来私はこういう仕事に就きたいと思いましたって言うんです。そんな子がうちの会社に就職するんですよ。「うわぁ、やっぱり個展は止めたらあかんねやな」って思ったし、そういう人たちとしゃべったときに、「ああ、この仕事やっててよかったな」って、すごく思います。でも、同時に責任というものもすごく感じますね。


――  最後に、絵本ナビの読者に向けて、メッセージをお願いできますか?

 子ども達には何でも体験させてあげてほしいですね。その入り口が絵本で、あ、こんな世界もあるんやったら、じゃあ今度、実際そんな所に行こうとか。例えば昆虫の博物館みたいなお話を読んだら、そういう所に行ってみようかとか、そういう入り口として絵本があれば、すごいいいと思います。

 僕は実は小学校のときには、親から「本読め、本読め」ってずっと言われてたけど、親が言う本って面白くないんですよ。何か歴史の本とかね。でも、小学校の5、6年生の担任の先生が美術大学出の先生で、図画・工作にすごい力入れていて、その先生がすごい好きで。その先生がクラスに読書表というのを貼ったんです。「本を1冊ずつ読んだら、このグラフを1個ずつ塗りなさいね」と言って。僕は、負けん気だけは強かったから、「えっ、じゃあ今まで本あまり読んでなかったけど、取りあえず読んでみよか」と思って、図書室に初めて行ったら、SFの本とか、面白い本がいっぱいあったんですよ。初めて「こんな本も学校の図書室にはあんねや」って知ったんです。そこから本が好きになって、でも学校の図書室は、自分が好きそうな本は大体読み尽くしたから、じゃあもう図書館に行こうと思って、家から自転車で二駅ぐらい向こうの市立の大きい図書館まで行ったりしてね。

 そういう経験もあるから、図書館はやっぱり親が安心して子どもを遊びに行かせられる場所であったらいいんちゃうかなと思ったんです。図書館で個展させてくれるというお話があったので、「子どもが本を読む部屋に作品飾らせて」って言ったんです。今まで図書館に来たことのない子どもが、僕の作品が見たいがために来て、ちょっと騒がしくなるかもしれへんけど、ぐるぐるして「あ、作品の横にこんな本もあるやん」と思って、手にとって見てくれたら、そこからまず1歩をスタートできるんちゃうかなと思ったんです。

 そんな風に、僕みたいなきっかけになった子もおったら、それが一番いいことやなと思って。本や絵本を読むことで、その世界にどれだけ浸れるかとか、人の気持ちに立てるかとか、そういう入り口であってほしいなって思います。


―― ありがとうございました!

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▲最後に記念にぱちり。


 ここではお伝えきれなかったのが残念なのですが、本当はもっともっと色々な話をしてくださったのです。今まで出会って感動した方の話や、イラストレーターとしてのお仕事の話、高校や大学で授業をされた時の話などなど・・・。出会いや発見をとても大事されているたかいよしかずさんならではのエピソードの数々に惹きこまれてしまい、あっという間に時間が経ってしまったのでした。
 その豊富なイマジネーションとパワーで、今度はどんな絵本やキャラクターを生み出してくれるのでしょう、楽しみですね!

2010年04月14日

「MOEができるまで」
MOE編集部におじゃましました!

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絵本とキャラクターの月刊誌MOE
2009年に創刊30周年を迎えられました。
絵本ナビでも新刊&バックナンバーを取り扱っているので、ご存知の方も多いですよね。

絵本を軸にして、関連する情報が満載の絵本専門誌です。人気絵本・人気キャラクターをテーマにした巻頭大特集のページは徹底した取材と豊富なビジュアルが魅力!
「絵本の世界って、こんなに面白くて奥深いものなんだ・・・」と気が付かせてくれる大事な存在です。
また、アート・映画・旅・ハンドメイド雑貨・スイーツなど、旬の情報もたっぷり詰め込まれています。絵本ファンはもちろん、詳しくなくても気軽に楽しめるようになっています。絵本の世界を身近に感じさせてくれる、というのも大きな特徴なのかもしれませんね。


そんな雑誌MOEを、毎月生み出しているのが「MOE編集部」。
今回、何と月刊MOE副編集長の森綾子さんにご協力いただき、お邪魔させて頂けることになりました!

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▲静かな熱気にあふれる編集部。

そこかしこに珍しい資料や絵本がたくさん!目移りしてしまいます。
ずっと愛読してきたMOEの裏側をのぞくことができる・・・と、冷めやらぬ興奮を抑えつつ、
色々なお話をお伺いしてきました。お楽しみください。


■ 月刊MOEのできるまで                


取材させて頂いたのは、ちょうど2010年4月号が発売されたばかり。
この時期に主に取りかかっていたのは、5月号、6月号だそうです。
5月号はすでに入稿が終わり、最終段階の作業が進行中、6月号では原稿依頼や取材の真っ最中、更に7月号に向けて取材の為に海外出張中!と並行して作業が進められていました。
この時点で9月号位までは、大きなテーマは決定しているそうで、そんな風に常に同時進行で作業が進められているのですね。

今回は、2010年4月号を中心に、完成までの様子をわかりやすく教えて頂きました!

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▲巻頭大特集は「リサとガスパール&ペネロペのすべて」。
表紙の絵は、「リサとガスパール」と「ペネロペ」が一緒に登場している貴重な3ショットです!

中を開いていくと、
作者アン&ゲオルグ夫妻のパリの新しいアトリエを訪問した取材記事や、「リサとガスパール」「ペネロペ」それぞれのキャラクターの紹介や徹底比較、絵本の舞台となるパリの町の紹介や、最新グッズなどなど・・・知りたい!と思っていた情報が次から次へと続き、絵本ファンにはたまらない内容となっています!

それでは、どうやってその内容が決まっていくのでしょう?
森さんに、他では見られない貴重な資料などを見せて頂きながら、完成していくまでの工程や、雰囲気などをお伺いしました。


★企画会議


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「毎月企画会議というのが開かれるんです。」と森さん。
編集部全員が、それぞれ一冊まるごと「どんな構成がいいだろう」と、内容を考えて企画書を作成し、提示するそうなのです。
  
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▲特別に4月号「リサとガスパール&ペネロペ特集号」に提案された企画書を見せて頂きました!

こんな風に、巻頭大特集から関連特集、連載記事までひととおり考えます。 
ちなみに、編集部の人数は現在7人。
(その他に、ほぼ毎月仕事をお願いするカメラマンさん、ライターさん、デザイナーさんもそれぞれ4~5人いらっしゃるそうです。)
各自がそれぞれ情報を収集し、その時期にぴったりな内容を企画したり、
得意分野のジャンルで企画したりします。
   
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★企画が決定!
  
基本的には、採用された企画を考えた人がその特集の担当となり、一人(!)で進めていくのだそうです。もちろん、特集内容に合わせてライターさんやカメラマンさん、デザイナーさん等々に依頼して、取材や撮影などの準備を進めていきます。

特集が、とても流れのある内容となっているのは、一人の方が全て企画されているからこそなのかもしれませんね。

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▲こちらはMOE4月号の「台割(だいわり)」。編集長が管理します。

そして、特集内容、連載記事の内容等が決まるとこの台割に記入していきます。
それぞれ細かい記事は、他の編集部員が担当していきます。
(毎号必ず担当ページが1ページ以上はあるそうです。)
見方は難しいのですが・・・MOEは中綴じ製本なので、真ん中の数字を中心に
右に刷られるページ、左に刷られるページ・・・という並びで表がつくられています。

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▲編集後記や次号の予告、広告ページなども含めて全ての決定事項を入れていきます。

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▲「絵本ナビの広告見つけた!」小さなことで喜んでしまうのは素人ならでは・・・。

★詳細内容を決めていく

 
台割がほぼ決定すると、いよいよ具体的に動き出します。

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▲ページ割り。例えば巻頭大特集の30ページの中でそれぞれのページ数、流れなどを決めていきます。

アトリエ訪問の記事は何ページ分使って、
「リサとガスパール」「ペネロペ」のキャラクター紹介は2見開きずつにして・・・などなど。
取材をしてみて、その内容によってページ数を変更することもあるそうです。


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▲デザイナーさんにデザインの依頼をする為のラフです。

こちらも担当編集の方が描いていくそうです。
巻頭特集のデザインにはアートディレクターさんが手がけるそうで、
話し合いながら具体的なレイアウトを考えていきます。

例えば、アン&ゲオルグ夫妻の写真がとても素敵だったので大きく使いましょう!というと・・・
(ラフ画像の右上の欄)

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▲一ページに大きく掲載されるレイアウトで完成!

引越しされたばかりのご自宅兼アトリエのソファで、仲良くくつろぐお二人の写真には本当に魅入ってしまいます。

「MOEの読者の方は、絵本の背景にある情報を知りたいという方が多いですね。中でも作者ご本人が登場するぺージというのは一番人気があります。 だから、現地に取材に行くのは大変だけれど、そこはしっかりと時間と手間をかけて作っていきます。」と森さん。
この号の為にも、カメラマンさん、通訳さん、ライターさんなどに依頼してパリまで取材をしています。

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また、絵本の表紙画像や中味画像などを贅沢に使ったレイアウトもMOEの特集ページの魅力です!
「作家の方々のご厚意で、かなり自由な誌面づくりができていると思います。」


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▲『リサとガスパールのクッキングブック』に登場するお料理を実際に作って撮影。すごく可愛い!

左の画像がこのページのラフ、右が実際のページです。
お料理や小物の写真での、こだわりのスタイリングも見逃せません。


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▲記事を作るために撮った写真は、かなりの数!?

奥がアトリエ訪問取材の写真、手前が料理の写真。
それぞれ、得意分野のカメラマンに依頼するのも編集の方のお仕事なのだそうです。


★いよいよ仕上げ!

  
依頼したラフをもとに、デザイナーさんからレイアウトページが送られてきます。
    

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▲チェックしながら、写真やレイアウトの変更などをしていきます。 
   
そしていよいよ入稿!印刷会社にデータを送ります。
送られてきた刷り見本をもとに、色校(刷り上がりの発色のチェック)などを行います。

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▲4月号のおまけ、特製リサとガスパール&ペネロペシールの絵が印刷された段階!シールになる前です。ワクワクしますね


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▲表紙の色も、初校、再校、三校と修正していきます。

言われてみると、空の色や、ペネロペの色などかなり変化していますね。
同時に細かい誤植なども修正していきます。

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▲こちらは目次順に並べて一冊にまとめた状態です。分厚いですね。

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▲これを、1ページ1ページ、間違いがないかチェックしていきます!

チェックを担当するのは編集長と副編集長である森さん。
この作業もまたかなり大変そうなのです。

そして出来上がったのがこちら!!

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皆さん、実際に手にとって味わってみてくださいね。


■ 巻頭大特集の他にも、人気の企画や連載がたくさんあります!

 

ご存知の通り、巻頭大特集の他にも、月刊MOEには人気の企画がたくさんあります。
例えば描きおろし絵本コーナー。
   

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発表された作品が、のちに書籍化される事も多いこのコーナー。
MOEイラスト・絵本大賞で受賞された新人作家さんから人気作家さんまで、
かなり贅沢な内容を毎号楽しむことができるという事なんですよね。
(写真は2010年3月号より。2007年MOEイラスト・絵本大賞で準グランプリを受賞されたもりかさんの作品です。)

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「絵本作家さんにおそわる描き方教室」など、実際に作家さんが絵を描かれている様子が見られるコーナーは、イラストレーターを目指している読者はもちろん、そうではない方にも大好評なのだそうです。
(写真は2010年3月号より。ダヤンシリーズの作者池田あきこさんが実際にダヤンを描く過程を細かくみる事ができるのです!)
絵本が出来上がる前の鉛筆で描かれたラフスケッチなど貴重なショットが満載なのも、MOEならではですよね。


■ 特集内容の幅はどんどん広がっていきます。                


上の2コーナーが掲載されているのは、2010年3月号西巻茅子さんの『わたしのワンピース』のうさぎさんが目印!

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▲巻頭大特集は「絵本みたいな雑貨が生まれるまで」。
可愛い雑貨をつくるアーティストがたくさん登場しています!

こんな風に、絵本だけでなく、絵本に興味を持った人が、
更に広がっていくであろう世界についても徹底して取材をしてしまうのが
MOEの大きな魅力の一つでもありますね。
その他にも美術館、カフェ、映画などのテーマなどで特集されている号もあります。

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「絵本はあんまり詳しくないけれど、このうさぎさんには見覚えがある!とか、可愛いものが大好き!という方って沢山いると思うんですよね。そういう方達が自分の興味のあることをきっかけに絵本の世界を知ったら、きっとどんどんはまってくれるんじゃないかと。そういう意味でも、常に間口を広げておきたい、というのはありますね。」と森さん。
こういう特集号があるからこそ、MOEには広いファン層がいるのでしょうね。
普段、絵本に縁がないような人達でも気軽に絵本の世界が楽しめる雑誌がある・・・というのは、とっても大きな存在なのだと思います。

更には、今年で2回目となった大好評企画「絵本屋さん大賞」の様な、新しい動きというのも目が離せません!

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▲2009年2月号    ▲2010年2月号


■ 忙しそうな編集部の様子を、そーっと探索!                


最新号に向けて、作業真っ最中の編集部は当然大忙し。
そんな所をこっそりお邪魔しながら、探索させて頂きました・・・。


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▲まだ発売前だった2010年5月号「ミッフィー大特集」の資料もたくさん!

2010年5月号は、今年誕生55周年を迎えるミッフィーの大特集です。
ディック・ブルーナさんとMOEとのお付き合いは、とっても長いそう。
MOEの取材だったら・・・と、いつも快く受け入れてくださるそうです。
この号では、今も変わらず毎日絵を描いているブルーナさんの様子を見る事ができます。
※MOE絵本フェスティバルでは、直筆コメントも展示さています!>>>

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▲最新刊はきれいに並べられて。もちろん、バックナンバーはぎっしり。


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▲あきらかに邪魔をしてしまっています・・・。でも、皆さんとっても温かく受け入れてくださいました!

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最後に森さんと記念にぱちり。
貴重な体験をありがとうございました!


★最後に月刊MOE編集長の新村晃一さんより、絵本ナビ読者に向けてコメントを頂きました!


国内外の絵本を中心に、編集部スタッフの琴線にふれた
愛らしいもの、かわいいもの、美しいものを、
これからもどんどんご紹介していきます。
日常を少しだけはなれた世界で心を遊ばせたいとき、
ほっこりとなごみたいとき、ぜひMOEを開いてみてください。
*4月19日まで名古屋パルコで開催中の「MOE絵本フェスティバル」では、
たくさんの絵本原画をはじめとする、充実した展示がご覧になれます。
ぜひ足をお運びください。

MOE編集長 新村晃一


<おまけ>
今回、取材にご協力頂いた森さんが担当されている来月2010年6月号のMOEの巻頭大特集のテーマが「子どもに手わたす絵本100」。
0歳から10歳まで、年齢別におすすめの絵本をずらり100冊ご紹介しています。MOEが本格的に子どものための絵本特集を組まれたのは始めてなのだそうです。
そしてその記念すべき特集に、何と、私イソザキも絵本ナビ編集長として登場します!こちらもお楽しみに・・・。

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▲一足お先に中味ページをご紹介!右下の一番右がイソザキです。

2010年04月07日

絵本『ももんちゃん こちょこちょ』
作者とよたかずひこさんにインタビューしました!

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「ウチの子にそっくり!」とママたちの間でも大人気のももんちゃん。
絵本の中で、走ったり、転んだり、泣いたり、笑ったり。
「ももんちゃん あそぼう」シリーズは最新刊『こちょこちょ ももんちゃん』を合わせると12冊にもなるんです!

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その最新刊の発売を記念して、作者のよたかずひこさんへのインタビューが実現しました!
「ももんちゃん誕生」の秘密から制作過程、新刊『こちょこちょ ももんちゃん』について、更には、普段からよく学校などで読み聞かせをされるという、とよたさんならではのエピソードなどなど、興味深いお話をたっぷりご紹介します。


とよた かずひこ
1947年宮城県生まれ。早稲田大学第一文学科卒業。主な作品に『でんしゃにのって』などの「うららちゃんののりものえほん」シリーズ全3巻、『バルボンさんのおでかけ』などの「ワニのバルボンさん」シリーズ全5巻、『ブップーバス』などの「あかちゃんのりものえほん」シリーズ全4巻(以上アリス館)、『やまのおふろ』などの「ぽかぽかおふろ」シリーズ(ひさかたチャイルド)、『どんどこももんちゃん』[第7回日本絵本大賞]などの「ももんちゃんあそぼう」シリーズ、『おにぎりさんがね・・』などの「おいしいともだち」シリーズ(以上童心社)がある。紙芝居作品に『でんしゃがくるよ』『もみもみおいしゃさん』(以上童心社)などがある。


■ スーパーあかちゃん誕生                 


―― 桃みたいな可愛い顔におむつをはいた姿で、どんどこどんどこ走っていくももんちゃん。その堂々とした風貌はまさに「スーパーあかちゃん」。あかちゃんや小さい子だけでなく、「うちの子にそっくり」とママたちにも大人気!そんな主人公のももんちゃんは、どの様に誕生したのでしょう?


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どんどこ ももんちゃん』 とよたかずひこ さく/え 童心社

 ももんちゃんはね。桃太郎のイメージがあったんです。主人公は男の子のつもりで描いているんです。『どんどこももんちゃん』の中で、くまさんを倒すという場面も最初は桃太郎のイメージがあって。あかちゃんがくまを倒す、力強いですよね。そんな「スーパーあかちゃん」というキャラクターは後からついてきて。確かに「うちの子にそっくり」という声は多いんですよ。どちらかというと、女の子の方が多い。だから、あんまり男、男って言うのはやめたんです。


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―― そうだったんですね!そんな風に、絵本をつくる時には、まず色々な設定を決めてから描かれるんですか?

 絵本をつくる、誰かにメッセージを描く場合には、キャラクターの性別とか年齢とかっていうのは、どこかで意識するんですよ。物語には投影されないけれども、どの作品に関しても、必ず背景みたいなものは頭の中で描きます。この人はどういうところに住んでいて、家族はいるのか、いないのか、というような設計図を描くわけですよ。
 ももんちゃんの場合、よく読書カードで「早くお父さんを作中には出してください」という声はあるけど、これは母一人子一人なんですよね。それは設計図なんです。だから出てこないの。そしてももんちゃんは、男の子なんです。でも、特に読者がそれを女の子として読んでくださっても、間違いではない。作者の手を離れれば読者のものというのは、そういうことですからね。


―― 先ほど「スーパーあかちゃん」というキーワードも出ましたが、そういえばももんちゃんは自分で遊びにいったり、広い広い景色の中に一人でいたり・・・そんな風にあかちゃんがぽつん、といる感じって絵本の中でも珍しいですよね。

 そうかもしれません。実は、ももんちゃんは“自立したあかちゃん”なんです。
 今、親子のスキンシップが大事だって言って、そういう絵本はいっぱいある。確かに普遍性のあるテーマなんだけどね。それよりは、あかちゃんがもともと持っている生命力みたいなものをたたえよう、という気があったんです。親子の関係を、べったりというよりも、逆にちょっと突き放した感じでやりたいなあ、というのがね。
 ももんちゃんシリーズの中で、『ももんちゃん どすこーい』という、しこを踏むのがあるんだけど。さらに凛々しい感じのね。アイデアとしては、こちらの方がむしろ先だったんです。『どんどこ ももんちゃん』とこれはリンクしてるんです、お相撲とったりして。

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ももんちゃん どすこーい』 とよたかずひこ さく/え 童心社


 でも最初これは、あかちゃん絵本としては難しいと言われたんですね。だって、砂漠とかサボテンとか、日常あかちゃんが目にしているものとは程遠いものが、登場してくる。あかちゃんに、砂漠と言ったってわからないし、サボテンなんて触って痛いとか何とかも、まず分からないような状態ですしね。でもそれは、僕の中では折込み済みだったんです。だって(童心社さんには)松谷みよ子さんの『いないいないばあ』みたいな赤ちゃん絵本が既にあるんです。あれ一冊でもう十分だろうという感覚すらするぐらいで。全く同じ層に向けて赤ちゃん絵本を作りたいと言ったって、似たようなものをつくってもしょうがないし。むしろ、読んであげるお父さんお母さんが楽しんでくれればいいなあと。そこから出発したんですよ。
 おかげさまで、読み聞かせに使ってくれたり、(絵本ナビの様な)サイトに親御さんが投稿してくれているのを見ると、やっぱりそれなりに楽しんでくれているんだなと思いますね。


■ 制作の秘密                    

「ももんちゃん」シリーズというと、本当にお母さんたちの人気がすごく高いという印象があります。その理由の一つとして、実際に声に出して読んでみるとよくわかるのですが、何回繰り返して読んでも楽しいというのが大きくあるように思うのです。子どもというのは、繰り返し繰り返し「よんで!」という事が多いのですが、これが意外と大変。でも「ももんちゃん」シリーズは、テンポや間の良さだとか、「どんっ」「のっしのっし」「ぽっぽー」などなど繰り返しの言葉の面白さだとかがあって、読んでいてとても気持ちがいいし、飽きないというのもあって。そういう意味でお母さんたちも読んでいるうちに、どんどんこのシリーズにはまっていくのかもしれません。


―― 言葉を考える時には、発音やリズムなど、声に出して読んだ時の感じというのにこだわられてつくっているのでしょうか?

 僕の場合は、絵と文が同時に浮かんでくるんです。だから、削っていくという作業がほとんどないんですよ。この言葉しか出てこないんです。ラフスケッチする時、コマ割りしていく時に、もう絵が出ると同時に脇に言葉が入ってくるわけですよ。推敲してもう一回考えて、この文字は余計だなとか、そういったそぎ落とすという作業がないんです。擬音語も擬態語に関しても、あんまり変わったものは使ってないはず。犬は「わんわん」、猫は「にゃーにゃー」という程度の、凡庸な言い回し。電車は「がたんごとん」って、非常にありきたりの言葉を使ってるんですよ。だからそれをあまり言われると、「俺、そんなに考えてないぞ。」って(笑)。


―― 「ももんちゃん」を読んでいると、絵と言葉の進んでいくテンポがぴったりくるんです。だから、読んでもらっている子の方も、次のページをめくると登場する場面まで全部覚えちゃったりして。なるほど、絵と文章が同時に浮かんでくる・・・リズム感や間の良さというのは、その辺りに秘密があるんですね。

 だから、絵を描き出したら早いです。だって、言葉がもう同時に出てきていますから。長い文章じゃないですし。擬音語や擬態語も意識しているわけではないんです。ただ、ここに入れるにはこれだろう、と入れていく。当然、ページ数に制限があるので、最初の段階ではページ数のコマ割りでつくっていきますよね。これが出来上がったら、今度はダミーといって、こういう形につくっていくわけです。

そういって見せてくれたのは、制作中だった最新刊『すいかくんがね・・』という絵本のラフ。
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▲直筆です!
※『すいかくんがね・・』は2010年5月上旬に童心社より発売予定です。


 ここに来る段階ではもうほとんど出来上がっている状態と同じ。本のページをめくっていくということが大事だから、これをやらないで絵本なんか作れないわけ。絵本作家さんは、誰でもやってますよね。こんな感じで作っていく。これは、まさに最終的に「こうなったよ」という状態。後は、これでOKもらえば、原画作業に入るわけです。この時には、やっぱり(完成形の)この文字しか入ってないんです。ここの段階ではもう変更はないですね。


―― ももんちゃんというと、この「ピンク色」というのも、とても印象的。このピンクというのは、赤ちゃんらしい、象徴的な色という事で使われているのでしょうか?子どもたちもお母さんたちもすごく好きな色だと思います。その他に登場してくる「さぼてんさん」や「きんぎょさん」などもとっても発色がきれいですよね。


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 「ももんちゃん」シリーズは、このピンク色が欲しかったんです。この発色がね。通常の印刷方法だと、ピンクというのは出にくい色なんです。他の色と掛け合わせると、沈み込んでしまうんですね。だから、100パーセントベタでこのインクの色が欲しい時は、特別な色、特色をそのまま印刷するんです。要するに版画に近い印刷ですね。ですから、版も描き分けているわけです。ピンクはピンクの版、という風に。それを印刷する時に重ね合わせて色を出したりするんです。ですから、出来上がってみないとわからない、という部分もあるんですけどね。このやり方は、昔、石版画で刷っていた時代からのやり方で、印刷技術としては特別に変わったやり方というわけではないんです。このピンク色が欲しくて、そういう形になりました。

 ピンクでも色々なピンクがありますよね。ちょっと転ぶと印象も全然変わる、微妙なところがあるんです。だからこそ、こだわっています。全ての表紙の背景は、この色をメインにしています。お母さん方が「この子は女の子だ」という受け取り方をされる事が多いのは、この色に拠るところが大きいんだなあ、というのはわかりましたね。ピンクの面積がかなり占めていますからね。


―― それから、「ももんちゃん」シリーズというと、すごく気になっている方も多いと思うのですが、お友達として登場するのが、きんぎょさんやさぼてんさん、そしておばけさん。特にきんぎょさんが、電車ごっこをしたり、お相撲とったりしているのが可笑しくてしょうがない(笑)。砂漠と赤ちゃんというのも、なかなか結び付きませんよね。本当に不思議な発想です。

 そんなにおかしいですか?(笑) あのね、よく質問受けるの。なぜ金魚とサボテンなんだって。でも、それを説明しきれるほどの自分がいないんですよ、そこにね。だから理屈じゃないところでやってるんだろうなあ、と思うんです。サボテンを出した時に、なんかちょっと水気が欲しいなあと思って、金魚を出したっていう感覚かなあ(笑)。砂漠というのも、順序としてはむしろサボテンが先だったと思うんだ。サボテンのほうが先で、じゃあサボテンの生息地は砂漠だろうな、というね。


―― とよたさんの作品というと、電車の絵本がたくさんあったり、おばけが登場したり。好きなキーワードというのがあったりするんですか?

 ひとりの人間がやってるから、それはどうしても好みというのは隠しきれないだろうね。ああ、この人は乗り物好きなんだろうなとか、ね。だから、花とか植物とかはあまり知らないから、描かない。自分の中にないものはね。実は、食べ物もそうだったんです。食べ物にあんまりこだわらない方なんですよ。珍味だとか、高級料理だとかね。でも、今新作で「おいしいともだち」シリーズを描き始めたんです。このシリーズの特徴は素材だけだったんで。それならできる、豆腐なら豆腐、納豆なら納豆でいいってね。それなら好きだもん。
※その新シリーズのテーマもとっても個性的!後ほど少しだけご紹介しますね。

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■ アイデアの源泉は・・・       


―― 「ももんちゃん」シリーズのお話を考える時、誰か具体的なモデルがいたりするのでしょうか?例えば自分のお子さんの事を思い出したり、お孫さんが遊んでいる様子を実際に見ながらアイディアが浮かぶという様な事はあるのでしょうか?
 
 それは、あまりないですね。小学校の授業なんかに行くと、よく「この作品を作るのにどれぐらい時間がかかりましたか」という質問があるんですよ。僕は今、62歳だから、新作『こちょこちょももんちゃん』をつくったんだけど、それは62年かかってるということなんだろうと思うんですよ。言葉として。覚えているか覚えていないかは別問題として、自分の記憶や見たものというのは、ずっとつながってきているわけだから。自分の子を見たり、ひと様の子を見たり孫を見たりすることも、全部複合的に入ってて、「これだ、これがヒントだ」というのは実はないんですよ。例えば「こんなおもしろいことがあった。とよたさん、これ、絵本にできない?」というような、アイディアをもらう時もあるんだけど、それは右から左に抜けていっちゃうのね。自分で血肉化してないと、やっぱりだめなんですよ。作品にはできない。

 子どもに向けて本を描くというのは、その人の大人度が計られるんですね。この歳になるとよくわかるんですよ。色々なものを経験していないと、なかなか描けないもんだなあ、と。子どもの本に関わっている以上、思いっきり大人になって、思いきり子どもに戻れるということが、必要要素なんだってことだよね。作品はあんまり汗水みせたくないから、「ふふふん」と鼻歌うたって出来上がった様にはしたいですけどね。


―― 「自分の中から出てくるもの」というのが、一番のこだわりという事なんですね。

 中でも、確たるものというのは、やっぱり幼児期です。環境によって子どもの状況というのは変わってくる。僕らの時代には携帯も、パソコンもなかったわけだし。要するに、学齢前。学校に入ってから環境が変わっていく、これはしょうがない。ただ、幸いなことに僕が今やっているジャンルというのは学齢前だから、これは変わらない。人間の核たるものは昔から変わっていない。だからそこら辺に信頼感があるわけですね。その頃の感触というのは、自然に出てきますね。


―― ちなみに、とよたさんは小さい頃どんなお子さんだったのでしょう?

 「やっぱり小さい頃から絵が好きだったんですか?」と聞かれる事がよくあるんです。でも、ペンがあったらいつも描いてる、というほど好きではなかったし、平々凡々、普通だった。もし僕が親の立場だったら、「この子、こういうところ変わってるね」なんていうのは、多分なかったと思うよ。だって母親もそんなこと絶対言わなかったし、才能あるとかなんとか、全然思いもしてない。もう平凡にあがってきてますよ。結局、どの時代に特に影響を受けてというよりは、もう62年間の積み重ねですね。


■ ちょっと変わった「あかちゃん絵本」     


―― それでは、この「ももんちゃん」シリーズをどんな風に楽しんもらいたいか、というのはありますか?

 乳幼児に向けた絵本を作るということは、本当の読者にいく為には間に大人の存在が必要なわけですよね。親が読んであげたり、保育園の先生が読んでくれたりするという仕組みをもって、一種の二重構造だね。そうすると読む側が「おお、こういうのありか」「こういうの、おもしろいじゃん」というぐらいで楽しんで読んでもらえれば。読んでもらう赤ちゃんにとっては、砂漠がどうだとかサボテンがどうだなんてことを、いちいちこだわってないんだよね。ですから読んであげながら楽しんでくれれば、それが一番ベスト。そのままで伝わるということですよ。いやいや読んであげていたら、やっぱりあんまり子どもには伝わってないよね。

 だから、親子で楽しむということが、基本にあるわけです。本当の読者、あかちゃんが黙って自分で読むわけないからね。例えば、子どもをひざに乗っけて読んであげる時なんかに、読んであげる大人が楽しんでくれたらいいなあ、というのはありますね。だから僕はサボテンとか、金魚とか出したんだと思うんだ。あかちゃんにちゃんと依拠してやるんなら、犬とか猫とかって形になっていると思う。


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これは個人的な体験ですけど、子どもが生まれる前は、「あかちゃん絵本」というと、観念的にあかちゃんはやっぱり鮮やかな色の方がとか、犬や猫は知っているから喜ぶとか、形がはっきりしているのがいい・・・そういう思い込みがあったんです。でも、実際に「ももんちゃん」を読んでいくうちに、あかちゃんの反応ってもっと色々あるんだなあと発見したり、「あかちゃん絵本」と一口に言っても、こんなに色々な世界があるんだなあと感動したり。「あかちゃん絵本」の面白さを知るきっかけにもなったのです。

―― やはり、最初から「今までにないあかちゃん絵本を」というのを想定されてつくられていったのでしょうか?

 そこまでは意識していなかったような気はするの、結果論ですね。
 生まれたてのあかちゃんに、「この世界は面白い」なんてストーリーがあったってわからない訳だから、大人にとって、やっぱりどこか物足りなさがあるっていうのは当り前なんだよね。「ももんちゃん」シリーズは、ちょっとそこから逸脱したんですよ。この絵本を中学生に読み聞かせした先生がいてね、中学生から色々感想文が来たぐらいだから。だから最初は「あかちゃん絵本」ってうたわなかったの。
 でも今度は、本当にファーストブック的なものを作ろうと思っているの。何となく揺り戻しがあってね。そうすると今度はやっぱり犬や猫、ひよこさん。赤ちゃんは生き物が好きだから。一方ではそういうのも創ってみたくなって。


―― 「ももんちゃん」も、他の作品も含めて、自分がやっていない事はやってみたいというのは、表現者として常にあるということなんでしょうか?

 でも、それはやっぱり作為的なところがあると見抜かれるよね。ちょっと言うには恥ずかしい言葉だけど、素直な気持ちってやっぱり大事なんだよね。何でここで笑ったのかとか、突然泣き出したのかとかっていうのが、違和感もなくすっと入っていける形。「これはなんで泣いたんだ?」という理由づけを要求されないような絵の力であり、前ページが次のページへ引っ張ってくる、引き寄せる力みたいなものがないとね。読者はすぐにわかる。創っている時に、どこかちゅうちょしてるような段階で出した場合っていうのは、本当にだめ。読者は怖いです。


―― 実際に反応の違いというのは実感されながら・・・?

 うん、わかる。でも、あいまいであっても、それに答えられるように自分がちゃんと用意できてれば、大丈夫なんです。例えば『ももんちゃん えーんえーん』。


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ももんちゃん えーんえーん』 とよたかずひこ さく/え  童心社
泣いていたひよこさんのお父さんが迎えにきて、やっぱり泣いていたひつじさんのお母さんが迎えにきて、安心したももんちゃんはまたお昼寝をします。


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 最後のページに「なんで、ももんちゃんのお母さんがいないんだ」という声が実に多いんですよ。ひよこさんのお父さんが来て、ひつじさんのお母さんが来て、当然今度はももんちゃんのお母さんが・・・と期待しているわけですよね、読者は。後姿でもいいから、お母さんの姿が欲しいという声がいっぱいあったんです。そういう声があるだろうという事は僕の中では織り込み済みなんです。やっぱりお母さんが来たら安心するんだよね。でも実際には、裏表紙でお母さんは実はそんな遠くにはいなかったんだよ、という事を暗示しているんです。あくまで本というのは本文ページで完結しなくてはいけない訳なので、裏表紙まで引っ張っちゃいけないんですよ。裏表紙は余韻のページだから。これがあってもなくても成立しないといけない。だから、僕はこの終わり方で成立しているんです。
 これは、“自立したあかちゃん”というテーマ。だいたい大平原に赤ちゃんが一人で寝ているわけないですから(笑)。ここでお母さんの姿があると、その設定自体が崩れちゃう。そうすると、ここはずっと終始一貫して最後まで何事もなかったように終わるんです。これは自立していないと。お母さんが出てくれば、それは終わり方としてきれいなんですけどね。最後はお母さんを出した方がいいんだろうか、だめなんだろうかって迷っている時はダメだよね。


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▲「ももんちゃん」シリーズの裏表紙は余韻にひたれる大事なポイント!とよたさんも大事にされているそうですよ。またそういった目で他の作品も楽しんでみてくださいね。


■ 待望の最新刊は、『こちょこちょ ももんちゃん』        


そして、この度「ももんちゃん」シリーズの最新刊『こちょこちょ ももんちゃん』が発売されました!なんとシリーズ12冊目になるんです。
この取材時はまだ発売前。その最新刊についても少しだけお伺いしました。

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こちょこちょ ももんちゃん』 とよたかずひこ さく/え  童心社
ももんちゃんがよぶと、こぐまさんもきんぎょさんも、「はーい!」。みんな“こちょこちょ”されて、「あはははは・・・」。さいごはももんちゃんが・・・!? 読み終わったあと、親子のふれあいにつながる絵本です。とにかく、とろけそうな幸せ顔がたまりません。 

             


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―― こちょこちょされているみんなの顔が本当に可愛くて・・・。更に、『どんどこ ももんちゃん』からのファンには嬉しい仕掛けもあるんですね!

 そうなんです。もう一回『どんどこ ももんちゃん』的な、まっすぐ向かっていくような感じのものを作りたかったんです。今まで色んなパターンで描いてきて、少し間を置いたので、ここでもう一度そこに戻りたい、と。『どんどこ ももんちゃん』ではくまさんを倒しているんですけど、今度は、こぐまさんなんですよね。その子どもっていう発想。だって、一度どーんってやったくまさんにちょっとねえ(笑)。


―― 本当だ!ちょっと小さい。(笑)。このきんぎょさんはまた・・・。

 でかいでしょう。そこはでかくしたかったんだよね、本当に。そこを中途半端にリアリティーにしてもね。どうしても寸法が合わないでしょう?そう言われちゃうと困るんだけど、デフォルメだよね。そこは許してもらう。でっかく脇の下をこちょこちょやってくれないと。だから小学生に読み聞かせした時、「でけえ~!」って言ったもん(笑)。「金魚がでっけぇー!」って言った。

 この間小学校で読み聞かせした時、たまたまこのダミー本が出来上がったからってやってみたら、子どもたちが金魚のところで「でけえ~!」って。1年から6年まで。「でけえー!」っていう言葉は拒否された言葉じゃなかった。おもしろがっていて。その大きさもOK、許すっていう「でけえ!」だった。非難の声でないことは読み取れる。ああ、彼らは受け入れたんだ、このでかさをって。
 でもこれ、読み聞かせが難しかったなあ。普段、読み聞かせる時は、拡大していくんですよ。でもこれはまだダミーの段階だったから、この大きさで400人はきつかった。


―― 400人ですか!? すごいですね・・・。

 そうそう。400人はきつい。見えない見えない。でも、見えなくてもそのでかさがわかったっていうのは、すごいなあと思ってね。


―― その最新刊を含めると、シリーズで12冊にもなるんですよね。ここまで人気があって、続いているというのは感慨深いものがあるのでは?

 絵本っていうのは作るのは作者だけれど、やっぱり読者の手に届けるには出版社の営業力って大きいんですよね。作品に本当に力があって、黙ってても売れるというのは、中にはあるのかもしれないけど、そう甘くはないよね。だから同じように出しても、うまくいったかどうかわからないです。自分一人だけの力じゃ絶対ない、ということはわかるよね。作品だけがいいから売れるでしょう、ということは言えない。だから12冊めだから感慨深い、というのはないです。



■ 新シリーズ「おいしいともだち」もちょっとだけご紹介     

―― 先ほどのお話にも少し出た食べ物絵本「おいしいともだち」シリーズ。こちらもとっても気になるんです。

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▲キーワードは「しんぱいごむよう!」


 「ももんちゃん」シリーズは“あかちゃんの自立”をテーマで描いてきたけど、こちらは“食べ物の自立”なんです。人間は一切出てこなくて、例えば、おにぎりが自分で自分をにぎるんです。3つのおにぎりが、自分たちで具をおなかに、入れるんだけど、どれがどの具だったかわからなくなっちゃって。でも「しんぱいごむよう!」。ちゃんと解決するんです。

 食べ物の自立というのはあかちゃんの生命力と結びつく。食べ物、その素材自体の生命力というか、自立。『どんどこ ももんちゃん』からつながってきてるんです。食べ物が本来持っているエネルギー、子どもが本来持っている生命力というものにもっと期待していいんじゃないかなと思って。人も食べ物を描くのも、そんなに変わらないですよね。

 さっきも言ったんですが、僕は食べ物には全然こだわらない方なんです。だから、例えば納豆と言っても、調べてから描くという事はしないんです。普段そういうことに興味があるわけじゃないから。どうして発酵させてできるとか。僕は全然そういうのは見ないでやっています。何も知らないで。ただ納豆は納豆で、考えないで食べてる状況でやらないと。だから豆腐は何からできてるかって、俺、子どもから質問されたら一瞬わからなくなっちゃうかもしれない、というぐらいわからない。豆腐は豆腐そのものが好きというね。でも冷や奴は、赤ちゃんにはむずかしかったですね。ビールのつまみなんて言ったってね(笑)。


■ 絵本作家とよたかずひこさんについて     

絵本作家とよたかずひこさんご自身についても少しお伺いしてみました。

――  絵本作家になられたきっかけ、というのはあったのでしょうか?

 当り前の話でつまらないけれど、子育てです。子どもができたから。子どもがいなかったらやってない仕事だと思います。

 最初の子どもができた時に、それまではイラストレーターの仕事はやっていたけれど、誰か他の人が描いた絵本を持ってくる訳だよね。僕は絵本の世界を全く知らなかったから、早く寝かしつける為に読み聞かせて。いい加減な父親をやっていたからね。その時は、その作品の世界には没頭していないわけ。だから、絵本作家になる素養は本当はなかったんですよ。

 でも「ああ、絵本というのはうまい下手の世界じゃないんだ。その人の作品の世界なんだ、説得力なんだ」というのがわかってきて。僕は今、その世界に近いわけですよ。あえて下手に描こうというんじゃなくて、ほとばしるもの。自分の描きたいものの形でいくと、さっき言った様に、突然金魚がでかくなるわけですよ。僕の中では。何の違和感もなくでかくなってるわけですよ。これは図鑑描いてる人間からしたらあり得ない世界ですよ。だから、描き手も変な制約から解放されるわけですよね。そこが絵本を作っていく楽しさだよね。


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―― それは本当に頭でっかちな所で考えちゃうと、「えっ、こんな絵が成り立つの」みたいに思ったりして。

 そうそう、それが前にはあった。イラストレーターの世界というのはやっぱりどこかで努力のあとと技術を見せないと申しわけないという気持ちがあるの。かなりカチカチになって描いてた部分があった。
でも絵本では、成り立つんだよね。子どもはそこら辺は割とクリアしちゃうんだ。子どもは絵の好き嫌いってないじゃないですか。最初はとりあえず何でも受け入れるよね。大人のほうが「この絵、嫌い」とかって、はじめからガードしちゃうけど、子どもは柔軟で、この人の絵は嫌いとか言わないよ。いったん全部自分でとにかく受け入れる。

 だから例えば『ぐりとぐら』はすごいんですよね。この間本屋さんに行った時、たまたま僕の前で、ちょっと不良っぽい男の子が彼女を連れて、児童書の脇をパッと通った時、「あっ、まだこの本出てる!」って言うんだよ。何だろうって思ったら、『ぐりとぐら』。出てるよ、そりゃあって(笑)。でも彼にしてみりゃ、そこで終わってるんだよね。幼児期からずっと絵本から離れてたんだけど、親に読んでもらった記憶だけがあるわけだよ。戻ってきたんだもん。でもそれって作者冥利だよね。「この本、まだ出てるんだ」って言って、彼女に説明するわけ。やっぱり子どもの本のありがたさだよね。    
だから誰が描いて、今現在その本がどう評価されてるのか。彼にとっては何の問題もないんだけど、でも何か一瞬記憶が戻るわけだよ。誰かに読んでもらったっていう記憶。これはすごい力だなあと思ったんです。絵本の力というのが。


―― 新しい読者がどんどん新しく生まれて、なおかつその人たちが20年30年たって、どこかに引っかかってるというのが、絵本のすごさですね。

 ありがたい世界に来たなって、僕は素直に感謝するんです。小学校に読み聞かせに行って、1~6年生まで授業1時間ちょっとしたって、何も伝えられませんよ。だけど、彼らに、そういえば小学生の時に変なおじさんが来て読み聞かせしてくれたよなあ、っていうのがどこかに残ってくれればいいな、というぐらい。そこで何もかも伝えようっていうんじゃなくて、今こういう作品を作ってるんだ、こういう仕事をしているだよと言って、本ができるまでのプロセスを見せてあげたりすると、小学校5、6年生はすごく面白がる。1時間ちゃんとつきあう。小学校6年生で僕より背がでかいわけですよ。こんな男にももんちゃん、大丈夫かなって思うわけ。「なんで俺にももんちゃん読み聞かせするんだよ」って、僕が6年生だったらそんな感じするからね。僕は、幼児期に読み聞かせをする時は、集中力がながくは続かないんだから出入りは自由にしているんです。それで騒いだって僕は全然気にならない、最初の出会いで絵本は楽しいんだなあっていう記憶が残ればいいの。そこで「さあ、聞きなさい」という雰囲気よりは、楽しかったなあって。僕はその記憶を残したいわけ。それを6年生にやる時も、同じパターンにするの。授業なんだけど、特別学校の先生の許可を受けてるから出入り自由で、眠くなったらそこで寝ていいからってやる。そうするとすごくリラックスするわけ。だから出ていく子はいないよね。


―― 絵本作家になられて良かったな、とういうのはそういう部分ですか?

 今言ったように、ひと様の子どもと出会える。なおかつ、保育園や幼稚園、学校に行ったりするのは、割とハードルが高いんですよ。誰でもいいっていうわけじゃない。多分僕が絵本作家でなくて、読み聞かせちょっとさせてって言っても、そううまくいかない。でも呼んでくれるわけですから、そうしたら行かない手はないですよね。


―― では、制作段階で一番面白いと思う瞬間はどんなときですか?

朝仕事場に来て、一人でずっとやってるんだけど全然飽きないんですよ。


―― じゃあどこの段階も、全部おもしろい?

 仕事ですからね。そんなにおもしろいはずはない。苦しいけど楽しい。楽じゃないですよ。でも飽きないんですよね。昼飯も夕飯も弁当作ってもらってるきているんです。ということは、それまでずっと仕事場にいるわけですよ。だから夕食になったら本当は帰らなきゃいけないんだけど、だんだん延びてきちゃって。だからそれぐらいおもしろいわけ。もう帰るのがもったいないぐらいまで、ずっと。だから労働時間にしたらものすごく長い時間労働やってますよ。このところですけどね。
僕は50過ぎてからだからね、本格的に絵本作品作り出したの。だから編集者にも「とよたさんは、遅咲きですね」って言われるんですけど。


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―― では、最後に絵本ナビ読者の皆さんにメッセージをお願いしてもいいですか?

 親が読み聞かせしてあげる時間って短いんです。今僕は反省ばっかりですよ。もう少しちゃんとやっとけばよかったなあというのが。今、図書館なんかで読み聞かせによく行っているんだけど、親子一緒にって呼びかけているんです。親子一緒にっていうと、最近、この2~3年は若いお父さんが来るようになった。これは顕著。昔はお父さんが来てても、何か身の置き場がないような感じでさ。僕はその気持ち、よくわかるの。自分がそうだったから。でも、それが今多くなって、僕、すごくいいなと思う。今の20代の若いお父さん、自然体で来てるんです。無理してないんです。それがわかった。

 そして、今お父さん、お母さんが一緒にひざの上にのっけて、そこで子どもに読み聞かせる時間って、本当に短いから、この時間を大事にしてねって思いますね。その間に絵本があったら一番いいなという感じ。絵本をツールにして、親子一緒に向き合っててねって。黙ってても娘はすぐお嫁に行っちゃうし、男の子は当然離れていく。それは自然だよ。だからこの時期だけ。うんと大事にしてね。だから絵本の内容なんかどうでもいいんだ。逆に言うとね、何かそこであればいい。親子の向き合う時間が、その時間を共有できるというのは子にとっても幸せだけど、親にとってもうんと幸せな時期なんだ。

 非常に大変なことはいっぱいあるよ。面倒くさいなあ、わずらわしいなっていっぱいあったことを含めても、子育てというのは、とても貴重な時間で二度と体験できない。孫とは違うんだよ、やっぱり。だからその時期をうんと大事に。意識的にその時間を、今いるんだっていうことを頭の中で意識したほうがいい。この子はすぐ大きくなっていくんだよっていうことをわかった上でやると、愛おしいじゃない。この時間そのものが。

ありがとうございました!
絵本ナビ読者に向けて直筆メッセージも描いてくださいました。
じっくり考えながら・・・


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↓こんな素敵なイラスト入りメッセージが完成しました!


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最後に記念にパチリ。


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<取材を終えて・・・>
絵本作家になった事で学校などに招かれて、沢山の子ども達に会えるのが嬉しいというのが、何ともとよたさんらしいエピソードですよね。本当に子どもが大好きな様子が伝わってきます。
実はずっと以前にお会いした事があったのですが、その時のことをとてもよく覚えてくださっていたとよたさん。
一緒に仕事をされた方はみんなファンになってしまう・・・と評判なのも納得なのです。
個人的に「ももんちゃん」への思いの丈を語りながら、とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。

2010年03月19日

「ひさかたチャイルド30年の歩み」
嶋崎社長へのインタビューです。

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2010年4月に創立30周年をむかえる「ひさかたチャイルド」とは、どの様に誕生し、その30年の道を歩まれてきたのでしょう。ひさかたチャイルド・嶋崎社長にインタビューいたしました。



Q.始めに伺いたいのですが、ひさかたチャイルドというと、ちょっと、古めかしい(笑)というか、ユニークな社名のように感じますが、そのルーツは?

嶋崎社長(以下嶋崎、敬称略):よく皆さんからそう言われます(笑)。実は「ひさかた」はわたしたちの会社が現在もある文京区小石川の一部が「久堅」町でそれを使ったという大変単純なもの(笑い)です。しかし、平仮名で表記すると、なんだか奥ゆかしく感じて、いいと思いませんか?


Q.そう思います(笑)。「ひさかた」は分かりましたが、チャイルドというのは創立時から子どもの本を目指していたからですか?

嶋崎:はい、よく聞いていただきました(笑)。そのチャイルドがまさしくわたしたちのルーツなのです。ひさかたチャイルドは、月刊絵本チャイルドブックの発行などで知られるチャイルド本社の書店販売部門として、昭和56年に生まれました。その「チャイルド」に、「ひさかた」を冠したのが「ひさかたチャイルド」というわけです。


Q.チャイルド本社さんというのは老舗の会社と伺っていますが?

嶋崎:わたしたちの親とも言えるチャイルド本社は、月刊絵本を中心とした教材・教具などを幼稚園・保育園に販売する直販メーカーですが、設立は昭和5年で、今年創立80周年を迎えます。また、看板商品であるチャイルドブックは、創刊73年を経過し、いまも月刊で60万人以上の園児さんたちに読まれています。


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Q.チャイルドブックは、わたしも幼稚園の頃読んでいました。大変伝統ある会社ですね。保育で実績ある会社がどうして書店販売に進出されたのですか?

嶋崎:月刊絵本を発行し続けるなかで、これはぜひいつまでも残しておいていただきたい、次の世代の子どもたちにも読ませてあげたい、と保育者の先生方がおっしゃる作品が数多く生まれてきました。
それを、書店販売版の形で残していこうということで、ひさかたチャイルドを設立したわけです。


Q.それは、どういう作品ですか?

嶋崎:たくさんありますが、当社のロングセラー絵本である「どうぞのいす」、「ねずみのでんしゃ」を初めとする「ねずみの7つ子シリーズ」、「ころわんシリーズ」、「999ひきのきょうだいシリーズ」、「わんぱくだんシリーズ」、「でんしゃでいこう でんしゃでかえろう」などがその代表ですね。これらは全て月刊絵本チャイルドブックから生まれた絵本です。


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Q.よく知られている作品ばかりですね! これらがみんな月刊絵本だったとは驚きです。

嶋崎:保育現場では本当に子どもの心情に近いものでなければ評価されません。よくひさかたの絵本は子どもの心に寄り添っていると言われますが、これは生まれも、育ちも子ども一筋ですから間違いありません(笑い)。

Q.新刊としては現在どういった絵本を出版しているのですか?

嶋崎:現在もチャイルドブックから生まれた作品を出版し続けていますが、それに加えてひさかたオリジナルとして、「あかちゃんえほん」、「創作絵本」、「科学絵本」、「海外翻訳絵本」など、さまざまなジャンルの絵本の他、幼年童話にも出版の幅を広げています。


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Q:そのひさかたチャイルドさんが創立30周年を迎えられての感想と、今後の抱負を聞かせてください。
 
嶋崎:いつのまにか30歳の大人になってしまったみたいですが(笑い)、気持ちはいつまでも子どものままです。子どもの心をなくしたら、子どもの本は作れませんからね。ひさかた30年の歩みは「子どもの絵本一筋に30年」と言えると思います。この気持ちをいつまでも持ち続けていこうと社員一同心を新たにしています。
 「親子共々子どもの絵本一筋」でがんばってまいりますので、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。


2010年03月16日

絵本『ありさんどうぞ』
作者中村牧江さん、林健造さんにインタビューしました!

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 「小さな穴から出てきたありさんを、夢中になってみていたら・・・!?」

 地面のありを飽きることなく眺めていた、子どもの頃の記憶がよみがえってくる様な絵本ありさんどうぞ。絵本の真ん中を、はじっこを、行列を作って縦横無尽に歩いていくありさん達のその様子は、一目見ただけでもワクワクするのです。
 作者は中村牧江さんと林健造さん(ご夫婦です)。おふたりの最初の作品が『ふしぎなナイフ』だと聞いて、ピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんね。それまでは広告関連の仕事をされていたおふたりが、どうして絵本を制作されることになったのでしょう。そして、最新作『ありさんどうぞ』のアイデアはどこから生まれてきたのでしょう。
 貴重なお話をたっぷりお伺いすることができました!お楽しみください。


中村牧江(なかむらまきえ)
東京都生まれ。コピーライターとして、コピー宣伝会議賞銅賞、準朝日広告賞、日経広告賞最優秀賞、東洋経済広告優秀賞などを受賞。日本産業広告賞、毎日公共福祉広告賞など入選。ガイドブック『るるぷ』(JTB)ネーミング。
絵本作家として、林建造氏との作品に『ふしぎなナイフ』『もしゃもしゃ』(福音館書店)、『ちがうのだあれ』『ちかくにいるのだあれ』(ひさかたチャイルド)『てをみてごらん』(PHP研究所)『都市の人びと』(イーテキスト研究所)、『ありさん どうぞ』(大日本図書)がある。

林健造(はやしけんぞう)
愛媛県生まれ。グラフィックデザイナーとして、準朝日広告賞、カレンダー工業技術院長賞、日経広告賞最優秀賞などを受賞。ワルシャワポスタービエンナーレ、セントラル美術館版画大賞、毎日公共福祉広告賞など入選。装丁家として書籍を多数手がけ、絵本作家としての作品は、中村牧江氏に同じ。



■ 絵本『ありさんどうぞ』誕生のきっかけ     

―― お二人の新作絵本『ありさんどうぞ』。この作品がアイデアとして出てきたきっかけを教えてください。

中村牧江さん(以下中村、敬称略):きっかけはね。(林健造さんが)イヌやネコなど、動物の絵を練習で描いておりまして、その中にたまたまありの絵も描いてあったんですよ。これをこうして、こうやったらありらしく見えるとか、そんな感じですね。その描いている絵を見ていて、私が、「ありの行列だけで絵本を作ったら面白そう!」と思ったんです。ありを、全部のページの初めから終わりまで、本の隅を這わせていって、行列だけで本を作ったら面白いんじゃないか、って。だから(林さんに)「本の全部の端を歩かせて、ありの絵本を作ってみない?」って言ったんです。そしたら、すぐ乗ってきてくれたんですね。

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 それで、最初にありのレイアウトを思いついて。
 というのも、自分が小さいときに、部屋の隅をありがずっと這ってたことがあるんですね。たどっていったら台所の砂糖つぼのところに来てたんです。そのたどって見ていたという経験があった事と、やっぱり子どもの頃、しかられて庭にしゃがみ込んでいたような時に、ありを見ていたら、みんな上手に花壇の縁などを通って、端っこをずっと迷いもなく行くわけですね、列が。そういうイメージが思い出されたものですから、バックの情景とかは全部取っちゃって、シンプルに本の端っこだけのレイアウトでいったらいいんじゃないかと言ったんです。大体ふたりともシンプルなのが好きだという事もあって、「それ、いこう。」という話になったんです。


―― 中村さんは、コピーライターという仕事をされていたという事で、どんな風にアイデアを思いつかれるのかというところに興味を持ちます。やっぱりパッとひらめくような感じなのでしょうか?

中村:そうですね。やっぱり広告の仕事をやっていた時に、文と絵とをいつも同時に考える癖が付いてるようなところがありまして。それこそ、パっとね。これがこうなっていくから、こういう画面になるっていうのが浮かんでくるんですね。それで、暗黙の了解といいますか、(林さんが)どういう画面を作るのが得意かというのは分かっていますので、あまり複雑化しないで。そこから一気にストーリーを考えていきました。

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ありさんどうぞ』 中村牧江・さく 林健造・え 大日本図書


■ やっぱり主役はあり!     

―― この絵本の主役と言えば、やっぱりありですよね。絵を担当されている林健造さんがありの行列を描かれることになって・・・。

林健造さん(以下林、敬称略):やっぱり僕も、子どもの頃ありを見ていた記憶はあったんですが、足の形はどういう形をして、どう歩いてるのか、それから、触覚は本当はどうだったのかなって意外と覚えてないんですよね。


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 それで、高尾の方に行った時に瓶を用意して、そこに土を入れて、できるだけ観察しやすいような、大きなありを3匹ぐらい入れて、ありに悪いですけどふたをして・・・。
 持って帰って、よし、やるぞということでスケッチブックに描こうと思ったんです。ところが、アリが瓶の中でパニックになっていたんでしょうね、ものすごい速さで動き回るんでなかなか観察できないんですよ。どうなってるんだ、どうなってるんだって何回も見て、ちょっと描いてはまた見てね。それで、触覚はこんなにあちこち動き回るんだとか、足の6本は、どこから足が出てるのかな、というのを見てね。歩いてる感じはなかなか観察できなかったんですけどね。大体分かったと。それで、描き始めたんです。そこからスタートして、ストーリーに合わせて描いてみて。上の方を歩いたり、斜めに歩いたりしたらどういう形になるか。まっすぐや、上から下からというのも描いてみたりしてね。更に、どういう技法で描くかというので、サインペンのような勢いの出る物でぱっと書いたほうがいいんじゃないかなって。それでいっぱい描いて並べたりしたんですね。


―― かなり時間がかかったのではないでしょうか?

林:描くのはそんなに時間がかからないです。こんな小さいですしね。それで仕上げていって、担当編集者に「できました」って渡したんです。
 ところが、全体の流れは良かったんでしょうけど・・・。何だか力が入りすぎて、足とか何かがね、気持ち悪い様な気がして。実際に、ありの足は直線じゃなくて、関節の所で一回折れて、あちこち動いてるんですよ。足の先も結構長くて。それをかなりリアルに描いていたんですね。
中村:ちょっと不気味でしょう、足がね。比べると分かるんですよね。


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▲最初のラフ。更にズームして・・・


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▲左が最初のラフの中のありさん、右が絵本の中のありさん。比べてみると、確かにシンプルな形になった事がわかりますね!


林:それで、やっぱり編集さんに「全部描き直したい」って電話したんです。その後ね、これ気持ち悪いからどうしたらいいかなあって。ある朝、1匹描いたんですよ。「あ、これだな」と思って。それから、一匹一匹行列を作ったときには、その違いをどうするかということで描いていってみたら、大体いけるなと思って全部描いて。それで、また編集さんに電話して「何が何でも、これを全部描きかえたい」と言ったんです。そうしたら「えー」って。
一同:(笑)
編集者:この最初の方の案で、すごく素晴らしいと思っていたので、どうなるんだろうと・・・。

林:なぜいけなかったのかと言うと、やはり、ちょっと気持ち悪いっていうのと、足の印象がクモのイメージにちょっと似てるんですよね。
中村:意外と、足が6本よりもすごく沢山あるような感じになって、もじゃもじゃしているふうに見えちゃうんですよね。虫の好きな子だったらいいけども、嫌いな子が見たら、ちょっと何か、ぞぞっとするっていうのがあるんじゃないかって。
林:だから、足なんかをだいぶシンプルな形にして。でも、子どもだからと言って、6本出さなかったりというのは良くないと思っているし、おもちゃっぽくもしたくない。やっぱり、ありが本当にここにいるんだというふうに、現実のありに見えるようにしたい、と思って。それで出来上がったんです。結果的には、編集さんも、(大日本図書)社内でも、こっちのほうがいいということになったんですよね。
中村:人によっては、これ(絵本になったほうのあり)は、関節もないしって思う人もいるかもしれないけど。実際、目のところだってこんなに白くはないですし。だから、ある程度はやっぱり絵のありなんですよね。ちょっと表情があったりもしてね。


―― でも、やっぱり並んで歩いている様子とか、すごくリアルな感じがするんですよね。写実の部分と、絵の部分のバランスが面白い。

林:一匹一匹、これは誰々なんてね、名前をつけるわけじゃないですけど、そういう気持ちで、ちょっとずつ変えながら描いていってね。目も下向いたり、細かったりというのがあったりして。ただ、あまりそれを描きすぎて、ばらばらなイメージになっちゃいけないから、本当にちょっとずつ。
中村:でも、結局はみんな似てるのは似てるのよね(笑)。いつも描いてると、だんだんなれてきてしまって、足の位置も同じになってきて・・・。
林:そうなんだよね、みんな同じに見えてくる。
中村:よくよく見ると違うんですけど、似てるけどちょっと違うみたいなね、その辺ですね。


―― 送られてくる入稿のデータには、このありに全部、何ページの何番という番号がふられていたそうで、担当編集者さんもこれには驚かれたそうです。「そうか、みんな違うんですもんね」と思われて。ところが・・・印刷する段階で大変な事が起こったそうで!?

編集者:途中で、「いるはずのありが1匹入っていないんですけど」と、印刷所の人に言われたんです。「ええっ?」ってことになって。「ここのありが出ません」と校正紙を見せられて。それで「探します探します、ありを」って。
中村:編集さんが一番大変で。
林:表情が違うな、と思って描き直したのを入れ替えたんですよね。最後に「入れてください」って言って。そしたらね、1匹だけどっかに行っちゃってて(笑)。もしデータに1匹いなくてもね、印刷で出てこないから。それでひとつ入れ替えたら、何番のありも、もうありの姿を見たらみんな同じに見えちゃって。ちょっと違うな、短いとか長いかとかね。目の動きがちょっとこっちかな、なんて言ったらそれがまた違ってたりする。
一同:(笑)。

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▲写真ですとわかりにくいですが、絵本の中に出てくるありさん全ての画像を出力した資料も見せてもらいました。圧巻です!

編集者:探す時に一回一回画像を開いて、「あ、このあり違う、触角違う」とか、「このありでもない、このありでもない」って(笑)。
林:手順を間違えるとだめなんですよ。最初に絶対これをこう配置するって決めてからやれば良かったけど、やった後に「まてよ。これ、ちょっとビー玉の所のあり、これ変えようか」なんていった時にはもう・・・。それを3カ所ぐらいやるとわからなくなるんですよ。1つだけならいいんだ
けど、ページがかわると「あれっ、何番だったかな」って。


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■ リアルな質感にこだわって     

―― 最後のページは、すごくいいですよね。このクッキーがすごいリアルで美味しそう!というのは勿論、僕が、真上にいるんだっていう状況も浮かびあがってきて。

中村:そう、逆にそのかかわり合いみたいものがないと。ただ見るだけじゃつまんないですしね。このクッキーを描く時も、なかなか大変でね。


―― 実際に作られたとお伺いしました。

林:そうなんです。実際にクッキーを家で作って。それで金づちで割ったんです。
中村:ずいぶんいっぱい作って、幾つも砕いて。

林:少し大き目に作って、真ん中からパーンと割ってね、右の形は、これは残したいな、いいなっていう感じで、みっつぐらいをバランスよく選んでね。それで位置をある程度決めて、写真に撮って。それを見ながら書いたんです。
 最初に描いた時はね、ひどいよねぇ、「泥に見える」なんて言われて(笑)。それから3回目にはね、「ジャガイモの皮に見える」って。ラベルも何もなくて素のままだから、素焼きと同じですよ。だから、断片描いていると自分の絵は石に見えてくる。ところが、現物を見ると、クッキーに見えるわけですよね。それで、技法も色々考えてみて。1回絵の具で描いて、そこに筆に水を付けてね、絵の具をブルブルってやって吸い取らすんですよ。で、もじゃもじゃとした感じが、クッキーに似ているんじゃないかなと思って描いて、1枚描いたらやっと「見える」って。更に粉をふいた感じでちょっと加えてみたりして。
 これが自分のね、もうベストだと思って描きまして。自分は、二度ともうクッキーは描きたくないという感じで。
一同:(笑)。
林:質感が表せないと、ありがいくら来てもね。ありが「おいしい食べ物だな、甘い食べ物だな」というのを思わないと、絵本としてもまとまっていかないですからね。


―― ビー玉の場面もやっぱり質感にこだわって?

林:これはもう、ガラス玉だから、このガラスの感じを描くのは、クッキーよりは易しいですね。あんまり写真みたいにきれいに出来すぎちゃまずいから、一番きれいな出来上がりの手前の段階で。

―― 本当!よく見てみると、縁が少しぼやけて描かれているんですね。


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中村:輪郭も真ん丸というのではなく、少しポチャってして。
林:これでもちょっと、きれい過ぎるのかもしれないですけど。「写真でしょ?」って言われる事もあるんだけど、やっぱり写真に見えちゃうとちょっと。「これ、描いたんでしょう」っていうぐらいのリアル感が一番いいんですけどね。


―― そのビー玉がありの行列に登場するシーンは鮮烈ですね。

中村:やっぱり最初に、赤い玉が目に入ったほうがいいだろうっていうことで、最初のところは赤のビー玉にしたんですね。


―― きれいに列を作っていたありさん達がパッとあちこちに広がる様子とか、また元の列に戻っていく様子なんかが、さり気ない事なんだけど面白くて。そういうのはやっぱり、実際に観察をされたりしたのですか?

中村:そういう観察は、小さい時に経験していますから。子どもの時は、「どうしてありは、前のありに付いて行くんだろう?」みたいに思いますよね。あれは、ありがお尻から誘因物質みたいなものを出すので、そのにおいで付いて行くらしいんですよね。小学校の何年生かの時に、それを聞いて、「あ、そうなのか」って子ども心に納得した覚えがあるんです。だから、迷わずに前に付いて行くんだって。
 でも、ありの行列を見ていると、可愛らしいって思う時もありますけど、ちょっともの悲しいところもありますよね。ひたすら歩いて行くその健気さが、何か可哀そうな感じがして。組織のストレスないのかしらみたいな。


―― そうかもしれませんね。でも、この絵本の中のありにはそんな雰囲気はなくて。

中村:観察している子どものまなざしで描いているのだけれど、あんまり実際にその通りに描いちゃうと、ちょっと残酷と言いますか、不気味な感じになっちゃうから、ユーモラスな雰囲気も出してね。ビー玉に驚いて足をひしゃげさせたみたいな。

林:こういう慌てているところの感じは、実際にありはそうなっているかどうかっていうのは、また別で。
中村:こんなふうにならないですよね。こんな足の形になることはあり得ないです。
林:驚いたり、ちょっとうれしそうな表情をしたり・・・。それがないと、固くなっちゃうからね。全体的に一本調子になると困るので。気持ちを表わしているというのもあるんです。


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■ 色とデザインへのこだわり     


―― ありの行列の絵と字のバランスっていうのも、すごく大きいのかなと思うんですけれども。そういう部分のこだわりはいかがですか?

中村:ほかには何も要素がないですからね。例えば、色々と絵が描き込まれているようだったら、それ程でもないですけど。結局この本は、文章とこのありしかないですし、色もピンクと黒しかないですから。その辺はやっぱりこだわりました。行列を配置する時には、例えば、「はみでない」という文のところは、ページの上ぎりぎりにしてもらうとか、「あ、ななめ、これは絶対やりたいな、いいな」とか。
林:最後はもう、一直線に行った方がいいと。目的物が見つかった時はもうまっすぐに。


―― なるほど。絵本の中でありさんがどう進んで行くかというような事は、ご一緒に考えられたりするんですか?

中村:画面の中をこう行ったりとか、とにかく端っこを行列だけで行きたいなど、最初にそういうレイアウトの希望は私が言うんです。じゃあ、このページにこう来たら、次はどう行くかみたいなのはすごく相談しますね。ここで上に行ったから、今度はこっちに這わせたいみたいなことを。ですから、この本の場合は、最初にイメージはもう決まっていて。「あとは絵を頑張って下さい」って。
一同:(笑)。


―― 表紙の色の鮮やかなピンクがすごく印象的。絵本の中のデザインが出来上がってから決定されたのですか?

林:中のページが白で単純明快ですからね。外側の表紙を複雑にしたり、分かりにくくするとバランスが悪くなるので、中の延長線上で考えて。
中村:描き込まないで、シンプルに、簡潔にね。
林:でも、色は冷たい色じゃなくて、最後に登場するクッキーに合うお菓子のイメージ、お菓子屋さんのイメージでピンクにして。
中村:アマンドみたいな色ですね(笑)、色味的には。(有名な洋菓子屋さんのイメージカラーも鮮やかなピンク!)
林:マゼンダ100パーセントっていう、こんな色を使ったのは初めてでしたね。クッキーというので、オレンジ系というのも考えたんですけど、やっぱり甘いピンクのほうがいいかなって感じがして。子どもっていうことがありますよね。まずは子ども好みっていうイメージもあって。


―― その色味自体に甘さとか、雰囲気とか、そういイメージがあるということで使われているんですね。

中村:中がけっこうクールなので、外側は甘ったるく。表紙も同じイメージだったら冷たくなってしまうでしょうしね。
林:他の本と違った方が、パッと見て目立つというのもありますけどね。


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―― この表紙の字体も林さんがデザインをされているそうで。

林:そうですね。最初は普通の活字を使っていたんですけど。これは、一度太いマジックインクで、「あ」からずっと書いて、ある程度スタイルがこれでいいなというのを選んで、置いてみて。書面にしたときに、これでいいかなと決めてから、それをトレースして。それで、柔らかく描きすぎたものを、固めにまとめたんですね。ただ、あんまりそれも、冷たい感じじゃなくて。そうやって「あ」から「ん」まで全部作っています。そのあと片仮名、平仮名を作って置いてあるので、それで文章もまとめようと思えばまとめられたんですけどね。実際にやってみたら、作り過ぎた感じでよくなくて。結局、中は活字なんですけど。今後、機会があれば、それを文章にもできるかなと思って自分でファイルしてあるんですけどね。
中村:その辺は、この人はイラストレーターじゃなくてデザイナーですから、職業柄そっちのほうのこだわりが強いですね。


―― この帯の文章は中村さんが考えられたそうで!すごく効果的ですよね。ああ、そういうふうに読めばいいんだっていう導入をしてくれる。プロの方にはとても失礼なんですが(笑)、さすがと思ってしまう。

中村:ええ、これはちょっと苦労したんです。自分のものに帯のコピーを付けるというのは、いいのかしらっていうためらいがありましたので。でも、まあ、やらせていただいて。自分のものを宣伝するみたいな感じは避けて、「見つめることや見守ることは愛することに通じる」という思いを込めました。

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▲帯文の前、後より。




■ 完成してみて・・・     


―― 子どもたちにはどんなふうに楽しんでほしいですか?

中村:やっぱり、今のお子さんというのは、マンションの上の階に住んでいる方も多いですよね。昔だったら、ありなんかは誰でも一度は見たことがあるんじゃないかと思うんですけど、庭もなくアスファルトの道を通って幼稚園へ行くようなことがありますから、そういう機会が減ってますよね。こういう絵本をきっかけに、どこかの道を歩いたときにありがいて、「あ、ありだ」なんて目を止めてくれたら嬉しいな、と思います。まずはそれがきっかけになって、更に行列まで見つけてくれたら、すごく嬉しいですね。今はなかなかね、そういうのを見る機会もないんじゃないかって思うんです。


―― 完成してみて、面白かったとか、大変だったという部分はありましたか?

中村:作っているときはそれなりに頑張って大変なつもりでいて、このページをもっと良くできるかな、というのがありますね。できてしまうと、「あ~、こんなものか、大河の一滴」って感じなんで、ちょっとがっかりするんですけど。
一同:(笑)。


―― じゃあ、わりとできあがる工程を楽しまれているんですか?

中村:そうですね、どっちかって言えば、そう。でも、たくさんある絵本の中の1冊ですから、「この絵本がどこかで目に止まるかしら」っていう思いがいつもありますね。
林:作っている時が一番盛り上がるというのは、誰でもそうじゃないですか。絵本ができたときは、今までで一番いいものができたと思って、やっているんです。
中村:この人はね、いつもそう言っているんです。
林:もう、その時期はね、これが一番いいものだって思ってますよね。
中村:平和な人です。
一同:(笑)。


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■ 初めての絵本、『ふしぎなナイフ』     


―― 絵本作家としてのお二人についても、少しお伺いいたします。最初の作品は『ふしぎなナイフ』。それまでお二人とも広告に関連するお仕事をされていたと思うのですが、絵本を描かれるというきっかけは何かあったのでしょうか?

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ふしぎなナイフ』 中村牧江・林健造 さく 福田隆義 え 福音館書店


中村:『ふしぎなナイフ』を制作していた頃は、本当に絵本業界とは全然関係なくて、広告の世界で仕事をしていたわけですね。林が、「絵本をやりたい」っていうことを常々、言っていたけれど、何となく聞き流していて。ただ「ナイフのフォルムがすごく美しい」「ナイフの形にひかれる」なんてことを言っているのは心にとまっていたんです。
 何かの時に、それだったら、ナイフで絵本ができるんじゃないかなと思ったんですね。じゃあ、どうやったら絵本ができるかなって思ったときに、絵本のことは何にも知らないですからね。知らない強みというのもあって。

 よく子どもがお膳に水なんかをこぼすと、すぐ手のひらでばーっと触りますよね。そうすると大人は「いけません」って言うけど、いたずらをしているんじゃなくて、全身で確かめているんですね、こぼした水の感触とかいろいろ。だから、もしナイフを持たせたらやっぱり、いろいろやるんじゃないかと。
 ナイフに限らず、小さい時に、お茶わんをおはしでチンなんてやると、「そういうことをしちゃいけない」って叱られましたよね。大人が見ると、食器をおもちゃにしちゃいけない、というのがありますけど、子どもに、もし自由に手に持たせたらやっぱり、引っ張ったり、つまんだり、落としたり、試したいんじゃないかなと。最初はそういう感じで考えていて。さらにそれをもっとシンプルにしてったのです。

 こういう絵本って今までなかったと思うんですけど、それは私たちがなまじ絵本は、こうあるべきだということを知らなかった故だと思います。

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―― 確かに、視点や発想の出発点がちょっと違う気がしますね。

中村:だから、出版社に何社か持って行ったいきましたけど、みんな「駄目」って言われました。要するに、「こんなものあり得ない」といった感じですよね。
林:「ナイフなんて、危険だ」というのはね、よく言われましたよ。
中村:「言葉が少ないから、すぐおしまいまで行っちゃうじゃないか」とも言われましたね。お母さんは、「買っても損をした」と言うって。どんどんめくって、あ、ねじれる、はい、折れる、はい、すぐ終わりってなるから、「そんなものにお金出して買わないですよ」って言われたこともありますね。でも自分達は気に入っていましたから、めげずに何社も回って。
林:採用して下さった編集の方は、「いや、刺すナイフとこれは別のものだから」って、最初にそう言ったんですよ。「今までこういう風に言われたけども」と言ったら、「いや、それは違うものだ」「面白い」と言って。「これは作りたい」っていう結論が出たんですよね、その場で。
中村:それで、その頃は、林がリアルな絵を描くのにもう一つ自信がないっていうんで、福田隆義さんに描いてもらって。その方は広告の世界でリアルな絵を専門に描いていらしたんですよね。それでお願いをしたわけです。

 例えば、自分では、「ほどける」っていうページが気に入っているんです。やっぱり子どものころに、昔、母親がセーターなんかを編んでくれるときに、古いセーターをほどいているのを、手で持たされて巻き取っていくような、そういう経験があったものですから、すぐに「ほどける」というのを思い付いたんです。
 大きくなったり小さくなったりっていうのはそれこそ、『ガリヴァー旅行記』じゃないんですけど、視点を変えれば、すぐに関係は逆転するわけですよね。それで「ちぢんで」っていうようなことを思いついて。


―― この絵本は発売されてから20年ぐらい経っていて、いまだにすごく人気があって、沢山の反応があるかと思うんですけど。そういう状況について、どう感じられますか?

中村:それは、もの凄くありがたいことですし、励みにもなるし、やっぱり嬉しいですね。何て言うんでしょう、ささやかな幸せを感じますね、そういう声を読んだときにね。作った時は、そういうことも何も考えていなかったんです。ただ自分たちで気に入っっていたというだけで。
 今までのレビューの中で、一番嬉しかったのは、どなたか忘れましたけども、お母さんだったと思うのですが、「この世の中に、こういうくだらないことをまじめに考えている大人がいるっていうことが、すごく嬉しい」とあったんですよ。「ばかなやつね」って言って下さって愛して下さっている、という感じがとても嬉しかったんです。



 

■ 子育てと絵本と・・・     

―― 絵本を制作される時のヒントとして、ご自身の子どもの頃の記憶の他に、子育ての経験も影響されているのでしょうか?

中村:自分が小さかったときの記憶と、自分が子育てをしたときの記憶、両方ですね。『てをみてごらん』は、子どもを、公園に連れて行った時に、ちょうど桜の終わりかけの季節で、花びらがバーッと散ってきたんです。そうしたら、何度も子どもが手で受け止めようとして、そのときに、「ああ、子どもってこういうことするんだ」と思って。必死でこうやって受け止められないんだけど、一生懸命こうやって、そういうイメージですね。だから、やっぱり自分の経験した事と、子どもってそうなんだっていうのが、基調になっているんですね。

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てをみてごらん』 中村牧江・さく 林健造・え PHP研究所


―― その作品でもやっぱり、言葉と絵が同時に浮かびあがって?

中村:ええ。ほとんど同時進行ですね。アイデアというものが浮かんで、それで全体の構成っていうのか、流れが同時に浮かんでくるんです。すると(林さんが)紙で上手に作ってくれる。前に、何か紙でやっていたなということを知っているから、「これを紙でやらない?」みたいに持ちかけると乗ってきてくれて、それできれいな手を紙で作ってくれるっていう感じでしたね。


―― そうやって、どんな絵を描くのかなっていうのを熟知されていて、アイディアの段階からもう組まれているっていうのは凄ことですよね。そんな林さんにとって、絵本というのは、もともと意識はされていたんですか?

林:(絵本を描く前は)僕はデザインをやりながら、生活を含めてね、一生懸命仕事を覚えるとか、いい仕事をしようと広告の方に夢中になっていましたね。
 一方で、書店に行った時に、自分の為に買ってきた絵本3冊がありましてね。日本の作品ではなかったんですけど。自分が絵本を作れるとは思わなかったんですけど、楽しむほうならいけるだろうなと思って。広告の仕事と絵本はちょっと距離があったという事もあって、一般的な感覚で「これは面白い」というのはありましたね。魅力は感じていたんですよね。(その選んだ絵本も)いい絵本でしたしね、展開も面白い。展開がいいっていうのは興味を惹きますね。広告の仕事をやっていたというのもあるのかもしれないけど、1枚のこの画面で見てっていうんじゃなくて、次はこの流れで、何もないけど、前との関係でいいとかね。そういう特性みたいなものが絵本の中にある面白さというのか、最後に閉じたときに、「何か、よかったなあ」という感じがありましたね。

中村:と言いつつもね、自分の子どもが絵本を読む年ごろのときに、殆ど読んでやったことないんですよ。
一同:そうんなんですか (笑)。
林:自分がね、やりたいことがね、そのときは目いっぱいあったんですよ。それは、言い訳かもしれないね。

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中村:私はもう、母親ですから。私はけっこうたくさん読んでやっているんですね、子どもに。あとは紙芝居なんかも、よく図書館で借りてきてやったりしてね。
 それが、子どもが幼稚園なんかに行きはじめて、忙しさが一段落したころに、林が「絵本を作りたい、作りたい」って言いだして。言うだけだけだったの、それも。実際、子どもに絵本を読んであげていないし、買ってこないしっていう人が、何で「作りたい、作りたい」って言うのかなっていうようなね。でも、そんなに作りたいんだったらやっぱり、この人が興味を持っている世界というのはある程度分かりますから、そのなかで、何か考えればできるんじゃないかみたいな、そういう感じですね。
林:自分だけが楽しみたいという気持ちがありますし、身内のほうは何となく照れくさいですよね。
中村:わが子に絵本を読むのが照れくさいって。ねえ。
一同:(笑)。


―― 絵本の制作は、お子様が少し大きくなられてから?

中村:ええ、そうですね。上の子が小学生で下の子が幼稚園ぐらいだったと思います。それでも子どもの反応を見ながら作る、そういうゆとりはなくてね。それよりは、自分たちが面白いなと思うものを作っていましたね。ですから、子どもが生まれたことで作品内容が変化したっていう事はなかったですね。



■ 絵本づくりのおもしろさ     

―― 絵本をつくられるようになって、一番面白い瞬間というのはありますか?

中村:それはやっぱり、自分が何かのアイディアを言ったときに、乗ってきてくれた時ですね。もしかして独りよがりかも分からないけども、自分がいいなと思って、こういう感じで、こういう構成で、こういうふうに使ったらどう?って言って。「あ、それ行こう」という風になった時。何か出来そう、生まれそう、という時ですね。
林:逆もありますよ。僕が、「絵の面白いの、考えたんだけどな」と言うと、「面白くないねえ」って言われて(笑)。そういう時はね、どんなにしてもね、そこはもう絶対に駄目でね。面白いと思っているのになあ、って言うのは沢山ありますよ。
中村:やっぱりほら、どうでもいいアイディアでも、他人だったら、よく考えてから言おうとかっていうのがありますよね。だけども、身内だからって、お互いにちょっと一言つい言っちゃうと、「ええ」って、「よくそんなこと言うわね」って(笑)。


―― お二人の視点から見る絵本というものの捉え方は、他の作家さんとはまた違うのかなと思うのですが。

中村:そうですね、優秀な絵本作家の方っていうのは、子どもというものをよく分かっていらして、こういうふうにしたら子どもが喜ぶだろうとか、こういうふうにしたら受けるだろうってすごく心得ていらっしゃる。私たちはいまだに分からないようなところがたくさんあって、案外と自分が子どもっぽいようなところから入っていくんです。こうしたら子どもの為になるとか、こうしたら今の子に受けるという風にはあまり考えない、考えられないんですよね。そういうのを度外視したところで、自分たちが面白いかどうかで作っているみたいなところがありますね。


―― なるほど。では、今後こんな絵本を作ってみたいというアイデアは、たくさんあるのでしょうか?

中村:やっぱり、その時まかせなんですよね。だから分からないんですよね。そこがやっぱり、絵本作家っていうことではないと思うんです。いまだに何て言うか、絵本作家なんて言われると、そんな大それた存在じゃありませんていう感じで、自分で引いちゃいますね。
林:シリーズとか、続きものはあんまり出てこないかもしれません。1冊1冊がその時によって生まれてくる作品ですから。プランも違いますけど。それに、全然違うものをやりたいなという気持ちはいつもありますね。



■ 絵本ナビ読者の皆さんへ・・・      


―― 最後に、絵本ナビ読者の皆さんに向けて、簡単なメッセージをお願いできますか?

中村:絵本って、長くても開けている時間はせいぜい5分ぐらいですね。でもその5分の間に、お母さんと子どもなのか、お姉ちゃんと弟なのか分かりませんけど、誰かと誰かがちょっとだけ楽しい、ちょっとだけ違う世界に入り込めるっていう、その事が一番嬉しいですよね。見知らぬ誰かが、どこかでそういう時間をほんの5分持ってくれるっていう事が。その事が喜びというか。だから、こう読んでくださいなんて、そんなことは全然もう思いません。とにかくほんのひと時だと思うんですけど、どこかの誰かがちょっと、目と目を合わせてニッコリしているっていうことがあったら、もうそれで十分、それ以上は何にもいらないという感じですね。

―― 林さんはどうでしょうか?

林:うーん、思い付かないねえ。
中村:見てくれる人がいれば幸せっていう。
林:そう、それですね。
一同:(笑)。


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ありがとうございました!

 インタビューの内容からも伝わっているかと思うのですが、とにかくお二人の呼吸がぴったりといいますか、面白いといいますか(笑)。笑いの絶えない、楽しくて優しい時間を過ごさせて頂きました。
 タイプは全然違えど、広告や美術の世界の第一線で活躍されてきたお二人。同時に「これは面白い」と思われた瞬間に、新しい作品が生まれてくるというのが、とても新鮮で印象的なエピソードでした。

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▲最後に記念にパチリ。

 今回取材にご協力頂いた、編集の方にとっても、お二人の存在は特別だったそう。大人になってから出合った『ふしぎなナイフ』という絵本に衝撃を受けられて、いつかお仕事ができればと思っていたそうなのです。『ありさんどうぞ』のラフを見た時に、お二人ならではのデザインセンス、子どもにこびたところがない、そういう部分がやっぱり魅力なんだと改めて思って、「これは是非やらせてください」とおっしゃったそうです。

 そんな大切なこの一冊もまた、世代を超えて子ども達に親しまれていくといいですね。

2010年02月26日

「100かいだてのいえ」シリーズ
岩井俊雄さんにインタビューしました!

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縦に開く表紙、めくりながら100階建ての家を順番にのぼっていって・・・。
発売と同時に、あっという間に子どもたちの心をつかんでしまった絵本『100かいだてのいえ』。
作者は本格的な絵本は今作が初めての岩井俊雄さんです。
更に、下へ下へとおりていく『ちか100かいだてのいえ』まで登場!
一体、こんなアイデアはどこから生まれてきたのでしょう?岩井俊雄さんってどんな方なのでしょう?

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先日、丸善ラゾーナ川崎店さんで開催された「みんなの100かいだてのいえをつくろう!」というワークショップにお邪魔してきました。

★その様子はこちからからどうぞ!>>>

そして、ワークショップを終えたばかりの岩井俊雄さんにインタビューをさせて頂きました!
絵本「100かいだてのいえ」シリーズについて、また絵本作家としての岩井俊雄さんについて、興味深いお話を沢山伺うことができました。

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岩井俊雄(いわい としお)
1962年生まれ。メディアアーティスト。子供の頃に母親から「もうおもちゃは買いません」と言われ、かわりに工作の道具や材料を与えられたことからものづくりに目覚める。1985年、筑波大学芸術専門学群在学中に第17回現代日本美術展大賞を最年少で受賞。その後、国内外の多くの美術展に、観客が参加できるインタラクティブな作品を発表し、注目を集める。テレビ番組『ウゴウゴルーガ』、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示『トトロぴょんぴょん』『上昇海流』や、ニンテンドーDSのアートソフト『エレクトロプランクトン』、ヤマハと共同開発した音と光を奏でる楽器『TENORI-ON』なども手がける。2007年、NHK教育の幼児番組『いないいないばぁっ!』のオープニングアニメーションを担当。現在ふたりの娘の父親として、書籍やブログを通して親子の創造的な関係を広めようと精力的に発信している。著書に『いわいさんちへようこそ!』、『いわいさんちのどっちが?絵本』シリーズ(全3冊)、『いわいさんちのリベットくん』(以上すべて紀伊國屋書店)、『100かいだてのいえ』(偕成社)がある。

様々な活動をされてきているからこそ、岩井さんの目を通して語られる「絵本」の話の内容はとても新鮮!じっくりお楽しみください。



■ 絵本『100かいだてのいえ』を描くきっかけ     

“メディアアーティスト”という肩書きで国内外で多くの作品を発表されている岩井俊雄さん。一方で、娘さんと家の中での遊びについてまとめられた本『いわいさんちへようこそ!』でも大きな話題を呼びました。そんな岩井さんが手がけられた初めての描き下ろし絵本が『100かいだてのいえ』です。

―― 絵本『100かいだてのいえ』を描かれることになった、きっかけというのを教えて頂けますか?

 まず大きなきっかけとして、『いわいさんちへようこそ!』という本があるんです。

Ehon_34646.jpg 『いわいさんちへようこそ!』 岩井俊雄著 紀伊國屋書店

 僕はメディアアーティストとして作家活動を長くやってきて、特に知られていたのはハイテクを使って映像と音楽を組み合わせた作品や、子ども番組『ウゴウゴルーガ』のCGキャラクターなどでした。この本を出した時、あの「ハイテクの岩井俊雄」が、家では子どもとこんなアナログなことをやってるんだ、という驚きもあったのか、かなり注目されて。そして、この本を見た偕成社の編集者の方から「絵本を作ってみませんか?」と連絡をいただきました。『どっちがへん?』(紀伊國屋書店)という絵本を出してはいたんですが、まだ発売直後で多分ご覧にはなってなかったと思うんですよね。


―― 岩井さんご自身は、もともと絵本には興味を持たれていたのでしょうか?

 小さい頃はもちろん絵本は大好きでした。「こどものとも」(福音館書店)をよく読んでいましたね。それから、漫画やアニメを通過して、高校に入って美術部に入ったのをきっかけに美術やデザインなどに興味を持ち始めたんです。ちょうどその頃は、安野光雅さん、福田繁雄さんといった方々が注目されていた時期。特に安野さんの絵本は『旅の絵本』、『ABCの本』 など、ビジュアル的に美しいだけでなく、すごく実験的。僕はもともと科学や機械が好きだったんですが、安野さんの数学やだまし絵などを取り入れた絵本を見て、「こんなものが絵本と結び付くなんて」とすごくショックを受けたんです。それからというもの、絵本を作品として見るようになりました。「ピーターラビット」シリーズにしても、精密な水彩画といい、本自体の完成度といい、本当にアート作品に近い。「絵本はすごい。こんな世界が表現できるなら、いつか絵本にも挑戦してみたいな」って高校の頃は思っていました。

 ただ、その後大学に進んでからは、絵本のことが頭に引っ掛かりながらも、ハイテクを使って映像やアート作品を作ることのほうが面白くなってしまったんです。それからずいぶんたって、子どもが生まれたのをきっかけに、『いわいさんちへようこそ!』に載せたようなアナログな表現に戻ってきたんですよね。


―― そして、その本をご覧になった偕成社の方に、今度は「絵本をつくりませんか」と声をかけられて・・・。

 『いわいさんちへようこそ!』を見て、「この人はもしかして絵本を描けるかも」と思ってくれたそうなのですが、それが僕としてはものすごく嬉しかったんです。メディアアーティストとしては、手描きで絵を描いて作品にするという事はまったくやっていなかったし、自分の絵にはぜんぜん自信がなかったんです。娘と遊ぶときだけ、別に他の誰にも見せるものではないし、手描きもたまにはいいかな、という程度の気持ちで描いていた。でも、そんな僕の絵に、プロとは違ったよさを見つけて声をかけてくれたので、素直に「うれしい、やってみたい」と思ったんです。僕にしてみれば、20年ぐらいお預けにしておいた絵本への思いというのが、急に蘇ってきたような感じがあったんですね。

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■ 自分らしい絵本ってなんだろう     


―― そこから具体的に絵本の制作に入っていく訳ですね。どんな風にアイデアが固まっていったのでしょう。

 『いわいさんちへようこそ!』の中で紹介した遊びやおもちゃは、作品的に作ったものじゃなくて、例えばトイレトレーニングのためにシール遊びをしたり、レストランでぐずった娘を、僕が箸袋を使っておもちゃを作ってあやしたりという、すごく現実的な生活の中で生まれてきたものです。絵本のアイデアも、できれば同じように生活の中から自然にでてきたらいいなって思いました。

僕は、絵本そのものだけじゃなくて、作者の生き方や、絵本が生まれた経緯なんかにも昔からとても興
味を持っていたんです。例えば、『ピーターラビット』は、作者のビアトリクス・ポターが病気の男の子に宛てた手紙から生まれたという話や、レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』は孫との遊びが絵本になった、というエピソードなど、昔からいいなあと思っていました。あとトールキンの『サンタ・クロースからの手紙』という本が、高校生の頃大好きで。いつか自分が親になったら、ああいうお父さんになりたいと思っていましたね。

 そういうこともあって、僕も子どもとの付き合いの中から自然に絵本のテーマが生まれないかな、と漠然と思っていました。その頃、ちょうど娘が小学校1年生になって、数字の繰り上がりで苦労しはじめたんです。それを見て、「これは絵本になるかもしれない!」と。


     
―― 『100かいだてのいえ』のアイデアのベースは「子どもに算数を教える」というやり取りからだったんですね。

100kai_2.jpg  『100かいだてのいえ』 岩井俊雄・作 偕成社

 そうなんです。昔、安野光雅さんのアルファべットや数字をテーマにした絵本に興味があったこともあって、自分なりの数字の表現を絵本でやってみたいな、と思い始めました。

 また一方で、僕はメディアアーティストとして、コンピューターでもテレビでもゲームでも、当たり前になっている表現をちょっとずらして新しくする、ということをずっと追求してきたので、絵本というお題をいただいた時にも、自分らしい何か新しい表現ができないか、という気持ちもあったんです。

 そうやって数字のことと、新しい表現のことを両方考えていく中で、建物をモチーフにした縦に開く絵本、というアイデアが生まれてきました。「数字が増えていくんだったら何で表現しようか。リンゴを並べるのか。それじゃ面白くないな。数字が増えていく感じを実感できるモチーフはないかな……そうだ、建物を登っていくのがいい。じゃあ絵本を縦に開いて高さを表現したらどうだろうか?」と、自然につながっていったんですね。

 『100かいだてのいえ』を出したら、縦に開く絵本、というのが注目されたことに加えて、ちょうど子どもが数字に興味を持っててすごく食いつきが良かったとか、子どもが100まで数えられるようになりました、とすごく喜ばれて。やはり、どこの家庭も同じなんだ、身近なところからテーマを見つけてよかったな、と実感しました。


―― 岩井さんの目を通して、「絵本」というものにどう向き合われながら制作されていったかという部分に、とても興味を持ってしまいます。

 いきなりバーンと全部のイメージが浮かんだわけじゃなくて、絵本に対して素人だったということもあったので、少しずつ手探りで面白いことを見つけながら作っていったという感じです。その時に支えになったのは、普段から子どもたちと同じ目線で遊ぶ、おもしろがる、ってことをずっとやってきたことかなと思うんですけどね。

 わが家の子どもたちとの暮らしについてブログに書いているんですが、子どものちょっとした遊びや発見の中にも物語があるなあってすごく思うんです。例えば、子どもが身近なものに何か面白さを見つけて遊びが始まり、それをさらに発展させていくうち、たまたま近くにこういう材料があったからこうなったとか、その遊びの過程をつぶさに書いていくと、本当に1つの物語みたいになってくるんですよね。それがすごく面白い。絵本になるかも、って思うようなエピソードもかなりあります。
 逆に、例えば買ってきたおもちゃを、いきなりドカンと渡すと、もうそのおもちゃで満杯になっちゃって物語は生まれない。完成形が見えないからこそ、手探りで少しずつ作り上げていく過程が、遊びでも絵本でも一番面白いですね。



■ 体験していく絵本     


―― この絵本に寄せられているレビューを読んでいて面白いなと思うのは、この絵本を例えば夜とか読み聞かせしていても、とにかく時間がかかって大変という声が多いということ。確かに、建物の絵というだけでもワクワクしてしまいます。更に1階から順番に部屋を一つ一つたどっていって。細かく見ていくところがたくさんあって・・・。

 2本の小さい指で、階段をたどってくれたりするのを想像するとね、もうたまらないですよね(笑)。

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―― たまらないですね。でも時間は当然かかるだろうなと(笑)。

 実は、読み聞かせというのはあまり想定していなかったんです。この絵本の制作がスタートした頃、僕は長女とは手作りおもちゃを熱心にやっていたので、絵本の読み聞かせをする父親じゃなかった。今は下の娘に徐々に読み聞かせするようになったんですけど。実は、僕自身読み聞かせをしてもらった記憶がほとんどないんです。僕は早くから文字が読めたらしくて、勝手に読んでたって親が言ってました。それもあって、僕の絵本のイメージは、読んでもらうものではなくて自分でめくって読むものだったんですね。

 『100かいだてのいえ』は最初、安野さんの『旅の絵本』のように、文字のない絵本にしようと思っていました。初めのプランはもっと幅の狭い細長い絵本だったんです。だけど、編集さんから「これはストーリーがあった方が良くなる」というアドバイスがあって、文章を入れることにしました。その分、本の幅も広げることになって。結果的には、ストーリーをつけて正解だったなと思っています。本の幅を広げたことで、周りの風景も見えてきたのもよかった。そういう試行錯誤がありました。


―― こんな風に読み聞かせて・・・というよりも、自分でたどっていって楽しむ様子を想像しながら作られていたんですね。

 僕自身が子どもの頃そうだったので、1人遊び的な絵本を想定していたんです。
 逆に、絵本が出版されてから、色々な方から「寝る前に読み聞かせをしています」とか、「幼稚園でも読み聞かせをしました」って聞いてびっくりしたんですよ。縦長で、絵が細かいこの絵本を、多人数の前でどうやって読み聞かせするんだろう、と。自分の中では読み聞かせのイメージがなかったので、「そうか、絵本は基本的に読み聞かせされるものなんだ」という、軽いカルチャーショックを受けると同時に、読み聞かせを考えてなくて申し訳なかったな、と思い始めました。でも、子どもたちがとても楽しんでいる、と聞いてホッとしました。絵本に関してはそれくらい素人だったんですよね。
 だから、『100かいだてのいえ』のビッグブックを作れることになった時は、「これは読み聞かせに絶対に向いたものにしよう」と思って、思い切って開き方を変えて縦長にしたんです。


―― このビッグブック、形を見ただけでもワクワクします!

Ehon_30115.gif 『ビッグブック 100かいだてのいえ』 岩井俊雄・作 偕成社



■ 絵本で好きなものを描ききる     

中を開けば、子どもたちが時間を忘れて夢中になってしまう程様々な動物達と色々な部屋が描かれているんです。具体的な部屋のイメージのアイデアについても少し伺ってみました。


―― 『100かいだてのいえ』の中に登場する様々な動物たちと、そこからイメージされた部屋の数々がとても面白くて。そういう具体的なアイデアというのは、家の中からだとか、娘さんとのやり取りの中から生まれてくるのでしょうか?


 まず最初に描いたのはネズミの階なんです。このイス、テーブル、照明などの雰囲気、実は自分の家を参考にしているんですよ。キッチンとか置いてある皿や鍋とか、まさにこんな感じ。うちの奥さんは見て苦笑してましたけど(笑)。家そのものはこんなじゃないですけどね。でも、家具とかの絵を描き始めてハッと気がついたんです。家にある家具や照明というのは、自分が気に入って買ったものばかりです。絵本で描く部屋のインテリアや家具も自分が気に入るように描くわけだから、ああ、一緒だなって思ったんです。自分で家を建てて、いろんな家具や照明などを一生懸命選んだ体験が、絵本作りにもすごく活きたんですよね。

 わが家での子どもたちとの遊びも絵本の中にかなり引用しています。キツツキが飛ぶ練習をしているターザンロープは、似たものがうちにもあるんです。地下の仕事場の天井をロープでつないで遊べるようにしてあって、子どもたちに大人気。そういう現実の遊びは、絵本の中でもリアルに楽しさが伝わる気がしますね。


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 ネズミの家からスタートしたのは、まずは人間と同じような家を描きたいと思ったからです。ネズミは人間の家に住み着くなど、どこか人間っぽいイメージがあるので。急に突飛な家から始まるよりも、人間に近い家でスタートして、徐々にそれがリス、カエル・・・とずれて変わった家が登場していく、ということを考えました。普通の部屋を、それぞれの動物に合わせたインテリアや家具に段々と置き換えていくのがすごく楽しかったですね。


―― それぞれの部屋には岩井さんの好きなものや形がたくさん描かれているんですね。

  当然ですが、やっぱり好きなもの以外は描けないですよね。嫌いなものを描く必要もないし。
例えば、好きな家具をいっぱい家に揃えたいと思っても実際にはお金の制約があるし、売っているものが100%気に入ることもなかなかないですよね。この部分や色が気に入らないとか、もうちょっと小さければいいのに、なんてこともあります。現実の家の中って、いろんな妥協によってできてる世界ですよね。
 ところが、自分が絵で描く部屋は妥協する必要がないんですよ。とにかく好きなものだけを詰め込める。これまでメディアアートでいろいろな作品や空間を作ってきましたが、常に材料だの機材だの、妥協したりあきらめたりする部分が大きかったんです。それが、絵本を描き始めてみたら、「絵本というのは、一個も妥協しなくていいんだ!」ということに気がつきました。あたりまえかもしれないんですけど、まったく違った分野でもの作りをしてきたので、「思い切り好きなものばかり描ける」というのが目からうろこでした。
 自分がその動物になりきって住みたい家を考える作業も楽しかったです。実際に我々が、こんな変わった部屋に住んだり、変な形の家具を使うのは難しいと思うんだけど、まず動物を10種類決めて、その動物になりきって僕が家をデザインするつもりで、それぞれの動物の個性から家の様子を発想していきました。


―― それでは、この作品を作った後というのは、もう、本当にすっきりされたという感じですか?

 そうですね。確かに部屋を100個考えて描くのには苦労しましたが、自分の頭の中にある「こういうものが自分は好き」というのを全部出しきる満足感をこれだけ感じたのは、絵本が初めてでした。
 また、そんな風に自分を出し切って描いた絵本を、今度は子どもがすごくリアルな体験として読んでくれるのがうれしいですね。例えば、これが額に入った1枚の絵だったら、「面白い絵だね」とは言ってくれるかもしれないけど、本当に登っていく感じを体感する様なところまではいかないですよね。それが、絵本の場合はただ絵を見るんじゃなくて、自分でページをめくる。ページをめくることで、本当に上に登って いく気分になれる。
特に僕の絵本の場合、ページめくりが単なる場面転換ではなくて、自分がその空間を進んでいくのをリアルに体感できるようにしたところが特徴だと思うんです。今までメディアアーティストとしてインタラクティブな作品を作ってきたので、それと近いことを絵本でもやりたかったんですよね。


―― 最後の、エレベーターでピューって降りて家に帰る、という場面も、すごく好きです。

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 100階まで一生懸命登ったあとは、一気に降りたら面白いな、というイメージは最初からありました。それで、エレベーターを使おうと思ったんですが、エレベーターがあるなら、どうして最初からそれを使わないのか、そこをちゃんと描かないといけないと思ったんですね。それで、一番上の階ににクモがいる、というイメージが段々出来てきたんです。

 そもそも、この『100かいだてのいえ』に登場する動物は、小動物や虫など、家や巣の中にいそうなものを選んだんです。鳥なら、木の洞の中に住んでいるキツツキとか。ライオンとかゾウとか、サバンナで走り回ってたり、大きい動物は似合わないので出しませんでした。それで、一番上を誰にするかという時に、一番上に住む動物がこの家全体を造ったことにしようと考えたんです。つまり、最後の種明かしとして「あ、このひとたちが造ってたんだ!」と驚かせつつ、それがこの家のオーナーで、これまでの動物たちは間借りしていたんだ、という状況もなんとなく伝えようと思って。

  で、家を造る、巣を作るみたいな所から考えるうちに、クモがひらめきました。そして、クモが自分のおしりからピューッと糸を伸ばして降りてくるイメージが、エレベーターにつながると思いついたんです。でも、最初からエレベーターがあるのはまずい。それで、「工事中」でまもなく完成するところ、という設定にしました。完成したばかりのエレベーターに一番に乗せてもらうとか、それによって物語性を深められたと思います。そういった細かい設定は、最初の縦に進んでいく建物にしようというアイデアから、少しずつ僕の頭の中に固まっていったイメージなんですね。



■ 次は下へ下へ・・・『ちか100かいだてのいえ』     

『100かいだてのいえ』は大好評!そして続巻として登場したのが『ちか100かいだてのいえ』。今度は下へ下へとおりていく地下100かい建ての家のお話です。主人公も女の子に変わって、めくり方も上と下が逆になって。その新作についても伺ってみました。

tika_2.jpg 『ちか100かいだてのいえ』 岩井俊雄・作 偕成社


―― 続いて登場したのが『ちか100かいだてのいえ』。今度は地下の家のお話ですね。最初からアイデアはあったのでしょうか?

 前作の『100かいだてのいえ』を作るときに、コピー用紙でダミーを作ったんです。その時に、何も考えずにカレンダーの様に上を綴じました。それでめくってみると上にいかないで、下へ下へいく感じがしちゃったんです。普通、縦開きの本を作るというと、上をとじますよね。だから僕も何気なくホチキスで綴じた側を上にして絵を描いたんですが、「あれ、なんか上にいかないなあ」と。それで上下逆にして作り直してみたら、うまくいったのでホッとしました。
 その時にふと「待てよ。本を逆に綴じれば下にいく話ができるってことだな」と思ったんです。その後『100かいだてのいえ』が完成に近づいてきた頃には、段々と僕の中でイメージがふくらんできて、担当さんに「次の絵本がもし出せることになったら、今度は地下が描きたいです」なんて半分冗談で言っていました。
 その頃から、地下だったら温泉の噴き出す力で動くエレベーターとかどうかな、などと温泉や火山のイメージを、最初から考えていました。


―― 『100かいだて』と『ちか100かいだて』は対になっていて。『ちか100かいだて』の方は、当たり前ではあるんだけれど「土」の匂いがすると言いますか、「生活感」というのがより漂っているような気がしますね。

 100個の部屋が縦につながっているという基本構造は踏襲するとしても、前作と同じと思われてはまずいので違った感じ、例えばちょっと暗くて怖い雰囲気にしたいなとか考えていました。でも、具体的に描き始めてみてすごくよくわかったんですけど、『100かいだてのいえ』のほうは背景が空。基本的に空って何もないんですよね。雲が浮かんでいたりするぐらいで、本当に文字通り「空っぽ」ですよね。例えば、ミツバチやキツツキが食べものを運ぶ、ミツを集めたり虫を集めたり、というのも、結局空からではなく地上から運んでこなけりゃならない。ところが地下の場合は、家の周りにある木の根っこだの、土だのから直接恵みを集められる。ぜんぜん違うな、と思ったんです。


―― なるほど!言われてみればそうですね。

 よく考えると僕らが使ってる木や石などの家を造る素材や、野菜や果物などの食べものって、全部地面からきてますよね。だから地下のほうが生活感がリアルに出せるんじゃないか。僕らは大地に守られて生きてるんだ、というと大げさだけど、そういう感覚が伝えられるのではと思い始めたんです。それで、動物たちが家の周りにある土や木の根っこや、宝石や金などをうまく利用して自給自足的な暮らし方をしている風景を描いたんです。それは僕が自分の家でそういう暮らし方をしたいなと思ってることもあるんです。庭で家庭菜園やったりとか、身近な材料でおもちゃを作ったりするような自分の生きる姿勢ともつながってるんですよね。


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―― 「上へ上へ」という世界と、「下へ下へ」という世界というのは、実はすごく違うものなんですね。

 実際に、世界には100階建て以上の建物はあるけど、地面の下に100階もある建築っていうのは多分ないと思うんです。だから、逆に自由に面白く想像できました。それから地下の場合、自立した塔として描かなくてよいので、ダンゴムシの階のように部屋と部屋を自由につないだ家も描けました。

 あと、前作では住んでいる動物同士の関係が希薄だったので、『ちか100かい』では、全体の住人のつながりを作りたいなと思ったんです。それで最後のパーティの場面に向かって全員が準備していて、最後には全部の動物が集結する場面を描きました。ちょっと謎解き的なストーリーも入れて。

 そんな風に、第一作より少しでも良くしようと思って(笑)。まだまだ勉強中ですね。絵もね、前よりもうまくなりましたねって、偕成社の方に言われたんです(笑)。


―― うちの息子はハリネズミさんの宝石の部屋が大好きで、いいなあって言うんです。男の子なんですけどね。

 そうそう。宝石には結構、男の子も反応してくれるんですよね。特に、ハリネズミの階に登場する七色に光る石は大人気で、さっきワークショップに来てくれた女の子も、もし自分がみつけたら絶対誰にも渡さないって言ってました(笑)。僕はもともと光るものが好きで、メディアアートでも光の作品をたくさん作ってきました。なので絵本でも描きたかったんです。化石や、土を掘る機械なんかも、子どもの頃好きだったし、『ちか100かい』では、より趣味性の高いものを詰め込んでいる感じですね。


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 僕は実は3人姉がいまして、4人きょうだいの末っ子なんですよ。それで女の人に慣れているといいますか、ママたちばかりの集まりの中に男1人だけでも、全然違和感がなくて。娘たちとの遊びも得意だし。僕は男だけど、たぶん女性的な部分もあると思うんですね。今回の『ちか100かい』は、化石、機械、宝石、お菓子など、自分の男の子的な部分と、女性的な部分をそれぞれ両方最大限出して描いた感じです。男の子っぽい絵本、女の子っぽい絵本って絵本によってありますが、この絵本が、男女両方に受けるのはそのせいかな、と思います。


―― 『100かいだてのいえ』のワークショップで子どもたちが描いている絵の内容も、男の子、女の子、というのを意外と超えているんですね。

 そうなんです。あと年齢もあんまり関係ないですね。下は2~3歳から大丈夫ですし、感想ハガキを見ると、意外と10~12歳位の子まで楽しんで読んでくれてるみたいです。絵本だから、子ども向けが大前提ではあるけど、でもやっぱり大人である自分が面白いものを描かなきゃっていうのはあるんです。自分が思い切り楽しんで描けば、読者の年齢はそんなに気にしなくていいと思うんですね。感想ハガキに、「大人も楽しめますね」って、子どもが書いてきたこともあるんですよ(笑)。


―― 描いていて、子どもの頃の記憶が蘇ってくる、という経験もありましたか?

 子どもの頃好きだったものとか、こんな遊びをしたかったな、というのはあちこちに入ってますよね。どろんこ遊びだとか、大人に止められちゃうようなこと、そういうものをあえて描いてみたい、と。描いていてやっぱり気持ちいいんですよね。これぐらい派手にやりたいなあ、って。



■ 自分の中に残っている子ども性     


―― 絵本を読んだ子どもたちからの意外な反応など、印象に残ったものはありますか。

 逆に、意外じゃない反応で驚いていますね。例えば、どろんこ遊びとか、とかげのしっぽが切れるシーンとか、七色の宝石だとかって、こういうのは受けるかも?、と思いながらそれぞれ描いたんですが、ものの見事に、感想ハガキにその部分を「○○が好きです!」と書いてきてくれるんですよね。描いたほうとしては、もうニンマリしちゃうんですけど。そういうのを見ると、自分の中にある「これ面白い!」という感覚は、誰でも共通なんだなと感じますね。

 自分の子ども時代を思い出しながら描くというより、自分の中にある子どもの部分を最大限に使うということなのかな。子どもの遊びって、ハイテクなゲームなどを見ると表面的には変わってるように思うけど、一番原点の部分ではあまり変わってないと思うんです。自分はもう四十代後半だけど、自分が描いたひとつひとつのシーンが子どもたちに喜ばれると、自分の中に残ってる子ども性と、平成に生まれた子どもたちが、実は一緒、ちゃんとつながってるいうことを実感して、すごく幸せな気持ちになりますね。


―― 絵本の場合は、発売後にまた反応が大きく返ってくるというのがまた面白いですよね。そこからがまたスタートというか。

 本当にそうです。今日のワークショップ(※)みたいに、絵本を元に子どもたちがさらに発展させていってくれる。『ちか100かいだてのいえ』につけた「みんなの100かいだてのいえ」(※)への応募はがきは、もう2千枚ぐらい来ているんですけど、日本中からそれだけのリターンがあるというのは本当にすごいことだと思います。
 僕はこれまでインタラクティブに映像を触ったり、音楽を作ったりという様なことができる作品を展覧会などで発表してきたんですが、子どもたちが家の中で絵本とつきあってる時間というのは、展覧会なんかよりもっとずっと長いじゃないですか。小さい子にとってはものすごく濃い時間だと思うんですよ。全然違いますよね。

※ワークショップの様子はこちらから>>>
※「みんなの100かいだてのいえ」ウェブページはこちらから>>>


―― 子どもたちが絵本の中で体験してるっていうのが、見ていてわかりますよね。

 子どもたちにとって絵本とのつきあいは生活の一部ですよね。だからこそ、すごくやりがいのある仕事だなと思い始めています。僕は小さい頃、『そらいろのたね』がすごく好きだったんですけど、その本の事を思い返すと、いまだに温かい気持ちになれるんですよね。絵本の中には実は「たね」自体が描かれてないんだけれど、空色のたねって、どんなふうに見えるんだろうと、想像した感じまで思い出せるんです。これってすごい事ですよね。最後に家がぱっと消えるところは、本当にハラハラドキドキして。40年以上たって、まだ覚えてるんですよね。
 だから僕の『100かいだてのいえ』も、「あの絵本は面白かった」とか「あの時自分で考えた家はこうだったな」とか、今の子どもたちが大人になって思い返してくれたら最高ですよね。



■ みんなでつくる100かいだてのいえ     


―― 今日の様な「みんなの100かいだてのいえをつくろう!」というワークショップは、丸善ラゾーナ川崎店さんが最初に考えだされた事がきっかけだったそうですね。


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※この日、丸善ラゾーナ川崎店さんで「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」というワークショップが行われました。様子はこちら>>>


 僕は、以前から参加性のある作品をつくっていたこともあって、それをさらに発展させたワークショップや小学校での特別授業なども積極的にやっていました。子どもたちから、何かを引き出すことが好きなんです。

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光のえんぴつ、時間のねんど―図工とメディアをつなぐ特別授業』 岩井俊雄著・美術出版社
※小学生のためのユニークな特別授業がまとめられた本です。

 それで、絵本ではどうしたらいいのかな、と思うところがありました。自分の絵本が、各家庭で読み聞かせされているというのは、ある種インタラクティブでいいことなんだけど、受身的でもありますよね。本当は、自分の絵本をきっかけに、子どもが触発されて何かを創り出すみたいな所までいってくれたら理想だな、と思っていたんです。
 物語性の強い絵本だと、どうしても読者は受身になりがちなイメージを持っていたんです。絵本の中には、五味太郎さんの『らくがき絵本』の様に直接子どもが絵を描いて参加できるものもあるし、『100かいだてのいえ』を作る前は、自分が絵本を作るなら、そういった参加性があるほうが自分らしいのかな、とも考えたりしました。ところが、実際にこの絵本を出してみたら、近所のお母さんが「子どもがこんな家を描きました」と見せてくれたりして、子どもが予想以上にリアクションしてくれてることがわかったんですよ。

 そんなことがいくつかあってしばらくしたら、丸善ラゾーナ川崎店の書店員の方が、店頭で『100かいだてのいえ』を使った参加型の企画をやってみたいと言ってる、って担当さんから聞いたんです。「それはいいアイデアですね!」と、すぐに専用の用紙をデザインして使ってもらいました。結果それがものすごく好評だったので、もっと広めたいなと。最初は、自分のブログでやろうかなと思ったんですけど、描いた絵をどう集めるかとかいろいろ難しい。それでなかなか実現できずにいたんですが、『ちか100かい』が出る時に、急に偕成社さんから愛読者カードを参加型のものにしてもいい、という話が出たので、やった!っていう感じでできたんです。


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↑『ちか100かいだてのいえ』には、「みんなの100かいだて」に参加できる愛読者カードが付いていて、特設HPの方に毎週アップされていきます!こちら>>>


―― 絵本を読んだ事がきっかけで、子どもたちにこんな発想が生まれくる・・・というのは見ていて、本当に面白いでしょうね。

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 子どもたちって、面白い歌を聞けばそれを歌いたくなるし、面白いものを見れば描きたくなりますよね。だからその受け皿として絵本の中に絵が描けるハガキが入っていて、なおかつ、それが家の中のらくがきで終わらずに、日本中の仲間とつながっていくっていうのはすごくいいんじゃないかと。


―― つながった瞬間っていうのは感動するでしょうね。

 ええ、そのつながった時の感動がまた刺激になってさらに次に、となるといいですね。「みんながこんなの描いてるんだったら、もっとこうすればよかった」って思う子もいるでしょう。ただ、絵本一冊につきハガキ一枚でもすごい数が届いているので、これ以上増えたら大変なことになりそうですが(笑)。


―― 「みんなの100かいだてのいえ」では、描く時のアドバイスというのはありますか?

 自分の好きなものや、こだわりをなるべく詰め込んで欲しいですね。詰め込めば詰め込むほど面白くなってくるんです。僕がこの絵本を描くときがそうでした。さらりと描いたものより、ディテールにこだわり始めると、すごく面白くなってくるんですよ。今日のワークショップでも、そのレベルまで来てるなっていう人たちが何人もいましたね。最初は「何描こう・・・」という感じなんだけれど、描いていくうちにどこかに臨界点があって、それを超えると面白くてやめられなくなるという感じ。そこまでいって欲しいと思います。



■ 絵本を読んだ後にも     

―― 絵本を通して親子でこんなふうに触れ合ってほしい、という事はありますか?

 絵本というのは、結局は人がつくったものなんです。読み聞かせで親子ならではのコミュニケーションができるという、メディアとしての良さはありますが、すでに出来上がった世界を味わうという意味では、テレビなんかと同じで受身に近い部分もあると思うんです。本当は、外に出て遊んだりしたほうがいいのでは、と思うところもあります。

 でも、「みんなの100かいだてのいえ」みたいに、うまくやれば子どもが絵本から感じ取ったことを、絵に描いたり、何かを作ったり、そういうクリエイティブな事につなげることがやりやすいメディアだと思うんですね。例えば、テレビでどんなに面白いものを見ても、子どもがテレビ番組を作るわけにはいきません。しかし絵本は、紙の上に印刷されたものだから、真似して描けるし、似たような絵本を作ろうと思えば作れる。うちの娘も、よく自分で紙をホチキスで綴じて本やノートの様にして遊んでいます。そんな風に本というのは、いつの時代になっても僕らの身体にすごく近い、生活に密着したものなんですね。子どもたちが持っている「表現したい!」っていう気持ちにすごく寄り添えるメディアだと思うんですよね。

 だから子どもと絵本を読んだあとには親子で絵を描いたり、絵本をきっかけに一緒にお話を作ったり、と世界が広がっていったら、すごくいいなと思いますね。絵本を一方的に詰め込むというよりは、いい刺激を入れたことによって子どもから何が出てくるか、親がしっかり見て伸ばしてあげる気持ちで、絵本を読んであげるのがいいんじゃないかと思います。


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―― 岩井さんの中でも、『100かいだてのいえ』シリーズの制作を通して「絵本」に対する発見が色々とあったのでしょうね。

 子どもが送ってくれた感想の中で、「ページのめくり方が逆でびっくりしました」っていうのもあるんです。5歳の女の子から「こんな絵本見た事がない」というのも。たった5歳の子でさえ「本とはこういうもの」という既成概念がはっきりあるという事が面白いなあ、と。『100かいだてのいえ』は、読み聞かせがしにくいというお母さんたちの意見はあるのですが、子どもたちのほうはまったく気にしないようです。逆に新しさを楽しんでくれている感じがします。

 テレビでも映画でも、世の中には横長のものが多いですよね。人間の目が横に並んでいるから当然といえば当然なんだけど、だからこそ縦にしてみると意外性がある。特に、この絵本のように上へ登っていく感じは縦じゃないと出せないから、使わない手はないですよね。絵本だからこそこれができる!ということを、言いたいですね。

 それから、本ってどこから開いてもいいっていうのがありますよね。映画やゲームというのは、やっぱり最初から順番に見ないといけないけど、本は、パッとどのページでも開ける。それを利用しようと思って作ったのが、『どっちがへん?』などの絵本だったんですよね。

 そんなふうに、本の形はそのままでも、アイデアによってはまだまだいろいろできるんじゃないかって思っています。


―― 今後、どんな考えが出てくるか、その辺りも楽しみにしていていいんですね。

 そうですね。でも一方で、普通の絵本もいいなと思い始めてるんです。先ほども言いましたが、僕には絵本を読み聞かせしてもらった記憶があまりないんです。でも、逆に僕の父は本も何も使わずに布団の中で寝る前にお話をよく聞かせてくれたんですね。しかも、それは父の創作童話でした。レパートリーがいくつかあって、姉が3人いたので、4人めの僕の時には、たぶんかなり話し方もこなれていて(笑)。僕はもう、毎晩すごく楽しみにしていたんですよ。そんなことができた父はすごかったな、というか、今はすごく感謝しているんです。そういう体験があるので、僕も父には負けられないと、娘と一緒にお風呂に入る時は即興でお話を作って話したりするんですよね。

―― 私も息子に言われてやっていたんですけど・・・かなり難しいですよね。

 僕も苦手だったけど、だんだんできるようになりましたね。もちろん、毎回面白い話にはならないかもしれないけど、即興性があるからこそ、子どもは喜んでくれるんですよね。例えば、子どもに3つ何かを言ってもらって、それをつないでお話を作る三題噺みたいなもの。大変だけど、実際やってみると思いがけない物語が生まれたりして、僕自身にもいい訓練になってます。
 口に出す、耳から聞く話っていうのは、読むのとはまた全然違いますよね。無駄がなくて。文字で書いちゃうと、かなりそぎ落としたと思っても、あとから無駄がいっぱい見つかるんだけれども、即興で語る言葉って、その場で子どもがあっち向かないように一生懸命やるからいいのかもしれないですね。


―― 絵本作りのヒントが隠されていそうですね。

 こんな風にいまやっている事が、もしかして将来絵本につながるかもしれませんよね。これまで使ってなかった部分を自分からどれだけ掘り起こせるかということでも、僕は今、すごく新鮮に絵本というものと向き合っているというか、可能性を感じているんです。45歳ぐらいから急に絵本を描くことになったんですが、まだこんな人生が自分に待っていたかと思うと、面白いですよ。また新たなスタート地点に立ったみたいで。


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―― ありがとうございました!


<最後に・・・>
理路整然と話される岩井さんを前に、少し緊張。でも、子ども達の素晴らしさについて話される時のほころんだ表情に嬉しくなって、ついつい長い時間お伺いしてしまいました。
岩井さんと絵本。今後どんな風に向き合われていくのか本当に楽しみです。

2010年02月25日

「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」
丸善ラゾーナ川崎店さんでワークショップが開催されました。

先日(2010/1/17)の日曜日、丸善ラゾーナ川崎店さんで
「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」という
ワークショップが開催されるという事でお邪魔してきました。
丸善ラゾーナ川崎店さんは、この「みんなの100かいだてのいえ」というワークショップを
一番最初に開催されたお店だそうですよ。

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「100かいだてのいえをつくろう!」ワークショップ会場はこちらです。

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机の上にはペンやはさみなど。
そして、一人二部屋描ける専用の紙が用意されています。

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さあ、岩井俊雄さんの登場です!
「この絵本、読んだことあるひとー?」

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「この『100かいだてのいえ』みたいに、みんなも好きな部屋を描いてください。
必ず上と下の部屋につながる階段もつけてくださいね。」
今回は、「冬の100かいだてのいえ」をみんなでつくることになりました!
「お父さんやお母さんも一緒に描いてみてくださいね。」

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早速スタートです!
「うーん、冬と言えば何だろう・・・。」


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一所懸命考える子、手がどんどん進んでいく子。お母さんも真剣です。


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時間が経つにつれ、集中力が増していく子どもたち。


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終わりの時間が近づいてます。ここにもうちょっと描き足して・・・。


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終了~!!
「みんな出来た作品を前に持ってきてくださいね。」

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一枚ずつみんなが描いた部屋をつなげていきます。

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どんどん長くなります!

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「これ、わたしの!」「これ、ぼくの!」

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みんなの描いた部屋を順番に見ていくから、並んで座ってね。

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部屋を暗くして、カメラが乗った台をコロコロ動かしていくと・・・?

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うわー、みんなの部屋が大きく映りました。
 
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岩井さんが、描いた子に質問をしたり、感想を言ったりして、一部屋一部屋紹介してくれます。
思いがけないアイデアが次々と飛び出します。
「かわいいー!」「おもしろい!」「なるほど。」かなり盛り上がりました。
 
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最後に岩井さんが描いた屋上がのって・・・「みんなの冬の100かいだてのいえ」が完成!!
ジャーン!こんな立派なうちが建ちましたー↓
 
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雪がたくさん降ってますねぇ。中には、どんな部屋があるのでしょう?
大きく載せてみました。細かくご覧になりたい方はこちらからどうぞ>>>

2010年02月24日

みんなでつくった「冬の100だてのいえ」が完成しました!

丸善ラゾーナ川崎店さんで行われた、
「いわいとしおさんと100かいだてのいえをつくろう!」
というワークショップで、参加された皆さんが描いた作品が全部つながった
「みんなのいえ」が完成しました。テーマは「冬のいえ」です。

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2010年02月10日

『でも、わたし生きていくわ』
翻訳者柳田邦男さんにインタビューしました!

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砂漠でみつけた一冊の絵本』『大人が絵本に涙する時』など、「大人こそ絵本を」という呼びかけを広く行っており、また近年絵本の翻訳にも力を入れてらっしゃるノンフィクション作家柳田邦男さん。
その柳田さんがこれまで翻訳された絵本の中でも、最も心を揺さぶられた作品の一つだとおっしゃっているのが昨年の11月に発売されたばかりの新刊『でも、わたし生きていくわ』(文溪堂)。訳しながら涙が止まらなかったということですが、一体どんな内容の絵本なのでしょう、そこにはどんなメッセージが込められているのでしょう。

今回、絵本ナビでは柳田邦男さんへのインタビューが実現、仕事場にお伺いしました。

とんでもなくお忙しい日にお邪魔してしまった我々一同に、始まりは少しバタバタしながらも、一度絵本の話になるととても情熱的にメッセージを語ってくださった柳田さん。
子ども達の「心の成長」について、「いのち」について、真摯な言葉の数々に思わずこちらが涙してしまうシーンも・・・。

その深く温かいメッセージをじっくりと味わってください。

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柳田邦男(やなぎだくにお)
1936年生まれ。ノンフィクション作家。現代人の「いのちの危機」「心の危機」をテーマにドキュメントや評論を執筆する傍ら、心の再生のために「大人こそ絵本を」のキャンペーンを展開。エッセイ集『砂漠でみつけた一冊の絵本』(岩波書店)『大人が絵本に涙する時』(平凡社)『みんな、絵本から』(講談社)や、翻訳絵本『エリカ 奇跡のいのち』『ヤクーバとライオン』(ともに講談社)、『だいじょうぶだよ、ゾウさん』『くもをおいかけてごらん、ピープー』(ともに文溪堂)などで、子どもの心の発達についてのメッセージを発信し続けている。



■ 『でも、わたし生きていくわ』に込められたメッセージ     



―― 突然の両親の死というショッキングな出来事で始まる『でも、わたし生きていくわ』。この絵本に最初に出合われた時の印象を教えて頂けますか?

 以前、文溪堂の『だいじょうぶだよ、ゾウさん』と『くもをおいかけてごらん、ピープー』というローレンス・ブルギニョンさんの作品を訳したんです。その二冊を出しているベルギーの出版社から出ているって事でこの絵本にも出合ったんです。

 僕は絵本を読む時に、そこに心を動かす決定的な言葉なりシーンなりがあると「これはどうしても訳したい」っていう気持ちになるんです。この作品は、子どもの心が一段階成長したり、あるいは何かに気づいたりする、そこのところがすごくよく描かれている。子どもの心っていうのは、なんとなく漫然と1日ずつ大人になっていくんじゃなくて、何か出来事とか出会いとか言葉とか、そういうものに遭遇することによって、階段をぽんっと二段ぐらい上がるような形で成長するんだと思うんですよね。そういう心の成長なり発達なりが、見事に描かれている。そういう場面があると、この絵本作家の伝えたいことっていうのがズシーンと胸に響いてくる。それで訳したくなるんだ。


Ehon_30317%20%281%29.jpg 『でも、わたし生きていくわ
                   (コレット・ニース=マズール作 エステル・メーンス絵 文溪堂)
両親の死で、7歳のネリーは幼い弟妹と別れて引き取られる。そこで温かく迎えられ、週末には3人一緒に過ごせるようになるが…。両親を亡くした幼い3人姉弟に周囲は温かい。しかし、優しさに触れれば触れるほど、何かの瞬間に甦る喪失感は深くなってしまう。その悲しみを乗りこえた時、人は大きく成長します。


―― まず作家のメッセージを感じ、それをどう表現するかという事なんですね。

 そう、それがとても大事なことで。『でも、わたし生きてくわ』の主人公ネリーは両親が亡くなってしまうという大変ショッキングな不幸に出合う。しかも幼い弟、妹がいる。そういう中で長女であるネリー、まだ7歳で、大変な経験だと思うんですよね。だけど、そのネリーを支えて再生させたものは何なのか。再生させるところまでネリーの気持ちを持ち上げていった結果何が生まれるのか、それがこの絵本で語りたいところなわけです。

 それがもっとも象徴的に語られてるシーンというのがここ。
<ときどき、夜になると、あの事件がおきるまえの日々のことを思いうかべるわ。パパやママがいまもいたら、どんな毎日になってるだろう。思わず涙があふれるけれど、そのうちねむってしまう。悲しみは消えないけれど、いま、わたしは、しあわせ>


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 この、思わず涙があふれ、だけど眠っちゃうっていうの、本当に子どもらしいと思うのね。大人だったらもう夜を徹して、まんじりともしないで泣き明かすようなところが、子どもだから寝ちゃうの。寝ちゃうからって悲しみがなくなるわけじゃなくって、消えない。でも、幸せって言って・・・この矛盾ね。矛盾は矛盾じゃないんですよね。子どもであれ大人であれ、人間の心っていうのは対立するような感情なり矛盾するような感情が同時にあるのが自然な姿で。
 そういう喪失体験があったときに、悲しいし、ショックも受ける。だけれどね、子どもっていうのはものすごい順応能力があって、まわりが優しく支えてくれると、すぐに遊んだり、歌ったりできるようになるのね。だから、「悲しみは消えないけど幸せ」と言えるほど前向きに生きられるまで持ち上げていくということが、真の癒しであり、子どものケアにとってはとっても大事なこと。そのことをここでは端的に表しているんです。


―― この絵本の中でとても印象的だったのが、ネリーを取り巻くまわりの人達の優しさです。

 そうですね。ここの親戚のおじさん、おばさん達がものすごく優しいし、クラスメートもとっても心配して。時には「優しすぎて変に感じるときがある」なんて言ったりしてね、ここの表現はすごくおもしろいよね。こういう風にまわりのみんなが支える。「しっかりしなさい」とか「頑張れ」とかって言うんじゃなくて、本当に優しく、その子なりに生きられるように支える、それが条件なのね。その結果、悲しいのだけれど毎日が生きられる、明日も生きられると言えるようになるんです。


―― そして生まれたものというのは・・・。

 最後のシーンでネリーは、窓辺で遠くを見ながら、自分が大人になったら、窓やドアがたくさんあって、どんな子でも入って来られるそういう家をつくりたい、大きい子でも小さい子でも誰でも入ってきて「私の家族よ」って言って抱きしめてあげるの、と思いをめぐらせるんです。これはすごいことですよね。
 自分自身が親がいなくなって、そして親戚に預けられた。だけど、おばさんもおじさんも自分の子として扱ってくれる。単に、義理で預かってるんじゃなくて。
 例えばここの場面、髪の毛を自分で切って、とんでもないざんばら髪になっちゃっておばさんに怒られる。その時に泣いて「ママー」って言ってね、おばさんじゃなくて自分の死んだママに対して「ママー」って言っちゃったんだよね。そしたら、おばさんが怒っちゃうわけ。「なんでママに助けをもとめるの?私がママよ」って言ってね。「もうあなたは私の子よ」って言って抱きしめてくれるんだよね。

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 そのぐらいの支えがあるから幸せって言える。その経験があるから、自分が今度、大人になったらおばさんの様にどんな子でも受け入れて自分で育てるって言う。そういうような開かれた家庭、血のつながりじゃない、幼い子は万人の子なんだって、そういう意識につながっていく。
 それを生み出すものっていうのは、落ち込んだり悲しんだりしてる子どもが、そこで閉じこもらないで開かれた心になるように支えてやる、ってこと。ここでの「おまえはもう私の子なのよ」っていう支え方っていうのが結局その子の人生を決めちゃうわけですよね。悲しみを乗り越えて、そして自分の人生を切り開いていくような強い心を持てる、それがこの子にとっての決定的な成長になる。恐らく、階段でいえば3段も4段も一気に上がるようなものだと思うんですけどね。
 そういうようなことがすごくよく描かれているんです。


―― 今のお話を聞いていて、子どもが成長していく瞬間を見るっていうのが、大人にとってはすごい心を動かされる、揺さぶられる瞬間なんだっていうことに気が付かされました。

 ええ。だから、もう、これね、訳しながら何回涙が出ちゃったか。
(絵本の中の)「訳者のことば」にも書いたけど、今の子って自己肯定感を持ってない子や自尊感情の持てない子がすごく多い。3割位いるっていうね。そういう時代に、この絵本を子どもたちに読んでほしいと同時に大人たちに読んでほしい。自己肯定感を持てない子のお尻たたいたって駄目なんですよね。「しっかりしろ」って言っても駄目なんです。その前に自分自身が本当に目覚めていくような優しい包み方、そういう中から再出発できるんだよってね。


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―― 『でも、わたし生きていくわ』というのは少女ネリーの強い意志を感じる、印象的なタイトルですね。また、表紙の絵にもこだわられたと聞いています。

 原題はフランス語なんですけども、英語だと『Since that day』、つまり、お父さん、お母さんが突然居なくなっちゃった日以後の話って。なんか小説的タイトルですよね。
 自己肯定感の持てない子どもたちへのメッセージとして、生きるっていうこと、どんなつらいことがあっても生きるっていうこと、それを伝えたいっていう気持ちで、こういうタイトルにしたんです。

 僕自身が小学校の4年の時、終戦の翌年ですけれど、父親が亡くなって、貧困になって、そして兄弟が多かった。当時の家族ですから。もうみんなティーンエイジャー時代から自分で働く、働かなきゃ食えないっていう、そういう中で生きて。だから僕は苦労することとか境遇が恵まれないってことは、むしろプラスに評価するように人生観が持てたんですよね。それをばねにして生きていく。そういう僕自身の背景もあって、人間って本当に強くなるなり、あるいは自分の人生を開いていくっていうのは、逆境のほうがむしろいいんだっていうぐらいの気持ちでこの本をすすめたいと思って。

 実は表紙もね、この絵がいいと思って直前で変えてもらったんですよ。日本には表紙カバーというのがあるからね、こういう形で実現できたんです。このネリーの顔、この目がね、未来を見つめる目がいいんです。どうしてこれだけの悲劇から、こんなに未来を見詰める目が生まれてくるかっていう、象徴的な顔なんだ。生き生きとしてさ、「わたし生きていく」っていう、決意がここに表明されてる。


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▲表紙カバー取ると違う絵になるんです!カバーの絵は柳田さん自身が選ばれたそう。



■ 「死」をテーマにした絵本について     


―― 『わたし、生きていくわ』という作品には「死別」というをテーマが含まれていますね。他にも「死」や「いのち」というものをテーマにした絵本というのがあります。自分自身、それらを読む事によって様々な事を考えさせられたりしています。それで、大人というのは自分の意思で読む事ができると思うんですけど、子どもたちにこの様なテーマの絵本をどのようなタイミングで読んでほしいかとか、どういう触れ合い方をしてもらいたいというのがあれば一番お伺いしてみたかったのですが。

 ええ。あのね、僕は非常にショックを受けた場面があるんです。
 ある絵本原画展で、その会場の前にいっぱい絵本が並んでいてね。その中にイギリスのスーザン・バーレイの『わすれられないおくりもの』(小川仁央・訳 評論社)っていう絵本があって。それを子どもが手に取って、興味を引かれて読み出していたのね。それで「これ、欲しい」って言ったんです。小学校の1年生か2年生ぐらいの男の子だったかな。そしたら、お母さんがね「それ、嫌い」って言ったの。「だって、死んじゃうんでしょう」って・・・。僕は、そのシーンを見ててすっごいショックだったのね。このお母さん、誰のために絵本考えてるんだろう、何だろうってね。「死んじゃうんでしょう、そんなのいや、嫌い」って。もう僕はがっくり来たんだけどね。


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僕のエッセイの中でも書いているんだけど、『わすれられないおくりもの』っていうのは、細谷亮太先生(聖路加国際病院副院長 小児総合医療センター長)の病院に入院された2歳半の子が亡くなった時に、細谷先生がそのお姉ちゃん、お兄ちゃんに読んで聞かせてあげたそうなんです。そしたら今まで弟の死を理解できなかったお兄ちゃんとお姉ちゃんがね、しっかりそこで涙を流して看取ってお別れもできたって言うんです。それだけじゃなくてね。その時小学校に上がる直前、6歳だったお兄ちゃんが、弟を失った体験、その絵本を読んでもらって涙を流した体験っていうのをずーっと誰にもしゃべっていなかったの。
 ところが5年後、5年生になって本当にしゃべってもいいような気心の通じる友達に出会えたので、初めて話したそうなんです。そうしたら、友達が涙を流してくれたって言うのね。で、話して良かったと思った。自分も弟のことを1日も忘れたことないし、あの絵本を思い出すと悲しくて涙が出るって。それは、彼にとってはものすごく大事な心の成長につながったわけですよ。ただ漫然と弟がいなくなっちゃった、死んじゃった、そして月日の中で忘れていくっていうんじゃなくて、細谷先生がそれを読んだことによってものすごく深く刻まれて。
 絵本ではアナグマさんが年をとってあの世へ行ってしまうのだけれど、みんな忘れない、心の中では生きてるっていう構造を彼もそこで気付いたわけですね。それを胸に刻んでるから5年経ってもいまだに毎日「(弟が)天使の姿で現れる」って言うんですよね。だから、そういう別れとか死別っていうのも、子どもにとっては大事な経験だし、ある意味では一番大事な心の成長につながる経験なんじゃないかと思うんですね。

ehon133_a.jpg 『わすれられないおくりもの』 (スーザン・バーレイ作 評論社)

 別れや死別、というのをテーマにした絵本というのは確かに悲しい話ですよね。
 小学生の男の子でね、悲しい場面が出てくるととにかく泣いて先が読めなくなっちゃう、という子がいたんです。『だいじょうぶだよ、ゾウさん』とか、他の幾つかのそういう別れの場面のある絵本だとか。だからそういう本を読ませられないって言って親御さんは頭を抱えてるんだけど、僕はそれはそれでいいと思っているんです。きっとその子は感性がものすごく鋭いんだろうと。人の10倍ぐらい感じて、読めなくなるぐらい悲しくなっちゃうんだと思うけれど、いつかね、そういうのを乗り越えられる日が来るから。
 ただ「この子は泣いちゃうからこの本は読ませない」というのはやめたほうがいいです。むしろ、強制的に読ませないとか、無理に読ませるとかってそんなことじゃなくて、自然に段々そういうものを受け入れていくようにね。感性が鋭くて先が読めないぐらいだった子が、それを受け入れられるようになった時っていうのはすごい心の成長になるわけだからね、とても大事な経験になるはずだと。
 そういう目で接したほうがいいんじゃないの?って言ってあげたんですけどね。


── 読みきかせている方が泣いてしまうかもしれません。

 読み聞かせっていうのは絵本にとっては不可欠で、買って与えるだけじゃ絵本にならない。やっぱり、親が肉声で感情込めてやるのよ。読み方っていうのは自己流でいいと思うんですね。あまり感情を込めずに穏やかに読むといいって言われている事もあるけど、僕はそう思わないんだな。親子っていうのは感情を共有することが大事で、だからお母さんが泣けばいいんですよ、一緒になって。「あ、お母さんも泣いてる」とか「お父さんも泣いてる」とかって。それでいいんだろうと思うんですよね。

 『だいじょうぶだよ、ゾウさん』を学校で担任の先生が読み聞かせしたらね、途中で先生が泣いて行き詰っちゃったらしいの。そしたら、クラス中にどよめきが起こったって。子どもにとって、先生が読み聞かせしながら泣いちゃって言葉が続かなくなる、っていうのはすごいショッキングな経験だと思うんですよね。それでいいんだと思うの。「ああ、先生も泣くんだ」って。その中から、自分の心が、感性なり感情なりが、非常にきめ細かく育っていくんだと思うの。


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■ 翻訳したいと感じる絵本について     


―― 今までも様々な絵本を翻訳されてきた柳田さんですが、それぞれの作品の最後に必ず「訳者のことば」というのが記されていますよね。どの様に翻訳する絵本を選ばれるのでしょうか?

 ただ漫然と絵本なら何でもいい、楽しければいいとかじゃなくって、僕が訳すってなんだろうってなって考えるんです。

 僕は絵本作家でもないし児童文学者でもない。だけれど、今の日本の状況を見ていて、子どもたちの成育環境っていうのは本当に劣悪だと思うのね。親子の肉体的な接触、スキンシップ、そういうものが非常に希薄になっている。核家族化が進む中、マンションの中で子どもが孤立している。あるいは、母子が孤立している。そういう状況下で、子どもの心っていうものの成長が怪しくなってきて、ゆがみやすくなってきてる。それが僕が時代を見詰めたり、世の中の事件を見たり、あるいは時代の変化を見てると、もうすごく深刻な問題だなあって思ってるわけですよね。そっちから、絵本にアプローチしているんです。
 もう一つのアプローチとして、大人自身の心に潤いを取り戻さないといけないという思いがある。大人自身の心が枯れてるから、非常に索漠としてる。よくいわれるようにお金と物に振り回されてるみたいな。もうちょっと踏みとどまって自分を見つめてみましょう、と。あるいは、中高年になって病気をしたりとか、人生思うようにいかなくなったりした時にもう一度「生きるってなんだろう」とか「大事なものはなんだろう」とか考える上で、絵本っていうのは意外に普遍的なものを教えてくれる。気づかせてくれる。そういうアプローチと、僕には2つあるんですね。

 そういう意識があるから、この絵本は何を伝えたいんだろうかと考え、その伝えたいテーマなり、エピソードなりが僕の問題意識にピンと来るものに限定してるんです。編集者から作品を持ち込まれたり相談される事は多いのですが、お断りする例も多いんです。で、ピンっとくるものがあると「あ、これは訳したい」と思う。

―― 大きなきっかけとなった作品の一つが『エリカ 奇跡のいのち』なのだとか。

ehon9027.jpg 『エリカ 奇跡のいのち
(ルース・バンダー・ジー作  ロベルト・インノチェンティ絵 講談社)

 僕は翻訳始めて7~8年になりますけれど、その最初の頃、講談社で『エリカ 奇跡のいのち』っていう絵本を訳したんです。
 第2次世界大戦中のドイツで、収容所に向かう列車の窓からせめてこの子だけはと投げ捨てられた赤ちゃんが、農家の優しい女性に拾われて奇跡的に助かったというお話です。

 <お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。>という原文を読んだ時、ぼくは震えるような思いがしたんです。子育てがいいかげんになってる今の時代だからこそ、もう一度生きるか死ぬかの原点に戻って、子どもに対してどういう向き合い方をしなければいけないか考える。こんな強烈なメッセージはないと思って、それで「訳しましょう!」って言ったんです。
 そのとき一番苦労したのは、今はもう自分で孫もいるような主人公エリカという女性が、旅行中だったアメリカの女性に顔も知らない実の母の気持ちを推測しながら話をする。その綿々とつながる言葉ね。これをどう訳すかっていう文体が、おそらくこの絵本の成否を分けるだろうと。母の愛のすごさというものが伝えられれば、時代を超えて伝わっていくに違いないと。

 この絵本を訳してから、日本の親たちや子どもたちに「これは今伝えたい」というものがある作品に限定していこうと思ったんです。


―― 「伝えたい」という意識を持って絵本の翻訳をされるのでしょうか?

 『だいじょうぶだよ、ゾウさん』でもね、すごく意識的に原文直訳じゃなく、僕の言葉で訳しているんです。
<ネズミはいまや心の成長をし、前のように怖がらなくなっていました。>
 ここは原文にはないって言ってもいいような訳なんです。だけど、絵本の言葉っていうのは、ものすごく省略した、いわば研ぎ澄まされたエッセンスといっていいわけで、それを日本語に置き換える時には、言葉の背景にある作家の思想なり、あるいは作家が伝えようとしたものを読み取って、じゃあそれはどのような文体や言葉にしたら読者に伝わるかっていう、そういう考え方をしないと、いい翻訳にならないんですよね。


ehon8523.jpg 『だいじょうぶだよ、ゾウさん』 
(ローレンス・ブルギニョン・作 ヴァレリー・ダール・絵 文溪堂)
年老いたゾウは自分の死期を悟るが、一緒に暮らしていたネズミはそれを受け入れられない。しかし幾つもの季節を重ねるうちにネズミも成長して…。

 この作品で大事なのは「心の成熟や成長とかっていうものは時間経過の中で生まれてくる」、そこが描かれているということ。そうすると、心の成長という問題が別れの場面でとても大事になる。それをどういうふうに表現したらいいか。どの瞬間に言ったらいいかっていうのを考えて、翻訳したんです。
 もう一つは、旅立つゾウさんが心置きなくつり橋を渡っていく、つまり死を受容し、人生に納得して、何も恐れや不安がないということ。そのつり橋が壊れていたんでは、痛みや苦しみで、本当に人格を失うようなことになる。それを直すっていうことは、言うならば緩和ケアをするわけですよね。痛みも苦しみも不安もなく渡っていけると。その時に、いったいゾウさんの心模様なり、見送る者の心模様というのはどんな言葉だろうかと。
 原文では「fine」という言葉を使ってるんですよね。「fine」って何なんだってね。「いい橋つくってありがとう」って、そう言ってるんじゃないんだよね。要するに旅立ちというものの全体、つまり不安や恐れもなくあの世に行ける、そしてあの世へ行っても、そこには安心立命の地があるという、この全体を指して言ってるわけね。それを子どもにも分かる一語で表現したら何だろうかって、考えて、考えて、考えて、1カ月考えて。「だいじょうぶ」っていう言葉にしたんです。
 最後にゾウは振り向いて答える「こわくなんかないよ。だいじょうぶ」、こう言ってるんだよね。


―― 昨年には『でも、わたし生きていくわ』も含めて4冊も翻訳されているんですよね。それぞれの作品の、翻訳者から見たみどころというのを教えて頂けますか。

 ええ、それはもうさっき言いましたように、私自身の問題意識やテーマ意識にぴたっと来る、そういう本がたまたまあってね、4冊も抱えちゃって。
 それぞれ絵本の山場というか、メッセージを発している大事な場面というのが、一つか二つかあるんですね。そこをしっかり押さえて翻訳していくんです。

Ehon_30198.jpg 『その手に1本の苗木を』 (クレア・A・ニヴォラ 作 評論社)

 例えば「もったいない」運動で知られるようになったケニアのマータイさんの